日本企業の課題であるDXの推進を支援する株式会社プロジェクトホールディングス。同社のグループ会社の株式会社プロジェクトカンパニー(以下「PrC」)は、DXコンサルティング事業を手掛けている。さらに、PrCでは2025年1月に「AIコンサルティング本部」を新設した。
今回は、PrCでAIコンサルティング本部の本部長を務める髙栁太志氏にインタビュー。現在のAI市場の状況や、クライアント企業における取り組みや課題、さらに同社が提供するAIコンサルティングサービスの内容や、AIコンサルタントとして求める人物像を聞いた。
髙栁 太志(たかやなぎ たいし)
2011年に慶應義塾大学経済学部を卒業し、大手広告代理店へ入社。ストラテジックプランニング職としてマーケティング戦略の立案に従事。17年にはDX部門へ異動し、20年AI/データサイエンスの専門チームを設立。その間、19年には早稲田大学大学院経営管理研究科(MBA夜間コース)を修了。2024年大手広告代理店を退社。2024年PrCへ入社し、現在に至る。
AI活用の上流から支援し、企業のAI活用の旗振り役となる

——まずはPrCにおけるAIコンサルティングの事業内容を教えてください。
当社では、クライアント企業が抱える課題に対し、AIコンサルティングサービスを提供しております。AIコンサルティングサービスは、企業のAI利活用推進の超上流から下流まで、全工程の推進を支援するサービスです。
超上流では「そもそもAIを使うと企業にどういった良い未来があるのか」といったAIビジョンの策定や、その実現に向けての取り組みロードマップ、投資戦略、人員計画やアライアンス計画の策定などAI取り組み戦略の構築を支援します。上流では、AIソリューション企画支援として、AIを用いた新規事業・新サービスの計画や、既存事業効率化の計画、その開発のためのプロジェクト計画の立案などを行います。中流では、実際のプロダクト開発の推進支援として、PoC・PoBの推進、開発要件定義、開発プロジェクトマネジメント、ビジネスROI検証などを行い、最後の下流では、創ったAIソリューションの実装・運用支援として、AI新規事業・新サービスの事業開発や営業推進、既存事業効率化の業務導入やBPRプロジェクトなどにおいて、実際にビジネス成果を生み出す際の実行支援を幅広く行っていきます。

近年は企業の成長にはAIが不可欠だと考えられており、クライアント企業では、経営ビジョンや中期経営計画にAI利活用推進の方針を盛り込んだり、AIタスクフォースやAI CoEを組成したりする動きが活発になっています。このような取り組み意欲は旺盛な一方で、実態は茫洋とした課題認識や掛け声だけに留まっており、具体的な取り組み戦略や計画に落ちていないといった課題が残っています。そこで当社のAIコンサルタントが、企業内でのAI利活用推進の旗振り役となり、より解像度の高いビジョンや戦略や計画を立案し、プロジェクトを前に進めることが本サービスの価値だと考えています。
また、AIコンサルティングサービスでは経営の上流から携わることで、AIを単なる業務効率化の手段ではなく、イノベーションを起こす新サービス・新規事業開発のコア技術や、既存事業の競争優位性を築くためのコア技術へと昇華させます。例えば、AIでメール文を自動作成することで業務を効率化できるのはもちろん喜ばしいことですが、AIの真価を発揮できたとは必ずしも言えません。既存業務の枠組みを超えた全く新しい価値を生み出すことこそAI利活用の目指すべき未来だと考えます。
——業務効率化という範疇を超えてAIを活用するということですね。
はい。そのためにまず、土台となる戦略を緻密に策定することが大切です。大きなビジョンを描きつつ、現状とのギャップを可視化することで、企業が取り組むべき課題が明確になります。こうした取り組みなしにAIを活用しても、場当たり的で一時的な効果しか見込めません。当社は戦略の立案からAIプロダクトの導入、浸透まで包括した一気通貫支援を心掛けています。
——AIに関する職種というとAIエンジニアなどが思い浮かびますが、御社のAIコンサルタントの位置づけを教えてください。
AI戦略策定やAIを使った新規事業企画、ソリューション企画など、顧客の上流から支援する戦略コンサルティングを担当しています。
多くのクライアント企業では、ChatGPTのエンタープライズ契約を行うなど、社員がAIを使える環境を整備する動きが広がっています。しかしながら、前述のAIを用いた新規事業開発や既存事業の競争優位性獲得の取り組みは、ボトムアップではなかなか生み出しづらいものだと思います。やはり、社長やDX管掌役員、担当の部課長などマネジメント層が持つ高い視座とリーダーシップが必要だと考えており、その方々のご支援をするのが我々AIコンサルタントです。
一般的にAI人材というと、AIの技術開発に精通するAIエンジニアやデータサイエンティストなどが想起されがちだと思います。しかし当社では、「AIをどう使ってビジネスを成功に導くのか」という根本的な顧客課題に向き合うビジネスサイドのAI人材をAIコンサルタントと位置づけています。
AI活用における課題

——AI活用における課題は何だと考えていますか。
先ほど触れたことと重なりますが、多くの企業ではAIで何を実現したいかが不明瞭だと感じています。「とりあえずAIを使ってみよう」と明確な目的なしにAIを活用し始める企業が多いように見受けられます。AIのプロジェクトを進めたり専門部署を立ち上げたりすることが目的になっている企業も珍しくありません。こうした取り組み方では新たな価値は生み出せません。
AIでしか果たせない事業を描き切れずにいることが、多くの企業の共通課題ではないでしょうか。しかし、こうした課題が顕在化しているからこそ、乗り越えたときには加速度的に成長する市場であるとも考えます。そこで当社は「AIで何をしたいのか」という課題と徹底的に向き合い、AIのビジネス実装・社会実装や、AIを用いたイノベーション創出に貢献できればと思います。
——こうした課題と向き合う御社のコンサルティングは、他社にはない強みと言えますね。
そう思います。顧客からの依頼を受けてAIプロダクトを開発するいわゆるAI開発ベンダーと呼ばれる企業の多くは、AIエンジニアの技術力や開発力がコアコンピタンスとなっていることが多いです。しかし現在顕在化している課題は1段手前にある「そもそも何を目指し、どんなAIソリューションを開発するのか」のビジネス企画だと思います。こうした上流工程での課題にフォーカスを当てて特化していることが当社の強みです。
中流工程以降で、AIプロダクトの開発が必要になった際には、当社パートナーのAI開発ベンダー企業と協力してシステム/アルゴリズム開発を行うことが多いです。パートナー企業にとっても、前提となる戦略やつくりたいプロダクトが明確な方が、提案リードタイムが少なかったり、プロジェクト進行がスムーズだったりと、当社が介在することのメリットがあると考えています。
——具体的な業務内容についてもお聞きします。支援の期間やチーム構成について教えてください。
クライアント企業によってさまざまですが、最短で約2~3ヵ月で戦略策定を行い、半年ほど実行支援をさせていただくイメージです。戦略策定後、実行支援に移りますが、状況によって戦略を練り直しながら並行して実行支援を進めることもあります。
チーム構成は、プロジェクトごとに2~3名ほどをアサインすることが多いです。当社の職務ロールの本部長やチームマネージャーがプロジェクトをリードし、メンバーがリサーチ、ドキュメント作成など進行をサポートする役割分担になることが一般的です。
——働き方は、クライアント企業への常駐が多いのでしょうか。
クライアント企業の強い要望があれば常駐や一部常駐になることもあり得ますが、基本的に当社オフィスへ出社する勤務形態を取っています。若い社員が多く、会議室で密にコミュニケーションを取って業務を進める方が合っているためです。
——支援の対象となるクライアント企業について、何か特徴はありますか。
当社がご支援するクライアント企業に業界や業種などの偏りはありません。ただし、現状では大手企業が多い傾向です。特に東証プライム市場に上場していたり、高い知名度をお持ちだったりするような超大手企業のご支援が多くなっています。立ち上げたばかりの事業ですが、既に多くのクライアント企業から引き合いを頂いており、超大手企業のAI推進プロジェクトの中枢をご支援させていただくなど、既に多数のサービス提供実績が生まれています。
当社としても、やはり大手企業の取り組みは社会により大きなインパクトを与えやすいと考えているため、注力しています。
AIコンサルタントに求める人材像について

——御社で活躍できる人材の特徴を教えてください。
AIコンサルタントとしては、AIスキルとコンサルスキルを併せ持つハイブリッド人材を求めています。しかし、はじめから2つのスキルを併せ持っている必要はなく、どちらか一方のスキルを持っている方が入社後にもう一方のスキルを高めていくようなキャリアプランも考えられます。
例えば、元々コンサルタントでこれからAIの専門性を武器にしていきたい方、AIエンジニアからコンサルタントに転進したい方、AIベンチャー企業でビズデブ職や営業職だった方など、ご自身のスキルを軸にキャリアピボットしたい方は向いていると思います。
また、当社は従業員300名程度のブティックファームでまだベンチャーフェーズだと考えていますので、意思決定が早く風通しの良いベンチャー企業で働きたい方や、実力次第でより上位のポジションにチャレンジできる環境を求める方とも相性が良いと思います。
さらに、AIコンサルティング事業は、当社の中で新規事業の位置づけなので、新規事業開発に一緒にチャレンジしてくださる方も歓迎します。AIコンサルティング本部のメンバーは事業開発のワクワク感を共有しながら、熱量高く仕事に取り組んでいる人が多いです。
——御社にAIコンサルタントとして入社するうえで、AIに関する一定の知識は必要になるのでしょうか。
いいえ、必ずしも必要になるわけではありません。当本部では現在、経験者採用と未経験者採用の2枠を用意しています。経験者採用については、前述のAIスキルかコンサルスキルのどちらかを有している方が望ましいと考えています。しかし、未経験者採用ではどちらのスキルも問わず、幅広く採用していく方針です。
未経験者向けに、AIとは何かという基本的な知識から、AIコンサルティングの業務知識までレクチャーする独自の研修メニューも用意しております。
もちろんAIに興味があったり、ご自身で調べられる範囲の基礎知識を有していたりする方に入社していただきたいと考えていますが、必ずしもAIに精通していなくても問題ありません。
また、AIスキルだけではなく、コンサルスキルも重要だと考えております。顧客とのリレーションを深め、信頼してもらえるようなコミュニケーション能力を始め、課題解決や戦略策定の為のリサーチ能力、ロジカルシンキング、アイディエーション力や分かりやすく説明する為のドキュメンテーション能力、プレゼンテーション力などが求められると考えています。これらのコンサルスキルについても未経験であっても採用していく方針ですが、当社のビジネスモデルはあくまでコンサルティングなので、ヒト対ヒトのビジネスにやり甲斐を感じてくださる方だと嬉しいです。
——今後の採用計画について教えてください。
当社では2025年1月に「AIコンサルティング本部」という新組織を立ち上げました。立ち上げ段階では10名ですが、発足1年後には、20人ほどの組織を見込んだ採用活動を実施する予定です。
AIの可能性を信じ、新たな価値を社会に広めたい

——最後に、髙栁さんご自身のキャリアについて教えてください。
私は2011年に大手広告代理店へ新卒入社し、ストラテジックプランニング職としてマーケティング戦略の立案に従事しました。入社6年目まで多くのクライアント企業の新商品開発やTVCM等のコミュニケーションプランニングに携わりましたが、MBAを取得したこともあり、新規事業開発に挑戦すべく7年目にDX部門に異動しました。そこでは新たなデジタルソリューションの開発や、子会社の設立など事業開発に取り組みました。その中で2020年にはデータサイエンティストが集まるチームを設立して、クライアント企業のビッグデータ活用やAI活用の支援をフィー型プロジェクトで行っていました。その後、縁あって2024年7月にPrCへ入社いたしました。
——PrCへ入社したきっかけは何ですか。
特に生成AIが登場してから、クライアント企業のAI取り組み意欲が一気に増すところを目の当たりにしました。また、多くのクライアント企業のCXOとお話しする中で、前述のAIコンサルティングサービスにニーズがあることを確信していました。
一方で、大企業の中では事業開発、特にリソース整備のスピードが追いつかない事にジレンマを感じていました。
そんな中、ベンチャー企業であるPrCは意思決定のスピードも速く、もともとDXコンサル事業で整えてきたリソースを転用すれば素早くリソース整備することも可能だと考えて、当社に入社しました。
一時は個人で独立創業することも考えましたが、PrCが持つ顧客とのリレーションや、若くて優秀なコンサルタント、整ったバックオフィスの体制、投資資金などを考えると、やりたいことを最も高い確率で素早く実現できるのは当社だと判断しました。社長の土井や経営陣、社員との面談を通じて、ビジネスへの熱意と優秀さを実感できたことも入社したきっかけです。
——AIコンサルティング事業で目指すビジョンを教えてください。
AIを単なる業務効率化のツールにとどまらせるのではなく、事業創造や事業成長のキードライバーへ昇華させることを目指しています。現在、AI市場は盛り上がりを見せていますが、早くも失望、幻滅の声も聞こえてきています。そんな中で勝ち抜けるのは、AIの本当に意味のある使い方を見出し、新しい価値を創造することができた企業だと思います。
そうした新価値創造は社会を豊かにし、10年後には無くてはならない当たり前のサービスを生み出すと思います。
当社も社会に必要不可欠なAIのあり方を模索し、AIの社会実装に貢献していきたいと考えています。また、そうしたAIの実装知見・実装人材はこれからますます求められることになると思うので、社会の公器として蓄積・輩出していきたいと考えております。

——髙栁さんご自身のビジョンも教えてください。
大きく2つあります。1つはAIの可能性を信じ、前述の通りAIの社会実装を進める一助となりたいと考えています。もう1つは、当社での事業開発を成功に導くことです。自身のキャリアとしても事業開発の成功実績とノウハウを身に付けたいと考えています。
株式会社プロジェクトホールディングス 企業情報
会社名 | 株式会社プロジェクトホールディングス |
設立 | 平成28年1月4日 |
所在地 | 〒106-0041 東京都港区麻布台一丁目3-1 麻布台ヒルズ森JPタワー24F |
資本金 | 50,000 千円(2024年12月末現在) |
連結従業員数 | 287名(2025年3月末現在) |
株式会社プロジェクトホールディングス 求人情報






