テキストマイニングとは、数多くのテキストデータをAIモデルにインプットし、分析することで有効なアウトプット情報を導き出せる技術です。AIを活用することで、ビッグデータを短時間で分析して人間では気づけないような分析結果を得ることができます。
そのため、コスト削減や企業における意思決定のサポートに繋がるテキストマイニングは、多くの企業から注目されています。
この記事では、AIテキストマイニングの活用メリット、AIで分析できることや注意点について詳しく解説します。記事の後半では、テキストマイニングツールを選ぶときのポイントも具体的に紹介しているため、AIテキストマイニングツールを導入したいと考えている方は、ぜひ最後までお読みください。
1.AIを活用したテキストマイニングとは?
テキストマイニングとは、数多くのテキストデータからAIによる情報抽出、分析を行い、有益な情報を得るための技術です。AIによる分析は、短時間でビッグデータ分析することを可能とし、人間では思いもつかない切り口の分析結果を高精度で抽出できます。
実際のテキストマイニングでは、テキストを名詞、動詞、形容詞などの単語に分解し、出現率や関連性を分析します。たとえば、コールセンターの音声記録から顧客のニーズを分析したり、アンケート結果のテキストから市場における自社イメージを分析したりすることが可能です。
テキストマイニングによって、ビッグデータから顧客ニーズや市場動向、自社の課題などが発見できるため、多くの企業が注目しています。
テキストマイニングとデータマイニングの違い
テキストマイニングと良く似た言葉に「データマイニング」がありますが、それぞれ異なる意味を持っています。
データマイニングとは、さまざまなデータから情報抽出、分析を行う技術であり、テキストを分析するテキストマイニングを包括した分析手法です。データマイニングの分析対象は画像や動画、音声など多岐にわたり、傾向やデータの関連性などを見い出すために活用されています。
従来のデータマイニングは数値化できるデータ分析を得意としていた一方、自然言語であるテキストの分析は不得意な領域でした。しかし、AIを活用したデータマイニング技術の進化により、大量の自然言語データを処理、分析する精度が向上し、テキストマイニングが実用化されるに至りました。
2.AIを活用したテキストマイニングで分析できる6つのこと
AIを搭載したテキストマイニングでは、以下のような分析が可能です。
テキストマイニングで分析できる6つのことについて、次項から詳しく解説していきます。
①製品やサービスの評判、口コミの傾向を把握する
1つ目は、製品やサービスの評判、口コミの傾向を把握することです。
自社の製品やサービスに関するネットのレビューや口コミを収集し、AIを活用したテキストマイニングで分析します。高評価や低評価に分類して、それぞれのテキスト内におけるキーワードの数や関連性を確認することで、顧客が製品やサービスに対してどのように感じているかが理解でき、長所や課題が可視化できます。
単純な数値データだけでは見えてこない顧客の声を把握することで、今後の商品リニューアルや新サービスの開発に活かせるでしょう。
②迷惑メールを判別する
2つ目は、迷惑メールの判別です。
AIを活用したテキストマイニングを利用することで、日々受信するメールのテキストから迷惑メールに共通するキーワードを学習し、迷惑メールを判別できるようになります。迷惑メールを受信ボックスから自動的に隔離することで、誤って迷惑メールを開けたりフォルダ内に放置したりする懸念が減少します。
昨今では迷惑メールも巧妙化しており、気づかないうちに被害に遭ってしまうケースが少なくありません。ウイルス感染による個人情報漏洩やフィッシング詐欺などの防止に効果があるでしょう。
③SNSやアンケートから自社イメージを把握する
3つ目は、SNSやアンケートによる自社イメージの把握です。
FacebookやXなどのSNSに投稿されているコメントを収集し、テキストマイニングで分析することで、世間の自社に対するイメージが見える化できます。リアルなイメージを知ることで、プロモーションの改善点や今後の方向性が見い出せるでしょう。
また、自社アンケートにおいて自由入力欄を設定して、回答コメントを分析することも可能です。従来のアンケートは集計、分析が簡易な選択式の設問が主流でしたが、テキストマイニングによって顧客の忌憚ない意見を把握できるようになりました。これにより、課題がより具体的に分かるようになり、課題解決のための行動が行いやすくなっています。
④市場調査をする
4つ目は、テキストデータを活用した市場調査です。
SNSやブログ、Webサイトなどの数多くのテキストデータから特定業界に関連したキーワードを抽出し、市場動向や最新トレンドなどを調査することができます。Web情報は日々変化し続けており、AIを活用したテキストマイニングによりタイムリーな分析が可能です。
また、新聞記事の経済情報をテキスト化した分析により、経済市場予測を可能とする技術が研究されています。数値データとテキストデータの両面から分析することで、精度の高い長期予測が期待されています。
⑤社内のビッグデータを分析する
5つ目は、社内のビッグデータ分析です。
営業日報や作業日報など、社内にテキストとして蓄積されているビッグデータをAIを活用したテキストマイニングで分析することで、営業活動や作業現場における課題が発見できます。分析結果に基づく的確な対策により、現場の課題改善が期待できるでしょう。
社内データは手作業で作成されたものからツールを用いたものまでさまざまな形式が混在しているケースが多く、人間による分析は非常に難しいです。分析がされないまま放置されているデータ活用を実現するためには、テキストマイニングは有効な手段といえます。
⑥コールセンターで顧客の声を分析する
6つ目は、コールセンターにおける顧客の声の分析です。
コールセンターにおいて顧客とやり取りした音声記録をAIで自動的にテキスト化し、テキストマイニングで分析することで顧客のニーズや自社商品の改善点などが発見できます。また、音声データからトラブル懸念を検出し、上位者へ自動的にエスカレーションすることも可能です。
この技術により、手作業で行っていた音声データの書き起こしによる作業負荷が削減されるとともに、優秀社員の対応をテキスト化できるため、知識、技術の共有化や新人社員の育成にも効果的です。
3.企業でAIによるテキストマイニングを活用する3つのメリット
AIを搭載したテキストマイニング活用は、以下のようなメリットがあります。
ここからは、企業が得られる3つのメリットを解説します。
①集計や分析作業の効率化に繋がる
1つ目のメリットは、集計や分析作業の効率化に繋がる点です。
大量のテキストデータの集計、分析を人間が行うためには、相当の時間と労力が必要となります。一方で、テキストマイニングは大量のテキストデータを短時間で処理できるため、集計作業の効率化が可能です。また、レポートの自動作成や改善アクションの提案などを行ってくれる機能もあるため、分析作業の効率化も実現できます。
AIを搭載したテキストマイニングを活用することでデータ集計、分析作業から解放されます。つまり、分析結果に基づく方針決定や施策実行など人間でなければできない業務にリソースを割くことが可能となり、結果として企業の業績向上に貢献できるでしょう。
②読むだけではわからない情報を得られる
2つ目のメリットは、テキストデータを読むだけではわからない情報を得られる点です。
AIを搭載したテキストマイニングは、数多くのテキストデータを名詞、動詞、形容詞などに分類して、それぞれでキーワードの頻出量が把握できます。また、テキストにおけるキーワードの近さなどからキーワードの関連性も分析可能です。
人間がテキストを読む場合、それぞれの文章の意図や大まかな傾向は把握できるものの、テキスト全体の傾向や課題を定量的に把握することは困難です。また、顕在化した情報にしか気づけず、真因にたどり着けない可能性もあるでしょう。その点、テキストマイニングを活用することは、人間では見つけられなかった改善点を発見するきっかけとなります。
③分析作業の属人化防止
3つ目のメリットは、分析作業の属人化を防止できる点です。
属人化とは、特定の担当者だけが作業方法や進捗状況を把握している状態のことを指します。分析作業が一部の分析者に属人化することで、社員間における業務負荷の偏りや担当者不在による業務遅滞リスクが発生してしまいます。
しかし、AIを搭載したテキストマイニングであれば分析業務を代行してくれるため、習熟度に関わらず誰がやっても同じ結果が出力されるのです。その結果、分析作業の属人化を防止するとともに、分析者の専門的な育成も不要となります。
働き方の多様化や終身雇用制度の崩壊により、今後も人材流動性が高まることが想定されるため、分析作業をはじめとした業務の属人化防止は重要な課題と言えるでしょう。
4.AIを活用したテキストマイニングの3つの注意点
AIを活用したテキストマイニングには多くのメリットがある一方で、以下のような注意点も存在します。
次項から3つの注意点について解説しますので、導入にあたっては対策を検討しておきましょう。
①日本語の文章は精度が低下することもある
1つ目の注意点は、日本語の文章は精度が低下することがある点です。
日本語は英語と異なり単語ごとにスペースが挿入されておらず、ひらがな、カタカタ、漢字が混在しているため、システムによる判別の難易度が高いとされています。また、日本語特有の敬語や方言、若者が利用する流行語や新たなビジネス用語などもテキストマイニングの分析を困難にし、期待した解析精度が得られない可能性があります。
対策としては、日本語の分析に強いテキストマイニングツールを選択すると良いでしょう。
また、テキストマイニング利用にあたっては、辞書機能のアップデートもはずせません。新しい言葉や表記の違い、表記ゆれなどを登録することで、文章を正確に読み取ることができ分析精度が高まります。
②データ量が少ないと精度が落ちる
2つ目の注意点は、分析するデータ量が少ないと精度が落ちる点です。
AIを活用したテキストマイニングは、大量のテキストデータから単語を学習することで分析精度を向上させていきます。そのため、まだ学んでいない単語が含まれていると分析の精度が低下し、想定していた結果が得られないこともあります。
また、日本語は他の言語に比べて難易度が高いため、より多くの学習が必要です。そのため、AIを活用したテキストマイニングツールで分析する場合には、大量のテキストデータを収集しなければなりません。分析したいテキストデータが多くない場合には、テキストマイニングツールよりも人間の手作業による分析のほうが精度が高くなる可能性があります。
③結果の解釈が難しいこともある
3つ目の注意点は、結果の解釈が難しいこともある点です。
たとえば高評価のレビューがネガティブな内容と評価されたり、解釈不能な単語が多く正しい分析がされないケースがあります。これは、テキストマイニングが文章の解析を可能とする一方で、コンピューターが文章の意味を理解しているわけではない点が原因です。あくまでテキストに含まれる単語の種類や数を認識しているに過ぎません。
対策として、分析結果に疑問が生じる場合には、人間の目でひとつひとつ確認することをおすすめします。AIを活用したテキストマイニングであってもすべての分析が完結するのではなく、人間による判断が必要となるケースもあることを理解しておきましょう。
5.AIによるテキストマイニング活用の進め方
AIを活用したテキストマイニングには手順があり、まず最初に行うのはデータ収集です。アンケート結果やSNS、レビューや口コミなど、分析をしたいテキストデータを大量に収集します。
データを収集したら前処理を行います。たとえば、文章を単語ごとに区切ったり誤字を修正するなどが挙げられます。ちなみに面倒な前処理は、専用のツールを利用することにより、効率的に進めることができます。テキストマイニングの精度を向上させるためにも必要な作業ですので、忘れず行いましょう。
データの前処理が完了したら、いよいよ分析、解析です。
テキストデータをツールにアップロードし、分析目的に合わせた手法で分析、解析を行っていきます。分析した結果は、グラフや図表など視覚的に把握しやすいレポートとしてまとめておくと活用がしやすくなります。
6.テキストマイニングツールを選ぶときのポイント
テキストマイニングツールにはそれぞれ特徴がありますが、自社に合ったツールを選ぶ際には、以下の3つのポイントに注目しましょう。
分析するデータソース
SNS、アンケート、コールセンターの声など、分析するデータソースによって選ぶツールが異なります。たとえば「TextVoice」はSNS分析が得意であり「VOiC Finder」はコールセンターでの活用が強みです。
このように分析したいデータソースからおすすめのツールが異なるため、どのような手法でデータを収集したいかやツール活用の目的をあらかじめ明確にしておく必要があるでしょう。
分析結果の視認性
分析結果の表示はツールによって異なるため、視認性によって選ぶことも重要です。たとえば「見える化エンジン」は特徴比較マップやニーズランキングなどの表示が可能です。視認性が悪いと、分析結果をまとめることに時間がかかり、かえって効率が悪く感じてしまいます。
また、表示される分析結果の項目もツールによって異なることが多々あるため、無料お試し版を活用して、必要な情報が得られるかなどをあらかじめチェックしておくと良いでしょう。
辞書機能の充実
日本語のテキスト分析にあたっては、辞書機能の充実が重要です。辞書機能が充実していない場合、使い続けるにつれて情報の整合性が取れなくなってくるケースもあるので注意しましょう。たとえば「TRAINA」は新語や造語の辞書登録を自動化しているため、おすすめです。辞書機能の充実によって、正しい分析結果を得られるようになり、課題解決にも大いに役立つと考えられます。
7.まとめ
この記事では、AIを活用したテキストマイニングができることやメリットに加えて、注意点やテキストマイニングツールを選ぶときのポイントについて解説しました。
大量のテキストデータを短時間で分析できるテキストマイニングには、集計、分析作業の効率化や人間では気づかない分析結果を導き出せるメリットがあります。一方で、精度の高い分析に向けてはデータ量の確保やコンピューターには難易度の高い日本語が注意すべき点です。
テキストマイニングツールを導入する際には、自社が分析したいデータソースや目的に合わせたツールを選択するとともに、ツールの分析結果をすべて信じるのではなく、人間による判断も必要となることを理解しておきましょう。