社会や環境が目まぐるしく変化し続ける現代において、新規事業を立ち上げることは重要です。新規事業を始めることに対してリスクを感じるかもしれませんが、新たな収益源を作れたり、人材育成に繋がったりするなどのメリットがあります。そのため、長期的に考えると既存の事業に縋るよりも、リスクを抑えた経営に繋がりやすいと言えるでしょう。
しかし、新規事業は思いつきで始めたところで成功するような、簡単なものではありません。適切な手順を知らないまま新規事業を進めてしまうと、最悪の場合大きな赤字となってしまうでしょう。
そこで本記事では、新規事業の進め方についてわかりやすく解説します。事業の立ち上げを初めて行う人でも失敗しないように、フレームワークや新規事業立ち上げの実例を用いて解説しますので、最後までご覧ください。
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1.新規事業を立ち上げる重要性
新規事業の立ち上げを経験したことがない人にとって、新規事業を立ち上げる重要性があまりわかっていない方も多いのではないでしょうか。新規事業を立ち上げることで得られるメリットは、資産を上手く活用することで収入源が確保できる、他社との競争力の維持など挙げればキリがありません。また、新規事業は既存事業の再構築や進化、新規顧客獲得を狙った役割もあります。
今回は、中でも大きなメリットである以下の2点を解説します。
外部環境に適応しやすく、長期的なリスクヘッジが出来る
AIやIoTなどのデジタル技術の発展によって、ビジネスシーンや消費活動などさまざまな場面で、外部の環境はかつてないスピードで変化し続けています。変化する外部環境に合わせた新規事業を立ち上げることで、時代に合ったニーズを満たせることでしょう。
新規事業立ち上げには労働力に加えて資金も必要になるため、一時的なリスクを感じてしまうかもしれません。しかし、長期的にみて時代に合った事業を開拓することで外部環境へ適応し、自社の競争力を維持または向上できるためリスクヘッジに繋がります。
優秀な人材を育てられる
優秀な人材を育てられるという点でも、新規事業の立ち上げは重要です。
コンセプトやビジョンの設定、ペルソナ分析、アイデア出し、市場調査など、新規事業を立ち上げることで関われる業務は既存の業務と比較にならないほど多いと言えます。そのため、新規事業に若手社員を参画させて、普段経験できないような業務を体験させることで、多くの経験値を手に入れられるでしょう。
2.新規事業を進める前にまずは戦略を考えよう
新規事業を進めるうえで、最初に必要となるのが戦略の検討です。新規事業と一口に言っても、新規事業の目的や企業が目指すゴールによって方向性は変わります。具体的には以下の戦略があります。
【新規事業の戦略】
ここからは、新規事業の3つの戦略を解説します。
戦略タイプ①新規の市場を開拓する
1つ目の戦略は、既成商品を未開拓の市場に展開して成長を狙うタイプで「新市場開拓戦略」と呼ぶこともあります。未開拓の市場でニーズがある商品を新たな市場に展開することで、大きな成果を目指します。
新市場の考え方は大きく2つあり、地理面での新市場とターゲット顧客面での新市場という考え方です。それぞれ下記のような具体例が挙げられます。
新市場の考え方 | 具体例 |
---|---|
地理 |
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ターゲット顧客 |
|
また、商品の提供方法を変革する手法も新市場開拓戦略に含まれます。具体的には、クラウドによってサービスを提供する「XaaS」を導入したり、EC事業により販路を拡大したりすることで、これまでアプローチできなかった顧客への展開が可能です。
「新市場開拓戦略」で成功するポイントとして、市場の十分な理解が挙げられます。顧客ニーズや競合他社、それに対する自社の強みなどを勘案し、勝算があるか判断しなければなりません。情報収集の面から考慮して、既存市場に近い市場を選択するほうがよいでしょう。
戦略タイプ②既存市場で新たな製品やサービスを開発する
2つ目の戦略は、市場は変えずに新たな商品を展開して成長を狙うタイプで「新製品開発戦略」と呼ぶこともあります。既存商品に関連した新商品や、既存商品をアップデートして販売することで、既存顧客や競合他社の顧客取り込みを目指します。
新製品開発戦略は、既存市場からの認知度もあり、製品開発の技術やノウハウがあることで成功の可能性をあげられます。
下記では、新商品開発の例をまとめました。
新商品の方向性 | 具体例 |
---|---|
既存商品に関連 |
|
既存商品のアップデート |
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ちなみに、自社商品に限らず他社商品の改良したものを新商品として販売する場合もあります。
「新商品開発戦略」で成功するポイントとして、消費者のニーズを理解する必要があることが挙げられます。なぜなら、どのような商品が求められているかを調査することで、売上が大きく変わるからです。
そのため、既存市場だと楽観視せず再度マーケット分析を十分に行い、新商品の企画を行っていきましょう。
また、そもそも認知されなければ商品が売れないため、プロモーションも重要です。SNSやWEB広告などオンラインでのプロモーションやオフラインでのイベントなど、顧客の認知度が高める手法も忘れず考えておきましょう。
戦略タイプ③既存事業から転換する
3つ目の戦略は、既存事業の縮小を前提に、新たな市場で新商品を展開して成長を狙うタイプです。「事業転換戦略」と呼ぶこともあります。似た戦略に「多角化戦略」がありますが、既存事業を並存させる多角化戦略に対して、事業転換戦略では既存事業を縮小もしくは廃止します。
事業転換戦略は、新規事業に経営資源を集中できるメリットがある反面、ハイリスク、ハイリターンな戦略といえるでしょう。実際に事業転換戦略で成功した具体例は以下のとおりです。
企業名 | 事業転換 |
---|---|
富士フィルム | カメラフィルム事業から化粧品、衣料品事業へ転換 |
任天堂 | カードゲーム事業からコンピューターゲーム事業へ転換 |
ソフトバンク | パッケージソフト事業からブロードバンド事業へ転換 |
「事業転換戦略」で成功するポイントとして、これまで積み上げてきた強みや知見を活かすことが重要です。
事業転換はリスクが高く、成功までに相当の時間がかかるケースも少なくありません。未知の分野でゼロから始めるより、既存事業で培った資産を活用したほうが低リスクで成功する確率も高まるでしょう。そのうえで、慎重な市場調査に基づき新規事業のコンセプトを決定する必要があります。
3.【7ステップ】新規事業の進め方
新規事業の進め方を、7ステップに分けて解説します。
何から手をつけていいのか全くわからない方は、まずすべきことを細分化して考えてみましょう。
ステップ1.新規事業立ち上げの担当者を決定する
まずは新規事業立ち上げのための担当者を決定しましょう。既に新規事業のアイデアが出ているのであれば、アイデアの発案者を担当者にすることで事業を成功させようという意識にも繋がります。
また、新規事業は片手間で担当できるほど安易なものではありません。そのため、既存の業務は別の方に渡して、新規事業の専任として稼働する方が成功率が上がります。
ステップ2.事業の理念やコンセプト、ビジョンを明確にする
新規事業の担当者が決まったら、次に事業の理念やコンセプト、ビジョンを明確にしましょう。理念やコンセプトを明確にすることで新規事業の大きな軸となり、社内外での情報共有がスムーズかつ的確になります。理念やコンセプト、ビジョンをメンバー全員が正しく理解することで情報伝達がより簡単になり、マーケティングやPR活動を効率的に行うことができるでしょう。
コンセプトやビジョンを明確にしないまま新規事業を始めると、重要な意思決定を行う場面でまとまらず進行速度が遅くなり、競合他社に遅れをとってしまう可能性があります。他社に遅れをとってしまうと、最悪の場合には新規事業自体が頓挫してしまう可能性があるため、新規事業を着実に進めるためにも、あらかじめ事業の理念やコンセプト、ビジョンを明確にして、未来を見据えた事業を行いましょう。
ステップ3.市場調査や事業調査を入念に行う
担当者と事業理念、コンセプト、ビジョンが決定したら、次に行うのが市場調査や事業調査です。
新規事業を成功させるには、市場調査や事業調査を入念に行うことが必要不可欠になります。市場調査では顧客がどのように感じるのか仮説を立てて、インタビューやアンケートを通して情報を集めましょう。
なお、費用がかかりますが、東京商工リサーチや帝国データバンクといった信用調査会社から報告書を購入することで、市場調査の手間が省け、より詳細な質の高いデータが得られます。
また、事業調査として、競合他社や収集したデータを元に市場の特徴やリスク、成長性などを見極めましょう。市場調査や事業調査については、予算や時間を割いて入念に調査する必要がありますが、利用すべきフレームワークについては後ほど解説します。
ステップ4.消費者ニーズを分析・検討する
市場調査や事業調査を行った後は、その結果を元に消費者ニーズを分析、検討しましょう。ターゲットとなる消費者の性別や年齢層、地位、地域、趣味などさまざまな視点から分析していきます。
なお、分析する際は消費者が求めている顕在ニーズのみでなく、その先にある潜在ニーズが何なのかを考えることで、的確にニーズを満たせる事業となるでしょう。分析してターゲットを絞っていくことによって、競合他社の少ない市場になるのです。
ステップ5.事業モデルを検討する
次に、事業モデルの検討を行います。たとえば、下記の項目について検討しましょう。
- アイデアのマネタイズが可能か
- どのような方法でマネタイズするか
- ヒト・モノ・カネがどの程度必要になるか
- 新規事業に活かせるノウハウがあるか
ただし、事業モデルの検討に時間をかけて完璧な状態に仕上げることは、あまり重要ではありません。顧客の声を聞かずに議論を続けるだけでは前に進んでいかないため、あまり時間をかけすぎないようにする意識も大切になります。
ステップ6.事業計画の作成
ステップ5で検討した事業モデルを元に、事業計画を作成しましょう。これまで検討してきた内容を、より具体的な数値にして練り上げていきます。
- 事業を通して実現したい課題やコンセプト
- ビジネスモデル
- ユーザーのメリット
- 自社の強み
- 市場分析結果
- 財務計画
事業計画を作成することで、事業に行き詰まった際の道標となります。事業に関わっていない人に見せても理解してもらえるようにわかりやすく、具体的に記載しましょう。
ステップ7.適切な人材をアサインする
事業計画が完了したら、いよいよ新規事業の開始となります。新規事業に必要となる適切な人材をアサインして実行に移していきましょう。事業を進める上で必要になるノウハウを持っている人材がいない場合は、外部から調達することも視野に入れなければなりません。
また、人選の際は偏りが出ないように、極力役割の違う人を選ぶ方がチームとしてうまく機能しやすいです。
4.新規事業の立ち上げを成功させるために大切な6つのポイント
ゼロの状態から起業するのと比較すれば、新規事業の立ち上げは資金やノウハウが蓄積されている点から、成功しやすいといえます。しかし、きちんと入念に準備しておかなければ、新規事業は成功できません。
先述した7つのステップで計画的に進めていく以外にも、以下の6点について頭に入れておく必要があります。
次項から、それぞれ解説していきます。
1.経営陣・現場の方々から理解を得る
新規事業の立ち上げを成功させるには、経営陣や現場の方々から理解を得ることが必要不可欠です。プロジェクトを指揮するメンバーだけが熱意を持って取り組んでいても、新規事業は成功しません。
まず新規事業を始める前に、必ず経営陣からの理解や承諾を得ておきましょう。経営陣からの新規事業についての理解が無ければ、新規事業を進めることができないほか、十分な予算を獲得できない可能性が高いです。新規事業に必要な予算を獲得するためにも、必ず経営陣からの理解は得るようにしましょう。
また、新規事業を進める際に、現場の方は商品開発のために厳しいスケジュールを余儀なくされることもあります。現場の方に新規事業を理解してもらわないまま進んでしまうと、様々な業務に対して「プロジェクトメンバーから押し付けられている」と不満を感じる方も出てくるでしょう。そのような状態では最悪の場合、プロジェクトメンバーと現場の方の間でわだかまりができてしまい、円滑に新規事業を進められなくなってしまいます。
上記の理由から、経営陣やチーム、現場問わず、プロジェクトに関わるすべての人が、新規事業のコンセプトを理解し、主体性を持って取り組める状態にならなければいけません。
2.自社の強みや特徴を活かす
新規事業を立ち上げる際は、自社の強みや特徴を活かしたプロジェクトにしましょう。そのためにも、自社にどのような強みや特徴があるのかを一度洗い出してみるのがおすすめです。たとえば、既存事業で利用しているノウハウをそのまま転用できれば、事業を進めやすくなります。
なお、既存の製造ラインや販売導線など、これまでに蓄積されたノウハウを利用できれば、1つの工程にかかる時間や資金が必要になるのかを正確に割り出せるでしょう。事業モデルの作成時に想定していた経済的コストや時間的コストに対するブレを最低限にすることでPDCAサイクルが回しやすくなり、事業成功にも繋がります。逆に2つのコストのブレが大きいとPDCAサイクルを回すのに十分な時間や資金が確保できず、十分に仮説を検証することができません。
また、自社の強みや特徴を活かすことができれば、競合との差別化にも繋がり、自社で新規事業を行う理由になるでしょう。
3.ヒト・モノ・カネ・情報を軸に必要なリソースを考える
新規事業の立ち上げを成功させるために考えるべきリソースは、ヒト、モノ、カネ、情報の4つです。
前述したように、自社で蓄積したノウハウを利用することができれば、ヒト、モノ、カネ、情報に関するリソースが少なくて済みます。なお、リソースが自社で用意できない場合、アウトソーシングで外部の人材を参画させる方が結果的にコストが安く抑えられる可能性もあるため、視野に入れておきましょう。
また、リソースと聞くとヒト、モノ、カネの3つが浮かびやすいですが、自社が抱えている課題を明確にすることや、フレームワークを活用することなどの情報も大事になります。
フレームワークを活用し、情報を収集することで、自社の課題を解決するためには何をすれば良いのかが自ずと見えてくるでしょう。それぞれに必要なリソースを考えて、新規事業を進めていきましょう。
4.アサインする人材は必要最低限にする
新規事業にアサインする人材は、必要最低限にしましょう。
そもそも立ち上げ当初は、必要最低限の人材を利用したスモールスタートの方がおすすめです。プロジェクトを動かすのにたくさんの人を集めてしまうと、大きな規模で事業を運用することができる反面、統率が難しくなってしまいます。
最初は小回りが利く状態にしておき、軌道に乗せられた段階で人材を集めていく方が、事業を上手く回せるでしょう。
5.補助金や助成金もチェックする
新規事業を立ち上げる際は、補助金や助成金も必ずチェックしておきましょう。
新規事業にコストはつきもので、特にお金に関してはいくらあっても困るものではありません。事業を成功させるための支援は、積極的に利用していきましょう。たとえば、以下のような補助金、助成金を利用できます。
- ものづくり補助金
…新しいものづくりや新サービスを支援する制度で、事業に応じたさまざまな支援枠が設けられている - 小規模事業者持続化補助金
…小規模事業者を対象にした制度で、上限50万円の補助金を受け取ることが可能 - 事業再構築補助金
…事業再構築に取り組む中小企業、中堅企業の挑戦を支援する制度で、中小企業が上限6,000万円、中堅企業が上限8,000万円の補助金を受け取ることが可能 - 事業承継・引継ぎ補助金
…事業承継で新しい取り組みを行う中小企業などを対象とした補助金 - IT導入補助金
…ITツールの導入にかかる費用を補助する制度
IT導入補助金は新規事業立ち上げに直接の関係はありませんが、新規事業する際にITツールを導入する場合に利用できます。
上記以外にも、地方自治体で補助金や助成金を設けている制度もあるため、新規事業を始める際には一度チェックしてみると良いでしょう。
なお、助成金については下記記事でも詳しく解説しているため、ぜひご一読ください。
6.事業撤退ラインを考える
新規事業を立ち上げる際は、事業撤退ラインを考えておきましょう。消極的に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、新規事業は、必ずしも成功するわけではないため、事業撤退ラインの設定は非常に重要です。新規事業が上手くいかないからといってコストをかけすぎてしまうと、企業の危機になってしまう恐れもあります。
また、事業撤退ラインを考えておくことで、上手くいかない時にコストをかけるのではなく「別のやり方があるのでは?」とポジティブな意見や方向転換することにも繋がります。大失敗に終わるのではなく次に活かせる軽い怪我程度であれば、会社にとって経験を1つ積んだとポジティブに捉えることもできるでしょう。
5.新規事業成功に近づくためのフレームワーク5選
ここからは、新規事業成功に近づくためのフレームワークを5つ紹介します。フレームワークを利用することで、立案や分析の作業が効率的になり、時短にも繋がるため積極的に採用していきましょう。
それぞれ詳しく解説していきます。
1.アイデア発想に関するフレームワーク
何もない状態からアイデアを発想しても、余程アイデア出しが得意な人でない限り、良いアイデアは浮かんでこないものです。そこで、アイデア発想に利用できる考え方として「フォアキャスト型」と「バックキャスト型」という2つのフレームワークを利用するとよいでしょう。
フォアキャスト型は、現在や過去の状態を基準とし将来に向かって進行していく考え方です。主に技術やビジネスモデルを改善する際に用いる方法で、将来の具体的な未来像は明示せずに、現在できることから進めていく流れになります。
一方、バックキャスト型は理想の未来の状態を思い描き、未来から現在に向かって考えていく思考法です。自社の目標とする将来像を考え、それを達成するためにはどんな施策が必要になるのかを考える流れとなります。現在行っている施策で十分かどうかをまず吟味し、十分ではない場合にはどのような取り組みが必要になるのかを検討します。
フォアキャスト型の方が堅実的なアイデアになりやすく、バックキャスト型の方が革新的なアイデアが生まれる可能性が高いため、用途に応じて使い分けると良いでしょう。
2.市場調査に関するフレームワーク
市場調査に関するフレームワークには、PEST分析とSWOT分析の2種類が挙げられます。
1つ目のPEST分析は、下記の4つの外部環境が自社にどのような影響を与えるのかを調査するために利用するフレームワークです。
- 政治(Politics)
- 経済(Economy)
- 社会(Society)
- 技術(Technology)
このフレームワークを利用することで、法改正や技術革新など、自社に脅威を与えるものを洗い出すことが可能です。今後起こりうる社会の変化を予測することで、自社や新規事業に関する課題が見えてくるでしょう。
なおPEST分析を行うためには、まず自社と関連性が強い業界の情報収集を行います。集めた情報を政治、経済、社会、技術の4つの要因に分類し、さらにそこから事実と自分なりの解釈に分類します。分類した事実を自社に不利に働く「脅威」と、自社に有利に働く「機械」に分類し、その結果をもとに具体的な施策を考案していきましょう。
2つ目のSWOT分析は、外部環境のみでなく内部環境も調査対象とした分析方法で、下記の4つから構成されています。
- 強み(Strength)
- 弱み(Weakness)
- 機会(Opportunity)
- 脅威(Threat)
内部環境の強みと弱みをはじめ、外部環境の機会と脅威を明確にすることで、事業の課題やリスクが見つかりやすくなります。主観だけでなく外部環境や数値、データを加味することで、正確な分析ができます。
「強み」では競合との差別化に成功している点や自社商品が購入されている理由をユーザー視点で考えます。今は強みと言えないような細かい部分でも、今後力を入れることで強みに発展することもあるため、柔軟に考えることが重要です。「弱み」では競合他社よりも自社が劣っている点や、自社が苦手なことを整理します。
なお、弱みと脅威は混同しやすいですが、あくまでも脅威は自社の努力ではどうすることもできない外部環境の部分であり、弱みは自社の努力次第で強みにも代えられる内部環境であるため、注意しましょう。
3.事業モデル構築に関するフレームワーク
事業モデル構築に関するフレームワークには、ビジネスモデルキャンバス(BMC)の利用がおすすめです。ビジネスモデルキャンバスは、下記の9つの要素で構成されています。
- 顧客セグメント(CS)
- 価値提案(VP)
- チャネル(CH)
- 顧客との関係(CR)
- 収益の流れ(RS)
- リソース(KR)
- 主要活動(KA)
- パートナー(KP)
- コスト構造(CS)
上記のように新規事業の全体像を客観視することで、複雑な事業モデルがわかりやすくなります。「どのようなユーザーが顧客となるのか?」「顧客にどのような価値を提供するのか?」など細かく考えていくことで、自社の強みはもちろん問題点も明確になるでしょう。また、注力すべき点が明確になることで、消費者のニーズに応えられる事業に近づけます。
さらに、ビジネスモデルキャンバスを利用することで、本来複雑な事業モデルが理解しやすくなるため、プレゼンにも向いています。
4.マーケティングに関するフレームワーク
マーケティングに関するフレームワークは多数ありますが、今回はペルソナ分析と4P分析の2つの分析方法を紹介します。
ペルソナ分析はどんな人がサービスを利用するのか、具体的な消費者像をイメージすることです。BtoCの新規事業であれば、性別、年齢、出身地、住まい、学歴、職業、スケジュール、趣味、家族構成といった詳細まで設定していきましょう。
一方BtoBの新規事業の場合は、顧客が個人ではなく組織がターゲットとなります。業種、企業規模、取り扱っているサービスや商品、従業員数、売上、社風など、自社の目的や戦略に合わせて柔軟にペルソナを設定しましょう。詳細な人物像を考えていくことで、顧客の立場から考えてマーケティングを行えるようになります。
続いて4P分析は、商品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販促(Promotion)の4つの軸でマーケティング施策を考える方法です。自社のサービスがユーザーの満足のいくものになっているかどうかを、客観的に考えることができます。ユーザーに提供する商品、サービスの内容や価格はもちろん、商品やサービスをユーザーに届けるための販売経路や販売場所から、認知、購入してもらうための方法まで細かく考えていきましょう。
なお、4P分析の各項目に関連性があるかどうかも注意してください。たとえばリピート率を伸ばしていきたいのに新規顧客のほうが安く買えないか、プレミアム感を出したいのに価格が安すぎないか、高齢者がターゲットなのにインターネットの利用が必須ではないかなど、整合性が取れているかをチェックすることが重要です。
5.事業への評価・改善に関するフレームワーク
事業への評価・改善に関するフレームワークとして、KPIやBSCの利用がおすすめです。これらを利用することで、新規事業の売上や受注などの進捗状況が確認でき、成功に近づくことでしょう。
KPI(重要業績評価指標)は業績を評価するための定量的な指標となります。一方で、BSC(バランススコアカード)は定量的な数値以外にも財務、顧客、業務プロセス、学習と成長の4つの視点から、多角的に評価するものです。BSCの一環としてKPIがあると考えるとわかりやすいでしょう。
評価や改善を行わずして順調に進んでいくほど新規事業は簡単ではないため、このようなフレームワークを駆使しながら事業を進めていくのがおすすめです。たとえば、下記のような項目について目標を設定していきます。
- 売上高
- 顧客満足度
- 品切れ率
- 社員の教育時間
自社の抱える問題や目標によって目標を設定するべき項目は異なりますが、KPIとBSCのどちらも、自社の目標や戦略を達成するために必要な項目を適宜設定していきましょう。
6.新規事業立ち上げの成功事例
新規事業立ち上げの成功事例として、以下の5つの企業を紹介します。
コスモス食品株式会社の成功事例
コスモス食品株式会社は、フリーズドライで食品を製造する食品メーカーです。フリーズドライ食品の開発には成功し、オリジナルブランドを立ち上げたものの、8年間利益を上げられない状態が続いていました。利益が上がらなかった原因は、過去のコスモス食品株式会社は個々で営業するのみでチームとして動けていなかった点や、営業ノウハウの共有がされない社内体制が挙げられておりました。そこで、属人化した営業スタイルの改善に着手しました。
営業戦略を立ててどのようなターゲットに対して、だれがいつどのように営業するのかを明確にすることでPDCAを回せるようになり、チームに営業ノウハウが蓄積されるようになっていきました。課題であった営業ノウハウが共有されるようになり、チームとして動けるようになったのです。
その結果、オリジナルブランドでの売上が5年の間で7倍に成長する快進撃を収めたのです。
ユニ・チャームの成功事例
ユニ・チャームは、生理用品や紙おむつなどの衛生用品を販売するメーカーです。ペット事業には手を出していなかったものの、ペットの長寿化、肥満化、室内飼育化、小型化という4大潮流に目を付けペット市場に参入することになったのです。
ユニ・チャームは海外で注目されている「ペットとの共生」に目を付け、ペットが外出するためのエチケットとして、ペット用紙オムツの販売を開始しました。その結果、ペット事業に参入した2001年は5億円程度だった市場が、2013年には約7倍の市場規模へと拡大し、その76.3%をユニ・チャームが占めています。
ヤマダ電機の成功事例
ヤマダ電機は、全国に展開している家電量販店です。2010年代から、プレハブ住宅メーカーの買取、住宅リフォーム業者との資本提携で住宅産業に進出を果たしました。
家電量販店と住宅業界は別の業界と感じられるかもしれませんが、ヤマダ電機がこの業界に参入したのはIoTに目を付けてのことでした。IoTが普及するとほとんどの家電がネット環境に接続できるようになると仮説を立て、将来的に住宅そのものが情報機器化した家電のプラットフォームになると考えたのです。
その結果、2022年はリフォーム事業で売上高727億円に達しており、2025年に売上高1,000億円を目指しています。
GEの事例
世界的総合電機メーカーであるGE(ゼネラルエレクトリック)では、GEデジタルというDXのプロジェクトを行いました。この事例は成功ではなく、失敗した事例になりますが、失敗からも学べることがあります。
GEでは急速にDX化を行うため、4年間で一気に5,500人のIT人材を採用しました。しかし、元々のハードウェアに慣れている顧客からもIoTプラットフォームへの切り替えは望まれていなかったのです。また、採用したIT人材は社内での人脈や社内政治では分が悪く、あらゆる方面で悪条件が揃っていました。その結果、DX化事業の業績は低下し、事業責任者がGEを退社するほどの失敗に終わることとなります。
上記の失敗事例からは、現場の声を聞いて事業について深く理解すること、顧客と対等に話せる距離感を築くこと、どの程度のDXを行うべきか考えることなど、多くのことを学べます。
SpaceXの成功事例
SpaceXでは、宇宙探索や人工衛星を利用した通信サービスなど様々な事業を展開しています。中でも、イーロン・マスクが率いる新規事業「再利用ロケットの打ち上げ」が有名です。SpaceXは独自開発した再利用ロケットを週に1回打ち上げることを目標としており、1ヶ月に何度もロケットを打ち上げています。
SpaceXが、再利用ロケットの打ち上げに成功するまでは、ロケットは使い捨てが一般的とされており、ロケットの再利用は技術な面から実現できないとされていました。しかしSpaceXは高い技術力を活かし、ロケットの再利用を成功へと繋げたのです。また、再利用することでコストを安くすることができ、次の打ち上げまでの時間短縮にも繋げられるようになりました。
7.新規事業立ち上げのプロセスや進め方はフリーコンサルタント.jpにお任せください!
フリーコンサルタント.jpでは、プロフェッショナル人材を新規事業の立ち上げや進め方の際に採用することも可能です。新規事業の立ち上げ知識に特化した人材や、進め方の指導を得意とする人材も在籍しているため、必要な要件に合わせて人材の調達を行うことができます。
8.まとめ
本記事では、新規事業の進め方について解説してきました。環境が変化し続ける現代において、既存の事業だけで利益や市場でのシェア率を高めていけるとは限りません。新規議場を立ち上げることでリスクヘッジに繋がることもあるため、新規事業を立ち上げることは企業の存続という観点でも重要になります。
なお、新規事業を進める際は以下の7つのステップで進めることで失敗を避けられます。
- 新規事業立ち上げの担当者を決定する
- 事業の理念やコンセプト、ビジョンを明確にする
- 市場調査や事業調査を入念に行う
- 消費者ニーズを分析・検討する
- 事業モデルを検討する
- 事業計画の作成
- 適切な人材をアサインする
曖昧な進め方で新規事業を開始してしまうと、成功につながらないどころか、事業が失敗し大きな損害を生み出してしまう可能性があります。そのため、新規事業を進める際は、必ず正しい手順で入念な準備をしておきましょう。
また、みらいワークスでは新規事業を進める際に強い味方となるプロフェッショナル人材の紹介サービスを行っております。新規事業や経営のノウハウを熟知したプロによるアドバイスが受けられるため、お気軽にお問い合わせください。
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