
「採用しても人が集まらない」「採用できてもすぐ辞めてしまう」「現場が回らず、既存社員の負担が増えている」と悩んでいる企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
人手不足は一時的な採用難ではなく、人口構造の変化や働き方の価値観の変化を背景に、業界を問わず経営課題になっています。
人手不足への対応は、単に採用数を増やすだけでは不十分です。自社の課題を「人数の不足」「定着の弱さ」「業務の非効率」のどこにあるか整理したうえで、対策を組み合わせることが重要です。
人手不足とは?人材不足との違いや基本の意味
人手不足を正しく理解するには、「人材不足」との違いを押さえることが重要です。
似た言葉として使われがちですが、企業が取るべき対策は異なります。まずは言葉の意味を整理し、自社課題を見極めやすくしましょう。
人手不足の定義
人手不足とは、事業を運営するうえで必要な人数を確保できていない状態です。
店舗スタッフ、ドライバー、介護職員、製造ライン作業者など、現場を回すために必要な「人数」が足りない状態を指します。企業実務では、「応募が来ない」「採用してもシフトが埋まらない」「繁忙期に対応できない」といった形で表れます。特定の専門資格がなくても担える業務でも起こりうるため、幅広い業種で共通する課題です。
一方で、人手不足は単なる採用数の問題だけではありません。離職率が高い、業務量に対して体制が合っていない、繁閑差に応じた配置ができていないといった要因でも起こります。
そのため、採用強化と同時に、定着と業務効率化の視点が欠かせません。
人材不足との違い
人手不足が「量」の問題であるのに対し、人材不足は「質」の問題です。つまり、必要な人数はいても、特定のスキルや経験を持つ人が足りない状態を人材不足といいます。
たとえば、店舗スタッフの人数が足りないのは人手不足です。一方で、DX推進を担える人、営業組織を立て直せる管理職、IT導入を主導できる人がいない場合は人材不足にあたります。
この違いを整理しておくと、対策の方向性が明確になります。
人手不足には、採用チャネルの拡大、定着率向上、自動化、アウトソーシングが有効です。人材不足には、育成、経験者採用、外部専門人材活用などが有効です。
| 人手不足 | 人材不足 | |
|---|---|---|
| 不足しているもの | 必要な人数 | 必要なスキル・経験を持つ人 |
| 課題の性質 | 量の問題 | 質の問題 |
| 主な対策 | 採用強化、定着率向上、自動化 | 育成、経験者採用、外部専門人材活用 |
日本で人手不足が問題視される背景
日本で人手不足が深刻化している背景には、主に3つの要因があります。
- 生産年齢人口の減少
- 業界ごとの労働条件や働き方に対するミスマッチ
- 少ない人数で仕事を回すための業務改革が十分に進んでいない
特に近年は、働き手が企業を選ぶ基準が変化しています。給与だけでなく、休日、柔軟な働き方、職場の人間関係、将来のキャリアが重視されるようになりました。企業側がこうした変化に対応できない場合、募集しても応募が集まりにくくなります。
また、人手不足は社会全体の課題である一方、企業ごとの差も大きいのが特徴です。同じ業界でも、職場環境を見直して定着率を高めている企業と、採用難と離職が続いている企業とで差が広がっています。
そのため、人手不足を外部環境だけの問題として捉えず、自社側の改善余地を見つける姿勢が重要です。
日本における人手不足の現状と今後の予測
人手不足は感覚的な問題ではなく、統計でも確認できる状態です。有効求人倍率、生産年齢人口、人手不足倒産の増加を見ると、採用市場の厳しさが続いていることがわかります。
有効求人倍率から見る人手不足の状況
有効求人倍率は、求職者1人あたりに何件の求人があるかを示す代表的な指標です。
厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、2025年平均の有効求人倍率は1.22倍、2025年12月は1.19倍でした。求職者1人に対して1件を超える求人がある状態が続いており、企業側にとって採用難の状況が続いていると考えられます。
ただし、すべての職種で一律に高いわけではありません。実際には、地域差や業種差、正社員か非正規かによる差があり、現場系・対人サービス系・専門職でより深刻になる傾向があります。
そのため、自社の採用難を把握する際は、全体平均だけでなく、業界別・職種別の需給も見る必要があります。
生産年齢人口の減少
人手不足の根本要因として大きいのが、生産年齢人口の減少です。
総務省統計局の人口推計では、2024年10月1日現在の15~64歳人口は7,372万8千人で、前年より22万4千人減少しました。総人口も減少が続く一方、65歳以上人口は増加しており、働き手の中心層が縮小していることがわかります。
働く人の母数そのものが減っているため、今後は採用だけで不足分を埋める考え方に限界があります。特に地方企業や現場型の業種では、都市部との人材獲得競争も重なり、採用難がさらに強まりやすい状況です。
将来的な見通しとしても、パーソル総合研究所と中央大学の推計では、2030年に644万人の労働力不足が生じるとされています。すぐに対策しなければ、今後は「募集しても採れない」がより当たり前になる可能性があります。
人手不足倒産の増加
人手不足は、採用コストの増加や現場負担の増大にとどまらず、企業の存続にも直結しています。帝国データバンクによると、2025年の人手不足倒産は427件となり、3年連続で過去最多を更新しました。建設業や物流業が目立ち、小規模企業でも多発しています。
さらに、2025年の人手不足倒産のうち、従業員や経営幹部の退職が直接・間接的に影響した「従業員退職型」の倒産は124件で、初めて年間100件を超えました。これは、採れないだけでなく、辞めさせないことが経営上の重要課題になっていることを示しています。
特に中小企業では、大企業の賃上げや採用強化の影響を受けやすく、待遇差がそのまま採用力や定着率の差につながります。人手不足を放置すると、売上機会の損失だけでなく、事業継続自体が難しくなる可能性があります。
【業界別】特に人手不足が深刻な6つの業界とその背景
人手不足はあらゆる業界で課題ですが、特に深刻な業界には共通点があります。需要が増えている、労働負荷が大きい、若手が入りにくい、離職率が高い、専門性が高いといった要因が重なる業界ほど、人材確保が難しくなります。
| 業界 | 主な背景 | 特に有効な対策 |
|---|---|---|
| 運輸・物流 | EC需要増、2024年問題、長時間労働 | 配送効率化、再配達削減、庫内自動化 |
| 介護・福祉 | 高齢化で需要増、身体的負担、人員配置制約 | 記録DX、見守り機器、採用対象拡大 |
| 建設 | 高齢化、若手不足、技能継承の難しさ | ICT施工、育成強化、業務標準化 |
| 飲食・宿泊 | シフト負担、離職率の高さ、需要回復 | 配膳支援、セルフオーダー、職場環境改善 |
| IT | 専門人材不足、需要拡大、獲得競争 | 育成、リスキリング、外部人材活用 |
| 小売 | 長時間営業、多業務、離職率の高さ | バックヤード効率化、評価制度見直し、需要予測 |
EC需要の拡大に追いつかない運輸・物流業界
運輸・物流業界では、EC利用の拡大によって配送需要が増える一方、ドライバーや現場作業者の確保が難しくなっています。さらに、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限規制が適用され、対策を講じなければ2024年度に輸送能力が約14%不足し、2030年度には約34%不足する可能性があると国土交通省は示しています。
この業界では、長時間労働、再配達、荷待ち、積み降ろし負担など、構造的な課題も多くあります。そのため、採用強化だけでなく、配送ルート最適化、庫内作業の効率化、商慣行の見直しまで含めた対応が必要です。
高齢化で需要が増え続ける介護・福祉業界
介護・福祉業界は、利用者の増加に対して働き手の確保が追いつきにくい代表的な業界です。厚生労働省は、介護人材の必要数について、2025年度末に約245万人が必要と推計しており、継続的な確保が課題とされています。近年の資料でも、2026年度に約240万人、2040年度に約272万人が必要と示されています。
背景には、夜勤や身体的負担、感情労働の大きさ、待遇面の課題などがあります。また、利用者に対して一定の人員配置が必要なため、他業界のように単純な省人化だけで解決しにくい点も特徴です。
そのため、介護記録のデジタル化、見守り機器の導入、業務分担の見直し、採用ターゲットの拡大など、複数の施策を組み合わせる必要があります。
技術者の高齢化と若手不足が課題の建設業界
建設業界では、就業者の高齢化と若年入職者の減少が長年の課題です。国土交通省の白書でも、建設業や運輸業では今後も就業者の高齢化と若年者の入職減少が見込まれ、中長期的な担い手の確保・育成が喫緊の課題とされています。
建設業は、技能の習得に時間がかかるうえ、屋外作業や安全管理、繁閑差への対応が必要です。そのため、単に採用人数を増やすだけではなく、技能継承、施工管理の効率化、ICT活用による省力化が重要になります。
特にインフラ更新や災害対応を担う業界であるため、担い手不足は企業単体の問題にとどまりません。社会基盤の維持という観点からも、継続的な人材確保と生産性向上が求められています。
高い離職率が慢性化している飲食・宿泊業界
飲食・宿泊業界は、コロナ禍後に需要が戻る中で、人手不足感が特に強まっている業界です。厚生労働省の労働経済白書でも、宿泊業・飲食サービス業では感染拡大前よりも人手不足感が強まっているとされています。
背景には、土日祝や夜間勤務の多さ、体力的・精神的負担、賃金水準、アルバイト比率の高さなどがあります。入職もある一方で離職も多く、採っても定着しにくい構造になりやすいのが特徴です。
この業界では、採用広報だけでなく、シフト設計、オペレーションの標準化、セルフオーダーや配膳支援などの省力化施策が重要です。現場負荷を下げることが、採用力と定着率の両方に効いてきます。
専門人材の獲得競争が激化するIT業界
IT業界では、人数の不足だけでなく、特定スキルを持つ人材の確保競争が激しくなっています。経済産業省の試算をもとにした調査では、2030年のIT人材需給ギャップは16万人から79万人不足するとされています。
特に不足しやすいのは、AI、クラウド、セキュリティ、データ活用、プロジェクトマネジメントなどの分野です。また、全業界でDXが進む中、IT企業同士だけでなく、事業会社との獲得競争も発生しています。
そのため、IT業界の人手不足対策では、採用だけに頼らず、育成、リスキリング、外部パートナー活用、内製と外注の役割整理が重要です。人材獲得競争の中で勝つには、給与だけでなく、案件の魅力や成長機会も重要な要素になります。
人材確保が難しくなっている小売業界
小売業界でも、人手不足は大きな課題です。厚生労働省の労働経済白書では、小売・サービス分野の人手不足は正社員の方がパート・アルバイトより深刻であり、人手不足事業所ほど離職率が高いことが示されています。
小売業では、接客、品出し、在庫管理、レジ対応など多様な業務を限られた人数で回す必要があります。営業時間が長い、繁閑差が大きい、現場業務が細かく分かれているといった事情から、現場の負荷が蓄積しやすい業界です。
対応策としては、バックヤード業務の効率化、評価制度の見直し、多様な働き手が活躍しやすい環境整備が有効とされています。採用だけでなく、辞めにくい職場づくりが特に重要です。
人手不足が企業にもたらす4つの経営リスク
人手不足は、単に採用活動が難しくなるという問題にとどまりません。必要な人員を確保できない状態が続くと、現場の負荷増加、品質低下、売上機会の損失、技術継承の停滞といった問題が連鎖的に発生し、企業全体の競争力や事業継続性にまで影響を及ぼします。
特に注意したいのは、人手不足の影響が一部門だけで完結しにくい点です。
たとえば、営業や現場の人員不足は、既存社員の長時間労働を招き、離職の増加につながります。さらに人が減ることで、顧客対応や納期、品質管理にも無理が生じ、結果として受注機会や既存顧客との関係にも悪影響が広がります。
つまり人手不足は、「採れない」という入口の問題ではなく、企業経営全体を圧迫する構造的なリスクとして捉える必要があります。
既存社員の業務負担増加と連鎖的な離職
人手不足が起きたとき、最も早く影響が表れやすいのは既存社員の働き方です。
欠員を補うために、一人あたりの担当業務が増え、残業や兼務、急なシフト調整が常態化しやすくなります。その結果、疲労や不公平感、不満が蓄積し、職場へのエンゲージメントが下がりやすくなります。
この状態が長引くと、現場では「辞めた人の仕事を残った人で埋める」状態が固定化し、さらに離職を招く悪循環に入りやすくなります。特に中核人材や管理職、専門職が抜けた場合は影響が大きく、日常業務の停滞だけでなく、部門運営そのものが不安定になる可能性があります。
サービスや商品の品質低下による顧客離れ
人手不足が続くと、現場はどうしても「まず目の前の業務を回すこと」を優先しやすくなります。その結果、確認作業の省略、対応のばらつき、引き継ぎ不足、接客品質の低下、納期遅延、ミスの増加などが起こりやすくなります。
こうした品質低下は、一度のトラブルだけで終わらない点が厄介です。
顧客から見ると、対応の遅れやミスは「人手不足だから仕方ない」では済まず、企業への信頼低下として受け取られます。BtoCでは口コミや再来店率に影響し、BtoBでは継続取引や追加発注の見送りにつながる可能性があります。つまり、人手不足による品質低下は、現場の問題ではなく、売上やブランド価値に直結する経営リスクです。
また、人が足りない状態では、教育やチェック機能も弱まりやすくなります。経験の浅い人材が十分なフォローを受けられないまま現場に出ることで、さらに品質が不安定になることもあります。
このように人手不足は、現場の処理能力を落とすだけでなく、企業が長年築いてきた顧客信頼を傷つける要因になり得ます。
事業拡大のチャンスを逃す機会損失
人手不足の影響は、今ある業務を守れなくなることだけではありません。本来であれば取り込めたはずの案件や需要に対応できず、成長機会そのものを逃してしまう点も大きなリスクです。
たとえば、新規案件の相談が来ても担当者を確保できない、新規出店や新サービスの立ち上げを進めたくても運営人材が足りない、繁忙期の受注を増やしたくても供給体制が追いつかない、といった状況が起こります。このような状態では、需要があるにもかかわらず売上に結びつけられず、競合他社に機会を奪われることになります。
さらに深刻なのは、成長投資の意思決定そのものが慎重になりやすいことです。本来であれば攻めるべき局面でも、「回せる人がいない」という理由で新たな挑戦を見送る状態が続くと、企業の成長速度は鈍化します。
人手不足は日々の現場運営を圧迫するだけでなく、中長期の経営戦略の実行力を弱める要因にもなります。
技術やノウハウが次世代に継承されない
人手不足が続くと、日常業務を回すことが優先され、教育や引き継ぎに十分な時間を割きにくくなります。その結果、ベテラン社員が持つ判断の勘所や現場対応の工夫、顧客対応の蓄積、トラブル時の対処法といった重要な知見が、言語化されないまま失われる可能性があります。
このリスクは、建設、物流、製造、介護のように、現場経験が品質や安全性に直結する業界で特に大きくなります。
形式的なマニュアルだけでは補いきれない暗黙知が多い業務では、経験者の離職や高齢化が進むほど、組織としての再現性が下がります。結果として、同じ品質で業務を継続できなくなったり、特定の人がいなければ現場が回らない属人的な体制が固定化したりするおそれがあります。
また、技術継承が滞ると、単に知識が失われるだけではありません。若手が育たず、次の管理職や中核人材が育成されないことで、将来的な組織運営にも空白が生まれます。
短期的には見えにくいものの、この問題は数年後に「担い手がいない」「任せられる人がいない」という形で顕在化しやすく、事業継続上の深刻なリスクになり得ます。
人手不足を解消するために企業が取り組むべき8つの対策
人手不足対策は、単独施策では成果が出にくいのが実情です。「辞めにくくする」「採りやすくする」「少ない人数でも回るようにする」という3つの視点で組み合わせることが重要です。
| 対策 | 主な目的 | 向いている課題 | 具体策 |
|---|---|---|---|
| 職場環境改善 | 定着率向上 | 離職が多い | 1on1、シフト見直し、相談窓口整備 |
| 待遇・評価見直し | 採用力・定着率向上 | 応募不足、離職増 | 給与見直し、評価基準明確化 |
| 柔軟な働き方 | 採用対象拡大 | フルタイム人材が採れない | 時短勤務、フレックス、テレワーク |
| 多様人材活用 | 母集団拡大 | 採用母集団が狭い | シニア、女性、外国人活用 |
| 採用チャネル拡大 | 応募数増加 | 求人媒体依存 | SNS、リファラル、ダイレクト採用 |
| IT・AI活用 | 省人化・生産性向上 | 定型業務が多い | RPA、AI、セルフレジ、需要予測 |
| アウトソーシング | 社内負荷軽減 | ノンコア業務が重い | 経理、労務、採用、BPO委託 |
| 業務フロー見直し | 生産性向上 | 属人化、無駄作業が多い | 業務棚卸し、標準化、承認フロー削減 |
①働きやすい職場環境を整える
最優先で見直したいのは、従業員が働き続けやすい環境です。長時間労働、休みづらさ、コミュニケーション不足、相談しにくい雰囲気がある職場では、採用しても定着しにくくなります。
具体的には、1on1面談、シフトの公平性見直し、業務量の平準化、ハラスメント防止、相談窓口の整備などが考えられます。
職場環境の改善は、すぐに大きなコストがかからない施策も多いです。まずは離職理由の把握から始め、現場の不満が大きいポイントを優先して改善することが重要です。
②給与水準や評価制度を見直す
採用と定着の両面に影響するのが、待遇と評価の納得感です。給与水準が市場より大きく低い場合、応募が集まりにくいだけでなく、在籍社員の転職リスクも高まります。
また、給与だけでなく、何を評価するのかが曖昧な企業も定着率が下がりやすくなります。
仕事の内容やスキルを適切に評価し、昇給や役割に反映させる仕組みが必要です。小売・サービス分野では、仕事やスキルを評価して給料に反映させる仕組みが人手不足緩和に有効と分析されています。
すぐに大幅な賃上げが難しい場合でも、手当の見直し、評価基準の明文化、キャリアパス提示などは取り組みやすい施策です。待遇改善はコストではなく、採用難と離職による損失を減らす投資として考える必要があります。
③テレワークや柔軟な働き方を導入する
すべての職種でテレワークができるわけではありませんが、柔軟な働き方を広げることは有効です。フレックスタイム、短時間勤務、勤務日数の調整、副業・兼業の許容など、職種に応じた柔軟性を持たせることで、採用対象を広げやすくなります。
特に育児や介護と両立したい人、フルタイム勤務が難しい人にとっては、柔軟性の有無が応募判断に直結します。現場職が中心の企業でも、バックオフィス業務や一部管理業務で柔軟な制度を導入する余地はあります。
重要なのは、制度を作るだけでなく、使いやすくすることです。利用実績がない制度は、採用面でも定着面でも効果が出にくいため、運用まで含めて設計する必要があります。
④シニア・女性・外国人など多様な人材を活用する
採用難が続く中では、従来の採用ターゲットだけに頼らないことが重要です。シニア、子育て中の女性、外国人材、未経験人材など、多様な人材が働きやすい環境を整えることで、採用の母集団を広げられます。
ただし、単に採るだけでは不十分です。勤務条件、教育体制、言語対応、業務分解などを見直し、多様な人材が活躍できる前提を整える必要があります。
⑤採用チャネルを増やす
求人媒体だけに頼った採用は、競争が激しくなりやすいです。そのため、SNS、リファラル採用、ダイレクトリクルーティング、業界特化型サービス、地域ネットワークなど、複数チャネルを組み合わせることが重要です。
特に、知名度で不利になりやすい中小企業は、募集要項だけでなく、職場の雰囲気や働く人の声を伝える工夫が必要です。採用広報を強化することで、条件だけでは伝わらない魅力を補えます。
また、採用チャネルを増やす前提として、自社がどんな人に来てほしいのかを明確にすることも欠かせません。ターゲットが曖昧なまま媒体を増やしても、採用効率は上がりにくくなります。
⑥ITツールやAIを活用して業務を自動化する
人を増やしにくい時代だからこそ、業務そのものを見直す必要があります。定型業務、転記作業、問い合わせ対応、シフト作成、需要予測などは、ITツールやAIで効率化しやすい領域です。
たとえば、RPAで事務作業を自動化する、AIで需要予測や問い合わせ対応を行う、セルフレジや配膳ロボットを導入するといった方法があります。こうした取り組みは、単に人を減らすためではなく、限られた人材を付加価値の高い業務に振り向けるために有効です。
導入時は、いきなり大規模に進めるのではなく、負担が大きく定型化しやすい業務から始めるのが現実的です。「何を自動化するか」を決める前に、「どの業務が人手不足のボトルネックか」を整理することが重要です。
⑦ノンコア業務はアウトソーシングを活用する
人手不足に悩む企業ほど、社内で抱え込む業務を見直す価値があります。経理、労務、採用実務、カスタマーサポート、データ入力など、ノンコア業務を外部に委託することで、社内人材をコア業務に集中させやすくなります。
特に、急な欠員や繁忙期対応では、外部リソースの活用が即効性を持ちやすいです。一方で、何でも外に出せばよいわけではなく、業務の切り分け、品質基準、責任範囲の整理が必要です。
定型業務はBPO、専門性が高い課題は外部の専門人材活用、短期の立て直しはプロジェクト型支援など、目的に応じて手段を選ぶことが重要です。
⑧業務フローを見直し生産性を高める
見落とされがちですが、人手不足対策として非常に重要なのが業務フローの見直しです。そもそも今の仕事の進め方に無駄が多ければ、人を採っても不足感は解消しにくくなります。
たとえば、承認フローが長い、同じ情報を何度も転記している、属人化した作業が多い、繁忙期だけ仕事が集中しているなどは典型例です。
こうした状態では、採用しても現場が楽になりません。
まずは業務を棚卸しし、「やめる」「減らす」「まとめる」「自動化する」「外に出す」に分けて整理することが重要です。人手不足対策は採用施策だけでなく、業務設計の見直しとセットで進める必要があります。
人手不足を解消した企業の成功事例3選
人手不足対策は、現場に合った形で進めることが重要です。ここでは、公開情報で確認できる企業の取り組みから、参考にしやすい事例を紹介します。
①すかいらーく|配膳ロボット導入で人手不足を解消
すかいらーくグループは、店舗の業務効率化を目的に配膳ロボットを本格導入しました。
2021年11月ごろから導入を進め、2022年中に約2,100店舗へ3,000台を配置しています。店舗での業務効率化や人手不足の解消を実現していると説明しています。
この事例のポイントは、単にロボットを置いただけではなく、ロボットとスタッフの協働を前提にオペレーションを設計している点です。さらに、POSレジ刷新やセルフレジ、テーブル決済も進めており、複数施策で店舗負荷を下げています。
飲食業で参考になるのは、「接客品質を維持しながら、省力化できる工程を切り出している」点です。人にしかできない業務と、機械に任せられる業務を分ける考え方が有効です。
②ヤマト運輸|DXによる物流効率化
ヤマトホールディングスは、物流の2024年問題を見据え、DXによる効率化を進めています。あらゆる情報をリアルタイムに把握し、社内外のシステムと連携できる「ヤマトデジタルプラットフォーム」を活用し、輸配送・作業の効率化や働きやすさの向上に取り組んでいるとしています。
また、統合レポートでは、EC化に伴う物流構造の変化に対応し、輸送・仕分け作業の効率化を進める方針が示されています。デジタル基盤整備とオペレーション改革を一体で進めている点が特徴です。
物流業界では、人を増やすだけでなく、予測、配車、仕分け、情報連携の精度を高めることが重要です。ヤマトの事例は、現場改善をDXで支える考え方の参考になります。
③ワークマン|店舗オペレーションの効率化
ワークマンは、店舗運営と物流の効率化を継続的に進めています。2023年3月期決算説明会資料では、バックルームの多機能化改装による店舗作業の効率化を進めていることが示されています。
小売業で参考になるのは、店舗だけを見るのではなく、物流と在庫管理まで含めて効率化している点です。人手不足対策は、現場の人数だけでなく、裏側の業務設計を変えることで効果が大きくなります。
人手不足の解消は「フリーコンサルタント.jp」へご相談ください
「人手不足への対策が必要なのはわかるが、何から着手すべきかわからない」「採用、定着、業務改善、DXのどこに優先して投資すべきか判断できない」このような悩みを持つ企業は少なくありません。
人手不足対策は、採用だけで解決する課題ではありません。離職理由の分析、業務フローの見直し、IT導入、外部人材活用まで含めて整理する必要があります。ただし、社内だけでこれらを同時に進めるのは負担が大きく、専任人材を置きにくい企業も多いです。
フリーコンサルタント.jpでは、伴走型の即戦力プロ人材を最短即日で紹介し、国内最大級26,000名のプロフェッショナル登録、利用企業1,000社突破、短期から長期まで柔軟対応と案内しています。短期的な立て直しから中長期の業務改革まで、必要なテーマに応じて専門人材を活用しやすい点が特徴です。
人手不足対策でお悩みの際は、「フリーコンサルタント.jp」へご相談ください。
フリーコンサルタント.jpによる人手不足解消の成功事例
フリーコンサルタント.jpでは、企業ごとの課題に応じた支援を進めています。ここでは、人手不足の解消につながった企業事例を2つ紹介します。
事例①
大手運輸業界企業では、エネルギー領域に関する複数のプロジェクトが同時進行しており、計画立案や進捗管理、課題整理を横断的に進める体制づくりが求められていました。しかし、エネルギー領域に関する知見を持ちながら、複数の事業部やチームと連携してプロジェクトを推進できる人材が不足しており、各案件の管理や調整が属人的になっている状況でした。
| 当時の課題 | ・エネルギー領域において複数のプロジェクトが進行しており、横断的に計画立案や進捗管理を行う体制が不足していた ・事業部間やチーム間の調整が多く、関係者とのコミュニケーションに工数がかかっていた ・プロジェクト推進の過程で生じる論点や対立点の整理に時間を要していた ・複数案件の工程管理、リスク管理、課題管理を並行して進められる人材が不足していた ・エネルギー領域の知見が社内に十分に蓄積されておらず、継続的な推進体制を築きにくかった |
|---|---|
| 実施したこと | ・エネルギー業界での実務経験を有するPMO人材が参画し、複数案件の全体整理を実施 ・各プロジェクトの計画立案、進捗管理、リスク管理、課題管理を横断的に支援 ・社内外の会議運営や議事整理、関連資料の作成を通じて、関係者間の認識を統一 ・事業部間やチーム間で発生する論点や対立点を整理し、合意形成を支援 ・プロジェクト推進の進め方や課題発見の観点を社内メンバーへ共有し、ノウハウの蓄積を進めた |
これらの取り組みにより、複数のエネルギー関連プロジェクトを計画通りに進行しやすい体制が整いました。加えて、これまで外部人材に依存していた知見や進め方が社内にも蓄積され、プロパー社員が一定程度自走できる状態へと移行しています。
また、事業部間やチーム間の調整にかかる時間が短縮され、論点整理や合意形成を行いながら、よりスムーズにプロジェクトを遂行できるようになりました。人手不足により残業が続いていた状況も改善され、現在は効率的に業務を進められる体制づくりが進んでいます。
事例②
外資系SaaSサービス会社では、社員数10名規模の組織で採用活動を進めていましたが、一時的な人手不足により採用担当者が不在となり、採用活動そのものが停滞していました。CEOが採用業務を兼任していたものの、他業務との両立が難しく、十分な時間を割けない状態が続いていたため、採用実務を主体的に担える人材の確保が急務となっていました。
| 当時の課題 | ・採用担当者が不在となり、採用活動が停滞していた ・CEOが採用業務を兼任していたが、他業務が多く十分な対応時間を確保できなかった ・採用実務を継続的に推進する体制が整っていなかった ・スタートアップ特有のスピード感に対応しながら、採用プロセスを設計・運用できる人材が必要だった ・外資系企業文化への理解に加え、英語を用いたコミュニケーションにも対応できる人材が求められていた |
|---|---|
| 実施したこと | ・採用実務に豊富な経験を持つプロ人材が参画し、停滞していた採用活動を再始動 ・スカウト数や面談設定数などの目標値を設定し、初日からスカウト業務を開始 ・候補者対応、面談調整、選考管理など採用実務を一貫して代行 ・採用フロー全体を見直し、選考ステップの最適化を実施 ・必要に応じて面接官やリクルーター側の育成・改善にも対応し、採用体制の整備を進めた |
これらの取り組みにより、停止していた採用活動が短期間で立て直され、想定していた面談数を確保できる状態へと回復しました。初日からスカウトを開始したことで面談数も着実に増加し、採用活動を前に進める実務体制が整っています。
また、CEOが採用実務に割いていた工数を削減できたことで、社内のピープルマネジメントや面接対応など、より優先度の高い業務に集中できる環境が整いました。採用活動の停滞を解消するだけでなく、今後の継続的な採用推進につながる基盤づくりにもつながっています。
まとめ
人手不足は、単に採用数が足りないという問題ではありません。
生産年齢人口の減少、働き方の価値観の変化、業界構造、業務の非効率が重なって生じる、経営課題です。
特に重要なのは、対策を一つに絞らないことです。
働きやすい環境づくりで離職を防ぎ、採用チャネルを増やして母集団を広げ、ITやAI、アウトソーシングで少ない人数でも回る体制を整えることが必要です。
また、自社の課題が「人数不足」なのか、「専門人材不足」なのか、「業務設計の問題」なのかを切り分けることが、対策の精度を高めます。
採用だけで解決しない場合は、外部の専門人材を活用しながら、業務改革やDXまで含めて進める視点も重要です。
まずは、離職理由、採用歩留まり、現場の業務負荷、属人化の状況を整理し、自社の人手不足がどこで起きているのかを見える化することから始めてみてください。









