技術と経営という2つの視点から真に結果を導き出すDX戦略を手掛ける株式会社Initial Engine。渡米後に起業した経験を持つ佃氏とグローバルなスタートアップで経験を積んだ佐藤氏の2人が率いる同社は、技術偏重でも机上の空論でもない、地に足の着いたDX戦略を描く。
今回はそんな2人に、同社の事業内容や強み、活躍できる人材像などをインタビュー。経営に携わった経験を持つ両者だからこそ語れる、DXの本質や今後の展望などを聞いた。
佃 松三郎(つくだ・まつさぶろう)
2000年、ソフトウェア開発エンジニアとしてキャリアをスタートし、2002年、独立系SIerに技術役員としてジョイン。システム開発の現場で経験を積んだ後、2006年にはアメリカのロサンゼルスでスタートアップを起業した。帰国後の2015年にテクロスに入社。同社での実績を積み重ね、2016年には取締役CTOに就任。 技術とビジネスの両面を牽引する役割を果たしながら、EC事業などの創設にも関わる。2021年にはIntial Engineの前進となるDX事業部を創設。その後Initial Engineの代表に就任した。
佐藤 龍太(さとう・りゅうた)
2011年 ワークスアプリケーションズにエンジニアとして入社。2015年にはグローバル市場を狙うスタートアップに参画。2017年に取締役CTOに就任し、SNSをはじめFintechやブロックチェーン事業を推進。その後、複数の企業に技術顧問や開発サポートを実施し、2023年にテクロスホールディングス DX事業部にCTOとして入社。現在は、あらゆる企業のソフトウェア化を目指すInitial Engineを立ち上げ、取締役CTOに就任した。
クライアントの課題解決から生成AI活用まで—経営と技術を結ぶInitial EngineのDX支援

——Initial Engineの事業内容を教えてください。
「経営と技術を結ぶ」をコンセプトに、クライアントの課題発見から戦略策定、開発に至るまでのDX支援をワンストップで手掛けています。事業内容は主にDXコンサルティングサービス、CTOアドバイザリーサービス、CIO補佐官サービスの3つに分かれており、クライアントの課題を適切に捉えた上で伴走型の支援を行います。
当社の強みは、実際にCTOを経験した者が中心となって支援を手掛ける点です。高い技術と専門的な経営の知識を掛け合わせ、DXの効果を最大限引き出せるようにします。
最近では従来のDX化の手法の1つである業務の自動化だけでなく、生成AIを活用したソリューションの提供に注力しているのも特徴です。組織全体での生成AI基盤の構築や、社内専用のRAG(Retrieval-Augmented Generation)環境、業務特化のAIエージェントの構築など、最先端のAI技術を駆使したサービスを提供しています。
——経営だけでなく技術も専門性が高いのですね。支援する際の流れを教えてください。
まずクライアントの課題を深く理解するためのコンサルティングから支援をスタートすることが多いです。クライアントが今どういう状況なのか、いわゆる「as is」を明確にし、目指すべき姿である「can be」を描きます。一般的には「as is to be」を用いますが、当社では「can be」を問うようにしています。
——なぜ「can be」にこだわるのでしょうか。
「to be」だけを示しても、現場の方からすると「明日から具体的に何をすればいいのか」「半年後にどうなっていればいいのか」が見えにくいことが多いためです。実際に私たちも支援を行う中で、手段が目的化してしまうケースを見てきました。何のためにやっているのか、本質を見失ってしまうのです。
手段を目的にしないためには、as isとto beの2つの距離を埋めなければなりません。ゴールに向けたプロセスを丁寧に分析し、クライアントの企業文化や習慣を考慮した上で、「can be」つまり「次にこうする」という道筋を具体的に示すことが重要だと考えています。例えると、ロッククライミングで次にどこに手や足をかけるかを見えるようにするイメージです。
——目標までのイメージを具体化するのですね。他に意識していることはありますか?
クライアント内でのDX人材育成も意識しています。昨今では事業会社が直接DX人材やPM人材を雇おうとすると、給与レンジが合わないケースが多く、採用に関する課題が顕在化しているためです。
支援するクライアントが継続的にDXを続けられるよう、クライアント内でDX人材を育成する取り組みを行うことで、クライアントについて深く知りながら支援できるようになるのです。
柔軟な体制とクライアントに寄り添うプロジェクト運営で、少数精鋭だからこその強みを活かす

——社員数やプロジェクト体制について教えてください。
従業員は業務委託含めて約30名に活躍してもらっています。そのうち3分の1くらいがコンサルタントとして在籍しています。
プロジェクト体制で言うと、最初の上流部分は2~3名からスタートし、プロジェクトが大きくなるにつれて徐々に増えていくことが多いです。自社だけでなく外部の協力会社や業務委託の方をアサインしてプロジェクトを組むこともあります。
プロジェクト期間は長いものが多く、1年以上かけて目に見える成果が出始めてからプロジェクトを拡大していくというケースもあります。
——他社との優位性はどこにあると考えていますか。
大手のコンサルティングファームに対しての優位性はシンプルにコスト面です。人材をフルアサインするのではなく、月に0.2~3人といった形でリソースごとに細かくアサインできるため、初期投資などを抑えられます。プロジェクト開始時に3~4人のコンサルタントが一気に訪れてクライアント側が対応できないといったケースを避けられるため、クライアントにとって無駄なコストをかける必要はありません。
——働き方についてはいかがでしょうか。
基本的にはフルリモートでの勤務です。ミーティングもオンラインが多く、社員の住んでいる場所もバラバラです。ただ、必要に応じてクライアント先には直接訪問するようにしています。またプロジェクト内の信頼関係構築のため上限なしのコミュニケーション出張制度などの福利厚生も充実させています。
少数精鋭の組織だからこそフルリモートから始められるという点は働き方における大きな強みと言えます。しかし逆を言えば拠点がバラバラの勤務形態だからこそ、コミュニケーション能力というのは、当社に参画する上では重要な部分の1つでしょう。
社員を管理しすぎず、いつ何をするかは本人の裁量に任せています。期日までにアウトプットを用意することと、そのために役割をきちんと決めることを重んじています。そのため、コミュニケーション能力や自分でタスクをコントロールする能力は、対面での働き方以上に必要となるでしょう。
活躍の鍵は「技術」×「経営」の視点

——貴社ではどのようなバックグラウンドの方が在籍しているのでしょうか。
SIerでPMとして活躍していた方や事業会社にいた方などバラバラで、コンサルタント未経験者の方がほとんどです。
共通しているのは、何かしらIT業務に携わっていたことです。やはりIT業界に関わる業務に慣れていないと、そもそもクライアントとのコミュケーションが難しいと考えています。
——その他にこのようなスキルを持っていたら良いというものはありますか?
技術一辺倒ではなく、経営にどれだけのインパクトを与えられるかという視点から物事を考えられるスキルです。経営の知識を持っていて欲しいということではなく、技術と経営をどう繋げていくかを思考できる人を求めています。
——マインド面から、貴社で活躍しやすい人の特徴を教えてください。
当社では「地に足の着いた経営」という視点を重んじています。そのため、がむしゃらに頑張るタイプの方ではなく、経営について立ち止まって考えることのできる方が活躍しやすいと考えます。技術と経営を同じベクトルで考え、技術のみを成功させるのではなく、ビジネスを成功に向かわせるというマインドがないとクライアントと長期に良好な関係を築くのは難しいでしょう。
2人の挑戦をきっかけにInitial Engineが発足

——次に佃さんと佐藤さんへ、これまでのキャリアなどをお聞きします。まず佃さんから、これまでのキャリアについてお聞かせいただけますでしょうか?
私のキャリアは、エンジニアとして半導体装置の開発を行うところからスタートしました。その後に以前の上司と独立してエンジニアリングと経営の両方に携わる経験をしつつ、30歳の時にその会社を辞めて渡米して起業しました。人力でメールを翻訳する、今でいうクラウドソーシングサービスを手掛ける事業を展開しました。しかし残念ながらうまくいかず1年半ほどで帰国した後、古巣の会社に戻り、その後前職のゲーム会社に入社しCTOとして約10年間務めました。
実は現在のInitial Engineは、前職のゲーム会社で立ち上げたシステム開発事業からスピンアウトしたものです。
——エンジニアとしてキャリアをスタートさせたとのことですが、エンジニア職を志していたのでしょうか。
いいえ。寿司職人になるかエンジニアになるか悩み、エンジニアの道を選んだのが大きな理由です。物流や新技術などのあらゆるものがアメリカで生まれていた背景から渡米したいという強い思いがあり、当時ビザが比較的取得しやすいのがエンジニアか寿司職人だったのです。
最初は寿司職人になりたかったのですが、あの世界は10年ほど先輩職人について修行を積むのが当たり前の世界です。当時の彼女に「あなたは絶対に先輩職人さんと喧嘩するからやめておいたほうが良い」と強く反対されてエンジニアの道を選んだという経緯があります。
——次に佐藤さんのご経歴について教えてください。
私もエンジニア出身で、文系の大学からIT業界に進みました。最初はERPの開発などを担当して4年ほど経験を積んだ後、グローバル市場をターゲットとするスタートアップに転職し、AndroidやiOS向けのアプリケーション開発に携わりました。アジアや南米のユーザーに使ってもらうアプリケーションをメインで作っていて、2年ほど在籍したころ取締役CTOに就任しました。メンバーもスペインやバングラデシュ、マレーシア出身など多種多様なチームで、かなり難易度の高いプロジェクトを経験しました。もがき苦しみながらも、その過程で多くのCTOとの繋がりができたことは資産となっています。
そうした繋がりの中で佃さんと出会いました。技術と経営の架け橋となる部分で自分のCTOとしての知識や経験が活かせるのではないかと意気投合し、今に至ります。
——エンジニアを目指したきっかけは何だったのでしょうか?
もともと文系で、エンジニアを目指していたわけではなかったのですが、就活の時期にプログラミングに出会ったのがきっかけです。
自分が作ったものが目に見える形になって、それが人の役に立つかもしれないというところにおもしろさを感じました。いろいろなことに興味を持つタイプなので、エンジニアという道も良いかもしれないと感じたのが分岐点です。
——ありがとうございます。それでは次にInitial Engineの創業の経緯について、もう少し詳しくお聞かせいただけますか。
Initial Engineの始まりは、もともと私がCTOを務めていたゲーム会社の一事業部からスピンアウトしたものです。ゲーム業界は市場の変動が大きいため会社幹部の中でも新しい事業の柱を探そうという動きがあり、その中で、私の得意領域であるシステムやWebサービス開発をしようと、現在当社の株主の1人でもあるゲーム会社の社長と2人でシステム開発を請け負う新事業をスタートさせました。当初は開発を単発で請け負っていたりしたのですが、私自身がCTOでもあったので、開発だけではなく、技術的な課題解決の依頼や、そもそも開発組織として何をどうするべきかといった上流のニーズが増えてきていました。
ちょうどそのころ広がってきたのが「DX」という言葉です。DXが社会に浸透しつつあるという背景がある中、「技術はできて当たり前」の時代において、むしろそれをどう経営に繋げていくか、という点に焦点を当てるべきだと考え始めました。その頃に私と似た考えを持つ佐藤がジョインし、共に考えを言語化していく中でどうしてもゲーム会社とのシナジーが見出しにくいという課題に直面し、スピンアウトという形を選択しました。
——創業は1年前とのことですが、事業自体は以前から存在していたんですね。
2021年から新事業を立ち上げたため、約4年になります。当時スピンアウトした際は7、8名ほどの規模感でした。
Initial Engineが描く組織拡大と戦略

——今後の展望について、まず佃さんから教えてください。
今後も採用を強化して組織を拡大を続けるほか、今まで部分的にしかDXをしなかった領域にも包括的に支援していきたいと考えています。目指すところはDXによって「企業をソフトウェア化する」というクライアント企業を全社的にDXできる組織を目指しています。当社はクライアントと深く付き合っていくスタイルを強みとしているため、より多くの企業課題をカバーできる体制にしていきたいです。
また支援とは別の軸として、データマネジメント領域をコアとしたプロダクト開発にも着手しています。まだ議論している段階ではありますが、データマネジメントの領域と生成AIを掛け合わせプロダクトにも目を向けていきたいです。
——佐藤さんにもお聞きします。今後の展望で何か考えていることはありますか。
AIネイティブな開発組織を作っていくということと、AIドリブンなトランスフォーメーションができるコンサル部隊を組成するという2点に注力したいと考えています。事業や組織が拡大するにつれて組織内部をどう作っていくかというフェーズになるため、経営を見据えた上で、技術的にもしっかりと裏から支えられることが当社の強みだと自負しています。組織拡大と事業成長を両軸で進めていきたいと考えています。
【インタビュー後記】

佃代表と佐藤CTOのお話から見えてきたのは、CTO経験者が集結する同社だからこそ可能な、技術を経営インパクトへ昇華させる確かな手腕です。同社は理想論(to be)に終始せず、クライアントが「明日からできること(can be)」を重視し、ロッククライミングのように次の足場を具体的に示すことを信念としています。
求職者の皆様へお伝えしたいのは、フルリモートという自律した環境下で、経営の視座を磨きながらITの専門性を発揮できる面白さです。技術一辺倒から脱却し、「この技術がどれだけ利益に貢献するか」を思考できる人材へと成長できる機会は、キャリアの決定打となるはずです。管理されるのではなく、自らの裁量でアウトプットに責任を持ち、企業をソフトウェア化するという壮大な実験に挑みたい。そんな「技術×経営」の架け橋を目指す方にとって、ここは最高の研鑽の場です。
コンサルネクスト・シニアコンサルタント
塚田真仁
株式会社Initial Engine 企業情報
| 代表取締役 CEO | 佃 松三郎 |
| 創業 | 2024年2月19日 |
| 所在地 | 東京都新宿区四谷4丁目30番 NOVEL WORK 5F |
| 事業内容 | ・DXコンサルティング ・CTOアドバイザリー ・CIO補佐官 |

