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CAREER Knockは、みらいの働き方のデザインに役立つ情報を発信するメディアです。CAREER Knockを運営するみらいワークス総合研究所は、プロフェッショナル人材の働き方やキャリアに関する調査・研究・情報発信等を行っています。

みらいワークス総合研究所

  • 名称:

    株式会社みらいワークス みらいワークス総合研究所

  • 設置:

    2022年7月

  • 所長:

    岡本祥治

  • 所在地:

    〒105-0001 東京都港区虎ノ門4-1-13 Prime Terrace KAMIYACHO 2F

  • 活動内容:

    働き方・キャリア形成に関する研究

    各種調査分析・情報収集

    出版・広報

  • 連絡先:

    mirai_inst@mirai-works.co.jp

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後編:欧米企業のリモートワークは既に次のステップを模索している?日本の働き方改革は「周回遅れ」かもしれない。

CAREER Knock編集部 CAREER Knock編集部

2018.5.14 Interview

アイ・シー・ネット株式会社 代表取締役社長 多田 盛弘(ただ もりひろ) 氏

1973年、神奈川県生まれ。コンサルティング会社アイ・シー・ネット株式会社 代表取締役社長。早稲田大学卒業後、水族館勤務やタイでのダイビングインストラクターを経験。その後青年海外協力隊として、インドネシアにて国立公園のエコツーリズム開発に従事する。2005年アイ・シー・ネット株式会社へ入社後、国際協力における開発コンサルタントとして活躍。教育・保健・産業開発など、20ヶ国以上のプロジェクトを担当する。2014年に同社の代表取締役社長に就任。従来のODA(政府開発援助)関連事業のほか、民間企業の海外進出サポートやグローバル人材開発など、新規事業にも力を入れる中、経済産業省の補助金事業「飛び出せJapan!」の責任者も務める。

 

◆アイ・シー・ネット株式会社◆

「世界の困っている人のために、世の中をよくしたい」という思いを根源とし活動しているコンサルティング企業。国際開発援助におけるソフト分野、特に人間・社会開発分野のリーディングカンパニーとして、 開発途上国のステージに合わせて複数のソリューションを実施、 豊富な海外経験に基づいた質の高いコンサルティングサービスを提供している。アジア・アフリカを始めとする地域に根ざしたODAプロジェクトを実施しており、産業開発、ガバナンス、農業、教育など幅広い分野において、経験豊富な専門家が「人」を中心に据えた技術支援を行なっている。その実施国は100カ国以上に及ぶ。

ODAなど国際協力分野のコンサルティングを手掛ける、アイ・シー・ネット株式会社。従来の途上国ビジネスの枠組みにとらわれず、新しい風を吹き込んでいます。今回は代表取締役社長の多田盛弘氏に、みらいワークス代表岡本が「コンサルティング業務での働き方改革」をテーマに、お話を伺いました。前編では25年前に在宅勤務や副業を取り入れた経緯や、女性コンサルタントのワークライフバランスへの取り組みについてお聞きしました。後編では多様な働き方を長年続けたご経験をもとに、みらいへどう働き方を見直していくか「次世代の働き方改革」というテーマでお話を伺います。

多様な働き方を実現するには、実力も必要

人物

女性活躍推進の認定を受けたお話を伺いましたが、実際に長くキャリアを重ねる女性は多いのですか?

多田氏(以下、敬称略):退職率が高い時期もありましたが、そもそも女性でコンサルタントとしてキャリアを継続できるのは、10人のうち1人ぐらいです。それには、本人の適性も関係しますし、ワークライフバランスももちろん影響します。ただ自分で仕事が取れるようになると、仕事と家庭のバランスはとりやすくなると思いますよ。例えば、子どもが小さいうちは年収が下がっても国内で働く。子どもが大学生ぐらいになったら、海外の最前線に出ていき、そして収入も上げる。実際にこんな働き方をしているシニア女性もいます。自分で仕事が取れるレベルまで行っている人だからこその働き方ですよね。先に自分の競争力がつけば、仕事も調整しやすくなります。

多様な働き方を実践するには、それに伴う実力も必要というわけですね。

多田:かなり重要だと思います。基礎的な部分は企業としてサポートできますが、仕事が取れる・選べるからこそ、自分自身でのコントロールができるようになります。若手の場合はアシスタント業務が多いので、どうしても調整しづらい。そこから一歩次のステージに進めるかによって、働き方にも差が出てきます。弊社では若手でも副業はできますが、在宅勤務はコンサルタントに限っているので、最短でも3年はかかります。

ポジティブに辞めるのは、本人にとっても企業にとってもWin-Win

人物

実力が必要という御社の考えには、とても賛同します。働き方改革と言うと、実力に関わらずみんな一律自由に働くべき、という風潮がありますよね。権利の主張だけでなく実力も大きく関係するということを、世の中にどう伝えていくかは大きな課題かもしれません。

多田:確かにそうですね。表現によってはブラックな印象にもなりかねません。私はポジティブな意味で、「もしうちの会社が嫌だったらやめてもいい」と普段から言っています。単に嫌ならやめろということではなく、やりたいことが実現できる場所へ行けばいいという意味です。企業として最大限のできることはしたいと思っています。とはいえ、例えば大企業と同じ福利厚生が欲しいと言われると、弊社の規模では難しい。どこの会社でも、社員の退職にはポジティブなものとネガティブなものがあります。ポジティブに辞める人は起業や転職など理由はさまざまですが、新しいつながりになります。弊社にとってもネットワークが広がりますので、むしろWin-Winと言えます。一方で疲弊してネガティブに辞めてしまうと、会社とのつながりが切れてしまいます。せっかく勤めた会社のリソースを活用できないのは、本人にとってもすごくもったいないですよね。本来、自分の財産なのですから。「退職者の数をとにかく減らす」というよりは、「辞めるならポジティブな方向へつながる」ように心がけています。

卒業生が仲の良い会社は、良い会社ですよね。私も新卒でアクセンチュアにいましたが、OBのネットワークがすでにありました。出戻りも多いようです。みらいワークスを立ち上げた時にも、OBの方にはお世話になりました。

多田:弊社も出戻る人は結構多いですよ。それと派遣社員の方が正社員になるケースも多い。こうした流動性は高めていきたいと思っています。

欧米企業から見ると、日本の働き方改革は周回遅れ?

人物

長年多様な働き方を導入されていますが、今後はどのような働き方を取り入れていきますか?

多田:今は外部のコンサルタントに入ってもらい、人事制度の作り直しに取り組んでいるところです。コンサルタントの在宅勤務はかなり前から導入しているので、在宅の良い面も悪い面もよく理解しています。その上で、新しいものを作るためには対面コミュニケーションのパワーは侮れないと思っています。在宅勤務は期間が長くなると、どうしても自分さえよければいいと考えがちです。つまり会社全体の理念に基づくパワーは弱くなっていきます。現在の日本は、とにかくリモートワークを増やそうという風潮が強いように感じます。でも弊社では、むしろ積極的にリモートワークは増やさない方向です。欧米でもリモートワークの見直しが始まっています。アメリカのIBMなど、在宅勤務から出勤するスタイルへシフトする動きもあるようですよ。リモートワークのいいところを生かしつつ、どうパワーを生むか。欧米企業は次のステップを模索しているのではないでしょうか。日本のリモートワーク推進は、欧米から見ると「周回遅れ」に見えているのかもしれません。信頼しあってチームとして動くフェーズとなると、どこかで対面が必要ですね。

実はみらいワークスでも同様でした。ビジネス自体が新しいので、どんどんやり方は変化します。そうなるとリモートのコミュニケーションだけではどうしても足りない。新しい働き方は導入していますが、リモートワークは一旦見送る判断をしました。

多田:多様な働き方と言っても、企業の業態や状況によって取捨選択するべきだと感じます。パフォーマンスが変わらないなら、リモートワークはOKだと思いますが、昔ながらの「直接会う」価値もパワーを持っています。私自身人と会うのが好きですし、会うことで熱量が伝わります。弊社でも新しいことにチャレンジをしているところなので、その中で熱量を共有するために今後リモートワークをどうするかは検討中です。

状況に合わせてフレキシブルに働き方を見直す

人物

25年間リモートワークを導入していたら、販売できるほどの“ノウハウ”があるのではないですか?

多田:25年間やっていても、実は“ノウハウ”に関しては整理していません。開発コンサルタントの仕事は、あくまでも途上国の現場で働くのがメイン。国内にいる間はレポート作成が多いので、勤怠管理する必要性が薄いという理由です。私もプロセスよりアウトプットをコントロールする方が好きなので、アウトプットありきでもいいと思っています。とはいえアウトプットをコントロールするだけだと個人単位になるので、より集合的なアウトプットに対して問題が生じやすくなりますね。

私もコンサルティングファーム出身なので、仕事はアウトプット主体という発想です。そのためリモートワーク自体はイメージしやすいのですが、営業など横の連携が強い業務となるとイメージしづらいですね。リモートワークには、向いている仕事・向いていない仕事があるのではないでしょうか?

多田:あると思います。スカイプの会話でOK という考えももちろんありますしね。ただ対面で話さないと、何か見えないものが不足する可能性はあると思います。実は現在のオフィスに引っ越した時、私はデスクの囲いを全部外しました。誰とも話さずレポートを書くだけなら、自宅でも構わないですよね。弊社は多様なバックグラウンドを持つメンバーが本社に集まっています。さまざまな人と話すことで、クリエイティブな発想が生まれるはずです。私自身、雑談はウェルカム。人が集まって情報が行き交うことに価値を感じます。特に弊社のコンサルタントは海外出張が多く、他の社員と対面する機会が少ない。ですから在宅勤務を認めても、まず半年間は本社へ出勤して社内でコミュニケーションをとってもらいます。これは私が代表になってから導入したルールです。

人間関係のない在宅勤務はまずい、ということですね。

多田:社員である以上、理念やビジョンを共有した仲間ですから。稼ぎたいだけなら、もっといい会社はあります。途上国の開発コンサルタントとして働くには、収入だけではなく理念を共有してもらっているはずだと思うので。

会社のビジョンと人事制度が一致しているのは、素晴らしいですね。

多田:今は問題がたくさんあるので、改革を進めているという感じです。例えば若手とどう向き合っていくかなど・・・。アアウトプットベースの成果報酬型を見直そうという動きもあります。報酬が完全な売上連動だと、新しいことに挑戦しなくなる可能性もあります。自分の売上にすぐつながる案件が多くなり、会社として数年後の売上につながることをやりづらい。ベンチャーだったフェーズでは、売上を上げたいという想いがパワーになるので問題ありませんでした。ただ自分の売上さえ上げればいいというメンタリティに傾きすぎると、会社全体として大きなことができなくなります。弊社は最初“何でもあり”という状態だったので、逆に普通の企業に近い制度に戻りつつあります。企業の現状に合う仕組みに変えよう、といった感じでしょうか。

時代の流れや会社の状況に合わせて、フレキシブルに変えられるのが御社の強みとも言えます。普通はなかなか変えられません。

多田:会社の規模が大きいと難しいですが、弊社はまだそこまでではないですから。人事制度の見直しには、それなりのコストをかけています。とはいえ5年や10年も使うとは考えていません。3年後にはきっと通用しなくなります。例えば現在国内にいるスタッフはほぼ日本人ですが、私としては今後外国人の比率を30%ぐらいまで上げたいと思っています。そこでまた人事制度を見直すタイミングが来ると思っています。☆以前当社のインタビューにご登場いただいた大島里絵さんが、同社で活躍中です。途上国支援の仕事をしたいという信念を軸に、転職・独立・再就職とさまざまな形態でキャリアを積んでいらっしゃいます。今回、当インタビューでもご支援いただきました。

< 大島里絵さんインタビューはこちら:https://freeconsultant.jp/workstyle/w033>

< みらいワークスのお試し稼働付き再就職支援「大人のインターン(R)」はこちら:https://otona-no-intern.jp/>

<前編:25年前から働き方改革を実践!海外勤務の多いコンサルティング会社が、多様な働き方を継続できた理由とは>

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