企業インタビュー

【株式会社INDUSTRIAL-X 代表取締役CEO 八子知礼氏インタビュー】コンサル未経験から即戦力へ。ノウハウの徹底的な「標準化」でコンサルタント育成と日本の産業構造変革を同時に成し遂げるINDUSTRIAL-Xの実力とは

株式会社INDUSTRIAL-X

コンサルティングの属人的なノウハウを標準化し、デジタル基盤とのハイブリッドで企業の変革を支援する株式会社INDUSTRIAL-X。代表を務めるのは、「ミスターIoT」としても知られ、コンサルティング業界で数々の新規事業やエコシステム形成をけん引してきた八子知礼氏だ。

同社が強みとするのは、業界ごとの組織や業務の「境目」に存在する課題を可視化する独自フレームワークを駆使したコンサルティングだ。境目にフォーカスすることで、業界や組織の壁を越え、あらゆるクライアントの課題を仮説ベースで抽出し、スピーディーな変革を支援する。

今回は代表取締役CEOの八子知礼氏に、INDUSTRIAL-Xの強みやコンサルティング手法、同氏の異色のキャリアから起業までの経緯、さらに宇宙ビジネスを見据えた壮大な展望まで聞いた。

八子 知礼(やこ・とものり)
INDUSTRIAL-X 代表取締役CEO
1997年に松下電工(現パナソニック)入社。宅内組み込み型の情報配線事業の商品企画開発に従事する。その後、介護系新規ビジネス(現パナソニックエイジフリー)に社内移籍、製造業の上流から下流までを一通り経験。その後、のちにベリングポイントとなるアーサー・アンダーセンにシニアコンサルタントとして入社。2007年にデロイト トーマツ コンサルティングに入社後、2010年に執行役員パートナーに就任。2014年にはシスコシステムズに移籍し、ビジネスコンサルティング部門のシニアパートナーとして同部門の立ち上げに貢献。一貫して通信/メディア/ハイテク業界中心のビジネスコンサルタントとして新規事業戦略立案、バリューチェーン再編等を多数経験。2016年4月よりウフルIoTイノベーションセンター所長としてさまざまなエコシステム形成に貢献。2019年4月にINDUSTRIAL-Xを創業。代表取締役を務める。2020年10月より広島大学AI・データイノベーション教育研究センターの客員教授就任。

目次

コンサル×デジタルのハイブリッドで挑む、大企業と中小企業の「境目」をなくす支援

——INDUSTRIAL-Xの事業内容を教えてください。

大きく分けてデジタル変革事業と変革基盤事業の2つを展開しています。デジタル変革事業では、事業変革コンサルティング・AI導入/データ活用支援・システムインテグレーション・BPOを軸に、戦略策定から実装・運用まで一気通貫で各領域のプロフェッショナルが伴走支援します。変革基盤事業では、標準化したコンサルティングノウハウをSaaSやソフトウェア、人材育成サービスなどのツールとして提供します。コンサルティングとナレッジ/コンテンツ、デジタルツールをハイブリッドで組み合わせることで、スピーディーな企業変革を実現するのが当社の役割だと考えます。

——大企業だけでなく、中小企業の支援も手掛けているのですね。

はい。INDUSTRIAL-Xは「産業構造を変革する」という使命を掲げています。この使命を果たすにあたっては、大企業向けのコンサルティングだけでは産業全体を変えられません。中小企業の変革を促さない限り、日本の産業構造は変わらないと考えます。

特に中小企業の場合、新規事業や新たなシステム導入などに十分投資できない企業が少なくありません。しかし、当社がクラウド経由で標準化したツールを提供すれば、複数社でそのツールを共同利用することになります。一社単独で新システムを構築するより、低コストで先進的な仕組みを自社に導入できるようになるわけです。これにより、大企業と中小企業の境界はもとより、大都市圏と地方の格差といった境界もなくなると考えます。こうした「境目」を乗り越える体制や環境づくりを当社が支援することで、産業構造が変革されていくと考えています。

——INDUSTRIAL-Xでは大企業向けと中小企業向けのコンサルティングでチームを分けているのでしょうか。

いいえ。大企業向けのコンサルティングに携わるからこそ、その業界やサプライチェーン全体を俯瞰できるようになり、中小企業の課題も深く理解できると考えます。大企業しか知らない、もしくは中小企業しか知らないコンサルティングでは、偏ったビジネスモデルになりかねません。そのため、INDUSTRIAL-Xのコンサルタントには大企業と中小企業双方の現場を知り、包括的な視点を持つことを求めています。

あらゆる境目を取り除く独自フレームワークを使ったコンサルティング

——INDUSTRIAL-Xのコンサルティングの強みをどう捉えていますか。

「境目」に根付く課題を解消するための独自フレームワークを持っているのが当社の強みです。例えば、大企業と中小企業の間、組織と組織の間、ベテランと若手のギャップなど、物理的、時間的、組織的に離れている「境目」には必ず課題が存在します。当社のフレームワークは、こうしたあらゆるギャップを取り除いて埋めることができます。多くの企業に根付く縦割り構造を取り除いたフラットな環境を作り出せるのが、当社のコンサルティングの特徴であり、強みでもあると自負しています。

このフレームワークはクライアントにメリットをもたらすだけではありません。コンサルタントの視野を広げる上でも効果を見込めます。自分がこれまで携わったことのない業界であっても、フレームワークを使えば課題がどこにあるのかを抽出できるようになります。多くのコンサルティング会社では、特定の業界のナレッジを身に付けるまで5年かかると言われています。しかし当社では、フレームワークを使った課題抽出方法を徹底的にマスターすることで、コンサルティング業界未経験でもすべての業界に通用するコンサルタントとしてすぐ活躍できるようになります。

——大手のコンサルティング会社との違いはどのような点にあると思いますか。

大手コンサルティング会社の多くはマトリクス型の組織になっており、特定の業界や領域しか担当させてもらえないことが少なくありません。しかし、近年はデジタル化によって業界や領域の境目自体がなくなりつつあります。業界や領域ごとに担当を区切るのはナンセンスではないでしょうか。当社の場合、業界に関係なく包括的に解決策を提案できます。特定の業界は専門外といったことはなく、あらゆる業界のクライアントに向けて、適切な課題解決策を提案できるのが大手との違いだと考えます。

さらに当社は現在、宇宙ビジネスの領域にも挑戦しています。業界として十分確立していない未知の領域ですが、あらゆる業界に関わってきた当社だからこそ携われる領域だと考えます。宇宙ビジネスは国家安全保障の観点から外資系コンサルティング会社が参入しづらいと一般的に言われています。当社のような「国産」のコンサルティング会社が取り組むチャンスは多いにあると考えます。宇宙ビジネスは今後、INDUSTRIAL-Xの強みとなって大手との差異化にもつながると考えています。

求めるのは産業構造変革に本気でコミットできるやる気と情熱

——採用についてお聞きします。INDUSTRIAL-Xではどのような人を積極的に採用しているのでしょうか。

当社では原則として、コンサルティング経験を必須としていません。コンサルティング業界未経験でも当社独自のノウハウやナレッジを教え込み、最前線で活躍できるコンサルタントに育て上げるようにしています。そのため、過去の経歴やスキルはそれほど重視しません。それより当社の「産業構造を変革する」というビジョンに深く共感し、未経験からでも挑戦していくという本気のやる気と情熱を持っているかどうかを重視しています。面接などの選考過程でも、その人が胸の内に秘める「本当の情熱」を探るよう心掛けています。

——具体的にどのような姿勢や考え方を持っている人が向いていると思いますか。

好奇心旺盛で、向上心と情熱がある人が向いています。大手のように担当範囲が限られていることに不安を感じている人や、チャンスがあれば何でもやりたいと貪欲なチャレンジ精神を持つ人にとって、INDUSTRIAL-Xは最適な環境です。日本の産業が低迷することに抗い、本気で変革にコミットできる熱い思いを持った方と一緒に働きたいですね。

——入社後のサポート体制や教育体制などがあれば教えてください。

当社では属人的になりがちなコンサルティングノウハウの徹底的な標準化に取り組んでいます。こうして標準化したコンサルティングノウハウを未経験者の教育に活用しています。未経験者向けの教育環境は、eラーニングなどの研修サービスとしてクライアントへ提供できるレベルにまで仕組み化しており、高度なコンテンツを効率よく学べる体制を整えているのが当社の特徴です。未経験からでも一人前のコンサルティングワークができる人材へ、確実に育て上げることを前提とした環境や支援体制を整えています。

「ミスターIoT」誕生とINDUSTRIAL-X起業に至る八子氏の思い

——八子さんご自身の経歴についてお聞きします。これまでの経歴と、コンサルタントを目指したきっかけを教えてください。

私は新卒で松下電工(現パナソニック)に入社しました。学生時代はロボット工学の研究室で単細胞生物のコンピューターシミュレーションに携わっており、「変化に応じて環境が自動的に変わる住宅設備を作りたい」と考えたのが入社の理由でした。

入社後は通信機器や介護機器の製造に携わっていました。自分が担当した製品単体よりも、介護部門で一人ひとりにカスタマイズした製品が利益を生むことを学びました。そこから、顧客の長期的な関係性の中で課題解決を提供していく「CRM(顧客関係管理)」の重要性に気付いたのです。しかし、メーカーでは顧客に本質的なアプローチを試みるのが難しく、より深い課題解決ができる存在としてコンサルタントという職業に出会い、転職を決意しました。

——そこからどのようにキャリアを積んだのでしょうか。

アーサー・アンダーセン(後のベリングポイント)の大阪事務所に入社しました。当時は非常に厳しい環境で、いつクビになるか分からない恐怖感を抱きながら、毎週末は徹夜で勉強しました。給料の5%を費やしてCRMやマーケティングの本を買い漁って猛勉強し、マーケティングの専門家と呼ばれるぐらいにまでなりました。

事業再生の会社を経てデロイト トーマツ コンサルティングに移った後は、「モバイルクラウド」などの未だマーケットに存在しない新たなコンセプトを提唱してビジネスを変革していくコンサルティングを実践し、メディアに扱ってもらえるほどのオピニオンリーダーとなっていきました。さらにその後、シスコシステムズに移って日本のコンサルティング部門のトップとして、あらゆるものをつなぐ「IoT(当時はM2M)」やエッジコンピューティングの領域をけん引しました。その後はウフルに参画し、IoTのエコシステムをリードする中で、メディアなどで「ミスターIoT」と呼んでいただけるようになりました。

——INDUSTRIAL-Xを起業した経緯を教えてください。

実は当初、自分で会社を作るつもりはまったくありませんでした。私は常に誰かのナンバー2としてサポートする役割にやりがいを感じていたからです。

しかし、2013年にSNSを通じて、現在当社の取締役CSOを務める吉川剛史と出会い、彼と毎月のように会って議論を重ねる中で「産業の形を変えたいという思いがあるなら、自分で起業してやってみろ」と強く背中を押されました。私が並べる「できない言い訳」を数ヵ月かけてすべて潰されたのです。さらに懇意にしていた方からも「会社を作るなら仕事を出せる」と後押しをいただき、腹を括りました。クライアントの「人がいない」や「お金がない」などといった言い訳をすべて潰せるよう、人材提供や銀行融資の取り付けまで支援し、あらゆる経営資源を提供する「Resource as a Service」のモデルを実現しようと、2019年にINDUSTRIAL-Xを立ち上げました。

宇宙ビジネス拡大とグループ経営強化でクライアントの変革を支援

——今後の展望についてお聞かせください。

まずは、宇宙ビジネスの売上比率を2027年までに全体の3割程度まで拡大していく予定です。2030年ごろには、自分たちが関与したプラットフォームで調達した部品で人工衛星を開発し、宇宙に飛ばしたいという野望も持っています。IPOも視野に入れていますが、それはあくまで通過点であり、ゴールではないと考えています。

——グループ経営へのシフトも進めていくとのことですが、具体的にどのような狙いがあるのでしょうか。

企業変革を絵に描いた餅で終わらせず、大企業のみならず中小企業レベルまで現場への実装やスキル醸成・内製化を通じてより一層コミットする体制を整えたいと考えています。そのためにはより幅広なサービスを包括的に提供できるようにグループとしての体制を強化するのが望ましいと考えてきました。2026年6月から新たに2社がグループに加わり、全体で4社体制となりました。さらに今後1、2年で6社から8社程度までグループ化を拡大する計画です。当社単体では困難だったAIの開発や現場への人材派遣など、さまざまな強みを持つ会社をグループ化することで、クライアントの変革をさらに強く後押しし、それを産業全体に広げていけるようにしていきたいです。


【インタビュー後記】

INDUSTRIAL-Xの八子代表へのインタビューを通じ、圧倒的な熱量と「産業構造を変革する」という強い使命感に深く感銘を受けました。メーカーからコンサルティングファーム、コンサルティング事業を経て起業に至る多彩な経歴から生まれた、大企業だけでなく中小企業も巻き込むコンサルティングのモデルは非常に革新的です。特に印象的だったのは、業界や企業・組織の「境目」に着目する課題解決のフレームワークと、固定観念にとらわれず宇宙ビジネスまでも視野に入れるスケールの大きさです。コンサル未経験でも好奇心と情熱を持ち、日本の産業を変えるというビジョンに共感できる方にとって、最高の挑戦の場となるはずです。

コンサルネクスト・シニアコンサルタント
塚田真仁

株式会社INDUSTRIAL-X 企業情報

所在地東京都港区芝公園1丁目1-1 住友不動産御成門タワー9F
設立2019年4月15日
資本金2,210,990,051円(資本準備金含む)
代表者代表取締役CEO:八子 知礼
事業内容デジタル変革事業(事業変革コンサルティング、AI導入/データ活用支援、システムインテグレーション、事業部門BPO)
変革基盤事業(デジタル変革クラウド、変革人材育成、データ基盤ソフトウェア)

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