労務費とは?人件費との違いや計算方法、重要性や労務費率まで解説
ビジネスコラムColumn
最終更新日:2024.12.05
人事/組織構築/業務改善

労務費とは?人件費との違いや計算方法、重要性や労務費率まで解説

「労務費と人件費の違いは?」
「労務費の計算方法がよくわからない 」
このようなことでお悩みではないですか?

企業活動において、労務費と人件費はどちらも重要なコストですが、その違いを正確に理解している人は少ないかもしれません。

本記事では労務費とはなにか、労務費と人件費との違いについてご紹介するとともに、労務費の種類や計算方法、労務率についても詳しく解説します。

最後まで読んで、適切な労務費の管理に役立ててください。 

こんな人におすすめ

  • コスト管理や経営戦略を立てる管理レベルの方
  • 財務部門や人事部門の方
  • 新規事業を立ち上げたい方

1.労務費とは

労務費とは、製品を製造するときに必要な労働力に対して支払われる費用のことです。
具体的には、

  • 製造現場で働く従業員の給与
  • 社会保険料
  • 福利厚生費
  • 労働組合費

などの費用が含まれます。

さらに、労務費はコンテンツ制作やコンサルティングをした時にも適用され、実際に「ものを作る製造」だけの費用だけではありません。

労務費は商業簿記ではなく、工業簿記の勘定科目を用いて原価計算を行います。
商業簿記が商品の売買を扱うのに対し、工業簿記は製造業に特化しているのが特徴です。

正確な労務費の計算は、製品の原価を適切に把握し、効率的な経営に欠かせません。
適正な労働条件を提供することで、従業員のモチベーションや生産性の向上が期待できるでしょう。

また、労務費は企業の運営において欠かせない費用項目です。
製品の原価計算や、労働環境の改善、さらに企業の競争力強化のために、労務費の正確な計算と管理が求められます。

2.労務費と人件費の違い

労務費とは、製品の製造・生産に関わる従業員に支払われる費用で人件費の一部です。
製造業では、工場で製品を作る作業員の給料や手当が労務費となり、IT業界では、エンジニアなどの稼働時間が労務費に該当します。

一方、人件費は労働者に対して支払われる給料や手当のことです。人件費は労務費だけでなく、営業や管理部門の費用も含まれ、以下の3つに分類されます。

分類 内容
労務費 製造やプロジェクトに直接関わる従業員の費用 工場で働く作業員の給与や手当
販売費 営業や販売部門で働く従業員の費用 営業マンの給料や手当
一般管理費 総務や経理部門で働く従業員の費用 経理担当の給料や手当
コスト 計画の最適化によるコスト削減 精度上げるためのコストが多額

労務費と人件費の違いを理解することで、より正確な原価計算や経理管理が可能です。
適切な人件費の計算方法や分配の仕方について詳しく知りたい方は、下記の解説記事をぜひご覧ください。

正しい計算と分配方法を学ぶことで、効果的なコスト管理と経営戦略の立案に役立ちます。

3.労務費の種類は2つ

労務費は、製品との関わり方によって「直接労務費」と「間接労務費」に分類されます。
どちらに分類されるかで計算方法が異なるため、それぞれの内容について理解しておかなければなりません。

2種類の労務費について、具体的に見ていきましょう。

直接労務費

直接労務費は、製造に直接関与した従業員に支払われる費用です。
製造業では、製品の加工や組み立てを行う従業員を「直接工」と呼び、その賃金や手当が直接労務費のほとんどを占めます。

たとえば、以下のような作業が対象です。

  • ラインでの組み立て:製品の部品を組み立てる作業
  • 塗装       :製品に塗料を塗る作業
  • 検査       :製品の品質をチェックする作業
  • 機材の切断や加工 :製品の部品を切断したり加工したりする作業

製品の製造に直接関与している作業に従事する従業員の賃金や手当は、すべて直接労務費に含まれます。
ただし、直接工が間接的な作業を行った場合、その時間は直接労務費に含まれません。

直接作業に従事した時間のみを計算して、製品の原価を正確に把握し、効率的な生産計画を立てましょう。

間接労務費

間接労務費は、製品の製造に間接的に関わる従業員に支払われる費用です。
代表的なものに、機械の修繕や清掃を行う間接工の賃金があります。間接労務費は、製品の生産に直接関わらない作業や、事務部門への給与も含まれると考えるといいでしょう。

具体的には、以下のような費用が該当します。

  • 間接工賃金     :機械のメンテナンスや工場の清掃を担当する従業員の賃金
  • 手待賃金      :工具の手配不良や停電などで作業ができない時間の賃金
  • 休業賃金      :従業員が休業した際に支払われる賃金
  • 工場の監督者や事務職員の給料
  • 従業員の賞与や手当 :従業員に支給される賞与や住宅手当、通勤手当など
  • 退職給与引当金繰入額:従業員の退職に備えて計上される費用
  • 福利費       :厚生年金や健康保険料などの会社負担分

4.労務費は5つにわけられる

労務費には、大きくわけて以下の5種類の費用が含まれています。どのようなものが労務費にあたるのか、正しく把握しておきましょう。

賃金

賃金は、製造部門で働く正社員や契約社員に支払われる給与です。
月給制の従業員が対象で、パートやアルバイトの給与は含まれません。

実際に作業をしない現場監督や、製造部門に属する事務スタッフの給与も対象です。時間外労働や休日出勤の割増賃金も該当します。
また、自社スタッフが機械のメンテナンスを行う場合は、その給与も賃金に含まれます。

雑給

雑給は、製造部門で働くパートやアルバイトの給与です。時給制のスタッフが対象で、通勤手当や割増手当なども含まれます。
時給や日給で支払うことが多く、正社員や契約社員の給与とは別に管理しなくてはなりません。

従業員賞与手当

従業員賞与手当は、製造部門の従業員に支給される賞与や各種手当です。
賞与は年3回以下の支給で金額が予め決まっていないものを指し、家族手当や扶養手当も含まれます。
また、通勤費も手当に含まれますが、残業手当や賃金は雑給として計上します。

退職給付費用

退職給付費用は、製造部門の従業員の退職に備えて計上された費用です。
企業では、従業員全員の退職金を積み立てていますが、製造に従事しない従業員の退職金は含まれないため、注意しなくてはいけません。

法定福利費

法定福利費は、製造部門の従業員の社会保険料の内、会社の負担分です。
社会保険料には、健康保険料や雇用保険料、雇用保険や労災保険などの労働保険料も含まれます。

5.労務費は5つにわけられる

労務費は企業の財務において重要な費用項目です。
人件費の中でも大きな割合を占めるため、効果的な労務費管理は企業経営には欠かせません。
以下の点に注意し、企業の持続可能性や競争力の向上を図りましょう。

  1. 予算編成とコスト管理
  2. 経営判断の指標
  3. 労働環境の改善

人件費の正確な予算把握と効率的なコスト管理には、労務費の適切な見積りと管理が必要です。
また、適切な労務費の管理は、経営戦略の策定や業績評価の基準となります。収益性や生産性を向上させるために、労務費の削減や効率化が求められます。
 
さらに、 労働条件や報酬体系を整えることで、従業員のモチベーションや生産性が向上し、企業全体のパフォーマンスにも影響するでしょう。
このように、労務費は経営判断の指標として、業務評価の基準となる重要な費用と言えます。

6.労務費の計算方法

労務費は「直接労務費」と「間接労務費」にわけて計算します。
労務費を正確に計算すると正確な原価計算ができ、精度の高い予算や見積もりが可能です。 
以下で、それぞれの労務費の計算方法を解説します。

直接労務費の計算方法

直接労務費を計算するには、まず作業員の「賃率」を算出します。
製造に携わる、従業員の賃金を総労働時間で割ったものが「賃率」です。さらに、実際に製品の製造にかかった時間をかけて「直接労務費」を算出します。

賃率を計算する時には、各手当(時間外労働・深夜労働・休日労働)の加算を忘れないように注意しましょう。
直接労務費の計算式は、以下の通りです。

賃率 =( 基本給 + 各手当) ÷ 総労働時間
直接労務費 = 賃率 × 製品製造にかかった時間

間接労務費の計算方法

間接労務費は、労務費のうち直接労務費ではない部分の全てとなり、労務費から直接労務費を差し引いて計算します。
労務費のなかには、「賃金・割増手当」+「雑給」+「賞与・手当」が含まれるので、計算ミスや漏れがないように注意しましょう。

間接労務費の計算式は、以下の通りです。

間接労務費 = 労務費 - 直接労務費

7.建設事業に必要な「労務費率」とは

労務費率とは、建設業において請負金額に対する労務費の割合のことです。労務率は厚生労働省によって定められており、労災保険料の計算に用いられます。

建設業の場合は、下請業者の賃金総額を正確に把握することは難しいと言えるでしょう。
そのため、事業内容に応じた労務費率を用いて、労災保険料を算出する方法がとられています。
実際の計算方法は以下の通りです。

労務費率計算方

労務費率の計算方法は、以下の厚生労働省が定めた労務費率を使用します。
多くの下請業者が関与する建設業でも、以下の労務費率を使用することで、正確な労災保険料を算出できます。

計算式は以下の通りです。

賃金総額 = 請負金額 × 労務費率

基本となる、厚生労働省の労務費率表は以下の通りです。
      
労務費率表(平成30年4月1日施行)

事業内容 労務費率
水力発電施設、ずい道等新設事業 19%
道路新設事業 19%
舗装工事業 17%
鉄道又は軌道新設事業 24%
建築事業(既設建築物設備工事業を除く。) 23%
既設建築物設備工事業 23%
機械装置の組立て又は据付けの事業
組立て又は取付けに関するもの
その他のもの
38%
21%
その他の建設事業 24%

参照:労務費率表|厚生労働省

定期的な比率の更新

厚生労働省は、定期的に労務費率の更新をしています。
労務費率は、人件費や資材の価格上昇によって賃金総額が減少するなど、経済状況によって常に変動していくからです。

そのため、正確な労災保険料を算出するためには、労務費率を定期的に見直して更新することが欠かせません。
「労務費率調査」は3年に1度実施され、建設業界の賃金の現状が調査されています。この調査は、一定期間内の請負金額が500万円以上の事業者のみが対象です。

厚生労働省は、調査結果をもとにして実際の請負金額と賃金総額の割合を分析し、適切な労務費率を設定しています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回の記事では労務費をメインに、人件費との違いについて解説しました。

労務費は直接的な生産コストであり、変動費として管理されます。

一方で人件費は、企業全体の運営コストであり、固定費として長期的な視点で管理されます。人件費の中でも大きな割合を占めるため、効果的な労務費管理は企業経営には欠かせません。さらに、適正な労働環境の整備は、従業員のモチベーションと生産性を向上させ、企業全体のパフォーマンスの向上に役立ちます。

労務費と人件費の違いを理解し、適切に管理することで、企業の経営効率を向上させることができます。正確なデータ収集と計算を通じて労務費を算出し、効果的なコスト管理を実現しましょう。

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

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