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最終更新日:2026.10.28
新規事業

新規事業がうまくいかない8つの原因|立て直し方と撤退判断まで解説

「新規事業を立ち上げたものの顧客が増えない」「想定より売上が伸びない」「社内では商品・営業・体制のどこに問題があるのか意見が分かれている」。このように、新規事業がうまくいかず、何から見直すべきか分からなくなっている企業は少なくありません。

新規事業がうまくいかない原因は、アイデアや商品そのものだけではありません。顧客ニーズの検証不足、競合との差別化、KPIや撤退基準、意思決定の仕組み、推進人材など、「事業の仮説」と「事業を育てる組織」の両方に原因が潜んでいる可能性があります。

また、同じ「売上が伸びない」という状態でも、顧客検証の途中なのか、事業化後なのかによって見直すべきポイントは異なります。そのため、原因を一つずつ確認するだけでなく、自社が現在どのフェーズにいて、どこで詰まっているのかを切り分けることが重要です。

本記事では、新規事業の成功率や失敗の兆候を確認したうえで、うまくいかない8つの原因を解説します。さらに、症状別・フェーズ別の原因診断、立て直しの5ステップ、継続・ピボット・撤退の判断基準、推進人材の確保方法まで紹介します。新規事業を立て直す際の判断材料として参考にしてください。

新規事業はどのくらいうまくいかない?成功率と失敗の兆候

新規事業では、既存事業のように顧客・商品・販売方法が確立されていません。そのため、最初の仮説どおりに事業が進まないこと自体は珍しくなく、検証と修正を繰り返しながら事業を形にしていく必要があります。

まずは調査データから新規事業の成功率を確認したうえで、「このまま進めると危ない」と判断するための兆候を整理します。

調査データで見る新規事業の成功率

パーソル総合研究所が、従業員300名以上の企業で新規事業開発に携わる担当者1,800名を対象に行った調査では、自社の新規事業開発が「成功している」と回答した割合は30.6%でした。一方、「成功に至っていない」は36.4%となっています。

同調査では、新規事業開発における組織マネジメント上の課題として、「担い手となる人材の確保」が38.9%、「知識・ノウハウ不足」が38.6%と上位でした。さらに、意思決定の遅さや、新規事業に適さない評価制度なども課題として挙げられています。

出典:パーソル総合研究所「企業の新規事業開発における組織・人材要因に関する調査」

また、PwCコンサルティングの「新規事業開発の取り組みに関する実態調査2025年」では、1件でも投資回収まで到達した新規事業案件を持つ「成功企業」は全体の約2割でした。主力事業化まで進んだ企業は1割未満とされており、新規事業を立ち上げるだけでなく、継続的な事業として成長させる難しさが分かります。

出典:PwCコンサルティング「新規事業開発の取り組みに関する実態調査2025年」

なお、2つの調査では「成功」の定義が異なります。パーソル総合研究所は担当者による成功度の回答、PwCは投資回収まで到達したかどうかを基準としているため、数値を単純に比較することはできません。

重要なのは、新規事業はアイデアを立ち上げれば成功するものではなく、顧客検証・事業化・投資回収・拡大と複数の壁を越えていく必要があるという点です。

早めに気づきたい「うまくいかない兆候」

新規事業の失敗は、突然起こるとは限りません。売上が大きく落ち込む前から、顧客の反応やプロジェクトの進み方に兆候が現れる場合があります。

たとえば、以下のような状態が続いている場合は、現在の進め方を一度見直した方がよいでしょう。

  • 顧客から好意的な反応は得られるものの、有料契約につながらない
  • 機能追加や仕様変更が何度も発生している
  • 当初より開発費・人件費などの予算消化が早い
  • 社内承認に時間がかかり、検証をなかなか実施できない
  • 責任者によって事業の目的や優先順位の説明が異なる
  • 初期顧客は獲得できても、継続利用されない
  • 担当者の兼務が多く、新規事業の業務が後回しになる
  • 「いつまで続けるのか」「何を達成すれば次へ進むのか」を説明できない

一つ当てはまるだけで失敗と判断する必要はありません。ただし、複数の兆候が同時に発生している場合は、単なる一時的な売上不振ではなく、顧客ニーズやビジネスモデル、組織体制などに根本的な問題がある可能性があります。

「売上が出ていない」という結果だけを見るのではなく、その前段階で何が起きているのかを見ることが、早期の立て直しにつながります。

新規事業がうまくいかない8つの原因

新規事業がうまくいかない原因は、一つとは限りません。顧客ニーズを誤っているケースもあれば、事業自体には可能性があるものの、社内の意思決定や人材不足によって前に進まないケースもあります。

主な原因を8つに分けて確認していきましょう。

①新規事業の目的・全社戦略とのつながりが曖昧

新規事業の目的が曖昧なまま、「何か新しいことを始めよう」という号令だけでスタートすると、テーマや判断軸がぶれやすくなります。

たとえば、あるメンバーは「5年後の収益の柱を作ること」が目的だと考え、別のメンバーは「既存顧客との接点を増やすこと」を重視していると、事業アイデアの評価基準も異なります。その結果、会議のたびに方向性が変わり、検証が進まなくなります。

着手前に、「なぜ自社がこの新規事業を行うのか」「全社戦略のどの課題を解決するのか」「何を実現したら成功なのか」を経営層と担当チームで共有しましょう。

たとえば、「5年後に売上○億円の第二の事業を作る」「既存顧客へ提供できるサービス領域を拡大する」「既存技術を活用して新市場へ参入する」など、目的によって選ぶべきテーマやKPIは変わります。

PwCコンサルティングの調査でも、成功企業では、新規事業を全社戦略の打ち手として位置づけて推進する傾向が見られています。

②顧客ニーズを十分に検証できていない

新規事業で特に注意したいのが、「自社が作りたいもの」と「顧客が必要としているもの」を混同することです。

技術力や既存アセットから事業アイデアを考えること自体は問題ありません。しかし、顧客が本当にその課題を抱えているのか、その課題を解決するために費用を支払う意思があるのかを確認せずに事業化すると、完成後に買い手が見つからない可能性があります。

顧客ヒアリングでは、「このサービスがあったら使いますか」と聞くだけでは不十分です。好意的な回答が得られても、実際に購入するとは限らないためです。

現在どのように課題を解決しているのか、どれだけ時間・費用がかかっているのか、試験導入や有料契約へ進む意思があるのかなど、顧客の意見ではなく、顧客の行動につながる事実を確認しましょう。

③競合との差別化・選ばれる理由が弱い

顧客にニーズがあっても、すでに同じ課題を解決できる商品・サービスが存在する場合があります。その場合、「課題がある」ことを確認しただけでは十分ではありません。

たとえば顧客が業務効率化に困っていても、既存のSaaSやコンサルティングサービスで解決できるのであれば、新しいサービスへ乗り換える理由が必要です。

競合分析では機能や価格だけを比べるのではなく、次の点を確認します。

  • 顧客は現在どの方法で課題を解決しているか
  • 既存の方法にどのような不満があるか
  • 競合サービスでは解決できていないことは何か
  • 自社だから提供できる価値は何か
  • 顧客が既存の方法から乗り換えるだけの理由があるか

「市場があるか」だけでなく、「その市場で自社が選ばれる理由があるか」まで検証することが重要です。

④検証前に作り込み・投資を進めすぎている

顧客ニーズや事業仮説を十分に確認しないまま、完成度の高い商品・サービスを作ろうとすると、多額の開発費と時間がかかります。完成後に仮説が間違っていたと分かっても、投資額が大きいほど方向転換しにくくなります。

そこで活用したいのが、MVP(Minimum Viable Product)です。MVPとは、顧客の反応を確認するために必要な最小限の機能を備えた製品・サービスを指します。

たとえばBtoBサービスであれば、最初からシステムを完成させなくても、提案資料や画面イメージ、手作業を含む簡易サービスなどで顧客の反応を確認できる場合があります。

リーンスタートアップでは、製品を作り、顧客の反応を測定し、得られた結果から学ぶ「Build-Measure-Learn」のサイクルを短く回す考え方が重視されています。

「完成させてから売る」のではなく、「小さく売って確かめながら完成度を高める」ことで、仮説が外れた場合の損失を抑えやすくなります。

出典:The Lean Startup「Methodology」

⑤KPI・継続・撤退の判断基準がない

新規事業では、短期的に売上・利益が出ない期間があります。そのため、既存事業のように「黒字か赤字か」だけで判断すると、将来性のある事業を早く打ち切ったり、反対に見込みの薄い事業を長期間続けたりする可能性があります。

着手時に、少なくとも以下を決めておきましょう。

  • いつ判断するか
  • 何の指標で判断するか
  • どの水準なら継続するか
  • どの水準なら方向転換するか
  • どの状態なら撤退するか

たとえば顧客検証段階では、有料トライアルの件数や顧客インタビューの結果などを確認します。事業化後であれば継続利用率、顧客獲得数、粗利などへ指標を変えます。

段階ごとにKPIを変えることで、「今のフェーズで何を証明すべきか」が明確になります。

⑥社内調整・意思決定に時間がかかる

新規事業では、小さな仮説検証を何度も繰り返す必要があります。しかし、既存事業と同じ稟議・承認プロセスを適用すると、小規模なテストを行うだけでも数週間かかる場合があります。

検証のたびに事業計画書を作り、複数部署の承認を取り、経営会議まで待つような体制では、検証サイクルを速く回せません。

パーソル総合研究所の調査でも、「意思決定の迅速さ」は新規事業の成功との関連が強い組織マネジメント要因として示されています。

対策として、一定額までの検証予算や、一定範囲の仕様変更については新規事業チームへ決裁権を委譲する方法があります。経営層は日々の検証すべてを承認するのではなく、大きな投資や継続・撤退など節目の判断を担います。

⑦予算・評価制度が新規事業に合っていない

既存事業と新規事業では、評価すべき成果が異なります。すでに顧客とビジネスモデルが確立している既存事業では、売上・利益を重視できますが、新規事業の初期段階では、そもそも顧客が存在するのかを確認している途中です。

それにもかかわらず、初年度から既存事業と同程度の売上・利益を求めると、担当者は失敗する可能性のある検証を避けるようになります。

評価指標は、たとえば次のようにフェーズごとに変えます。

フェーズ 主な評価対象
構想・顧客検証 仮説検証数、顧客ヒアリング、有料検証など
事業化 顧客数、継続利用率、顧客単価など
拡大 売上、利益、顧客獲得効率など

予算についても、最初から大きな金額を配分するのではなく、検証段階ごとに追加投資する方法があります。仮説が成立したことを確認してから投資額を増やすことで、リスクを抑えながら事業を育てられます。

⑧推進人材・ノウハウ・専任体制が不足している

既存事業で成果を上げた社員が、新規事業でも同じように成果を出せるとは限りません。既存事業では確立された顧客・商品・業務プロセスを効率的に運営する能力が求められますが、新規事業では、正解がない状態から仮説を立てて検証する能力が必要です。

パーソル総合研究所の調査では、新規事業開発における組織マネジメント上の課題として「担い手となる人材の確保」が38.9%、「知識・ノウハウ不足」が38.6%と上位になっています。

さらに、担当者が既存事業と兼務していると、既存業務が忙しくなった際に新規事業が後回しになりやすくなります。定期的な人事異動によって責任者が変われば、これまでの顧客ヒアリングや検証結果が引き継がれず、同じ検証を繰り返すこともあります。

少なくとも新規事業の責任者は一定期間コミットできる体制を作り、検証した仮説・結果・意思決定の理由を組織に残すことが重要です。

【症状別】新規事業がうまくいかない原因の見分け方

原因を特定するときは、現在起きている「症状」から逆算すると整理しやすくなります。ここでは、新規事業でよく見られる5つの症状から、疑うべき原因を整理します。

症状 主に疑う原因
顧客が増えない・売上が伸びない 顧客ニーズ、差別化、顧客獲得方法
初期顧客は獲得できるが継続されない 提供価値、PMF、価格・使い勝手
仕様変更・手戻りが多い 顧客検証不足、作り込みすぎ
社内承認・関係部署との調整で止まる 意思決定、目的共有、権限設計
予算・スケジュールを超過する 検証設計、作り込み、優先順位

顧客が増えない・売上が伸びない

商品・サービスをリリースしたものの顧客が増えない場合、最初に確認したいのは顧客ニーズと差別化です。

「営業力が足りない」と考えて営業人数や広告費を増やす前に、そもそも顧客が強く感じている課題なのか、既存の方法より自社サービスを選ぶ理由があるのかを確認します。

商談化するものの成約しない場合は、失注理由を整理しましょう。「予算がない」「今の方法で困っていない」「競合の方が使いやすい」などの理由から、ニーズ・価格・差別化のどこに問題があるかを切り分けます。

初期顧客は獲得できるが継続されない

最初の顧客は獲得できるものの解約が多い場合、営業ではなく商品・提供価値に問題がある可能性があります。

この段階では、PMF(Product Market Fit)に近づいているかを確認します。PMFとは、顧客が存在する市場に対して、そのニーズを満たせる商品・サービスを提供できている状態を指します。

たとえば、顧客がサービスを継続的に利用しているか、利用頻度が高まっているか、他社へ紹介しているかなどを確認します。

顧客が一度試したものの利用しなくなる場合は、機能追加の前に「どの価値を期待して導入し、なぜ継続しなかったのか」を聞くことが重要です。

参考:Marc Andreessen「The only thing that matters」

仕様変更・手戻りが多い

開発中に仕様変更が何度も発生する場合は、作り始める前の顧客検証が不足している可能性があります。

もちろん、顧客の反応を受けて仕様を変更すること自体は新規事業では必要です。しかし、大きな機能を作った後で「そもそも顧客が求めていなかった」と分かり、ゼロから作り直す状態が続くのであれば、検証方法を見直す必要があります。

まず画面イメージや試作品で顧客の反応を確認し、重要な仮説から順番に検証しましょう。確度の低い仮説ほど、投資額を小さくして確認することがポイントです。

社内承認・関係部署との調整で止まる

顧客検証や開発より社内説明に時間を使っている場合は、意思決定・権限設計に問題がある可能性があります。

新規事業は営業・開発・法務・情報システムなど複数部門と関わることが多く、それぞれが既存事業の基準だけで判断すると、検証が止まりやすくなります。

経営層にスポンサーを置き、関係部署へ新規事業の目的を共有するとともに、チーム内で判断できる予算・範囲をあらかじめ決めておきましょう。

予算・スケジュールを超過している

想定より費用や期間が膨らんでいる場合は、開発範囲が広がり続けていないか確認します。「せっかく作るならこの機能も必要」と追加を繰り返すと、顧客に価値があるか分からない機能へ投資することになります。

まず「今回の検証で何を確かめたいのか」を明確にし、その仮説を確認するために最低限必要な開発範囲まで絞り込みます。

予算超過を単なるプロジェクト管理の問題と捉えず、検証すべき仮説が絞れていないことの結果ではないかという視点で確認することが重要です。

【フェーズ別】新規事業がうまくいかない原因を診断する

新規事業では、フェーズによって確認すべき仮説が異なります。同じ「売れていない」という状態でも、顧客検証中なら必ずしも問題ではありません。一方、事業化後も顧客が定着しなければ、提供価値を見直す必要があります。

ここでは「構想」「顧客検証」「事業化」「拡大」の4段階に分けて確認します。

フェーズ 主な症状 確認するポイント
構想 テーマ・顧客・課題が決まらない 目的、ターゲット、解決課題
顧客検証 反応は良いが購入されない 課題の強さ、支払い意思、差別化
事業化 顧客が継続せず売上が伸びない PMF、価格、提供方法
拡大 売上は伸びるが組織・収益が追いつかない 収益性、業務プロセス、人材

構想段階|顧客・課題・目的が決まらない

アイデア会議を繰り返しているもののテーマを絞れない場合は、構想段階で詰まっています。

原因として考えられるのは、新規事業の目的や全社戦略とのつながりが曖昧なことです。「市場規模が大きいもの」「自社技術を使えるもの」「社長が興味を持ったもの」など評価軸が混在していると、どのアイデアを優先すべきか判断できません。

まず「どの顧客の、どの課題を、自社のどの強みで解決するのか」を一文で説明できる状態を目指します。

顧客検証段階|反応は良いが購入されない

ヒアリングでは「面白い」「あったら使いたい」と言われるものの、有料契約につながらない場合は顧客検証段階で止まっています。

この場合、顧客が課題を感じていても、お金を払って解決するほど強い課題ではない可能性があります。また、競合・既存手段から切り替える理由が不足している可能性もあります。

「良いですね」という感想ではなく、「試験導入する」「有料でも利用する」といった行動を確認することが重要です。

事業を開始してから1年以上経っていても、有料で継続利用する顧客を確認できていなければ、実態としてはまだ顧客検証段階にいる可能性があります。

事業化段階|顧客が継続せず売上が伸びない

有料顧客を獲得できたものの継続利用が増えず、売上が安定しない場合は、PMFに達しているかを確認します。

顧客がどの機能・価値を評価しているのか、継続する顧客と解約する顧客にどのような違いがあるのかを分析します。ターゲットが広すぎる場合は、特に継続率が高い顧客層へ絞ることも選択肢です。

この段階で顧客獲得のために広告費や営業人員だけを増やすと、PMFに達していないサービスを拡大して損失が増える可能性があります。まず継続利用される提供価値を確立することを優先しましょう。

拡大段階|売上は伸びても組織・収益が追いつかない

顧客が増え始めると、別の課題が発生します。責任者一人に顧客対応が集中する、案件ごとに個別対応が増える、売上は伸びているのに利益が残らない、といった状態です。

この段階では、「売れるかどうか」から「再現性のある事業として拡大できるか」へ確認ポイントを変えます。

営業プロセスの標準化、人材採用、業務システムの整備、原価・価格の見直しなどを進め、特定の担当者の力に頼らなくても顧客獲得・サービス提供が回る状態を作る必要があります。

うまくいかない新規事業を立て直す5ステップ

新規事業がうまくいかなくなると、「商品を改善する」「営業を増やす」「担当者を変更する」など個別の対策から始めがちです。しかし、原因を特定しないまま施策を増やすと、さらに時間・予算を使ってしまう可能性があります。

立て直しは、次の5ステップで進めると整理しやすくなります。

  1. 現在のフェーズとボトルネックを特定する
  2. 顧客の事実から仮説を検証し直す
  3. 提供価値・差別化・ビジネスモデルを見直す
  4. KPIと継続・ピボット・撤退基準を決める
  5. 意思決定・予算・推進体制を整える

①現在のフェーズとボトルネックを特定する

最初に、自社が構想・顧客検証・事業化・拡大のどこにいるのかを整理します。計画上のフェーズではなく、「何が事実として確認できているか」で判断しましょう。

たとえば会社では「事業化フェーズ」と呼んでいても、まだ有料利用する顧客がほとんどいないのであれば、顧客検証へ戻って確認した方がよい可能性があります。

そのうえで、「顧客ニーズ」「商品・差別化」「ビジネスモデル」「意思決定」「人材・体制」のどこが最も大きなボトルネックになっているかを特定します。

②顧客の事実から仮説を検証し直す

次に、社内の意見ではなく顧客の事実を集めます。顧客インタビューだけでなく、商談履歴、失注理由、試験導入、有料契約、継続率などを確認します。

特に、「欲しいと言った顧客数」よりも「実際に行動した顧客数」を重視します。有料トライアルへ進んだ、社内稟議を始めた、契約を継続した、といった行動はニーズの強さを判断する材料になります。

仮説と異なる結果が出た場合は、顧客・課題・提供価値のどこが間違っていたのかを整理します。

③提供価値・差別化・ビジネスモデルを見直す

顧客ニーズが確認できたら、「自社がどのような価値を提供するのか」を改めて整理します。

たとえば、「業務効率を上げるサービス」という抽象的な説明ではなく、「月20時間かかっている○○業務を5時間まで削減する」のように、顧客が得られる変化を具体化します。

同時に、競合・既存手段との違い、価格、販売方法、提供コストなども確認します。顧客から高く評価されても、提供するほど赤字になるビジネスモデルでは事業として継続できません。

④KPIと継続・ピボット・撤退基準を決める

立て直し後に「また何となく続ける」状態へ戻らないよう、次回の判断時期と指標を決めます。

たとえば、今後6カ月を検証期間とし、「有料顧客10社」「継続利用率○%」など、現在のフェーズに合った指標を設定します。

さらに、数字が達成できなかった場合も事前に決めます。「顧客層を変更して再検証する」「提供方法を変更する」「一定条件なら撤退する」といった選択肢を経営層と共有しておけば、感情ではなく検証結果をもとに判断できます。

⑤意思決定・予算・推進体制を整える

最後に、立て直した方針を実行できる体制を整えます。

具体的には、誰が責任者なのか、どこまで担当チームで決裁できるのか、検証予算はいくらか、経営層がいつレビューするのかを明確にします。

社内に新規事業経験者がいない場合は、この段階で外部人材を活用する選択肢もあります。ただし、外部へ丸投げするのではなく、社内責任者と一緒に進め、検証方法や意思決定のノウハウを残すことが重要です。

新規事業を続ける・方向転換する・撤退する判断基準

新規事業が計画どおり進まないとき、「もう少し続ければ伸びるのか」「方向転換すべきか」「撤退すべきか」という判断が必要になります。

このとき、これまで使った費用や担当者の熱意だけで判断しないことが重要です。これまでの検証によって、重要な事業仮説がどこまで確認できたかを基準に考えます。

継続すべきケース

想定していた仮説が少しずつ確認できており、KPIにも改善が見られる場合は、基本的に継続を検討します。

たとえば、有料顧客はまだ少ないものの、ヒアリングを重ねるほどターゲットが明確になっている、試験導入から本契約への転換率が上がっている、継続利用する顧客が増えている、といった状態です。

売上の絶対額だけではなく、検証を重ねることで「成功するための条件」が分かってきているかを確認しましょう。

ピボットを検討すべきケース

顧客の課題自体は確認できているものの、現在の商品・ターゲット・価格などでは十分な成果が出ない場合は、ピボットを検討します。

ピボットとは、それまでの検証結果を活かしながら、事業の重要な前提を変更することです。たとえば個人向けで始めたサービスを法人向けへ変更する、製品販売から月額サービスへ変更する、幅広い顧客を狙うのではなく特定業界へ絞る、といった方向転換が考えられます。

重要なのは、成果が出ないたびに思いつきで方向転換することではありません。どの仮説が否定され、どの仮説は成立しているのかを整理したうえで変更します。

撤退を検討すべきケース

複数回検証しても顧客の強い課題を確認できない、支払い意思のある顧客が見つからない、事業として成立する収益構造を作れないといった場合は、撤退も選択肢になります。

また、事業として一定のニーズがあっても、自社の全社戦略と合わなくなった場合や、必要な投資額が想定を大幅に上回り、ほかの事業へ投資した方が合理的な場合もあります。

撤退は担当者の失敗を意味するものではありません。検証結果を記録し、「どの仮説が外れたのか」「次に同じテーマへ取り組むなら何を変えるのか」を組織に残すことで、次の新規事業へ学びを活かせます。

判断時に整理したい3つの項目

  • どの仮説まで確認できているか
  • 次の検証で何を確認するのか
  • いつ・どの指標で継続/ピボット/撤退を判断するのか

新規事業の推進人材が足りない場合の確保方法

新規事業では、既存事業とは異なる経験・スキルが必要になります。社内に立ち上げ経験者がいない場合は、社内育成だけでなく、中途採用や外部のプロ人材も含めて確保方法を検討しましょう。

社内育成・中途採用・外部プロ人材を比較

項目 社内育成 中途採用 外部プロ人材
立ち上がり 時間がかかる 採用期間が必要 比較的早い
強み 自社事業・組織を理解している 経験者を長期的に確保できる 必要な経験を期間限定で確保できる
主な費用 人件費・育成費・機会費用 採用費・固定人件費 参画期間・稼働量に応じた費用
ノウハウ 社内に残りやすい 社内に残りやすい 知見移転の設計が必要
向くケース 中長期で新規事業人材を育てたい 継続的に事業を任せたい 今すぐ立て直し・検証を進めたい

必ずしも一つの方法に絞る必要はありません。たとえば立ち上げ初期は外部の経験者と一緒に検証方法・意思決定プロセスを整え、同時に社内担当者へノウハウを移転する方法があります。

短期的な推進力は外部から補い、中長期では社内に新規事業を進められる人材を残すという組み合わせも現実的です。

外部人材を活用する際のポイント

外部のプロ人材を活用する場合は、「新規事業経験者」という条件だけで探さないことが重要です。新規事業はフェーズによって必要な経験が異なるためです。

たとえば顧客検証段階で詰まっているなら、顧客インタビューやMVP検証の経験者が適しています。一方、売上は出ているものの組織が追いついていないなら、事業拡大・組織構築の経験者が必要です。

活用時は、以下の点を整理しておきましょう。

  • 現在どのフェーズで詰まっているか
  • 解決したいボトルネックは何か
  • 外部人材へ任せる範囲はどこまでか
  • 社内側の責任者は誰か
  • どの知識・ノウハウを社内へ残すか

外部人材へ事業を丸投げすると、契約終了後に再び推進できなくなる可能性があります。意思決定や顧客との関係は社内が持ち、外部人材には設計・検証・実行を伴走してもらう形が望ましいでしょう。

新規事業の立て直しは「フリーコンサルタント.jp」へご相談ください

新規事業がうまくいかない原因は、顧客ニーズ、競合との差別化、ビジネスモデルだけでなく、意思決定、評価制度、人材など複数の要因が絡み合っています。

そのため、単に営業を強化したり商品機能を追加したりするのではなく、「現在どのフェーズにいて、どの仮説が成立しておらず、何を優先して立て直すべきか」を整理することが重要です。

しかし、社内に新規事業の立ち上げ・立て直し経験者がいない場合、担当者だけで原因を切り分け、顧客検証から組織体制の見直しまで進めるのは簡単ではありません。

「フリーコンサルタント.jp」では、事業会社やコンサルティングファームなどで実務経験を積んだプロ人材を、必要な期間に応じて活用できます。新規事業の構想、顧客・市場調査、PoC、事業計画、DX、組織立ち上げなど、課題に応じた人材の活用が可能です。

「事業を続けるべきか判断できない」「顧客検証の進め方を見直したい」「推進できる経験者が社内にいない」といった場合は、まず現在の課題をご相談ください。

支援事例①|大手通信キャリア企業:デジタル活用推進組織をゼロから立ち上げ

大手通信キャリア企業では、デジタル活用による業務効率化を進めるため、CoE(Center of Excellence)組織の立ち上げを計画していました。しかし、デジタル領域の知識と組織立ち上げの経験をあわせ持つ人材が社内に不足していました。

当時の課題 ・デジタル領域の知見と組織立ち上げ経験を持つ人材が不足
・業務効率化ツールの開発・運用体制をゼロから構築する必要があった
実施したこと ・CoEの全体設計から組織・運用構築、実運用まで伴走
・各事業部への課題ヒアリングを実施
・社員が自走できるよう知見を移転

その結果、組織立ち上げ前と比べて業務工数を約25%削減しました。社員が主体的に運用できる体制も整い、外部人材への依存から段階的に脱却しています。

支援事例②|大手飲食業界企業:PoCを経て需要予測AIを本格運用

200店舗以上を展開する大手飲食企業では、約400品目の発注を店舗担当者の経験と勘に頼っていました。データ分析・AI活用の経験者も社内に不足しており、どのように本格運用へ進めるかが課題でした。

当時の課題 ・データサイエンティストなどの専門人材が不足
・店舗ごとの需要予測が担当者の経験に依存
・AI活用をどのように進めるべきか分からない
実施したこと ・店舗ごとの特徴を踏まえて必要なデータ・変数を整理
・PoCで需要予測の効果を小規模に検証
・検証結果を踏まえてAIモデルを構築・本格運用

本格開発の前にPoCで効果を確認し、その結果を踏まえて投資を拡大した点は、新規事業における「小さく検証し、結果を確認してから次の投資へ進む」という考え方にも通じます。

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まとめ

新規事業がうまくいかない原因は、商品・アイデアだけにあるとは限りません。目的・顧客ニーズ・差別化・検証方法・KPI・意思決定・評価制度・推進体制など、複数の要素が関係しています。

そのため、「売上が伸びないから営業を増やす」といった対症療法から始めるのではなく、まず現在の症状とフェーズから根本原因を特定することが重要です。

立て直す際は、次の順番で整理してみてください。

  1. 現在のフェーズとボトルネックを特定する
  2. 顧客の事実から仮説を検証し直す
  3. 提供価値・差別化・ビジネスモデルを見直す
  4. KPIと継続・ピボット・撤退基準を決める
  5. 意思決定・予算・推進体制を整える

重要なのは、「うまくいかない=失敗」と捉えるのではなく、どの仮説が成立していないのかを明らかにし、継続・方向転換・撤退のいずれかを判断できる状態にすることです。

まずは、「現在どのフェーズにいるのか」「今起きている症状は何か」「次に何を検証すべきか」の3点を整理するところから始めてみてください。

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

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