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最終更新日:2024.08.26
人事/組織構築/業務改善

人事評価にAIは活用できる?メリット・デメリット・事例を徹底解説!AI搭載型サービス3選も紹介

適切に運用された人事評価制度には、人材育成や従業員のモチベーション向上、離職率の低下といった効果が期待されます。しかし、適切に運用するには、相応の業務負荷が発生するのがネックと言えるでしょう。

そこで検討されるのがAIの活用です。人事評価における意思決定をAIに支援させることができ、公平かつ迅速に意思決定を行うことができます。AIは理由もなく感情的に低い評価を下すようなこともないため、正当に人事評価を行うことが可能です。

今回は、人事評価におけるAIの活用について、メリットやデメリット、事例を交えながら徹底解説します。AI搭載型サービスの紹介もしていますので、検討中の方はぜひ参考にしてください。


1.人事評価にAIを導入するのは実際どうなの?

人材不足に悩まされる企業が多い現代の日本において、結果的に従業員の成長に繋がる人事評価制度の導入は極めて重要です。基準を設けて従業員たちを公平に評価することで、やりがいやモチベーションの向上といった効果が期待でき、優秀な人材育成にも役立ちます。

ただし、人事評価制度が重要である一方、評価作業が発生するのがネックです。従業員の数が多かったり、評価作業を行える人員が足りてなかったりすると、十分に制度が機能できない場合もあります。

そこで活躍するのが近年注目を浴びているAIです。AIは訓練データに基づき、効率的に評価作業を行うことが期待できます。

とはいえ、AIは良い点ばかりでなく注意すべき点も存在し、その一つにAIが偏りのあるデータを学習すると、判断に悪い影響を及ぼす場合があるということが挙げられます。そのため、常にAIの判断を正しいとするのではなく、扱う側がAI判断の限界を理解する必要があります。

2.人事評価にAIを導入するメリット5つ

人事評価制度の評価作業を行うために、AIを導入するメリットを5つ紹介します。

1つずつ解説するので、ぜひチェックしてみてください。

①業務負荷が軽減する

人事評価制度に限らず、あらゆる場面でAIを導入する際に期待される効果の1つが、業務負荷の軽減です。

人事評価にはさまざまなやり方が存在します。もっともシンプルなのが、評価シートを用意して配布し、従業員たちに記入してもらい回収したのち、集まった回答をもとに評価を行うやり方です。しかし評価シートでの人事評価の場合、スムーズに回収できず催促が必要な場合も少なくないでしょう。他にも評価項目が複雑になるほど、業務負荷はより大きくなります。

これら一連の業務のうち、AIが担える部分を任せることで、業務負荷を大きく軽減できるでしょう。空いた時間は、ほかの業務に割くことができるため、人事評価の作業効率もあがります。

②公平かつ意思決定が早くなる

人事評価では、評価を行う側に公平な視点が求められます。特定の従業員に対してひいきしていたり、逆に理由もないのに感情的に低い評価を下したりするようなことは、あってはいけません。

その点AIであれば、公平かつ迅速に意思決定が行えます。評価軸が複数あっても、複数のデータを迅速に参照しながら的確な意思決定が可能です。

③評価項目が増える

より的確な人事評価を行うには、さまざまな視点から評価基準を設けることが大切です。人事評価にAIが加わることで、評価基準や評価項目が複雑に増えたとしても、人が人事評価を行うのに比べて迅速に対応できます。

人事評価のために新しい仕組みを導入しようとすると、どうしても作業を行う人的リソースがネックになりがちです。AIの高い処理能力を活用することで、リソース課題の解消も期待できるでしょう。

④新たな可能性の発掘

AIによってより効率よく、そして効果的に人事評価を行えるようになれば、これまで日の目を見なかった新たな可能性を発掘できることもあります。人材不足に悩まされる企業にとって、限られた人的リソースの可能性を探ることは、極めて重要です。

従業員によっては、自身が活躍できる十分な機会に恵まれないまま、離職を決断してしまうケースもあります。優秀な人材を残さないためにも、AIによる人事評価で従業員一人ひとりの可能性に注目して、新たな可能性を発掘できるようにしましょう。

⑤エンゲージメントが向上する

企業において重要な言葉の1つに「エンゲージメント」があります。エンゲージメントとは、従業員の会社に対する愛着心や思い入れといった意味合いです。

エンゲージメントを高めることは、優秀な人材を流出させないために極めて重要です。AIによる人事評価は、人為的評価にありがちな偏りを無くすことができ、やりがいやモチベーションだけでなくエンゲージメントにも影響を及ぼすでしょう。

3.人事評価にAIを導入するデメリット4つ

人事評価制度でAIを活用するには多くのメリットがありますが、知っておきたいデメリットも存在します。

ここでは、人事評価にAIを導入するデメリットを4つ紹介します。

①ブラックボックス化で従業員の理解を得にくい

どれだけ公平な判断に基づいたAI評価だったとしても、その理由が明確に説明できずブラックボックス化すると、従業員によっては納得しがたいものになるかもしれません。そのため、人事評価は全社員が公平に見られるようにすることが重要です。

さらに、従業員からのAI人事評価制度に対する不満や、エンゲージメントの低下に繋がる恐れがあるため、人事評価にAIを導入するには注意が必要です。

②AIの判断に依存してしまう

AIはどれだけ複雑なデータであっても「与えられた情報をもとにした的確な判断」を行います。しかし、すべての判断をAIに依存してしまうのは非常に危険です。

人事評価では、仕事をするうえで成績を出しているか否かはもちろんのこと、各企業との信頼関係の構築など数値では推し量れない点もあります。そのため、AIはあくまでも人事評価の補佐的立ち位置でしかなく、最終決定を行うツールではないことを理解しておきましょう。 

③AI導入を反発される可能性もある

AIは近年大きく注目を集めており、AI活用については賛成の声も多く上がっているものの、慎重に判断しなければいけない部分も存在します。

どれだけメリットが大きいといってもデメリットも存在するため、場合によっては社内からの理解が得られないこともあるでしょう。その一例として、日本IBM支部の事例を紹介します。

日本IBM支部の事例

IBMは、2019年にAIを用いた意思決定システム「Watson」を導入し、これまで人事評価制度を運用していました。日本IBMの従業員で作られる労働組合「JMITU 日本IBM支部」でもWatsonが採用されていましたが、評価の基準がブラックボックス化したことにより、従業員がどのような理由で低評価を受けたのか分からず、労働者が成長する機会が失われると反発しています。そのため2020年4月3日、日本支部の労働組合がWatsonの判断基準を明らかにするように開示を求めました。しかしIBMは開示の要求を拒否し、組合側と衝突しています。

上記の事例だけで、人事評価にAIを用いるのは難しいと判断するのは早計ですが、1つの例として知っておくことは重要ですので、参考として覚えておきましょう。

④AI評価に不適切な偏りが起こる可能性もある

AIの判断はデータに基づくため、学習した訓練データの内容によっては不適切な偏りが起こる可能性があります。

その一例として、米アマゾン・ドット・コムの事例を紹介するので、参考までにぜひチェックしてください。

米アマゾン・ドット・コムの事例

米アマゾン・ドット・コムでは、それまでAIを用いた人材採用システムを積極的に推進してきました。ところが、2018年10月に不適正な機械学習面での偏りが起こったため、同システムの運用を停止しています。当時の米アマゾン・ドット・コムの人材採用システムには、女性に対する差別的な考えを持つ欠陥があったと言われています。

同システムでは、これまで男性からの応募がほとんどを占めていたために、同システムが男性を採用したほうがよいと判断するようになってしまったのです。 

上記事例のように、不適切なバイアスが発生して歪んだ判断がなされないように、AIを扱う側は最大限注意しなければいけないことを覚えておきましょう。

4.人事評価にAIを導入活用した事例3つ

AIは未だ研究や開発が進んでいる部分が大きく、実際に現場レベルで活用するには創意工夫が必要です。自社での導入を進めるために、すでにAIが導入された事例を参考にしてみるのもよいでしょう。

人事評価にAIを導入し、活用した事例を3つ紹介します。

[IBM]約37万人の従業員の評価をAIが支援

AIについての研究や開発を行っているIBMは、約37万人の従業員の評価を支援した実績を持つ、ビジネスに特化したAIの「IBM Watson」を活用しています。従業員の成果やスキルなど、人間が評価分析するには膨大な時間を要するのをAIで瞬時に評価しております。

なおWatsonがすべての結論を出しているのではなく、あくまでも意思決定のサポートを行っており、そのため、最終的な決定は人事部門の担当者が行っています。 

[パナソニックホールディングス]約9万人の従業員に対話型人工知能(AI)を活用

パナソニックホールディングスでは、AIについての研究や開発も進めていることが特徴です。グループ会社の1つ、パナソニックコネクトが開発した対話型人工知能を、国内のグループ企業で活用しています。

たとえばPX-GPTは、従業員の質問に答えるアシスタントAIです。指示や質問を入力すると、訓練データに基づいてAIが10秒程度で回答してくれるため、資料作成に役立てられています。PX-GPTは2023年2月からパナソニックコネクト社内で活用していましたが、一定の成果が認められたことで、対象グループ企業を従来の7倍にまで増やして引き続き運用しています。

[ソフトバンク]新卒採用選考の動画面接評価にAIを導入

ソフトバンクも、かなり早い段階で新卒採用選考において、人事評価AIを導入しています。2017年に採用プロセスにAIを取り入れ、AIの自然言語認識を一次選考に活用することで、採用担当者がエントリーシートを確認する時間をこれまでの4分の1まで短縮しています。

また、2020年には新卒採用選考の際の動画面接にAIを導入しました。人事担当者が採用業務を行うにあたって、必要となる場所や時間を確保する負担を減らすことに成功しています。加えて、応募する学生側にとっても、選考のための時間や交通費といった負担削減を実現しているのです。

5.人事評価でAIを導入する注意点2つ

人事評価でAIを導入するには、メリットばかりでなくデメリットも存在します。実際に導入する際は、双方を正しく理解しておくことが大切です。

ここでは、人事評価でAIを導入する際に気をつけたい注意点を2つ紹介します。

①従業員にAI評価のもとになる要素を伝える

AIによる人事評価は、何を基に評価しているのか理由などがブラックボックス化しやすいです。公正な判断だったとしても、従業員に評価基準や評価理由を説明できていないと従業員からの理解は得にくいでしょう。そのため、評価対象となる従業員からAIの活用について理解してもらうためにAI評価の基準を明確にし、説明する必要があります。

どのようなデータが判断材料になるのかを理解してもらうことで、判断が下されるまでの過程が公平であると従業員に説明することが大切です。そのほか、従業員から人事評価について質問や相談などがあった際は、担当者が直接対応することで、信頼を得ることに繋がります。

②必要に応じてAI評価を修正する

AIによる評価は、常に適切であるとは限りません。AIは過去のデータをもとに人事評価を行うため、AIによる評価の結果を人事部門が確認する必要があります。人事部門は人事評価の現場状況を把握し、必要に応じてAI評価を修正することでより的確な人事評価を行うことが可能です。 

6.AI活用できる人事評価システム・サービス3選

AIを活用した人事評価システムやサービスは、すでにいくつかの企業によって開発が進められ、リリースされています。
ここでは、AIを活用したおすすめの人事評価システムまたはサービスを3つ紹介します。今後人事評価にAIを導入しようか検討している企業は、ぜひチェックしてみてください。

あしたのクラウドHR:株式会社あしたのチーム

あしたのクラウドHRは、株式会社あしたのチームが手がけるAIを活用した人事評価システムです。人事評価を一元管理することができ、人事担当者の負担を軽減することができます。

あしたのクラウドHRにはさまざまな機能が備わっていますが、注目すべきは評価者モニタリング機能です。指定した目標や評価が正しく行われているか、5つの項目で判断してもらうことが可能です。また、目標添削機能も搭載されており、実現可能で具体的な目標を設定するために、AIが現状を踏まえて添削を行います。そのほかにも、360度評価や目標の管理機能、甘辛分析、1on1支援など、効果的に活用できる機能が豊富に揃っていることが特徴です。

人事評価の納得度を高めるためにも、ぜひ一度あしたのクラウドHRを利用してみてはいかがでしょうか。

Qasee:Qasee株式会社

Qaseeは、さまざまなサービスやシステムを展開するQasee株式会社が手がける人事評価サービスです。人事評価を運用する際は、評価の元となる業務データの収集が重要です。そこでQaseeは、従業員一人ひとりの業務上の状況を可視化して業務負荷チェックなど、業務データを収集し個人レポートを行います。業務状況を見ながらAIが判断してレコメンドするため、業務改善にも役立てられるでしょう。

さらに、Qaseeは業務コストの算出や業務の問題点を抽出し、業務の効率化やDX推進を強力に後押ししてくれます。そのため、人事評価だけでなく、生産性向上にも役立つサービスだと言えるでしょう。

POSITIVE

POSITIVEは、株式会社電通国際サービスが手がける人事評価サービスです。

人事評価に必要な人事管理や給与管理、就業管理、タレントマネジメントといった機能がまとめて搭載されています。人事評価やタレントマネジメントから集められたデータをもとに、AIが最適な人材を提案してくれるため、スムーズな人事管理ができるでしょう。

また人事評価サービスに限らず、業務効率化サービスの導入を検討する際は、システムが自社の規模や事業に相応しいか慎重に検討することが大切です。POSITIVEは、子会社や国といった垣根をまたいで、まとめて人事管理を行うことが可能なため、とくにグループ企業やグローバルに事業を展開している企業に最適と言えるでしょう。

7.まとめ

人事評価制度は、適切に運用することで、企業の発展に大きく貢献するでしょう。しかしそのためには、従業員のAI人事評価制度に対する理解などさまざまな課題が存在します。企業によって抱える課題は異なりますが、適切に取り組むことが大切です。

また、人事評価を部分的にAIに委ねることで、客観的な視点から公正な人事評価ができるため、評価者によって起こりがちな評価基準のブレをなくす効果も期待できます。AIを活用する際はメリットやデメリットを踏まえたうえで、人事評価制度に導入するようにしましょう。

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(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

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