採用戦略とは?立案方法と役立つフレームワーク、成功事例を解説! - freeconsultant.jp for Business
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最終更新日:2025.08.01
人事/組織構築/業務改善

採用戦略とは?立案方法と役立つフレームワーク、成功事例を解説!


少子高齢化による労働人口の現象や採用市場の競争が懸念されるなか「とりあえず求人を出す」だけでは、優秀な人材を確保するのが難しい時代に突入しました。

近年では、多くの企業が人材不足や採用のミスマッチなどの課題に直面しています。

そこで本記事では、企業にとって欠かせない「採用戦略」について解説します。採用戦略の立案方法と役立つフレームワークにも触れるので、ぜひご参考ください。

採用戦略とは?

採用戦略とは、企業が自社の経営目標や組織課題に基づいて「どんな人材を、いつ、どのように採用するか」を計画的に戦略立てることを指します。近年は、単に人手を補うためではなく、事業成長を支える戦力となる人材を確保するための仕組みづくりとして活用されるようになりました。

戦力となる人材を確保するには「組織のビジョン、カルチャーに合った人材を選ぶ」ことが欠かせません。同時に、必要な人材をタイミングよく確保すること、採用コストや離職リスクを最小化することも大切です。「三方よし」の採用にするための戦略が、採用戦略と言えます。

人事戦略との違い

人事戦略は、採用だけでなく適材適所での人材配置(タレントマネジメント)や既存社員向けの教育、研修も含む、人事全般の戦略を指す言葉です。人事戦略という大枠のなかに、採用戦略や研修戦略があるとイメージするのがわかりやすいでしょう。

また、採用は「人を採ること」、人事戦略は「人を活かすこと」を目的としています。人事戦略を成功させるには、まず「誰をどう採るか」という採用戦略が的確でなければなりません。逆に、採用だけうまくいっても、その後の育成や配置がうまくいかなければ、長期的な人材力強化にはつながらないのがポイントです。採用戦略と人事戦略を連動させることが、人材戦略の成功に欠かせない要素と言えます。

採用戦略が重要視される背景

採用戦略が重要視される背景として、人手不足の深刻化が挙げられます。

近年、少子高齢化による労働人口の減少で、優秀な人材の確保が難しくなりました。特に、専門的スキルや経験を持つ人材の競争が激化しています。IT技術者や医療、介護などの専門職を中心に、即戦力となる人材の需要が高まっているものの、供給が追いつかない状態が続いているのです。

結果、単に人数を集めるだけでなく、質の高い人材を効率的に確保、維持するための採用戦略が不可欠となりました。人材は企業の競争力の源泉であり、適切な人材を効率的に採用、育成することが、これからの事業成長の鍵となると考えられます。

採用戦略を立てる3つのメリット

ここでは、採用戦略を立てるメリットを解説します。なぜ複雑な採用戦略を組み立てる必要があるのか、探っていきましょう。

1.採用のミスマッチが防げる

1つ目のメリットは、採用戦略をしっかり立てることで、企業が求めるスキル、人物像、価値観に合った人材を明確にできることです。結果として、仕事内容や職場環境にマッチした人材を採用できるため、入社後の業務適応がスムーズになるでしょう。独り立ちするまでの時間を短縮できるので、教育、研修にかかるコストも減らせます。

また、採用のミスマッチによる従業員のストレスや不満が減り、入社後すぐに辞めてしまうケースを減らせるのもメリットです。採用した人材が長く活躍できる環境を作ることで、従業員満足度も上がります。

2.採用コストの削減につながる

2つ目のメリットは、採用コストの削減につながることです。採用戦略を立てることで欲しい人材像や採用基準が明確になるため、ミスマッチな人材の採用を防ぎ、選考コストの増大や早期離職をなくしてコストを削減できます。

また、ターゲット層に合った求人媒体や採用手法を選択できるため、広告費や求人掲載費の無駄遣いも防げます。選考フローや面接手法を最適化し、スムーズな採用活動を実現することで、人事担当者の工数を削減する効果も期待できるでしょう。

3.求人応募の増加が見込める

3つ目のメリットは、応募者のニーズや価値観に合ったメッセージを発信できるようになり、応募者の増加が見込める点です。

採用戦略を明確にすることで、自社が求める人物像や任せたい業務内容も明確になるので「何をやっているかわからない企業」「どんなビジョンがあるか読みにくい企業」と思われることがありません。結果として、自社の方向性に共感してくれる人材をピンポイントで採用でき、求人応募数の増加も見込めます。

採用戦略の強化は、単に応募者数を増やすだけでなく、企業にとって最適な人材を引き寄せる大きな武器となるのです。

採用戦略の立て方と流れ

ここでは、採用戦略の立て方と流れを解説します。どのように自社の採用戦略を組み立てていくか、ステップごとに追ってみましょう。

1.採用戦略専門チームの創立

採用戦略を効果的に進めるためには、まずは社内で専任のチームを設置することが重要です。専門チームを立ち上げることで、採用活動を一元的かつ計画的に管理でき、成功率が高まります。

なお、偏った視点で計画が進んでしまうのを防ぐためにも、チームメンバーは人事担当者だけでなく現場のマネージャーや経営層、場合によってはマーケティング担当者など、様々な視点を持つメンバーを集めるようにしましょう。定期的なミーティングや共有ツールを活用し、メンバー間で状況を把握、共有することで、スピーディーな意思決定が可能になります。

2.採用計画を立てる

採用計画は、企業の成長戦略や事業計画と連動させて「どのような人材を」「いつ」「どのくらい採用するか」を具体的に決めるステップです。主に以下について策定しておくと、後々の戦略や施策を考えやすくなります。

  1. 採用人数
  2. ターゲット人材
  3. 採用予算
  4. 採用チャネル
  5. 採用目標

「ターゲット人材」では、求めるスキル、経験、資格、性格や価値観など、具体的な人材像を設定し、採用基準の基礎とします。「採用予算」には、求人広告費、人材紹介料、面接にかかる費用、内定者フォローなど、採用活動にかかる全体の予算を見積りましょう。

また、予定通りに採用できなかった場合の対応策もあらかじめ考えておくことが重要です。具体的かつ現実的な採用計画を立てることで、採用活動の方向性が明確になり、無駄なく効率的に進められます。

3.採用基準の設定を行う

採用基準は「どのような人材を採用するか」を判断する基準となります。具体的には、以下のポイントを抑えておきましょう。

  1. 必須スキル、資格
  2. 経験、業務適性
  3. 人物像、価値観
  4. 選考プロセスごとの評価ポイント

まずは、業務遂行に絶対に必要な技術や資格をリストアップし、最低限クリアすべき条件を設定します。求める職務経験の年数や具体的な業務内容、成果に基づく評価基準を定めておけば、ミスマッチのある人物を書類選考や応募の段階でふるいにかけやすくなるでしょう。

また、企業文化やチームとの相性を重視し、コミュニケーション能力や仕事への姿勢、企業理念への共感度などを基準に含めておくこともポイントです。基準が厳しすぎると優秀な人材を逃す可能性もあるため、業務の重要度や状況に応じて柔軟に見直すことも考慮します。

4.採用スケジュールを策定する

採用スケジュールを作っておくと、採用活動全体の流れを時期ごとに細分化でき、計画的に進めやすくなります。

  1. 募集開始から内定までの期間
  2. 選考段階ごとの期限
  3. 関係者のスケジュール調整期間
  4. 内定者フォロー期間
  5. 繁忙期や社内イベントの期間

まずは、求人広告の掲載開始日、応募受付期間、書類選考、面接日程、内定通知までのスケジュールを詳細に決めます。各選考プロセス(書類選考、一次面接、二次面接、最終面接など)の締め切りや実施日を設定し、遅れを防ぐことも大切です。

また、内定後の連絡やフォローアップなど入社準備に関するスケジュールも含めて計画し、内定者の辞退を防ぎます。社内の繁忙期や休暇期間などを考慮し、社内で協力を得られるようにしておけば、現場の協力も得やすくなるでしょう。

5.採用方法を決める

どのような手段やチャネルで人材を集め、選考するか、採用方法を決定します。採用方法に応じて、優秀な人材を効率的に獲得できるかどうかが決まるため、慎重に決めましょう。

ちなみに、一般的な採用方法としては、自社のターゲット層に適した求人サイトや転職エージェント、求人誌、SNSなどを活用することが多いです。一方、近年ではヘッドハンティングやスカウトメールなど、直接優秀な人材にアプローチする方法も増えてきました。その他、企業説明会や合同説明会、オンラインセミナーを開催して企業の魅力を伝えるのも、母集団形成に役立つでしょう。

採用方法を決めたら、同時に書類選考、面接(オンライン、対面)、適性検査、グループディスカッション、インターンシップなど、選考の方法も決定します。採用戦略専門チームと連携しながら最適な採用方法を選定し、より良い人材獲得につなげましょう。

採用戦略の立案に役立つフレームワーク

次に、採用戦略の立案に役立つフレームワークを紹介します。具体的なノウハウとしても活用できるのでご参考ください。

1.ペルソナ分析

ペルソナ分析は、理想の採用ターゲット像を具体的な「人物モデル」として描き出す手法です。単なる抽象的なターゲット設定ではなく、実際に存在するかのように細かく人物像を作り込むことで、採用戦略の精度を高められます。

  1. 基本情報
  2. スキル、経験
  3. 価値観、モチベーション
  4. ライフスタイル、趣味嗜好
  5. 課題や悩み

上記のような詳細モデルを決めておくことで、ロールプレイングやシミュレーションもしやすくなるでしょう。求人広告のメッセージ作成や採用チャネルの選定、面接時の質問設計などに具体的な方向性を与える効果も期待できます。

2.SWOT分析

SWOT分析は、自社の採用環境を「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つの視点から整理、評価するフレームワークです。現状の課題や外部環境を正確に把握し、効果的な採用戦略を立てたいときに活用しましょう。



分類 内容例
Strength(強み)
  • 安定した経営基盤
  • 魅力的な福利厚生
  • 独自の社風や働きやすさ
Weakness(弱み)
  • 知名度の低さ
  • 採用担当者の経験不足
  • 選考プロセスが長い
Opportunity(機会)
  • 地域の労働市場の変化
  • 業界全体の人材不足
  • 採用技術の進歩
Threat(脅威)
  • 競合他社の積極採用
  • 経済状況の悪化
  • 労働人口の減少


SWOT分析で整理すると、自社の採用環境を俯瞰しやすくなり、戦略立案に役立ちます。各項目は自社の状況に合わせて具体的にカスタマイズしてください。

3.TMP方式

TMP分析は採用戦略を効果的に設計するためのフレームワークで「Target(ターゲット)」「Message(メッセージ)」「Promotion(プロモーション)」の3つの要素に分けて考えるのが特徴です。

「Target(ターゲット)」では、どのような人材を採用したいのか、具体的な人物像を明確にします。ペルソナ分析と連動して、スキルや経験、価値観、年齢層などを細かく設定しましょう。

「Message(メッセージ)」では、ターゲットに響く魅力的な求人内容や企業の強み、働くメリットを伝えるためのメッセージを作成します。「成長企業でキャリアアップできる」「ワークライフバランスが取れる職場」など、明確なメリットを訴求できれば、応募を後押しする効果が高まります。

「Promotion(プロモーション)」では、作成したメッセージをどの媒体やチャネルで効果的に伝えるかを決定します。求人サイト、SNS、転職エージェント、説明会など、多様な方法を組み合わせるとよいでしょう。この3要素をバランスよく設計し、ターゲットに的確にアプローチすることで、効率的で成果の出る採用活動が実現します。

採用戦略による成功事例

最後に、採用戦略による成功事例を紹介します。具体的にどのような採用戦略を描いて成功したのか、参考にしてみましょう。

1.トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社では、海外展開を見据えて多様な国籍やバックグラウンドを持つ人材を採用することで、国際競争力を強化しました。採用後は、従業員だけでなく内定者向けの海外留学制度を設けており、国際的な感覚を持つ人材の育成に役立てていることも注目されています。

また、現在は新卒採用の3割が外国人である他、日本人のグローバル対応や英語力の強化にも力を入れています。結果として、語学やビジネスに興味のあるハングリー精神旺盛な人や、グローバルスキルの高い人を採用しやすくなったのです。

2.日本マクドナルド株式会社

日本マクドナルド株式会社では、幅広い層を対象にした採用を実現しています。働く時間や日数を自由に選べるシフト制度を設け、応募者のニーズに応えるようにしたことで「夕方以降しか働けない学生」「午前中の短時間だけ働きたい主婦層や中高年」など多彩な人から応募が集まるようになりました。また。オンライン面接や応募フォームの簡便化など、応募から採用までのプロセスをスムーズにし、応募者の離脱を防いでいます。

近年は「働きやすい職場」「成長できる環境」としてのイメージも定着し、アルバイトやパートスタッフの定着率が上がりました。新人研修やスキルアップ研修を体系化し、スタッフのモチベーション維持と能力向上も支援しています。

3.株式会社NIPPO

株式会社NIPPOでは、建設業界が抱える「きつい、危険、給料が低い」というイメージを払拭するため、社員の働きやすさや福利厚生、キャリアアップ支援を積極的にアピールしています。また、新入社員や未経験者向けの研修プログラムを充実させ、技術力や安全意識の向上を支援したことで、建設業界が「喉から手が出るほどほしい」若手人材を効果的に獲得しているのもポイントです。

その他、地元出身者や地域在住者をターゲットにし、地元の学校やハローワーク、地域イベントでの採用説明会を積極的に開催するようになりました。女性の採用、活躍支援にも力を入れ、女性専用の研修や職場環境の改善を実施しています。

4.面白法人カヤック

面白法人カヤックでは「面白さ」を軸にした独自の企業文化を前面に出し、クリエイティブ志向の高い人材に響くメッセージを発信しています。ユニークなワークショップや体験型イベントを開催し、応募者が実際に企業の雰囲気や仕事のスタイルを体験できる機会を提供したことで、ミスマッチ採用を予防できるようになりました。

その他、フリープロデューサー制度「873号室」や、時間を決めて集中して働くスタイルである「ウルトラマン型勤務制度」など、独自性の高い福利厚生を導入しています。社員が自分らしく働き、成長できる環境であることで知名度をあげています。

5.株式会社メルカリ

株式会社メルカリは「採用に強いメルカリ」だけでなく「育成にも強いメルカリ」も目指しています。2017年から新卒採用を本格化させており「個人がもっと気軽に売買できる社会をつくる」という明確なミッションを掲げ、応募者に共感を呼び起こすようになりました。

オンラインプラットフォーム、リファラル採用、技術系イベントなど、多様なルートから優秀な人材を発掘し、採用が難しいとされているエンジニアの人数も増え続けています。社内イベントも多く、挑戦する姿勢を継承する仕組みづくりをしたことで、採用した人材の成長も刺激しているのがポイントです。

まとめ

採用戦略は、企業が求める人材を効率的に確保し、組織の成長を支えるために欠かせない重要な取り組みです。効果的な採用戦略を立てることで、ミスマッチを防ぎ、採用コストの削減や応募数の増加といったメリットが期待できます。
戦略の立案には、採用専門チームの設立や計画作成、採用基準やスケジュールの設定などのステップを踏むことが重要です。ペルソナ分析やSWOT分析、TMP分析といったフレームワークを活用することで、自社に最適な戦略を具体的に描いていきましょう。

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