プロジェクトの立て直し方|6ステップと続行・中止の判断基準 - freeconsultant.jp for Business
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最終更新日:2026.10.19
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プロジェクトの立て直し方|6ステップと続行・中止の判断基準

マイルストーンの遅れが続き、追加費用の見積もりが何度も出てくる。ベンダーの報告は先週まで「順調」だったのに、急に「大幅遅延」に変わった。関係者は目の前の作業に追われ、誰も全体像をつかめていない——。こうした状況で立て直しを任されると、「何から手を付ければよいのか」「このまま続けるべきか、止めるべきか」と判断に迷う方も多いと考えられます。

システム開発プロジェクトが予定どおりに進まないことは、決して珍しくありません。JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の「企業IT動向調査2026」の分析レポートによると、500人月以上のシステム開発プロジェクトのうち47.8%で工期が予定より遅れ、42.2%で予算が予定を超過したと報告されています。

出典:JUAS「企業IT動向調査2026」分析レポート②

本記事では、立て直しが必要な状態の見極め方から、プロジェクトを立て直す6つのステップ、立て直しで避けるべき対応、炎上の原因と再発防止策、社内で対応しきれない場合の外部プロ人材の活用法までを解説します。発注側の責任者が経営層に「続行・縮小・中止」を説明するための判断材料まで整理しているため、立て直し計画を作る前の頭の整理に役立ててください。

プロジェクトの立て直しとは|通常の遅延対応との違いと見極め方

プロジェクトの立て直しに取りかかる前に、「そもそも立て直しが必要な状態なのか」を見極めておく必要があります。ここでは、立て直しの定義と通常の遅延対応との違い、立て直しが必要なプロジェクトに現れる兆候を整理します。

プロジェクトの立て直しの定義と通常の遅延対応との違い

本記事では、プロジェクトの立て直しを「当初の計画のままでは目標を達成できなくなったプロジェクトについて、現状を把握し直し、計画と体制を再設定して関係者と再合意する取り組み」と定義します。ここでいう計画とは、QCD(品質・コスト・納期)と、スコープ(プロジェクトで作る成果物と作業の範囲)を指します。遅延や予算超過が重なり、現場が混乱に陥った状態は「炎上プロジェクト」と呼ばれることもあり、立て直しが必要になる典型的な状態です。

前提として、プロジェクトとは期間の決まった取り組みです。PMI(米国プロジェクトマネジメント協会)の知識体系であるPMBOKガイドではプロジェクトを「独自の成果物を生み出すために行う有期的な取り組み」と位置づけており、IPA(情報処理推進機構)のプロジェクトマネージャ試験シラバスでも、開始日と終了日があり、独自性をもつ活動とされています。期限と予算という制約がある以上、計画から大きく外れたときは、作業を頑張るだけでなく計画そのものを作り直す必要が出てきます。

出典:PMI「PMBOK Guide」
出典:IPA「プロジェクトマネージャ試験(レベル4)シラバス Ver.7.1」

通常の遅延対応と立て直しの違いは、「どこまで見直すか」にあります。

  • 通常の遅延対応:担当者レベルの残業やタスクの入れ替えで、計画の範囲内で遅れを吸収する
  • 立て直し:計画(QCD・スコープ)や体制そのものを見直し、経営層・顧客など関係者との再合意が必要になる
項目 通常の遅延対応 プロジェクトの立て直し
見直す範囲 個々のタスク・作業の進め方 計画(QCD・スコープ)と体制そのもの
主な打ち手 残業、タスクの入れ替え、担当者間の調整 現状の把握し直し、方針の再決定、再計画、体制の再設計
判断する人 PM・チームリーダー スポンサー・経営層(PMが判断材料を用意)
関係者への影響 プロジェクト内で完結しやすい 経営層・顧客・ベンダーとの再合意が必要

PMIのナレッジライブラリに収録された論文(Ward, 2007)でも、計画から大きく外れたプロジェクトを「troubled project(問題を抱えたプロジェクト)」と呼び、回復に向けた初動の進め方を論じています。現場の努力で吸収できる範囲を超えていると感じたら、立て直しとして扱います。

出典:PMI「Five critical first steps in recovering troubled projects」

立て直しが必要なプロジェクトに現れる兆候

立て直しは、着手が早いほど打てる手が多くなります。次のような兆候が出ていないかを確認してください。

  • 数字に表れる兆候:マイルストーンの遅れが続く、残作業が減らない(または増えている)、追加費用の見積もりが繰り返し出てくる、テスト段階の不具合が想定を大きく上回る
  • 報告に表れる兆候:進捗報告が「順調」から突然「大幅遅延」に変わる、報告の数字に根拠がない、課題の一覧が更新されていない
  • 人・体制に表れる兆候:仕様変更の要望が止まらない、意思決定が先送りされる、PMが自ら作業に入り込んでいる、メンバーの離脱や疲弊が目立つ

JUAS「企業IT動向調査2026」では、100〜500人月のプロジェクトでも38.8%で工期が遅れており、規模が大きくなるほど計画どおりに進まないケースが多いと分析されています。兆候を「一時的な遅れ」と軽視すると、気づいたときには打てる手が限られている可能性があります。

出典:JUAS「企業IT動向調査2026」分析レポート②

これらの兆候が2つ以上重なっていれば、立て直しに着手すべきタイミングと考えられます。次章のステップ1から順に進めてください。

「もう少し様子を見てから」と判断を先送りするほど、選べる選択肢は減っていきます。

プロジェクトを立て直す6つのステップ

プロジェクトの立て直しは、「止める→把握する→決める→合意する→組み直す→回す」の順で進めます。6つのステップは、大きく初動(ステップ1〜2)、再計画(ステップ3〜5)、定着(ステップ6)の3つの局面に分かれます。

各ステップで「何を目的に、誰が担い、何を成果物として残すか」を一覧にすると、次のとおりです。

ステップ 目的 主な担い手 成果物
ステップ1:作業を止めて現状を数値で把握 推測ではなく事実で判断できる状態にする PM(必要に応じてPMO) 現状把握シート(QCD・スコープの計画値と実績値の差)
ステップ2:遅延・炎上の真因の特定 症状ではなく原因に手を打てるようにする PM・チームリーダー 真因と影響範囲の対応メモ
ステップ3:立て直し方針の決定|続行・縮小・中止の判断 QCDへの影響を比べて方針を決める スポンサー・経営層(PMが案を作成) 方針案の比較表、意思決定の記録
ステップ4:ステークホルダーへの開示と再合意 方針を実行できる合意を得る PM・スポンサー 再合意した内容(スコープの優先順位・マイルストーン・予算・報告形式)
ステップ5:体制と意思決定ラインの再設計 判断の停滞と報告の分散を防ぐ スポンサー・PM 新しい体制図、役割分担表
ステップ6:再計画と定量管理による軌道修正 実行できる計画を着実に回す PM・PMO 再計画書、週次の定量レポート

なお、この6つのステップはシステム開発に限らず、新規事業や業務改革など、IT以外のプロジェクトの立て直しにも同じ順序で使えます。

ステップ1:作業を止めて現状を数値で把握

立て直しの最初の一手は、新しい対策を打つことではありません。いったん立ち止まり、事実を集めることです。炎上中のプロジェクトでは全員が目の前の作業に追われ、実態が誰にも見えていないことが多いためです。事実がそろわないまま次の手を打つと、以降の判断がすべて推測になってしまいます。

ここでいう「止める」は、すべての作業を止めることではありません。新しい作業への着手と、追加・変更の要望の受け付けを一時的に止めます。進行中の作業は続けつつ、現状把握を担当する人を作業から外して専任にします。把握にかける期間もあらかじめ区切り、関係者に伝えておくと、現場の協力を得やすくなります。

把握する項目は、次の5つです。

  • 残作業量:本当に終わっていない作業をすべて洗い出す(「ほぼ完了」は未完了として数える)
  • 品質:不具合の件数と、どの機能・工程に集中しているかの傾向
  • コスト:消化済みの予算と残りの予算、今のペースで進んだ場合の着地見込み
  • スケジュール:クリティカルパス(遅れると全体の完了が遅れる作業の連なり)上の作業の遅れ具合
  • スコープ:当初の計画から追加・変更された要件の一覧

このとき、進捗報告の数字をそのまま信じないことが大切です。設計書・テスト結果・課題管理表など、成果物そのものを確認して実態をつかみます。

ベンダーに開発を委託している場合は、進捗報告書だけでなく、ベンダー側で管理している課題一覧・不具合の記録・残作業の一覧そのものの提出を求めます。そのうえで、発注側の担当者も同席する場で、1件ずつ状況を突き合わせます。報告の数字と記録が合わない箇所は、そのまま確認すべき論点の一覧になります。

あわせて、PM・チームリーダー・メンバー・ベンダーに個別にヒアリングを行います。会議の場では言いにくい問題も、1対1なら話してもらえることがあります。複数の人が同じ困りごとを挙げた場合は、ボトルネック(全体の進行を妨げている箇所)の有力な候補として扱ってください。

このステップの成果物は、QCDとスコープの「計画値と実績値の差」を1枚にまとめた現状把握シートです。以降のステップは、すべてこのシートをもとに進めます。

ステップ2:遅延・炎上の真因の特定

現状がつかめたら、次は原因を特定します。ここでのポイントは、「誰のせいか」ではなく「何が仕組みとして欠けていたか」を特定することです。

症状と原因は分けて考えます。たとえば「テスト工程が遅れている」のは症状にすぎません。その裏に「要件が確定しないまま設計に入ったため、テストで仕様の食い違いが大量に見つかっている」という原因があれば、テスト要員を増やしても遅れは解消しません。手を打つべきは、要件の確定と変更管理のほうです。

原因を切り分けるときは、次の5つの観点で整理すると抜け漏れを防げます(各観点の詳細と再発防止策は、後述の「プロジェクトが炎上し立て直しを迫られる5つの原因と再発防止策」で解説します)。

  • 見積もり
  • 要件・スコープの管理
  • 体制と意思決定の権限
  • 報告・コミュニケーション
  • リスク管理

なお、原因の特定を犯人探しにしないことも大切です(理由は後述の「責任追及を優先する対応」で解説します)。このステップの成果物は、真因と、それが影響している工程・成果物を対応させたメモです。

ステップ3:立て直し方針の決定|続行・縮小・中止の判断

方針決定は、立て直しの成否を大きく左右するステップです。結論から言えば、方針は1案に決め打ちせず、複数案を並べてQCDへの影響を比べたうえで、責任者(スポンサーや経営層)が決めるのが基本です。

検討する方針案は、大きく次の3つに分かれます。

  • 続行:スコープはそのままに、期限・予算・体制を見直して完了を目指す
  • 縮小:スコープを絞り込み、優先度の高い機能だけを期限内に完成させる(残りは次の段階に回す)
  • 中止:いったんプロジェクトを止め、目的や計画から作り直す
方針 向くケース メリット リスク
続行(期限・予算・体制を見直して全範囲を完成) 全機能がそろわないと事業上の目的を果たせない場合 当初の目的をそのまま達成できる 追加の費用と期間が大きくなりやすく、真因を取り除けないと再炎上しやすい
縮小(スコープを絞って優先機能を完成) 動かせない期限があり、機能に優先順位を付けられる場合 期限を守りながら、早く一部の効果を得られる 後回しにした機能の扱いについて、利用部門との合意が必要
中止(いったん止めて作り直す) 事業上の目的が変わった、または完了までの費用が効果に見合わない場合 これ以上の損失の拡大を防げる それまでの投資が回収できず、関係者への説明と合意形成の負担が大きい

どの案を選ぶかは、次の4つの観点で判断します。

  • 事業上の目的:そのプロジェクトは今も事業に必要か。開始時から状況が変わっていないか
  • 期限の動かせなさ:法改正への対応、契約上の納期、現行システムの保守切れなど、動かせない期限があるか
  • 追加で必要な費用と期間:ステップ1の実績値をもとに、完了までに必要な費用と期間を見積もり直した結果
  • 再炎上のリスク:ステップ2で特定した真因を、その案で取り除けるか

判断で特に注意したいのが、「ここまで投資したのだから続けるべきだ」という考え方です。すでに使った費用は、どの案を選んでも戻ってきません。判断の材料にすべきなのは、これから必要になる費用と、それによって得られる効果です。

中止を選ぶことは、失敗を認めることではありません。IPAのプロジェクトマネージャ試験シラバスでも、ステークホルダーがプロジェクトの提供する価値を必要としなくなった場合は完了前に中止し、目標が達成できないことが明らかになった場合は、組織の終結基準に従って継続か中止かを決めるとされています。中止も正式な選択肢の1つです。

出典:IPA「プロジェクトマネージャ試験(レベル4)シラバス Ver.7.1」

このステップの成果物は、方針案の比較表と、「どの方針を・誰が・いつ決めたか」を記録した意思決定の記録です。後から「なぜこの方針にしたのか」を問われたときの根拠になり、責任の所在をめぐる混乱も防げます。

経営層への説明資料は、①現状(計画値と実績値の差)、②真因、③方針案の比較、④推奨案と選ばなかった理由、⑤依頼事項(承認してほしい予算・期限)の順にまとめると、1回の会議で判断を得やすくなります。

選ばなかった案も示しておくと、「他の手はなかったのか」という質問に先回りできます。

ステップ4:ステークホルダーへの開示と再合意

立て直しの方針は、関係者の合意がなければ実行できません。ステークホルダー(プロジェクトに利害関係を持つ人や組織)への開示で守るべきことは、悪い情報ほど早く伝え、方針を示す段階では「事実・原因・方針案」をセットで伝えることです。事実だけ、謝罪だけの報告では、受け手は判断ができません。

経営層・スポンサーへの報告は2段階に分けます。1回目はステップ1に着手した時点で、「計画どおりに進んでいないこと」「立て直しに着手したこと」「方針案をいつまでに示すか」を伝える第一報です。2回目はステップ3で方針案がそろった段階で、比較結果をもとに決定を依頼します。このステップでは、決定した方針をもとに、関係者それぞれと再合意を進めます。

伝える内容と依頼することは、相手によって変わります。

  • 経営層・スポンサー:決定した方針に必要な予算・期限の承認と、立て直しへの継続的な支援を依頼する
  • 顧客・利用部門:スコープの優先順位を一緒に見直し、新しいリリース範囲について合意を得る
  • ベンダー:現状認識をそろえたうえで、契約範囲と体制の見直しを協議する
  • プロジェクトメンバー:立て直しの方針と各自の役割を共有し、不安を取り除く

再合意する項目は、スコープの優先順位、新しいマイルストーン、予算、報告の頻度と形式の4つです。特に報告の形式は、「何を・どの指標で・どの頻度で報告するか」まで決めておくと、同じ認識のずれを防げます。

IPAのプロジェクトマネージャ試験シラバスでも、ステークホルダーの課題を解決できないときは、上層の管理者にエスカレーション(上位者への判断の引き上げ)するか、外部の支援を引き出すことが示されています。課題を抱え込まず、経営層に早めに判断を引き上げることも、PMの役割の1つです。経営層を「報告する相手」ではなく、「立て直しを一緒に進める当事者」として巻き込むことが大切です。

出典:IPA「プロジェクトマネージャ試験(レベル4)シラバス Ver.7.1」

ステップ5:体制と意思決定ラインの再設計

炎上したプロジェクトの多くでは、「誰が何を決めるのか」「課題がどこに上がるのか」が曖昧になっています。立て直し後に同じ状態に戻らないよう、意思決定の権限と、課題を上げる経路を明文化します。

体制を組み直すときのポイントは、次の4つです。

  • PMはマネジメントに専念する:PMが自ら作業に入ると、全体の状況把握や判断が手薄になる。作業はリーダーやメンバーに任せ、PMは把握・判断・調整に集中する
  • PMの交代は慎重に判断する:スキルや権限が立て直しに見合わない場合に検討する。ただし交代だけで問題は解決しないため、新しいPMに十分な権限と支援体制をセットで用意する
  • 増員は条件がそろったときだけ行う:作業を切り出せる場合に限る(条件は後述の「原因を確かめないままの増員」で解説)
  • 意思決定の場と経路を決める:週次などの定例で方針を決める会議を設け、どの程度の課題ならどこまで上げるか(エスカレーションの基準)を決めておく

このステップの成果物は、新しい体制図と役割分担表です。役割分担表は「誰が実行し、誰が承認し、誰に相談・報告するか」が一目で分かる形にしておくと、判断の停滞を防げます。IPAのプロジェクトマネージャ試験シラバスでも、関係者の役割・責任・権限を定める「プロジェクト組織の定義」が、プロジェクトマネージャに求められる知識・技能の項目に含まれています。

出典:IPA「プロジェクトマネージャ試験(レベル4)シラバス Ver.7.1」

ステップ6:再計画と定量管理による軌道修正

最後のステップでは、実行できる計画を作り直し、それを着実に回す仕組みを整えます。再計画は、ステップ1で把握した実績値(実際の作業ペース)をもとに積み上げ直し、スコープ・期限・リソースを同時に見直すことが原則です。

期限だけを後ろにずらす再計画は避けます(理由は後述の「期限だけを延ばす再計画」で解説します)。再計画では、想定外の事態に備えた余裕(バッファ)も明示的に持たせます。

進捗は、「何%進んだか」という感覚的な値ではなく、事実で測れる指標で週次に確認します。

  • 完了した成果物の数(計画数との比較)
  • 未解決の課題の件数と、その増減
  • 不具合の発生件数と解消件数の推移
  • 予算の消化状況と完了時の着地見込み

なお、立て直しの効果はすぐには表れません。指標が改善に転じるまでは、追加の要望や新たな取り組みを安易に受け入れず、新しい火種を広げない運用を続けます。政府情報システム向けではありますが、デジタル庁の「デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン(DS-100)」などの標準ガイドライン群でも、ITマネジメントの一部としてプロジェクト管理の進め方が示されており、管理項目を設計する際の参考になります。

出典:デジタル庁「デジタル社会推進標準ガイドライン」

このステップの成果物は、新しいマイルストーン・前提条件・バッファを明記した再計画書と、週次の定量レポートです。

プロジェクトの立て直しで避けるべき3つの対応

立て直しの現場では、善意から行われる対応がかえって状況を悪化させることがあります。ここでは、特に起こりやすい「原因を確かめないままの増員」「期限だけを延ばす再計画」「責任追及を優先する対応」の3つを取り上げます。

原因を確かめないままの増員

「人を増やせば間に合う」という判断は直感的ですが、遅れの原因が人手不足以外にある場合、増員はかえって遅れを広げる可能性があります。

新しいメンバーを迎えると、既存メンバーは説明や作業の引き継ぎ、調整に時間を取られます。短期的には、チーム全体の生産性が下がることも珍しくありません。また、要件が固まっていない、設計に問題があるといった原因であれば、人を増やしても解決しません。

増員が効果を発揮しやすいのは、作業を切り出して渡せる、作業手順が明確になっている、受け入れ役となるメンバーがいる、という条件がそろっている場合です(体制の組み直し方はステップ5を参照)。

期限だけを延ばす再計画

立て直しで最もよく見られる失敗が、期限だけを後ろにずらす再計画です。原因と作業ペースが変わらないまま期限を延ばしても、同じ遅れを繰り返す可能性が高いと考えられます。

延長を何度も繰り返すと、関係者の信頼が失われていきます。やがて「また延びるのでは」と受け止められ、次の報告や再計画が通りにくくなります。期限を延ばす場合も、スコープや体制の見直しとセットで判断することが欠かせません。

責任追及を優先する対応

炎上が明らかになると、「誰の責任か」を追及したくなるものです。しかし、責任追及を先にすると、不都合な情報が上がってこなくなり、立て直しに必要な事実が集まらなくなります。

追及の矛先が向いたメンバーが疲弊し、離脱してしまえば、体制はさらに弱くなります。責任の整理は、立て直しが落ち着いた後の振り返りで、原因の構造を分析する形で行います。

振り返りは「誰が悪かったか」ではなく、「どの仕組みがあれば防げたか」を話し合う場にすると、次のプロジェクトに生かしやすくなります。

プロジェクトが炎上し立て直しを迫られる5つの原因と再発防止策

立て直しが落ち着いたら、同じ状態に戻らないための仕組みづくりに取りかかります。ここでは、プロジェクトが立て直しを迫られる典型的な原因を「見積もり」「要件・スコープ」「体制と権限」「報告・コミュニケーション」「リスク管理」の5つに分け、それぞれの症状と再発防止策をセットで解説します。ステップ2で真因を切り分けた観点と対応しているため、自社のプロジェクトがどれに当てはまるかを確認しながら読み進めてください。

見積もりの甘さ

  • 症状:開始直後から遅れが出る、追加費用の見積もりが繰り返し出てくる
  • 原因:過去の実績ではなく、希望する期限から逆算して計画を立てている。不確実な作業に余裕を見込んでいない
  • 再発防止策:過去の実績データや複数の見積もり方法で妥当性を確かめる。不確実性の高い作業には余裕を持たせる。要件定義など上流工程が終わった段階で見積もりを見直す

計画の出発点がずれていると、その後の工程すべてに影響が及びます。JUAS「企業IT動向調査2026」でも、工期が予定どおりに進まなかった理由として「計画時の考慮不足」を挙げた回答が52.5%と最も多くなっています。

出典:JUAS「企業IT動向調査2026」分析レポート②

要件・スコープの曖昧さと変更管理の不在

  • 症状:仕様変更や追加の要望が止まらない、後工程で手戻りが多発する
  • 原因:要件定義(システムで何を実現するかを決める工程)が不十分なまま次の工程に進んでいる。変更を受け付けるルールがない
  • 再発防止策:要件定義に発注側の業務担当者が主体的に参加する。変更の要望は、費用と期間への影響を見積もったうえで承認する手続きを設ける

要件やスコープの管理は、ベンダー任せにせず、発注側が主体となって進めるべき領域です。JUAS「企業IT動向調査2026」でも、予算が予定を超過した理由として「仕様変更の多発」が48.6%に上っています。また、システム再構築を対象としたIPA(情報処理推進機構)のガイドでも、現行システムの仕様があいまいなまま開発を進めることが失敗の主な原因とされ、企画・計画段階で確認すべき点を整理する重要性が示されています。

出典:JUAS「企業IT動向調査2026」分析レポート②
出典:IPA「システム再構築を成功に導くユーザガイド 第2版」

体制と意思決定権限の不明確さ

  • 症状:判断待ちで作業が止まる、会議で結論が出ない、経営層がプロジェクトの状況を知らない
  • 原因:スポンサー(予算と最終判断に責任を持つ人)が不在、PMの権限が小さい、PMO(プロジェクトマネジメントを横断的に支援する組織・役割)が機能していない
  • 再発防止策:開始時にスポンサー・PM・PMOの役割と権限を文書にしておく。経営層が定期的にプロジェクトの状況を確認する場を設ける

やや古い調査ですが、PMIの「Pulse of the Profession 2017」では、実績のあるプロジェクトマネジメント手法に投資している組織ほど浪費が少なく、戦略と結びついた全社的なPMOを持つ組織では、当初の目標を達成したプロジェクトが38%多いと報告されています。体制づくりは、プロジェクトの成否を左右する要素の1つです。

出典:PMI「Pulse of the Profession 2017」

報告・コミュニケーションの不透明さ

  • 症状:報告が「順調」から突然「大幅遅延」に変わる、関係者の間で状況の認識がずれる
  • 原因:進捗を感覚的な値で報告している、悪い情報を上げにくい雰囲気がある、発注側とベンダーの情報共有が形だけになっている
  • 再発防止策:事実で測れる指標で報告する仕組みをつくる。悪い情報を早く上げたことを評価する。定例会議で課題の一覧を必ず確認する

問題そのものより、問題が「見えない」ことが対応の遅れにつながります。IPAのプロジェクトマネージャ試験シラバスでも、計画と実績の差異を重点的に報告すべき事項として扱っています。報告の仕組みは、ステップ6で整えた定量レポートを、プロジェクトの開始時から運用するのが理想です。

出典:IPA「プロジェクトマネージャ試験(レベル4)シラバス Ver.7.1」

リスク管理の不在

  • 症状:想定外の問題が次々に起き、そのたびに計画が崩れる
  • 原因:リスクの洗い出しが開始時だけで終わっている、リスクが起きたときの対応策と担当者が決まっていない
  • 再発防止策:リスクの一覧を定期的に見直す。主要なリスクには、起きたときの対応策と担当者をあらかじめ決めておく。プロジェクト終了後に振り返りを行い、次の計画に反映する

リスクの管理は、プロジェクトマネジメントの基本的な管理領域の1つです。IPAのプロジェクトマネージャ試験シラバス(Ver.7.1)でも、リスクの特定・評価・対応・管理が、プロジェクトマネージャに求められる知識・技能の範囲に含まれています。

出典:IPA「プロジェクトマネージャ試験(レベル4)シラバス Ver.7.1」

5つの原因と、それぞれのリスク・再発防止策をまとめると次のとおりです。どの原因にも共通するのは、「起きてから対応する」のではなく、開始時から仕組みとして組み込んでおくことです。

原因 起きるリスク 再発防止策
見積もりの甘さ 開始直後からの遅延、追加費用の繰り返し 過去の実績データによる確認、不確実な作業への余裕の確保、上流工程後の見積もり見直し
要件・スコープの曖昧さと変更管理の不在 仕様変更の多発、後工程での手戻り 発注側の業務担当者による要件定義への主体的な参加、変更を承認する手続きの整備
体制と意思決定権限の不明確さ 判断の停滞、経営層の状況把握の遅れ スポンサー・PM・PMOの役割と権限の文書化、経営層が状況を確認する定例の場
報告・コミュニケーションの不透明さ 問題の発見の遅れ、関係者間の認識のずれ 事実で測れる指標による報告、悪い情報を早く上げる文化づくり、課題一覧の定例確認
リスク管理の不在 想定外の問題の連続、計画の度重なる崩れ リスク一覧の定期的な見直し、対応策と担当者の事前決定、終了後の振り返りと次の計画への反映

プロジェクトの立て直しで外部のプロ人材を活用する判断基準と準備

立て直しの手順が分かっても、それを担える人材が社内にいるとは限りません。ここでは、外部人材の活用を検討すべき状況、立て直しで外部人材が担う役割の種類、外部人材を活かすための社内側の準備を整理します。

外部人材の活用を検討すべき状況

次のような状況に当てはまる場合は、外部人材の活用を検討する価値があります。

  • 社内に立て直しを経験した人材がいない、PMやPMOを担える人材が足りない
  • 社内の利害関係から離れて、中立に現状を評価できる人がいない(当事者だけでは事実を客観的に見にくい)
  • 立て直しと並行して通常業務も回す必要があり、社内の手が足りない
  • 業務や技術の専門知識が足りず、真因の特定や方針の判断ができない

特に2つ目は見落とされがちです。プロジェクトに深く関わってきた人ほど、これまでの経緯や人間関係から、事実を客観的に評価しにくくなる場合があります。

中立な評価を生かすなら、方針を決めた後ではなく、ステップ1の現状把握の段階から参画してもらうのが効果的と考えられます。当事者ではない立場で事実を整理してもらうことで、方針判断の根拠を経営層に説明しやすくなります。

立て直しで外部人材が担う役割の種類

「外部に頼む」といっても、担う役割はいくつかに分かれます。自社に不足しているのがどの役割かを見極めることが大切です。

  • 立て直しを主導するPM:現状把握から方針の立案、関係者の調整まで、立て直し全体を率いる
  • PMO:進捗・課題・リスクを管理する仕組みをつくり、運用を支える
  • 業務・技術の専門家:要件の整理、設計の見直し、品質の評価など、特定の領域で判断を支える

それぞれの役割が向く状況を比べると、次のようになります。

役割 主な担当 向く状況
立て直しを主導するPM 現状把握、方針の立案、関係者の調整など立て直し全体の推進 PMを担える人材が社内にいない、または中立な立場で立て直しを率いる人が必要な場合
PMO 進捗・課題・リスクを管理する仕組みづくりと運用 PMはいるが管理の仕組みが弱く、状況が見えにくくなっている場合
業務・技術の専門家 要件の整理、設計の見直し、品質の評価など特定領域の判断支援 真因の特定や方針判断に、業務や技術の専門知識が必要な場合

外部人材を活かすための社内側の準備

外部人材を迎えても、社内の受け入れ体制が整っていなければ力を発揮できません。次の3点を準備しておくことをおすすめします。

  • 任せる範囲と社内に残す判断を分ける:最終的な意思決定や予算の判断は社内が持ち、外部人材にはその判断材料づくりや実行の推進を任せる
  • 情報と関係者へのアクセスを最初にそろえる:資料の閲覧権限、関係者へのヒアリングの機会を参画初日から使える状態にする
  • ノウハウを社内に残す仕組みをつくる:社内のメンバーを外部人材と組ませ、管理の仕組みや進め方を引き継げるようにする

外部人材の活用は、「立て直しを任せきりにすること」ではなく、「立て直しを通じて社内の推進力を高めること」と捉えるのが、依存を生まないためのポイントです。

外部人材に任せきりにすると、契約終了後に同じ問題が起きたとき、社内で対応できなくなるおそれがあります。

プロジェクトの立て直しは「フリーコンサルタント.jp」へご相談ください

ここまで見てきたように、プロジェクトの立て直しでは、現状の把握から真因の特定、方針の決定、関係者との再合意、体制の再設計まで、短期間で多くの判断が求められます。一方で、「社内に立て直しを経験した人材がいない」「当事者だけでは現状を客観的に評価しにくい」と感じている責任者の方も少なくないと考えられます。

立て直しを進めるうえでは、誰が立て直しを主導するのか、どの役割(PM・PMO・業務や技術の専門家)を外部に求めるのか、最終的な判断を社内でどう担うのかを、あらかじめ整理しておく必要があります。これらを社内の担当者だけで一から検討すると、通常業務と並行して進めることが難しくなる場合があります。

「フリーコンサルタント.jp」では、事業会社やコンサルティングファームでの実務経験を持つプロ人材を、必要な期間だけ活用できます。プロジェクトマネジメントやDX推進の経験を持つ人材が、上流の計画づくりから実行の推進、社内メンバーへのノウハウ移転まで伴走します。社内に推進力を残しながらプロジェクトを前に進めたい企業に向いています。

プロジェクトの遅延や推進体制にお悩みの場合は、「フリーコンサルタント.jp」の無料相談からお気軽にご相談ください。

フリーコンサルタント.jpによるDX推進プロジェクトの支援事例

社内に推進人材が不足し、プロジェクトを思うように前に進められない——。こうした課題は、立て直しの場面に限らず、DX推進のプロジェクトでも多く見られます。ここでは、プロ人材がプロジェクトに参画し、社内体制づくりとあわせて推進を支援したフリーコンサルタント.jpのDX推進支援事例を紹介します。いずれも、社内に不足する役割を外部人材が担い、最終的に社員が自走できる体制へ知見を移した事例です。本記事で解説した「外部人材を活かすための社内側の準備」の参考としてご覧ください。

事例①|通信キャリア業界(大手):デジタル活用推進組織(CoE)の立ち上げ支援

業務効率化を目的に、複数部門の知見を集約する専門組織(CoE=Center of Excellence)の立ち上げを決定したものの、組織立ち上げの推進とデジタル技術の活用の両方を担える人材が社内に不足していた企業の事例です。

当時の課題 ・デジタル領域の知見と組織立ち上げの経験を併せ持つ人材が社内に不足
・業務効率化ツールの開発・運用体制をゼロから構築する必要があった
実施したこと ・CoE組織の立ち上げから全体設計・運用構築・実運用までを一気通貫で伴走支援
・事業部門への課題ヒアリングをもとにしたツール開発の仕組みを構築し、プロパー社員が自走できる体制へ知見を移転

CoE組織の立ち上げと運用の安定化により、組織立ち上げ前と比較して業務工数の削減につながりました。プロパー社員が主体的に運用できる体制を構築し、外部人材への依存から段階的に脱却しています。

事例②|飲食・食品業界(大手・200店舗以上):需要予測AIの開発支援

200店舗以上・400品目の発注業務を店舗担当者の経験と勘に頼って行っており、業務が属人化していた企業の事例です。データサイエンティストなどAI活用の経験者が社内に不足し、AIの本格運用に向けたデータ活用の進め方が分からない状態でした。

当時の課題 ・データサイエンティスト・データアナリスト人材、AI活用の経験者が社内に不足
・店舗情報・POSデータをもとにした需要予測を、複数人が同じ精度で行うことが困難
・発注業務が現場の勘に依存し、担当者の休暇・退職で業務が滞るリスクを抱えていた
実施したこと ・店舗ごとの特徴を踏まえた変数を定義し、データを整理
・PoC(本格導入の前に効果を小規模に検証する取り組み)を経て、店舗ごとに高い精度で需要予測ができるAIモデルを構築・運用

需要予測AIの活用により発注業務の多くを自動化し、作業時間の削減につながりました。バックオフィス業務の負荷が軽減し、店舗担当者が接客などの対応に時間を割けるようになっています。

まとめ

プロジェクトの立て直しは、「止める→把握する→決める→合意する→組み直す→回す」の6つのステップで進めます。まず作業を止めて現状を数値で把握し、真因を特定したうえで、続行・縮小・中止の方針を複数案で比べて責任者が決めます。そのうえで関係者と再合意し、体制と意思決定ラインを組み直し、実績に基づく再計画と定量管理で軌道を修正していきます。

立て直しの途中では、原因を確かめないままの増員、期限だけを延ばす再計画、責任追及を優先する対応は避けてください。立て直しが落ち着いたら、見積もり・要件とスコープ・体制と権限・報告・リスク管理の5つの観点で、再発防止の仕組みをプロジェクトの開始時から組み込むことが大切です。

社内に立て直しを担える人材がいない場合は、外部のプロ人材を活用するのも有効な選択肢です。その際は、最終判断を社内に残し、ノウハウを社内に引き継ぐ形で進めることをおすすめします。

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