
あらゆる業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速している中、不動産業界も例外ではありません。DXを推進することで、業務効率化や生産性向上など、多くのメリットが期待できます。
しかし「DXと言われても具体的にイメージが湧かない」「自社でどう進めれば良いかわからない」と悩む担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、不動産業界のDX成功事例を10社厳選してご紹介します。各社の取り組みを知り、自社に適した方法を実施することで、業務改善や売上向上につなげられるでしょう。
■目次
1.不動産業界におけるDXとは?
不動産業界におけるDXとは、AIやVRなどのデジタル技術を用いて、ビジネスモデルや業務プロセスを根本から変革し、新たな価値を生み出す取り組みを指します。
不動産業界では、いまだに紙媒体での契約や対面での接客が主流であり、生産性の向上や深刻な人手不足が課題です。DXは、こうした業界特有の課題解決に有効な手段として注目されています。
たとえば、遠方の顧客にも対応できるようにオンライン内見や電子契約、AIによる物件査定を導入すれば、従業員の負担軽減や顧客満足度の向上に繋がるでしょう。そのため、不動産DXは、企業の競争力を高めるための重要な経営戦略と言えます。
2.不動産業界のDX成功事例10選
不動産DXと一口に言っても、企業の規模や事業内容に応じて取り組みは様々です。ここからは、不動産業界におけるDXの成功事例を10社ピックアップしてご紹介します。
- 野村不動産ホールディングス:「Techrum」開発により物流の人手不足解消に貢献
- 東急不動産ホールディングス株式会社:「HD-X」開始し、DXを通じた地域課題解決に尽力
- 三井不動産:搬出入DXソリューションでトラックの待機時間を約1時間削減
- 株式会社あいホーム:コロナ禍でも売上が30%増加
- 株式会社丸八アセットマネージメント:DX推進により人的ミスを削減
- NITOH株式会社:適切なアプリ選定で導入から5か月後に70%のオーナーとネットを通じたやり取りに成功
- 株式会社ハウジング重兵衛:電話業務効率化ツールの導入で業務負担を40%軽減
- 株式会社モカ:通話録音クラウド導入で管理戸建て数が160%成長
- 中央日本土地建物株式会社:オンライン内見ツールの採用で成約歩留まり30%を達成
- プロパティエージェント株式会社:AI賃料査定システム導入で査定件数が急増
各社がどのような課題を抱え、どのようにデジタル技術を活用して解決したのかを知ることで、自社でDXを推進する際に役立つでしょう。
①野村不動産ホールディングス
野村不動産ホールディングスは、企業間共創プログラム「Techrum(テクラム)」を通じて、物流業界が抱える人手不足などの課題解決を支援しています。EC市場の拡大と深刻な人手不足という課題に対し、同社は自社の知見とパートナー企業の技術力を掛け合わせたプラットフォームを構築しました。
荷主企業や物流会社は、無料で以下のような支援を受けられます。
- 3Dシミュレーターを使い、専門知識がなくても最適な倉庫レイアウトを短時間で設計できる
- 参画企業と連携して、総合的なソリューション開発が行える
3Dシミュレーターでは、倉庫空間をわかりやすく再現することで、認識の相違が生まれにくい点がポイントです。Techrumは、物流業界全体の構造変革を促す画期的なDX事例として注目されています。
②東急不動産ホールディングス株式会社
東急不動産ホールディングスは、グループ横断のDXプロジェクト「HD-X」を通じて、地域課題の解決とDX人材の育成を両立させています。
同社は多角的な事業を展開する中で、事業間のデータ連携が不十分という課題を抱えていました。そこで、グループの強みを活かした社会課題解決型のビジネスモデルを整備するため、以下の取り組みを進めています。
- 地方自治体と連携したフィールドワークを通じ、デジタル技術を活用したビジネスプランを構想、提案する地域課題解決プログラムの実施
- 実践的なプログラムにより、ビジネスとデジタルを繋ぐDX人材(ブリッジパーソン)の育成を加速させる
HD-Xは、DX推進のみならず、社会貢献と人材育成を同時に実現する先進的な取り組みとして期待されています。
③三井不動産
三井不動産は、物流施設やオフィスビルにおけるトラックの長時間待機という課題に対して、搬出入DXソリューションを導入し、物流業界の生産性向上に貢献しています。
従来、納品トラックの先着順での待機は、ドライバーの負担増や周辺の交通渋滞を招き、物流の「2024年問題」をさらに深刻化させる一因でした。そこで同社は、以下のような取り組みを実施しています。
- オンラインでトラックの到着時間を予約できるシステム「MOVO Berth」を導入し、待機時間を約1時間削減した
- 車番認証システムと連携し、トラック到着を自動でテナントに通知することで、受付や誘導の手間を省きスムーズな荷役作業を実現した
物流業界の効率化と働き方改革を後押しする、優れたDX事例と言えるでしょう。
④株式会社あいホーム
宮城県の住宅会社、株式会社あいホームは、バーチャル住宅展示場などのデジタルツールを積極的に活用し、コロナ禍という逆境を乗り越え売上30%増を達成しました。
同社は、コロナ禍でモデルハウスへの来場者が激減したことを受け、従来の対面営業にこだわらず、デジタル技術を活用した新たな営業スタイルへ変えています。主な取り組み事例は、以下のとおりです。
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行った施策 |
効果 |
| 360度VR技術を使い、顧客が自宅にいながらリアルな内見体験をできる環境(バーチャル住宅展示場)を整備 | オンラインでの案内や新たな商談機会を作ることに成功した |
| 新卒採用においてインスタライブで会社説明会を実施 | 費用をかけずに優秀な人材を確保することに成功した |
この事例は、中小企業であっても、課題解決のために柔軟にデジタルツールを取り入れることで、大きな成果を生み出せることを証明しています。
⑤株式会社丸八アセットマネージメント
静岡県浜松市を拠点とする株式会社丸八アセットマネージメントは、賃貸管理システムの導入により、アナログな業務体制からの脱却と人的ミスの削減に成功しています。
同社では以前、家賃精算書の誤送付や連絡の行き違いなどのミスが頻発していたため、オーナーとのコミュニケーションや各種申請業務をデジタル化し、業務基盤を整備しました。電話やメール、郵送でのオーナーとのやりとりをチャット機能に集約し、情報管理を効率化させたことで、担当者のレスポンスが向上しています。また、見積書などの承認作業をシステム上で行えるワークフロー機能により、書類の回覧や押印の手間が省け、承認スピードも大幅に向上しました。
日常業務のDXが、いかに従業員の負担軽減と、会社の信頼性の向上につながるかを示しています。
⑥NITOH株式会社
NITOH株式会社は、オーナーのITリテラシーに応じたアプリ選定と丁寧な導入支援により、コミュニケーションのデジタル化に成功しています。
同社では、オーナーとの連絡手段が電話や郵送に偏り、報告書の作成や発送業務が大きな負担となっていました。しかし、オーナーの多くが高齢のため難しいシステムを導入するわけにはいかず、誰でも簡単に行えるDXを推進しています。具体的な取り組みは、以下の通りです。
- シンプルな操作性が特徴のアプリを選定
- 全オーナーに電話を掛けて使い方を説明
上記のようなきめ細かい取り組みにより、導入からわずか5ヶ月で約7割のオーナーがアプリ利用へ移行しました。その結果、電話対応や郵送コストを大幅に削減できただけでなく、チャットでの気軽なやり取りが増え、顧客との関係性も深まっています。
⑦株式会社ハウジング重兵衛
創業120年以上の歴史を持つ株式会社ハウジング重兵衛は、電話業務を効率化するツールを導入し、従業員の負担を40%も軽減することに成功しています。
リフォーム事業を手がける同社では、お客様からの電話問い合わせが非常に多く、担当者不在時の伝言ミスや対応の遅れが課題でした。そこで、年間約7,000件にものぼる電話対応の質と効率を向上させるため、以下のDX施策に取り組んでいます。
| 行った施策 |
効果 |
| 着信時にPC画面へ顧客情報が自動表示されるクラウド型コールセンターシステムを導入 | 過去の対応履歴を瞬時に確認できるようになり、スムーズな応対が実現した |
| ツールを導入し、全ての通話内容を自動で録音、テキスト化できるように | 担当者間の情報共有が円滑になり、問い合わせ内容のデータ分析も容易になった |
日常的な電話業務のDXが、顧客満足度の向上と従業員の負担軽減につながった事例です。
⑧株式会社モカ
株式会社モカは、通話内容を記録、管理できるクラウドサービスを導入し、管理戸数160%成長という目覚ましい事業成長を遂げています。
賃貸管理業務では、担当者不在時の伝言ミスや、会話の記録が残らないことによるトラブルが課題でした。そこで、同社は全ての通話を自動で録音、テキスト化できるクラウド型ビジネスフォンを導入し、着信時に顧客情報や過去の対応履歴がPCで確認できるようにしたことで、担当者不在時でもスムーズに対応できるようになりました。
日常業務のDXが、企業の信頼性と生産性を高め、事業の成長につながった事例です。
⑨中央日本土地建物株式会社
中央日本土地建物株式会社は、新築マンション販売にオンライン内見ツールを導入し、成約歩留まり(内見から成約に至る割合)30%という高い成果を上げています。
遠方の顧客がモデルルームに来て契約してもらうには、大きなハードルがありました。そこで同社は、顧客がより検討しやすい環境を整えるために、3DCGのバーチャル空間「ROOV walk」を導入しています。
「ROOV walk」は、遠方の顧客であっても室内を自由に内覧できるため、リアルな暮らしをイメージすることが可能です。また、顧客がオンラインでどの部屋をどれくらいの時間閲覧したかを分析できるため、顧客の関心に合わせた最適なフォローアップを実施し、成約率の向上に繋げています。
デジタル技術で顧客体験の質を高め、データを活用した営業活動を行うことが、販売促進につながった事例と言えるでしょう。
⑩プロパティエージェント株式会社
プロパティエージェント株式会社は、AI賃料査定システムを導入し、査定件数を飛躍的に伸ばしました。
従来、賃料査定は担当者の経験と勘に頼る部分が大きく、時間がかかる上に精度にもばらつきがありました。そこで、物件情報を入力するだけで、膨大な市場データに基づき客観的な賃料を算出してくれるAIシステム「スマサテ」を導入しています。
上記の取り組みの結果査定業務のスピードと質が大幅に向上し、担当者が想定していた3倍以上の査定件数をこなせるようになりました。また、査定プロセスが標準化されたことで、経験の浅い社員でも根拠のある提案が可能になり、競合他社よりも早く商談を進められるようになったなど、副次的なメリットも生まれています。
AIによって専門的な業務の属人化を解消し、生産性が大幅に向上した事例は、多くの企業にとって参考になるでしょう。
3.不動産DXを推進して実現できること一覧
不動産DXを推進することで、日常業務の効率化から顧客満足度の向上まで、企業はさまざまなメリットを得られます。
不動産DXの目的別に応じて実現できることは、以下のとおりです。
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目的 |
DXで実現できること(取り組みの例) |
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業務効率化、生産性向上 |
・紙の書類を電子化し、管理コストと手間を削減 (電子契約システム)・電話対応を自動化、効率化し、担当者の負担を軽減 (電話業務効率化ツール) |
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顧客満足度の向上 |
・時間や場所を問わないオンライン内見で機会損失を防ぐ
(VR内見ツール) ・来店不要のオンライン接客やIT重説で利便性を高める |
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売上、成約率の向上 |
・AIによる高精度な賃料査定で競争力を強化
(AI査定システム) ・顧客データを一元管理し、最適な追客を実現 (顧客管理システム) |
このように、DXはデジタルツールを導入するだけではなく、業務プロセスそのものを見直し、企業の競争力を高めるための重要な経営戦略と言えるでしょう。
4.不動産業DXをするべき企業の特徴
従来のアナログな業務に課題を抱え、人手不足や生産性の低下に悩んでいる企業こそ、不動産DXを積極的に推進すべきと言えます。なぜなら、DXは目の前の業務を効率化するだけでなく、企業の競争力を高め、将来の成長の土台を築くための重要な経営戦略だからです。
特に、以下のような特徴を持つ企業は、DXによって大きな改善効果が期待できます。
- 電話やFAXでのやり取りが多く、対応に追われている
- 契約書や物件資料など、紙の書類管理が多く管理しきれない
- 社員の残業が常態化しており、慢性的な人手不足を感じる
- 顧客情報が担当者ごとに管理され、社内での共有ができていない
もし、これらの特徴に一つでも当てはまるのであれば、DX導入を検討するのも良いでしょう。
5.不動産業界の企業がDXを成功させるためのポイント6つ
成功事例を見るとすぐにでもDXを始めたくなりますが、やみくもに導入を進めても、失敗する可能性が高いです。ここからは、不動産DXを成功させるための6つの重要なポイントを解説します。
自社の状況と照らし合わせながら、DXを推進していきましょう。
①自社の課題や目的を明確にする
自社が抱える課題や達成したい目的を具体的に設定することで、プロジェクトの方針をブラさずに、適切な戦略を考えることが可能です。システムやツールを導入する際にも、現場のニーズに合ったものを選べるようになるため、業務効率を各段に上げることができます。
まずは、以下のように日々の業務で感じている課題を洗い出してみましょう。
- 電話対応に追われてコア業務に集中できない
- 契約書など紙の書類が多くて管理が大変
- 顧客情報が担当者ごとに管理され共有できていない
課題や目的を明確にする場合は、経営層だけでなく、実際に業務を行う現場社員の声を聞くことも大事です。上層部だけでプロジェクトを進めてしまうと、導入したツールが現場のニーズと合わず、結局使われなくなってしまいます。
②課題や目的に合わせたツールを選定する
自社の課題解決に最適なツールを選ぶことで、無駄な手間やコストを削減することが可能です。どんなに機能が優れていても、自社の課題に合わなければ意味がなく、かえって現場の負担を増やしてしまう恐れがあります。また、機能が優れているツールは費用が高い傾向にあるため、使わない機能に投資し続けるのは非常にもったいないと言えるでしょう。
課題に適したツールの例は、以下のとおりです。
- 顧客情報の属人化 → 顧客管理システム(CRM)
- 電話の取り次ぎの手間 → 電話業務効率化ツール(CTIシステム)
もし、導入に不安がある場合は、無料トライアルなどを活用し、現場の社員が直感的に使えるか確認することも失敗を防ぐポイントです。
③DX化に向けて社員のデジタルリテラシーを向上させる
ツールは導入するだけではなく、利用する社員のデジタルリテラシー(IT技術を活用する能力)を高めることも重要です。社員のデジタルリテラシーを高めることで、スムーズにDXを推進できます。
デジタルリテラシーを向上させるには、以下のような対策が有効です。
- 全社員対象の研修会を実施する
- 部署ごとにツールの活用方法を共有する場を設ける
- 簡単な機能から使い始め、ツールになれてもらう
最新のシステムを導入しても、社員が使いこなせなければ業務は効率化されず、投資が無駄になってしまいます。社員一人ひとりが前向きにツールを活用できるよう、丁寧なサポートと継続的な教育を行い、組織全体のITスキルを底上げしていきましょう。
④中長期的な目標を作成する
DXは短期的な業務改善だけでなく、中長期的な視点で目標を設定し、計画的に進めることが重要です。数値目標(KPI)を設けることで、進捗状況が可視化され、社員のモチベーション維持にもつながります。
継続的に取り組むためには、以下のように中長期的な目標を設定しましょう。
- 1年後:残業時間を月平均10時間削減する
- 3年後:蓄積したデータを活用して、新たなサービスを開発する
また、DXの成果はすぐに出るとは限らず、目先の効果だけを追い求めると、途中で挫折しやすくなります。DX推進を中途半端に終わらせないためにも、中長期的な目標をしっかりと立てておきましょう。
⑤組織体制を整える
DXをスムーズに進めるには、経営層が主導し、全社で取り組む組織体制を整えることが重要です。一人ひとりがDX推進に積極的に取り組むことによって、部署間の壁ができづらく、全社的な改革にはつながります。
DXを成功させるためには、以下のような体制作りが重要になります。
- 経営トップが先導して、明確なビジョンを示す
- 各部署からメンバーを選出して、専門チームを立ち上げる
- 営業、管理、情報システムなど部門の垣根を越えて協力する
一丸となって取り組む体制が、DX成功を大きく左右します。
⑥DX人材を育成する
DXを自社の力で継続させていくには、社内でDXを担う人材を育成しなければなりません。自社の事業内容や企業文化を深く理解している社内の人材が主役となることで、より実態に合った、持続可能な変革が可能になります。
具体的には、以下のような取り組みが効果的です。
- 全社員を対象としたデジタルスキルの基礎研修
- DXを推進しているメンバーへの、データ分析やマネジメント教育
- 外部研修への積極的な参加支援や資格取得の費用面でのサポート
DXを成功させ、企業の競争力を高めるには、自社で「DX人材」を育てていく視点が欠かせません。
6.不動産DXを推進したい、DX人材を育成したい企業は「フリーコンサルタント.jp」へ
DX推進には人材育成が不可欠ですが、専門知識を持つ人材の採用や育成には多くの時間とコストがかかります。そこで有効なのが、外部のプロフェッショナルを活用することです。
「フリーコンサルタント.jp」には、不動産業界のDXに精通した即戦力人材が多数在籍しています。貴社の課題に合わせて最適なプロ人材を必要な期間だけアサインすることが可能です。採用コストを抑えながらスピーディにDXを推進し、現場と一緒に伴走してもらうことで社内にノウハウを蓄積できます。
DX人材の確保や育成にお悩みの企業様は、一度「フリーコンサルタント.jp」に相談してみてはいかがでしょうか。
7.まとめ
本記事では、不動産業界におけるDXの成功事例10選と、DXを成功に導くための6つのポイントを解説しました。
DXは、人手不足や生産性の低さなどの不動産業界特有の課題を解決するために重要な、経営戦略のひとつです。DXを成功させるには、自社の課題を明確にし、目的を持って計画的に取り組むことが重要と言えます。
とはいえ、DXを推進できる人材の確保や育成は容易ではありません。そんな時は「フリーコンサルタント.jp」のような外部のプロフェッショナルを活用するのも有効な選択肢です。



