「人手不足をどう解消すればいいの?」「業務量が多く、良い人材を探すのも大変…」こうした人材採用に関する悩みを抱える企業は少なくありません。企業の長期的な成長にとって、人材確保は重要な課題です。
この記事では、経済産業省のレポートに基づき、人材不足解消の事例を10件紹介し、さらに「欲しい人材数の大小」と「維持改良 or 変革」の2軸で対策方法も解説します。
本記事を読めば、人手不足解消に向けた具体的なアイデアがきっと見つかるはずです。人材不足に悩む企業担当者や経営者の方々に役立つ情報が満載ですので、ぜひ参考にしてください。
こんな人におすすめ
- 現場の人材不足に悩む方
- 女性や高齢者採用の促進方法について知りたい方
- 人材採用以外でも人手不足解消する方法を知りたい方
■目次
1.日本企業が人材不足に陥っている要因と背景
企業の人材不足は深刻な社会問題となっています。この章では「少子高齢化の進行」「社会の変化による人材のミスマッチ」「若者の価値観の変化」という3つの観点から解説します。
①少子高齢化が進んでいる
2023年に日本の合計特殊出生率は1.20人と過去最低を更新し、65歳以上の人口割合も29.1%に達するなど、少子高齢化が急速に進行しています。この影響により、日本の生産年齢人口は、1995年の約8,716万人をピークに減少し続け、2023年には7,400万人を下回りました。
内閣府の推計によると、2053年頃には総人口が1億人を下回り、労働力不足がさらに深刻化することが予測されています。特に地方では若年層の都市部への人口流出も相まって、人材確保が大きな課題となっています。その影響で、人手不足を理由とした企業の倒産件数は2024年に342件を記録、前年の260件から大幅に増加し、過去最多となりました。
このような危機的状況を受け、企業は早急な対策が必要です。
②社会の変化による人材のミスマッチ
企業が求める人材と、実際の求職者のスキルや希望が合致していないケースが増えています。特にデジタル化の進展によりIT人材への需要が急増する一方で、ルーティンワーク中心の事務職など、従来型の業務に特化した人材の需要は減少傾向にあります。
厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、令和6年12月時点で建設や介護分野の求人倍率が4倍以上と人材不足が顕著であるのに対し、一般事務では0.37倍と人材過剰の状態です。この深刻なミスマッチを解消するため、企業側も従来の採用基準や職種にとらわれず、異業種からの人材採用や社内教育の充実化を進めるなど、柔軟な人材戦略への転換が求められています。
③若者の価値観が変化している
近年、若年層の働き方に対する価値観が大きく変化しています。かつては安定した収入や終身雇用が重視されていましたが、現在はワークライフバランスや自己成長の機会を重視する傾向が強いです。そのため長時間労働や休暇が取りづらい、年功序列など古い企業文化を持つ企業は若手人材の確保に苦戦しています。
また、副業やフリーランスという柔軟な働き方を選ぶ人も増えており、企業側もリモートワークやキャリア支援など、新たなニーズに応える必要があります。こうした環境の変化に適応できる企業が、これからの時代に求められるでしょう。
2.深刻な人材不足に陥っている業界TOP3
帝国データバンクの調査によると、深刻な人材不足に直面している業界TOP3は「IT業界(70.2%)」、次いで「警備業界(69.7%)」「建設業界(69.6%)」と続いています。
これらの業界は、労働環境の厳しさや賃金水準の問題、新しい技術への対応などの要因で人材不足を深刻化させています。また、サービス需要の高まりに対して人材の供給が追いつかず事業継続が困難になるケースも多いです。
以下では、特に人材不足が顕著なIT業界、警備業界、建設業界について、現状と課題を詳しく掘り下げます。
①IT業界
IT業界の人材不足は深刻な状況です。帝国データバンクの調査によると、2024年で約70%のIT企業が人材不足を感じています。特にAIやビッグデータなどの先端技術に対応できる人材の不足が顕著で、背景には企業のデジタル化推進による需要の急増があります。また、従来のシステム開発人材に対する需要も依然としてあるものの、AIやビッグデータなどの先端技術を扱える人材へのニーズがさらに高まっています。
経済産業省の予測では、2030年にIT人材が最大で約79万人不足すると見込まれています。企業はリモートワークの導入や待遇改善を進めていますが、技術の進化が速いため人材育成が追いつかず、依然として人手不足の解消には至っていません。
②警備業界
警備業界では、24時間体制や屋外での勤務など厳しい労働条件が人材確保を難しくさせる要因となっています。勤務時間が長いうえに天候に関係なく現場で働く必要があるため、若い世代の参入が特に少ない状況です。さらに、平均年収が約380万円と他業種と比べて低水準なことも人材確保を難しくしている要因と言えるでしょう。
また、警備業法による規制により20時間以上の初期研修が必須なため、短期での人材確保も容易ではありません。こうした状況も相まって、警備員の平均勤続年数は9.1年と他の業界と比べても短い傾向にあります。近年は防犯ニーズの高まりにより需要が増加している一方で、供給が追いつかず業界全体での人材不足が一層深刻化しています。
③建設業界
建設業界の人材不足は、若手の参入減少と就業者の高齢化により深刻化しています。国土交通省の調査によると、建設業界の就業者数は1997年の619万人から2020年には492万人まで減少しています。
特に、40代後半で賃金がピークを迎える給与体系や天候に左右される収入の不安定さが課題です。また、若手不足による技術継承の難しさも問題視されており、人材不足と高齢化の悪循環が続いています。
さらに、2024年からの時間外労働規制の適用により労働環境の厳しさがさらに増し、人材確保はますます困難な状況です。実際に、建設業の人手不足による倒産は2024年には99件に達しました。
3.人手不足が企業に与える影響
人手不足は経営に深刻な影響を及ぼし、企業の存続を脅かす深刻な課題です。帝国データバンクの調査によると、2024年の人手不足による倒産件数は342件に達し、過去最多を記録しました。
業務量に対して人員が不足しているため、残業時間の増加や休暇取得の減少など労働環境の悪化を招いています。こうした状況が続くと従業員のモチベーション低下や離職率の上昇につながり、さらなる人手不足という悪循環に陥ります。
また、本来受注可能だった案件の断念を余儀なくされるなど、事業機会の損失も発生しています。その結果、企業の持続的な成長や競争力の維持は困難な状況です。
4.企業の悩みや要望ごと|効果的な人手不足解消のポイントとは
人材不足といっても企業ごとに悩みや要望はそれぞれです。しかしながら、上記の事例で分かるように、どのような人材がどれくらい欲しいのか、またビジネスを維持するか事業継承の観点で成長したいのかで、対策しているポイントが微妙に分かれています。
自社の悩みが曖昧な時は、「欲しい人材の大小」と「維持改良 or 変革」の2軸、4つに分けて考えてみることからはじめてみましょう。
以下は、経済産業省が紹介している対策事例を元に、お悩み別に検討すべきポイントをご紹介します。
自社がマッチする願望や悩みについて、上記の対策事例を参考にしつつ、気になる方は経済産業省の資料を確認してみてください。
①大量の人材採用を行い、ビジネスを維持改良する5つのステップ
大量の人材が欲しく、かつビジネスを維持改良したい場合、まずは以下の5ステップで検討してみましょう。
- 採用ターゲットの変更
- 女性積極採用
- 「男性職場」からの脱却
- 業界イメージの改善
- 高齢者活躍推進
大量の人材を確保しつつビジネスを維持改良するための対策として、まず採用ターゲットを若手に絞りすぎるのを避け、幅広い層からの採用を目指すことが重要です。また、女性の積極採用を推進し、職場環境を整えることで多様な人材の活躍を促進できます。
さらに、「男性職場」のイメージから脱却するために、ハードな仕事という固定観念を払拭し、女性でも働きやすい職場を作ることが大切です。業界全体のイメージ改善も必要で、就労環境の向上をアピールすることで採用難を克服します。
最後に、就業時間帯に柔軟性を持たせ、高齢者の活躍を促進することで、早朝からの工場稼働など特定の時間帯の労働力を確保することが可能です。
これらにより、大量の人材を効率的に確保し、ビジネスの維持と改良を実現できるでしょう。
② 大量の人材採用を行い、ビジネスを変革する6つのステップ
大量の人材が欲しく、かつビジネスを変革したい場合、まずは以下の6つのステップで検討してみましょう。
- 公平な評価
- 女性離職阻止・定着率向上
- 教育体制整備
- 正規/非正規の格差是正、多様な雇用形態
- 創業期の人材確保・教育体制整備
- 優秀な人材の県外流出阻止
企業が大量の人材を確保しつつ、ビジネスを変革するための対策には以下のような具体的な方法があります。まず、制約のある従業員でも公平に評価する制度を導入することで、多様な人材が活躍できる環境を整えることが重要です。
また、女性の離職を防ぎ、定着率を向上させるために、働きやすい職場環境を整備し、キャリアアップの機会を提供します。さらに、教育体制を充実させることで、採用した人材が長く働き続けることを促進します。
正規と非正規の格差を是正し、多様な雇用形態を導入することで、人材の流出を防ぎます。
創業期には特に人材確保と教育体制の整備が重要であり、地方からの優秀な人材の流出を防ぐために、地域でのキャリアアップの機会を示すことが求められます。
③ 少人数の人材採用を行い、ビジネスを維持改良する5つのステップ
少人数の人材が欲しく、かつビジネスを維持改良したい場合には、まず以下の5ステップに沿って考えてみましょう。
- インバウンド顧客対応
- 海外展開、外国人材採用
- 従来の働き方からの脱却、柔軟な勤務制度
- 社内以外の育成機会の創出、副業の推奨
- 中核人材の確保
少人数の人材を効果的に活用し、ビジネスの維持と改善を図るためには、インバウンド顧客対応を強化し、海外からの顧客に対するサービスを充実させます。次に、海外展開を見据え、外国人材の採用や外国人インターンの受け入れを推進しましょう。
従来の長時間労働から脱却し、柔軟な勤務制度を導入することにより、働きやすい環境づくりも重要です。また、社内外での育成機会を創出し、副業を推奨することで、社員のスキルアップを図ります。
最後に、中核人材の確保に努め、ビジネスの維持と改善を支える基盤を整えることでビジネスの維持改良ができます。
④ 少人数の人材採用を行い、ビジネスを変革する2つのステップ
少人数の人材が欲しく、かつビジネスを変革したい場合は、次の2点を考えてみましょう。
- 生産体制、業務の見直し
- 生産整備、IT等の導入
まず、生産体制や業務の見直しが重要です。現行のプロセスを再評価し、効率性や効果を最大化するための改善点を発見します。業務ごとの必要工数を把握し、ムリやムダや改善点を改めて確認しましょう。
そして、ChatGPTをはじめとする生成AIチャットボット、RPAなどのIT技術を活用することで、人手不足を補いつつ大幅な生産性向上が可能です。
ちなみに、日本における生成AIサービス導入企業は約18%と、世界の中でも効率化の観点から遅れを取り始めています。一方で、資生堂やヤマハなど、国内を代表する企業は一歩先に進み、AIの力で革新的なビジネスを創出し続けているという現実もあります。
これらは資本力だけでなく、いち早く新しいものを導入する姿勢、経営層の考え方にも起因しているのです。詳細については、ぜひ以下の資料をご覧ください。
5.人手不足を解消して優秀な人材を確保するために企業が行うべき対策
深刻化する人材不足に対して、企業が講じるべき対策は多方面に及びます。本章では「働き方改革」「人材育成」「業務効率化」「外部人材活用」という4つの視点から、具体的な施策を解説します。
①働き方改革や評価、人事制度の見直し
企業が優秀な人材を確保するためには、特に働き方改革の推進が重要です。具体的には、フレックスタイム制やテレワークの導入などの柔軟な勤務体制の整備、残業時間の削減、有給休暇の取得促進などが挙げられます。
さらに、成果に応じた公平な評価制度の構築やキャリアパスの明確化も不可欠です。近年、多様な働き方を認める企業が増えており、育児や介護との両立支援制度の充実、副業、兼業の許可などが進められています。
こうした取り組みにより企業の魅力が向上し、新規採用の促進や離職率の低下が期待できます。
②リカレント教育やリスキリングの導入
デジタル化が進む現代では、リカレント教育やリスキリングを通じた従業員の継続的なスキルアップが企業の競争力を左右します。そのため、eラーニングやオンライン研修など、時間や場所を選ばず学べる環境の整備が重要です。特に近年は、従業員のAIやデータ分析などのデジタルスキルを習得するためのリスキリングを支援する企業が増えてきています。
また、業務に直結する資格取得支援や、外部セミナーへの参加費用補助なども効果的です。こうしたリカレント教育の機会を提供することで、従業員の市場価値向上と企業の人材競争力の強化を同時に高められます。
さらに、社内の熟練社員によるメンター制度を導入し、技術や知識の継承を促進する企業も増えています。このように、従来の座学中心の研修に加えて実践的なOJTと組み合わせたリカレント教育やリスキリングを導入することで、より効果的な人材育成が可能です。
③業務フローの見直しなど業務効率化を図る
生産性向上のためには、既存の業務プロセスの抜本的な見直しが求められます。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAIなどのテクノロジーを活用し定型業務を自動化すると、人材を付加価値の高い業務にシフトさせることが可能です。
また、会議のオンライン化や社内コミュニケーションツールの導入により、業務効率が大幅に改善された事例も多くあります。さらに、異なる部署から人材を集めてプロジェクトチームを編成して業務の重複や無駄を洗い出すことで、より効率的な組織体制を構築できます。
特に大切なのは、現場の声に耳を傾け実際の業務に即した改善を行うことです。トップダウンによる一方的な効率化ではなく、従業員との対話を通じて段階的に改善を進めることで、持続的な生産性向上につながります。
④外部人材の活用
人材不足を補う方法として、外部人材の活用が有効です。フリーランスや副業人材を活用することで、専門性の高い業務を任せられます。また、シニア層や女性など、多様な人材を活用することも有効です。
特に経験豊富なシニア人材は、若手の育成や技術継承の面でも大きな戦力になります。さらに、業務の一部をアウトソーシングすることで、コア業務に人材を集中させられます。
ただし、外部人材の活用には適切なマネジメントが不可欠です。具体的な進め方や効果的な活用方法については、フリーランスや副業人材の活用を支援する専門サービスに相談するのも良いでしょう。
その中でも、実績豊富な「フリーコンサルタント.jp」は、多様な専門人材とのマッチングを強みとし、多くの企業で導入が進んでいます。外部人材の活用を検討している企業におすすめのサービスです。
6.人手不足解消の成功事例10選|経済産業省レポートを解説
経済産業省では、人手不足解消の成功事例をまとめたレポートがあります。
ここでは、その成功事例を10件厳選してご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
【参考】経済産業省「中小企業・小規模事業者の人手不足対応事例集」
事例① 働きやすい職場づくり|株式会社minitts
株式会社minittsは、飲食業界の深刻な人手不足に対応するため、育児と仕事の両立を支援する制度を整備しました。飲食業界は、長時間労働かつ過酷な労働環境といったイメージによって、なかなか人手が集まらないことが問題であり、定着もしづらいことが業界の課題でした。
株式会社minittsの代表者の思いとしては、そんな環境下で育児と仕事の両立を従業員ができるイメージが湧かない、と自ら課題として危機感を抱いており、実際に働きやすさの改善に向けて施策を検討・着手まで実現しました。
一例として、まずはランチタイム100食限定とするシステムを導入することで、業務効率化と勤務時間の固定化を実現しました(就業時間は9~18時、残業なし)。
基本的に残業や長時間勤務が当たり前の業界の中、勤務時間が固定化されていることは珍しい点から、次第にこの働き方に注目する人が増え、他の飲食店で働いていた従業員がminittsへ応募してくるなど、労働環境に共感した人たちが自ら勤務を望むような変化が現れたことも特筆すべき点と言えるでしょう。
さらに、社員の有給休暇の完全消化制度やフレックスタイム制、出産後の復職支援などあらゆる方向から働きやすさを追求したことで、結果として女性従業員の定着率向上に成功しました。また、現在ではインバウンド効果によって増え続ける、外国人観光客対応のための資格取得支援も行い、売上向上に貢献されています。
事例② 女性の採用促進|コーナン建設株式会社
コーナン建設株式会社は、女性の採用促進を通じて人手不足を解消しています。
1986年の男女雇用機会均等法施行を契機に、大卒女性の採用を開始し、女性技術職を導入しましたが、当初はそれでもなお女性の早期離職が続いていました。
そのような中、諦めずに継続的に女性を採用した結果、徐々に社内に女性を受け入れる風土が醸成され、結果として現在では女性管理職も誕生しています。
さらに特徴的なのは、女性を受け入れる部門を拡大し、より活躍の場を広めていった点です。通常なら、すぐに辞めていく女性社員を受け入れる部門は限定しがちな傾向がありますが、コーナン建設の場合は男性との区別なく、多くの経験を社員に与え、かつ育児にも専念できる時短制度を同時に設けていました。
ですから、正式に復職した後でも特に活かせる専門性を鍛え上げる環境を用意していたので、長期目線で考えれば結果として会社に貢献できる人材を増やす効果があったのです。
また、育児短時間勤務制度の導入や再雇用制度により、女性の育休後の復職促進にも効果がありました。その結果、専門資格を持つ女性社員が増え、定着率が向上するなど、今では女性が活躍する土壌を形成したロールモデルとして、企業の社会的立ち位置を確立しています。
事例③ 多能工化推進|株式会社いせん(越後湯澤HATAGO井仙)
株式会社いせんは、慢性的な人手不足の中で従業員が無理なく働ける職場を目指し、多能工化を推進しました。背景として、元々この企業の理念として「旅籠三輪書」が掲げられています。これは、お客様が満足し、社員も生きがいを持って働く、さらにそれを支える企業や地域も同時に発展していくという考え方です。
こうした考え方から、従業員が生き生きと働けるよう、本業の旅館業だけでなく、飲食業、物販業、旅行業、製造業など多岐にわたる事業を展開し、従業員が多様な働き方を選べる環境を整備したのです。
また、「組織力向上研修」や「リーダー研修」、「キャリアアッププログラム」など、教育プログラムを充実させることで、社員のスキル向上を図りました。
これら取り組みにより、売上と従業員数が10年間で3倍に成長し、事業の枠を取り払ったビジネス形態により、「旅館は地域のショールーム」であるという新たな定義を発信することで、地域貢献も積極的に行っています。
事例④ 主婦・シニアの採用|有限会社有吉農園
有限会社有吉農園は、農園特有の、冬は仕事量が少ないが春から秋にかけて仕事量が多くなる働き方に適応してくれる、かつ長期間で働いてくれる人材採用に非常に苦労していました。さらには特に正社員の若い人材採用はなかなか集まらないため、シニア採用へと踏み切ったのです。
シニアで仕事を探している方は多いですが、他社でなかなか仕事が見つけられない方も多いため、仕事を見つけられるだけでも、有り難く感じてくれる人が実は多いのがこのシニア市場です。また仕事以外の時間を大切にする、体力が2時間程度なら続くといった特性を考慮し、午前・午後それぞれ4時間勤務としたことも効率的な作業を行う上で効果的だったということが判明しました。
シニア層以外でも、こうした時短勤務と相関性の高い、子育て中の女性従業員には9時~15時の時短勤務で採用することで、定着して働いてくれる人も見つけやすくなりました。
その結果、シニアの採用は10名に達し、仕事の引き合いも増え、事業の安定化につながったのです。一見盲点に思えるシニア、時短採用の効果を最大限に発揮した成功例と言えるでしょう。
事例⑤ 新事業の人材確保|宇都宮工業株式会社
宇都宮工業株式会社は、新たな事業領域への進出に伴い、新たな人員を確保するために採用方法を工夫し、成功を収めました。
特に、新卒工学部系人材の採用は当初どのように行えば良いのか試行錯誤を繰り返していたものの、結果として自分のアイデアが形になる、という住宅関連製品の開発業務の魅力を強調することで、新卒人材確保につなげられるようになったといいます。
さらに、人手が必要な部品組付けラインには多くの女性社員の採用と配置を行う工夫で、人手不足の解消への道を切り開きました。また積極的に残業したい人、そうでない人とで、あらかじめ社員の希望を聞いておくことで、作業時間に応じた配置計画を行うことで、双方にとってメリットのある業務体型を確立したことも大きな変化と言えるでしょう。また、高齢者の技能を活かす「大番頭制度」を導入し、高齢になってもスキルの高い社員を引き続き採用できるようになりました。
これらの取り組みの結果、売上の伸張につながり、社員の家族や親戚からの紹介による入社も増加しています。
事例⑥ 作業環境の改善|株式会社西原屋
社員食堂の運営や弁当の仕立て・販売事業を行う株式会社西原屋は、高齢化による現場従業員の体力低下、また運営場所が散在しており、現場リーダー育成に課題がありました。
特に体力勝負である仕出し事業は、やはり現場スタッフの体への負担が高く、今後の仕事の継続に対し悲観的な声が寄せられるようになりました。
そこで従業員離れを防ぐ施策として、調理台の高さを低くし、作業現場の照度を上げるなど、高齢者でも働きやすいように調理現場を改装する他、床が滑らないような床材や履物に替えることで、能率を落とさずに安全に働ける環境を整備しました。
さらに現場リーダー不足の課題に対しては、「店長制度」を導入し、現場のリーダーを日常的に育成するシステムを構築することで、意欲のある者に学習の機会を与え、店長への道を後押ししています。定期的な店長会議を開催し、各現場における課題を共同で解決する課題解決型の事業モデルの構築、また高齢者の柔軟な勤務体系を確立するなど、今ではさまざまな年齢層、また高齢の店長でも活躍しています。
事例⑦ 出産後の復職支援|株式会社ビック・ママ
株式会社ビック・ママは、女性社員の出産後の復職を支援するための体制整備を進めています。女性社員のインフラ整備を行った結果、離職率が低下し、出産後の復職率が向上しました。
同社は特に新卒採用第1号の女性社員が出産を機に退職した際、大きな痛手を受けましたが、この経験が改善を進めるきっかけとなったのです。
そこで、従業員のキャリアや考え方に焦点を当てた採用活動を行い、在宅勤務制度や教育システムを導入、さらに仙台本社近くに保育園を開設するなど、復職支援を強化しました。これにより、毎年20〜30人程度の技術職の採用に成功し、女性社員の定着率も向上しています。
結婚や出産、育児をしながらでも十分に社員が活躍できる体制づくりを強化したことで、結果として、その姿勢に共感してくれる社員の獲得もしやすくなるなど、働き方体制作りはブランディング観点からも効果的と言えるでしょう。
事例⑧ テレワークの導入|兵庫ベンダ工業株式会社
兵庫ベンダ工業株式会社は、社員の定着率向上と人材確保のために、テレワークの導入と子供手当の拡充を行いました。
地方にあるため、優秀な人材の採用が困難であり、また採用した社員が3年ほどで辞めてしまうことが課題でした。そこで、テレワークを導入することで本社近隣地以外の人材を採用し、育児や介護離職の防止に努めました。
さらに、従来の家族手当に加えて「育児教育手当制度」を導入し、子供の課外活動に対する手当を支給しています。結果として子育て支援企業であることがPRポイントとしても社会に認知されるようになるなど、こうした取り組みは企業イメージの向上にも大きく貢献することが証明されました。
これらにより、社員の働きやすさが向上し、優秀な社員の採用と定着が実現しました。
また、IoTやAIを活用して工場内の効率的な管理を行い、社員の業務をサポートすることにより、従業員満足度も高まっています。ポイントとしては、従業員の業務支援という目的であることを事前に周知し、雇用削減の目的ではないことを伝えたことも注目すべき点です。
このような、テクノロジーを活かし効率的な職場環境を整えたことで、東京在住の優秀な社員の目に留まり、当初は不可能であった人材採用状況にも大きな変化が現れたのです。
事例⑨ 高齢者の技能承継|株式会社潮技術コンサルタント
株式会社潮技術コンサルタントは、高齢化が進む従業員のスキル継承を重要課題と捉え、高齢者から若年者への技術承継に取り組んでいます。同社では55歳以上の従業員が全体の30.4%を占め、今後も高齢化が進む見込みです。
これを受けて、高齢者が保有する高いスキルの喪失を防ぐため、定年後も勤務延長で年齢の制限なく雇用を継続しました。また高齢者と若手社員がペアを組み、実地での指導や助言を行いながら技術を伝えています。
さらに、高齢者が働きやすい環境を整えるため、駅近くに事務所を移転し、空調や照明の配慮を行ったほか、短時間勤務の導入や曜日選択の柔軟な対応により、高齢者の就労環境の見直しも強化しました。
これらの取り組みは、顧客の信頼感を高めると同時に、知識の継承、高齢者のやりがいを持続させるのに役立っています。
事例⑩ IT駆使による無人化|HILLTOP株式会社
HILLTOP株式会社では、ITの活用により多品種小ロット生産の24時間無人化を実現しました。従来はいわゆる「3K」の鉄工所でしたが、量産型の鉄工所から脱却し、試作開発案件を中心としたビジネスモデルへ転換するため、現副社長が大胆な改革を決断しました。
施策として、自動車関係の下請け業務を一切やめ、借りていた機械設備も返却し、新たな生産モデルを構築しています。また、自社開発の生産管理システム「HILLTOP System」を導入し、職人のノウハウをデータベース化することで、加工技術の標準化に成功しました。
こうした業務をテクノロジー化へ切り替えることにより、大量生産のルーチンワークは機械に任せつつ、従業員の知的労働への後押しをしたのです。今ではシステムエンジニアの定期的な採用と入れ替えを行い、常にイノベーションを生み出す体制を整えています。
このような企業のあり方をテクノロジーを駆使して大胆に改革した結果、若い人材の採用と定着が進み、生産性の向上を達成しています。
7.人手不足を解消するための施策にお悩みの方は「フリーコンサルタント.jp」にご相談ください
人材不足の課題解決に向けて、専門家のアドバイスを活用するのがおすすめです。フリーコンサルタント.jpでは、戦略系コンサルティングファームや大手企業出身の22,500名超のプロフェッショナルが、貴社の人材戦略を支援します。
働き方改革からリスキリング、DX推進まで幅広い専門領域に対応し、企業規模や業界を問わず最適な人材を紹介してくれることに加え、最短即日で対応してもらえるため人材不足を早期に解決できます。
専門コーディネーターが貴社の課題をヒアリングし、最適なソリューションをご提案しますので、まずはお気軽にご相談ください。実際に、多くの企業がフリーコンサルタント.jpを活用し、人材不足を解消して業績向上を達成しています。
3.人手不足解消に関するよくある質問
以下は人手不足解消に役立つ、よくあるご質問について、回答をまとめました。
人手不足解消に役立つ最新技術は?
人手不足解消に役立つ最新技術として、ロボティクスや自動化技術が挙げられます。
特に製造業や物流業界では、ロボットが単純作業を代替することで効率化が進んでおり、人件費の削減にも繋がるでしょう。
また、リモートワークを支えるクラウド技術や、コミュニケーションを円滑にするビデオ会議ツールも重要です。
人手不足解消にAIはどう活用する?
AIは人手不足解消において多方面で活用できます。まず、データ解析を通じて業務の最適化を図り、生産性アップが可能です。
また、カスタマーサポートにおいては、チャットボットが24時間対応し、人的リソースの負担を軽減できます。
人手不足対策に対する政府支援は何がある?
人手不足対策に対する政府の支援は多数あります。例えば、2019年に施行された「働き方改革関連法」に基づく労働時間の短縮や、有給休暇の取得促進が挙げられます。
また、「人材開発支援助成金」や「キャリアアップ助成金」といった補助金制度も提供されており、企業が従業員のスキル向上やキャリア形成を支援するための費用を一部負担しています。
人手不足が深刻な業界は?
人手不足が深刻な業界としては、建設業、介護業界、IT業界、農業、飲食業が挙げられます。
特に介護業界や建設業は高齢化社会に伴い需要が増加しており、若年層の労働力不足が問題となっています。
IT業界も高度な専門知識を必要とするため、技術者の確保が難しい状況です。
業務効率化で注意すべきポイントは?
業務効率化を図る際に注意すべきポイントは、従業員の負担を増やさないことです。
効率化の名の下に過剰な業務を押し付けると、逆に生産性が低下し、モチベーションの低下や離職率の上昇を招く恐れがあります。
適切なツールやシステムを導入し、業務フローを見直すことで、無駄を排除し、労働環境を改善することが重要です。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。本記事では、経済産業省レポートに基づき、人手不足解消の成功事例を10選ご紹介し、お悩み別に検討すべき対策ステップをまとめました。
各企業が実施した具体的な対策やその成果を詳細に解説しましたが、特に次の点が重要です。
- 働きやすい職場づくり
- 女性の採用促進
- 多能工化推進
これらの成功事例を参考に、自社の人手不足解消策を検討し、実践することで、業務効率の向上と従業員の定着率改善を図りましょう。ぜひ、自社の悩みや目的に合った方法を見つけ、効果的に活用してください。
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(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)