「業務委託と人材派遣、どちらを選べば良いのわからない」「自社にとってどちらがメリットが大きいのでしょうか?」そう悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
実は、業務委託と人材派遣の違いは、雇用契約と指揮命令関係にあります。
この記事では、業務委託と人材派遣それぞれの特徴、メリット・デメリットについて詳しく解説します。また、どのような場合にどちらを選択すべきかについても触れていきます。
人材活用戦略の立案や業務効率化を検討している企業の採用担当者は、参考にしてください。
- 人材派遣と業務委託、どちらに外注すべきか悩んでいる
- 人材派遣と業務委託それぞれのメリット・デメリットを知りたい
- 人材派遣と業務委託それぞれの運用時に気をつけるべきポイントが知りたい
1.人材派遣と業務委託の違いをわかりやすく解説
人材派遣と業務委託は契約形態が違うため、業務範囲や費用などが違います。
人材派遣と業務委託は、企業が外部の人材や組織を活用する際によく用いられる手法です。
ここでは、人材派遣と業務委託の主な違いについて、下記の表で解説しています。
項目 | 人材派遣 | 業務委託 |
---|---|---|
契約形態 | 労働者人材派遣契約 | 業務委託契約 |
目的 | 人材が不足している業務を補うための人材確保 | 依頼した業務の遂行・納品 |
業務範囲 | 社員のサポートやアシスタント業務に適する | 社内にノウハウがない専門的な仕事に適する |
指揮命令系統 | 人材派遣先企業(自社)が業務指示を行う | 受託会社が業務指示を行う |
費用 | 一般的に正社員よりも安い | 正社員より高くなる可能性がある |
契約形態
人材派遣と業務委託の違いは、契約形態にあります。
人材派遣の場合「労働者人材派遣契約」が結ばれます。
この契約は、人材派遣元企業と人材派遣先企業の間で締結されます。人材派遣労働者は人材派遣元企業と雇用契約を結び、人材派遣先企業で働くことになります。
一方、業務委託の場合は「業務委託契約」が結ばれます。委託する企業(発注者)と受託する企業または個人(受注者)の間で直接締結されます。
業務範囲
人材派遣と業務委託では、適している業務範囲が異なります。
人材派遣は「労働力の確保」が主な目的です。社員のサポートやアシスタント業務など、既存の業務フローに組み込みやすい作業にぴったりです。
これに対し、業務委託は依頼した業務の「遂行・納品」が目的です。社内にノウハウがない専門的な仕事が良いです。
人手不足の解消が目的なら人材派遣を、専門的なスキルの獲得が目的なら業務委託を検討するといいでしょう。
指揮命令系統
人材派遣と業務委託では、業務遂行における指揮命令系統が異なります。
人材派遣の場合、人材派遣先企業が直接的な指揮命令権を持ちます。
つまり、人材派遣社員は人材派遣先企業の社員と同様に、業務内容や進め方について直接指示を受けます。
一方、業務委託の場合、受託会社または個人が業務指示をおこないます。委託元企業は、業務の最終目標や納期は指定できますが、業務の進め方や具体的な作業内容については受託側に任せます。
人材派遣では日々の業務管理が可能ですが、業務委託では成果物の品質管理が中心となります。
費用
人材派遣と業務委託では、企業にかかる費用の構造や金額に違いがあります。下記の表で、それぞれの特徴を比較します。
項目 | 人材派遣 | 業務委託 |
---|---|---|
費用の傾向 | 一般的に背社員よりも抑えられる | 正社員や人材派遣よりも高額になる可能性がある |
主な費用削減要因 | ・福利厚生費の削減 ・採用コストの削減 |
・福利厚生費の削減 |
費用増加要因 | ・人材派遣元企業のマージン | ・専門性への対価 ・成果物への対価 |
その他の特徴 | 給与のみで比較すると正社員より高くなる場合もある | 必要な時だけ利用可能で、間接的コストも削減できる |
表から、人材派遣は主に人件費の変動費化や間接コストの削減によって費用を抑えられます。一方、業務委託は専門性や成果物の質に応じて費用が変動し、正社員や人材派遣よりも高額になる可能性があります。
企業は、プロジェクトの性質や必要とされるスキルレベル、期間などを考慮し、人材の活用方法を選ぶのが重要です。
短期的なコスト削減だけでなく、長期的な経営戦略や人材育成の観点もふくめて判断するのが、大切でしょう。
人材派遣と業務委託の人件費の違い
人材派遣と業務委託の人件費の違いについてご興味がありますか?
以下の記事では雇用形態別の具体的な人件費の計算方法、違いについて解説しています。人件費についてこれから予算を立てたい、あるいは削減を検討をしている方は、ぜひ以下の記事もご覧ください。
2.企業から見た「人材派遣」のメリットとデメリット
人材派遣は多くの企業で活用されている人材リソース戦略ですが、メリットとデメリットがあります。
ここでは、企業の視点から人材派遣のメリットとデメリットを詳しく解説します。
メリット | 説明 |
---|---|
人材の迅速な確保が可能 | ・急な欠員や繁忙期の人員補強に素早く対応 ・業務の停滞を最小限に抑制 |
採用コストの削減 | ・募集、先行、採用プロセスを派遣会社が実施 ・採用にかかる時間や費用を大幅に削減 |
専門スキルの活用 | ・特定の専門スキルを持つ人材を必要期間だけ活用 ・社内育成に時間やコストがかかるスキルを即戦力として導入 |
デメリット | 説明 | 対処方法 |
---|---|---|
長期的なコスト増大の可能性 | ・派遣料金に派遣会社のマージンが含まれる ・長期間の活用で正社員雇用よりコストが高くなる可能性 |
・定期的なコスト分析の実施 |
企業文化や帰属意識の希薄化 | ・派遣社員は複数職場経験で特定企業への帰属意識が薄い ・チームワークや企業文化の維持が難しくなる可能性 |
・派遣社員も含めた社内コミュニケーションの活性化 ・企業理念や価値観の共有機会の創出 |
労働者派遣法の規制 | ・派遣期間や業務内容に制限あり ・規制遵守の管理コストや抵触リスクの考慮が必要 |
・人事部門による法規制の定期的なチェック ・派遣会社との緊密な連携による法令遵守体制の構築 |
人材派遣の活用を検討する際は、これらのメリットとデメリットを十分に理解し、自社の状況や目的に照らし合わせて判断しましょう。
3.企業から見た「業務委託」のメリットとデメリット
業務委託には、人材派遣と違ったメリットとデメリットがあります。
業務委託は、企業が外部の専門家や企業に特定の業務を依頼する方法で、メリットとデメリットがあります。
それぞれを理解すると、企業は自社のニーズに合った活用方法を選べるでしょう。
メリット | 説明 |
---|---|
高度な専門性の活用 | ・特定分野に精通した専門家や企業のサービスを利用可能 ・社内にないスキルや知識を必要な時に活用 ・高品質な成果物を得られる可能性が向上 |
コストの最適化 | ・必要な業務に対してのみ費用が発生し、固定費を抑制 ・正社員雇用と比べ、福利厚生費や社会保険料などの付随的コストを削減 |
リソースの柔軟な調整 | ・業務量の変動に応じて、委託業務の量や内容を柔軟に調整可能 ・繁忙期や特定プロジェクト期間中だけ必要なリソースを確保 |
デメリット | 説明 | 対処方法 |
---|---|---|
情報セキュリティのリスク | ・社外への業務委託により機密情報の漏洩リスクが上昇 ・適切な情報管理体制の構築や厳密な秘密保持契約の締結が必要 |
・厳格な秘密保持契約の締結 ・アクセス権限の適切な設定 |
品質管理の困難さ | ・委託先の作業プロセスを直接管理できない ・成果物の品質にばらつきが生じる可能性 |
・明確な品質基準の設定 ・委託先との緊密なコミュニケーション |
社内のスキル蓄積の遅れ | ・特定業務の常時外部委託により、社内でのスキルやノウハウ蓄積が困難 ・長期的には企業の競争力低下につながるリスク |
・社内人材の育成計画の策定 ・定期的なナレッジシェアリングセッションの開催 |
業務委託の活用を検討する際は、メリットとデメリットを十分に理解し、自社の状況や目的に照らし合わせて判断する点が重要です。
4.人材派遣と業務委託の注意点
先述したとおり、人材派遣と業務委託は異なり、活用する際には法的および運用面での注意点があります。注意点を理解し、効果的に外部リソースを活用しましょう。
人材派遣活用時の法的・運用時の注意点
人材派遣を活用する際には、以下の点に特に注意が必要です。
受け入れる期間に制限がある
労働者人材派遣法により、人材派遣社員の受け入れ期間に制限が以下の期間、設けられています。
- 事業所単位の期間制限:原則として3年が上限です。ただし、過半数労働組合等からの意見聴取を行えば、さらに3年の延長が可能
- 個人単位の期間制限:同一の組織単位で、同一の人材派遣労働者を受け入れる期間は3年が上限
上記の制限を超えて人材派遣社員を受け入れ続けられません。制限に達する前に、直接雇用への切り替えや業務の再編成などの対応を検討する必要があります。
契約書に記載されていない業務はできない
人材派遣社員に任せる業務は、労働者人材派遣契約書に明確に記載されている必要があります。契約書に記載されていない業務をおこなうのは、法律違反となる可能性があります。
- 業務内容は具体的かつ詳細に記載する必要がある
- 業務内容に変更がある場合は、人材派遣元企業と協議のうえ、契約書を修正する必要がある
二重人材派遣にならないように気をつける
人材派遣を雇う際には、二重人材派遣に気をつけなければなりません。
二重人材派遣とは、人材派遣先企業が受け入れた人材派遣社員を、さらに別の企業に人材派遣するのを指します。労働者人材派遣法で禁止されています。
人材派遣社員を他の事業所や関連会社に出向させる際は、二重人材派遣に該当しないか慎重に確認する必要があります。
業務委託実施における法的・運用時の注意点
業務委託を実施する際には、以下の点に特に注意が必要です。
導入前の費用比較や業務切り分けが必要になる
業務委託を導入する前に、費用や業務の切り分けを検討する必要があります。
社内で実施する場合と比較して、コスト面でメリットがあるかを確認します。
また、委託する業務の範囲を明確に定義し、社内業務との切り分けをしましょう。
導入までの準備期間がある
業務委託の導入には、一定の準備期間が必要です。主な準備事項には以下のようなものがあります。
- 委託する業務の詳細な洗い出しと定義
- 社内の業務フローの見直しと調整
- 情報セキュリティ対策の検討と実施
上記の準備を丁寧におこなうと、円滑な業務委託の導入が可能になります。
偽装請負にならないように気をつける
業務委託をお願いする際には、偽装請負に気をつけなければなりません。
偽装請負とは、実態は労働者人材派遣でありながら、形式上は請負契約を結んでいる状態を指します。これは労働者人材派遣法違反となる可能性があります。
偽装請負を避けるためには、以下の点に注意が必要です。
- 委託先の従業員に対して、直接指揮命令を行わないこと
- 委託業務の遂行に必要な機材や設備は、原則として委託先が用意すること
上記の注意点を十分に理解し、人材派遣と業務委託を効果的に活用しましょう。
5.まとめ
人材派遣は「労働力の提供」を目的とし、業務委託は「特定業務の遂行と成果物の納品」を目的としているため、違いを理解する点が重要です。
企業の状況や目的に応じて、適切な方法を選択することで「人材が足りない」「専門的なスキルが必要」などの課題を解決できます。
しかし、どちらの方法を選択する場合も、労働者人材派遣法や偽装請負の問題など、法令に関わる事項が多く存在します。
法的リスクを適切に管理し、効果的に外部リソースを活用するためには、専門的な知識が必要になる場面も多いでしょう。
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(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)