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内定承諾前に確認すべき労働条件通知書と条件交渉の進め方

#転職ノウハウ・戦略

転職活動を経て内定を獲得した際、喜びのあまりすぐ承諾したくなるかもしれません。しかし、入社後のミスマッチを防ぎ、納得してキャリアをスタートさせるためには、内定を承諾する前に労働条件を細部まで確認するプロセスが極めて重要です。

この段階で提示される「労働条件通知書」の内容を正しく理解し、もし疑問や希望と異なる点があれば、適切に質問や交渉を行う必要があります。

目次

なぜ内定承諾の前に労働条件の確認が必須なのか

内定承諾の意思表示は、法的に「条件付き労働契約」の成立とみなされますが、内定承諾書に内定辞退を拒否する法的拘束力はありません。入社日の2週間前までであれば、内定承諾書提出後でも内定辞退は可能です。

入社後に「面接で聞いていた話と違う」「こんなはずではなかった」といったトラブルに発展させないためにも、事前に書面で労働条件の確認を行うことが不可欠です。

口頭での説明だけでは、お互いの認識に齟齬が生まれる可能性があります。後々のトラブルを避け、自身が納得した上で新しい環境で働き始めるために、労働条件通知書に記載された一つひとつの項目を精査し、疑問点を解消しておく必要があります。

「労働条件通知書」とは?雇用契約書との違いも解説

労働条件通知書とは、労働基準法に基づき、企業が労働者に対して勤務地や給与、労働時間といった労働条件を明示するために交付する書類です。これは法律で定められた企業の義務であり、労働者はこの通知書を見て、提示された条件で働くかどうかを判断します。

一方、雇用契約書は、企業と労働者の双方が記載された労働条件に合意したことを証明するために取り交わす契約書類です。

通知書が企業からの一方的な通知であるのに対し、雇用契約書は双方が署名・捺印することで契約が成立する点に違いがあります。

一般的には、労働条件通知書の内容を確認し、内定を承諾した後に雇用契約書に署名する流れとなります。

労働条件通知書で必ず確認すべき9つの重要項目

労働条件通知書には、これから働く上での重要なルールが網羅的に記載されています。給与や休日といった分かりやすい項目だけでなく、将来のキャリアに関わる可能性のある項目まで、隅々まで目を通すことが大切です。

特にこれから解説する9つの項目は、入社後の働き方や生活に直接影響を与えるため、認識の齟齬がないか、求人情報や面接で受けた説明と違いがないかを慎重に確認しなくてはなりません。

担当する業務内容と将来の変更範囲

まず、面接などで説明された担当業務と、労働条件通知書に記載されている「業務内容」に相違がないかを確認します。使用される言葉の定義が曖昧な場合は、具体的な業務範囲について質問しておくと安心です。

あわせて、「業務内容の変更の範囲」という項目も必ずチェックしましょう。ここには、将来的に部署異動や職務変更によって担当する可能性のある業務の範囲が記されています。

自身のキャリアプランと照らし合わせ、想定外の異動や職務変更の可能性がないか、許容できる範囲であるかを事前に把握しておくことが重要です。

勤務地と転勤の可能性の有無

入社直後の勤務地が、聞いていた場所と相違ないか、具体的な住所まで確認します。特に複数の拠点を持つ企業の場合、どの事業所での勤務になるのかを明確にしておく必要があります。

同時に、「就業場所の変更の範囲」という項目で、将来的な転勤の可能性について確認することが不可欠です。転勤の可能性がある場合、その範囲が国内全域なのか、特定のエリアに限られるのか、あるいは海外も含まれるのかを把握しておきましょう。

自身のライフプランに関わる重要な要素のため、もし転勤が難しい事情がある場合は、内定を承諾する前にその旨を相談する必要があります。

勤務時間、休憩、残業に関する規定

始業時刻と終業時刻、そして休憩時間が何分で、どの時間帯に取得するのかを正確に確認します。フレックスタイム制や裁量労働制といった特殊な勤務形態の場合は、コアタイムの有無や労働時間の計算方法など、詳細なルールまで理解しておくことが重要です。

また、「時間外労働の有無」の項目で、残業が発生する可能性があるかを確認します。残業がある場合は、固定残業代(みなし残業代)が含まれているか、含まれているならその時間数と金額、そして超過分の残業代が支払われるかどうかも必ずチェックしましょう。

年間休日数と休暇制度(有給・特別休暇など)

求人情報に記載されていた年間休日数と一致しているか確認します。休日の規定についても、「週休2日制」と「完全週休2日制」では意味が異なるため注意が必要です。

また、年次有給休暇がいつ、何日付与されるのか、取得に関するルールも確認しておきましょう。法定通りか、それ以上の制度があるのかもポイントになります。

その他、夏季休暇や年末年始休暇、慶弔休暇といった特別休暇の有無、そしてそれらの休暇が有給扱いなのか無給扱いなのかも、働きやすさに関わる重要な項目なので見落とさないようにします。

給与(基本給・手当・みなし残業代)の内訳

提示された月給や年収の総額だけでなく、その内訳を詳細に確認することが重要です。給与は基本給と各種手当で構成されているため、基本給がいくらで、どのような手当(役職手当、資格手当、住宅手当など)がいくら支給されるのかを明確に把握します。

特に注意したいのが、固定残業代(みなし残業代)の有無です。含まれている場合は、その金額が何時間分の残業に相当するのかが明記されているかを確認し、その時間を超えた分の残業代は別途支給されるのかを必ずチェックしてください。

賞与(ボーナス)の有無と支給実績

賞与の有無、支給される場合の支給月や回数(年2回など)、そして「基本給の〇ヶ月分」といった算定基準を確認します。

もし「会社の業績による」といった変動要素が大きい記載になっている場合は、過去数年間の平均的な支給実績や、支給が見送られた例があるかなどを質問してみるのも有効です。

年収に占める賞与の割合が大きい企業の場合、業績によって年収が大きく変動する可能性があるため、そのリスクを理解した上で判断する必要があります。

想定していた年収と実態が大きく乖離しないよう、慎重に確認しましょう。

昇給に関するルール

今後の収入に関わる重要な項目として、昇給の有無や頻度(年1回など)、決定時期について確認します。評価制度についても記載があれば、どのような基準で評価され、昇給に繋がるのかを把握しておきましょう。

もし労働条件通知書に詳細な記載がない場合は、面談の機会などに、具体的な昇給モデルや過去の実績について質問してみるのも一つの方法です。

自身の頑張りがどのように給与に反映されるのかをイメージできると、入社後のモチベーションにも繋がります。長期的なキャリアプランを考える上で、欠かせない確認項目と言えます。

試用期間の有無と期間中の条件

多くの企業では、本採用の前に試用期間を設けています。その有無と、期間がどのくらいか(一般的には3ヶ月から6ヶ月)を確認しましょう。

最も重要なのは、試用期間中の労働条件が本採用後と異なる場合があるという点です。給与が本採用後よりも低く設定されていたり、一部の手当が支給されなかったりするケースもあるため、その条件を正確に把握しておく必要があります。

また、試用期間満了をもって本採用とならない条件(解雇事由)についても記載があるかを確認しておくと、より安心して入社を決められるようになります。

退職に関する手続きと規定

入社前に退職の話をするのは気が引けるかもしれませんが、万が一の際に自分を守るために重要な項目です。

自己都合で退職する場合、いつまでに(例:退職希望日の1ヶ月前まで)申し出る必要があるのか、その手続きについて確認しておきます。
会社の就業規則に関わる部分なので、事前にルールを把握しておくことは大切です。

また、解雇の事由など、企業側から労働契約を解除する場合の条件についても記載されています。これらの規定に目を通しておくことで、労働者としての権利を理解し、安心して働くことにつながります。

提示された労働条件に疑問や不安がある場合の対処法

労働条件通知書を丁寧に読み解く中で、記載が不明瞭な点や、面接で聞いていた内容との間に相違点が見つかることもあります。このような疑問や不安を抱えたまま内定を承諾してしまうと、後々トラブルの原因になりかねません。

企業側も、内定者には納得して入社してほしいと考えているはずです。疑問点を解消するのは決して失礼ではないため、臆せず適切な方法で企業に確認することが重要です。

まずは採用担当者にメールや電話で質問する

労働条件通知書で確認したい点が見つかったら、まずは採用担当者に連絡を取ります。質問事項が少ない場合や、簡単な確認で済む場合は電話でも構いませんが、複数の項目について確認したい場合や、記録として残しておきたい場合はメールでの連絡が適しています。

メールで質問する際は、件名に「内定の件に関するご質問」などと明記し、本文では内定へのお礼を述べた上で、確認したい点を箇条書きにするなど、簡潔で分かりやすく記載します。

丁寧な言葉遣いを心がけ、あくまで「確認」という姿勢で問い合わせることが大切です。

オファー面談の場で直接確認する機会を設けてもらう

給与や評価制度など、文章だけではニュアンスが伝わりにくい込み入った質問や、複数の疑問点がある場合には、オファー面談の機会を設けてもらえないか相談してみるのが有効です。

オファー面談は、企業側が改めて労働条件を説明し、内定者の入社意思を確認するために設ける面談のことです。この場で直接、採用担当者や配属予定部署の責任者と話をすることで、疑問や不安を解消できるだけでなく、職場の雰囲気などをより深く理解できるようになります。

入社後のミスマッチを防ぐためにも、有意義な機会として活用しましょう。

希望する条件と違う?労働条件の交渉を成功させるコツ

提示された労働条件を慎重に確認した結果、自身の希望や経験・スキルに見合わないと感じる部分があった場合、条件交渉を検討する選択肢もあります。

交渉は転職活動において一般的に行われるものですが、成功させるためには戦略と伝え方が重要です。

入社したいという前向きな意思を示しつつ、自身の市場価値を客観的な根拠と共に提示することで、企業側も検討しやすくなります。やみくもに要求するのではなく、計画的に交渉に臨むことが求められます。

交渉できる可能性のある項目とは

労働条件の交渉において、一般的に可能性があるとされるのは給与(年収)、役職、そして入社日です。

特に給与については、これまでの経験やスキル、実績が企業の求めるレベルを上回っている場合や、前職の給与水準を根拠として提示することで、交渉の余地が生まれます。

入社日に関しても、現在の職場の引き継ぎなどを理由に調整を申し出ることは可能です。

一方で、勤務地や業務内容、福利厚生といった、全社員に共通する制度や会社の経営方針に関わる項目は、個人での交渉が難しいケースが多いとされています。

希望条件を伝える際の注意点と伝え方

労働条件の交渉を行う際は、まず内定に対する感謝の意を伝え、入社への強い意欲を示した上で、相談という形で切り出すことが大切です。

高圧的な態度や一方的な要求は、企業側に悪い印象を与えかねません。希望する条件を伝える際には、「なぜその条件を希望するのか」という客観的な根拠を必ずセットで提示します。

例えば給与交渉であれば、自身のスキルや経験がどのように貢献できるか、あるいは現在の年収や他の選考状況などを具体的に伝えることで、説得力が増します。

あくまで謙虚な姿勢で、お互いの妥協点を探るスタンスが重要です。

労働条件に納得した後の内定承諾から入社までのステップ

提示された労働条件をすべて確認し、疑問点も解消されて納得できたら、正式に内定承諾のプロセスに進みます。

承諾の意思を伝えた後も、雇用契約の締結や現職の退職手続きなど、入社日までにやるべきことはいくつかあります。承諾後はスムーズな入社に向けて、計画的に手続きを進めていくことが重要です。

ここからは、内定承諾から入社までの具体的なステップについて解説します。

内定承諾の意思を期限内に連絡する

企業から提示された労働条件に納得したら、指定された期限内に内定を承諾する意思を連絡します。連絡方法は企業の指示に従いますが、一般的にはまず電話で採用担当者に直接伝え、その後、証拠として残るようにメールでも連絡を入れると丁寧です。

電話では、内定へのお礼と承諾の意思を明確に伝えます。メールを送る際も、改めて感謝の言葉と入社後の抱負などを簡潔に添えると、良い印象を与えられます。

承諾の意思表示は労働契約の成立を意味するため、慎重に行った上で、期限を守って速やかに連絡しましょう。

雇用契約書に署名・捺印して返送する

内定承諾の意思を伝えると、企業から雇用契約書や入社承諾書といった書類が送付されます。これらの書類が届いたら、署名・捺印する前にもう一度、記載内容を最終確認します。

特に、事前に提示された労働条件通知書の内容と相違がないか、給与や勤務時間、休日などの項目を注意深くチェックしましょう。

すべての内容に問題がないことを確認した上で、必要事項を記入し、署名・捺印をして指定された期日までに返送します。この時点で不明な点があれば、決して曖昧にせず、必ず採用担当者に問い合わせて解消してから手続きを進めます。

現在の職場へ退職の意向を伝える

転職先企業との間で雇用契約を正式に締結したら、現在の職場に退職の意向を伝えます。法律では退職日の2週間前までの申し出で問題ありませんが、円満退社のためには、会社の就業規則に定められた期間(一般的には1ヶ月~2ヶ月前)に従うのが望ましいです。

退職の意思は、まず直属の上司に直接、口頭で伝えます。その際、具体的な退職希望日を伝え、後任者への引き継ぎを責任を持って行うことを約束しましょう。

最終出勤日まで誠実に業務に取り組み、良好な関係を保ったまま退職することが、社会人としてのマナーです。

まとめ

内定を得た後の労働条件確認は、転職活動における最後の、そして非常に重要な関門です。入社後に「こんなはずではなかった」という後悔をしないためにも、提示された労働条件通知書を書面で細部まで確認し、少しでも疑問や不安があれば、承諾する前に必ず解消しておく必要があります。

場合によっては、希望条件を伝える交渉も必要になるかもしれません。

本記事で紹介した確認項目や交渉のコツを参考に、自身が納得できる条件で契約を結び、転職後の新しいキャリアを気持ちよくスタートさせてください。

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