企業や自社事業を推進していく中で、マーケティング戦略はとても重要です。しかし、「マーケティング戦略を立案して自社の売上を向上したいけど、参考になるフレームワークや事例が見つからない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
自社のビジネスを成功に導くには、きちんとしたマーケティング戦略を立案し実践することが不可欠です。また、さまざまなフレームワークは、自社の抱える問題点を洗い出し解決への糸口を示してくれます。
本記事では、戦略の立案手順から役立つフレームワーク、成功事例や戦略立案の重要性にいたるまで詳しくご紹介していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
■目次
1.マーケティング戦略の立案手順
マーケティング戦略を立案するには、一般的に以下の手順に従って進めます。手順に従って進めることで、マーケティング戦略で立案した施策の成果を最大限引き出せるでしょう。マーケティング戦略の立案手順は次のとおりです。
1つずつ詳しく説明するので、ぜひ実践してみてください。
①内部や外部環境分析をする
まず初めに、自社商品が置かれている環境の分析です。内部や外部環境を把握していなければ、効果的なマーケティング戦略の立案をすることができません。内部環境の分析では自社の強みや弱み、外部環境の分析では消費者ニーズや市場動向、競合他社を調整、分析します。
自社の置かれた環境を分析することでどんなターゲット層に自社の商品やサービスのニーズがあるのか、自社の立ち位置を知ったうえで弱みや強みを把握することが可能です。なお環境分析には、後述する「SWOT分析」等のフレームワークを用いるのが一般的なため、ぜひ活用してみてください。
②セグメンテーションとターゲティングを行う
次にターゲット層を切り分け(セグメンテーション)を行い、ターゲット層を切り分けたなかでもどの層に焦点を当てるのか対象を絞ります。(ターゲティング)
セグメンテーションとは、さまざまな条件、属性で市場を細分化して分析することです。たとえば、地理的条件で「薄味好みの多い関西」と「濃い味好みの多い関東」を分けるなど、自社商品やサービスがどの層のターゲットにとって意味があるものなのかを見極めます。他にも、20代男性(未婚)や50代女性(既婚)のような属性でも細分化することが可能です。
ターゲティング(ターゲティング)とは、市場の細分化(セグメンテーション)を行った後、その市場に対してターゲットを絞ってマーケティングを展開すること。
次にターゲティングでは、セグメンテーションで細分化した層に、どの層に絞り込むのかターゲティングを行います。ターゲティングを通じてターゲットを絞り込めば、顧客が抱えるニーズに応える自社商品やサービスを提供するための戦略策定につながります。
③バリュープロポジションを明確にする
バリュープロポジションとは、顧客に自社商品、サービスの価値を提案することです。バリュープロポジションを明確にすることで、顧客のウォンツ※は高まり購買機会の増加が期待できます。
※ウォンツとは、消費者のニーズを満たす商品やサービスへの欲求のこと。
価値を顧客に提案する際には、競合他社にはないメリットを持ち、かつ消費者の求めているものを持ち合わせているかを重点的にチェックしましょう。自社商品やサービスは顧客にとってどんなメリットをもたらすのか、競合他社との差別化として優位になるポイントは何かを明確にします。
④マーケティングミックスを行う
マーケティングミックスとは、消費者に自社商品やサービスを選んでもらいやすくするために、4Pと呼ばれる要素を組み合わせるフレームワークです。4Pは以下の項目から成り立っています。
- Product(製品)
- Price(価格)
- Place(流通)
- Promotion(プロモーション)
さらに、これを消費者サイドから見直した4Cをミックスすることで、より緻密な戦略をとることができます。4Cは以下の項目から成り立っています。
- Customer Value(顧客価値)
- Cost(経費)
- Convenience(利便性)
- Communication(コミュニケーション)
つまり、マーケティングミックスでは顧客価値の高い製品を購入しやすい価格に設定し、ターゲットが購入しやすいように小売店や通販サイト(ECサイト)など販売チャネルを設定します。
2.マーケティング戦略を立てる際に役に立つフレームワーク5種類
マーケティング戦略を立案する手順が分かっても、具体的に何をどう実行すれば良いか分からないままではマーケティング戦略を立案することはできません。
そこで、ここではマーケテイング戦略を立てるのに役立つフレームワークを6つご紹介します。
これらのフレームワークはいずれも意思決定や問題解決する際に共通して使える枠組みです。予め決められた項目を埋めていくことで、取るべき戦略を具体的に決めることができるでしょう。すぐに導入できそうなものがあれば、率先して活用していくことが成功への近道です。
SWOT分析
SWOT分析は、自社を内側と外側から見つめ直すのに役立つフレームワークです。以下に挙げる4つの観点から現状の分析を行います。
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunity(機会)
- Threat(脅威)
たとえば、自社製品の性能の良さは「強み」、ラインナップの少なさは「弱み」というように分類していきます。一方「機会」は自社にとってチャンスとなり得る市場拡大や競合他社のサービス離脱など、自社にとってプラス要素の外的環境です。また、競合他社の店舗が近隣にオープンしたなどの「脅威」は、マイナス要素に該当します。
こうして得られた分析結果から、さらなる戦略を構築していきましょう。これら4要素を「強み×脅威」のように組み合わせて分析する「クロスSWOT分析」を行って、現状を理解したうえで課題と解決に必要な対応を検討します。
セグメンテーション
セグメンテーションは、顧客を共通の属性や行動データに基づいていくつかのセグメントに区分けすることです。これは顧客についてより深く知り、より効率よくアプローチするのに欠かせない手法になります。
セグメンテーションの区分けでは、人口統計情報を用いて年齢や性別、居住地などの属性で分類していきます。行動面の区分けに用いられるのは、商品の購買履歴やインターネットの閲覧履歴が主なものです。こうしていくつかのセグメントに分けたら、どこを重点的にターゲットにするかを決定します。
AIDAモデル
AIDAモデルとは、購買プロセスを明確にするフレームワークです。広告の効果測定に用いられる古典的モデルであり、顧客が商品を購入するまでの心理的なプロセスを以下の4段階に分類しているのが特徴と言えます。
- Attention(注意)
- Interest(興味)
- Desire(欲求)
- Action(行動)
まずは、目を引くコピーや画像で顧客の目を引くことから始め、商品やサービスのメリットを伝え興味を持ってもらいます。その後は、商品やサービスを使ってみたいと思わせるベネフィットを提示し、購入を促すのが王道パターンです。
ただし、インターネットが普及した近年では、次の5つの段階に分類した「AISAS」を用いることも多くなってきました。AISASとは、顧客が商品やサービスの利用に至る購買行動プロセスを表すモデルです。
- 注意(Attention)
- 興味(Interest)
- 検索(Search)
- 行動(Action)
- 共有(Share)
さらに、SNS全盛の現代では「ULSSAS」を用いる企業も増えてきています。ULSSASとは、SNS時代の購買行動モデルです。ULSSASは次の6段階で構成されています。
- Unknown(潜在顧客)
- Listening(情報収集)
- Sharing(情報共有)
- Searching(検索)
- Action(購買)
- Satisfaction(満足)
自社のマーケティング戦略の立案をする際にぜひ活用してみてください。
カスタマージャーニーマップ
カスタマージャーニーマップとは、顧客がサービスや商品の利用に至るまでの意思や行動、感情のプロセスをまとめたものです。同時に自社のアプローチ施策をその図に織り込むことで、取るべき行動や課題を俯瞰的に見渡せます。
カスタマージャーニーマップは、大きく分けて以下の5つのフェーズから成り立ちます。
- 顧客が商品、サービスに興味を持つ
- 他社の商品、サービスと比較する
- 商品、サービスの購買を決断する
- 商品、サービスを実際に利用する
- 利用した感想を他人と共有する
広告、宣伝はどの媒体でいつ行うのか、購買の決断を促す「最後の一押し」をどう行うのかなど、自社が打つべき手をしっかりと練り上げていきましょう。
Blue Ocean Strategy
Blue Ocean Strategy(ブルーオーシャン戦略)とは、競合他社の少ない(あるいはいない)新しい市場へ積極的に乗り出していく戦略のことです。未開の市場で新市場を創造することで、他社と競合することなく事業展開することができます。
一方、Red Ocean Strategy(レッドオーシャン戦略)とは、多くの競合がいる中に参入して勝ち残る戦略のことです。レッドオーシャンでは新たに需要を生み出すことは難しく、多くの競合企業と戦い、生き残るための戦略が必要になります。
Red Ocean Strategy(レッドオーシャン戦略)で勝ち抜くためには莫大な資金が必要になるため、中長期にわたって利益を積み上げたい企業はBlue Ocean Strategy(ブルーオーシャン戦略)がおすすめです。
3.【5選】マーケティング戦略の事例紹介
ここでは、マーケティング戦略の成功事例を企業ごとに紹介していきます。いずれ劣らぬ有名企業ばかりですが、ここまで生き残ってこられたのも綿密な戦略を立て、実行に移してきたからこそです。
5つの企業の取った戦略について詳しく説明していきます。
Apple Computer Company(アップルコンピュータ・カンパニー)
アップル社は日本や米国に及ばず、世界のいたるところでiPhoneやiPadを普及させた企業です。同社は、マーケティングミックス(4P)を活用したマーケティングを行いました。
マーケティングミックス(4P)に則って自社商品を分析し、他社が真似できない独自のリンゴのデザイン性や、高品質な製品でブランドイメージの構築と維持で差別化を図っています。
また他社との差別化として、優れた操作性にあります。過去のスマートフォンモデルではボタン1つに対し、現在のスマートフォンモデルはボタンがありません。ボタンを廃止するという斬新なアプローチをすることで、顧客を新たなテクノロジーの世界へと導いています。
さらに、オンラインショップと実店舗を組み合わせた「オムニチャネル戦略」をとることで、顧客体験の充実化を図っています。新製品の発売日にはかならずといっていいほど注目を集めるイベントとなり、製品への関心を高めることに成功したと言えます。
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社
全世界的な知名度を誇る「コカ・コーラ」ブランドを日本国内でさらに高める努力を続けている企業が、コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社です。同社もマーケティングミックス(4P)を活用したマーケティングを行いました。
炭酸飲料をはじめとしたその他飲料ブランド(綾鷹、いろはすなど)を手軽な価格で提供し、幅広い一般の消費者にアピールをしています。知名度や企業イメージの向上には、各種音楽イベントやスポーツイベントへの協賛が活用されました。1番大きなものではオリンピックのワールドワイドパートナーが挙げられます。本大会はもちろん、プレイベントからイメージカラーの赤と白のロゴがあちこちに掲げられることで、人々の脳裏に自社製品を強力にアピールできました。その結果、現在も世界中から愛され続けている企業となっています。
株式会社ナイキジャパン
「Just Do It」のスローガンとユニークな「スウィッシュ」のデザインで知られる株式会社ナイキジャパンは、競合他社との差別化として、独自のブランドストーリーを構築しました。「何かを信じろ。たとえそれですべてが犠牲になるとしても」という消費者に響くメッセージを伝え、メッセージに賛同する層の購買意欲を促すことに成功しました。
さらに、若年層にターゲットを定め、より効果的なマーケティング活動を実現させています。バスケットボールの田臥勇太、野球の上原浩治、ダルビッシュ有を広告宣伝に起用したのもターゲティングの一環です。また、若年層向けにオンラインでの販売やアプリを使用したキャンペーンに力を入れ、若年を意識したデジタル化へシフトチェンジをしています。
レッドブル・ジャパン株式会社
レッドブル・ジャパン株式会社は、世界に「エナジードリンク」という新ジャンルを確立しました。これは、いわゆるスポーツドリンクとは異なるジャンルのものです。いわば、同社は自らの手で「Blue Ocean」を創出したとも言えます。
同社は他社で掲げけているコンセプト「疲労回復」ではなく、これから頑張る人向けに「ゼロをプラスにすること」をコンセプトに掲げることで差別化しています。その結果「勉強をもっと頑張りたい」「仕事で成功したい」といった層を狙い販売促進を促すことで、認知向上に成功しました。
またブランドイメージを浸透させるために無料で商品を配布したり、エクストリームスポーツへのスポンサー契約を行ったりと、見事にブランディングすることに成功しています。
スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社
スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社はマーケティングミックス(4P)を活用したマーケティングを行い、自宅でも職場、学校でもない第三の居場所「サードプレイス」を提供することで、顧客からの支持を得ることに成功しました。これは、バリュープロポジションを明確にできた好例だといえます。
また、季節限定商品や地域限定商品といった顧客のニーズに合わせた商品を次々と開発していったのも同社のとった戦略の特徴です。これにより顧客満足度と顧客ロイヤルティの向上へと結びつきました。
スターバックスで提供しているドリンクは他のカフェやコンビニと比較すると高めな価格設定ですが、ドリンクの質が高く、居場所としての価値まで提供しているからこそ多少高額でも売れる理由となっています。逆に、高めな価格設定にすることで「少しリッチ」といったイメージを持たせることも可能です。
4.マーケティング戦略の重要性は?企業にとってどんな役割を果たすのか
マーケティング戦略が企業にとっていかに重要な役割を果たすのか、あらためてまとめてみました。業績を安定させるためには、行き当たりばったりの単発的な施策を打つのではなく、中長期を見通した戦略こそが求められます。
以下の章では、マーケティング戦略の持つ5つの役割について解説していきます。
役割①目標設定と方向性
マーケティング戦略は、顧客のニーズを把握して自社商品やサービスをよりよく伝えるために重要なものです。また、マーケティング戦略を策定し目標を明確にすることで、自社内の各部門の方向性が明確になり、全員が同じ目標に向かって施策を実行することができるようになります。
反対に、全員がバラバラの方向を向いているようでは、思うような方向へ進めないばかりか、場合によっては逆方向へ進んでしまうリスクすら生じかねません。
そのため、マーケティング戦略の策定ならびに目標を明確に示し、各部署間で進む方向性を共有しなければなりません。
役割②顧客のニーズの理解
マーケティング戦略では顧客のニーズを理解して、それに合わせたサービスや製品の提供方法を設計する必要があります。その際に気をつけたいのが、あくまでも顧客目線で価値提供を考えることです。
顧客が求めているのは商品やサービスのメリットではなく、そこから得られるベネフィットであることを忘れないようにしましょう。商品やサービスを購入することで、どのような顧客体験を得られ、利益を享受するのかを意識しなければならないでしょう。
役割③競争力の獲得
マーケティング戦略では、競合他社との差別化を図るための手段を考察することも重要になります。バリュープロポジションの項でお話ししたように、自社の商品やサービスに競合他社との競争力を持たせる必要があります。
市場調査や競合分析を行い、自社商品やサービスの強みを把握することで、他社にはない差別化要因となるものを見つけることができるでしょう。何かひとつ飛び抜けたものがあれば、その分顧客へのアピール度も高まります。
役割④リソースの最適化
マーケティング戦略を立てるのに用いるフレームワークは、限られたリソースを最適化するのに役立ちます。ヒト、モノ、カネに代表されるリソースは無尽蔵に湧いてくるものではありません。
限られたリソースを有効利用するには、何にどれだけ投下するかがカギを握ります。もちろん、その決定はさまざまなフレームワークによって立てられた戦略に則って決めるべきものです。自社のビジネスを成功に導くためにも、フレームワークを活用してリソースを有効利用しましょう。
役割⑤ビジネス目標の達成
マーケティング戦略は、それぞれの企業が掲げる次のようなビジネス目標の達成に大きく貢献します。
- 企業やブランドの認知度向上
- 市場シェアの拡大
- 顧客との関係強化
企業利益の最大化や顧客満足度向上といった目的達成にに向けて、適切なマーケティング戦略を行い、戦略の実行に向けた明確な目標数値の設定と、目標達成に向けた施策立案という正しい順番で実施していくことが鍵となるでしょう。
5.まとめ
マーケティング戦略を立案するには、手順に従って進めることで成果を最大限引き出せるでしょう。マーケティング戦略の立案手順は次のとおりです。
- 内部や外部環境分析をする
- セグメンテーションとターゲティングを行う
- バリュープロポジションの明確にする
- マーケティングミックスを行う
どのフィールドでビジネスを展開するのかが決まれば、あとは顧客に自社の商品やサービスを顧客にアピールしていくかを決めるだけになります。他社にはない独自の価値を顧客に訴求していきましょう。
しかし「立案手順は分かったけど、フレームワークにどう落とし込めばいいか分からない」「専門知識を持った人にサポートしてほしい」といった悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。
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