コンサルタントになるためには何を学び、何を身に付けるべきか。ここではコンサルティング業界への転職を希望する方向けに、コンサルタントがオススメの良書を紹介。題して「コンサル業界に転職するならこの1冊」。今回紹介する1冊は、「採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの」。
プロフィール

古川良太(ふるかわ・りょうた)
株式会社みらいワークス 部長
不動産業界を経て、株式会社みらいワークスに創業メンバーとして参画。プロフェッショナル人材マッチングサービス「FreeConsultant.jp」の立ち上げに携わり、コンサルティングファーム、事業会社と幅広いクライアントに人材を提案する。1500名以上のプロフェショナル人材との1対1の面談を実施し、プロフェッショナル人材、およびその活用方法について豊富な知見を有している。現在は同サービスを中堅、中小、ベンチャー企業へ提案する部門の責任者を務めている。
求職者こそ参考にすべき採用担当者の視点
フリーランスのコンサルタントと企業をマッチングする事業に関わる中、フリーランスの方々の能力を見極める役割を担っていました。対話を通してフリーランスの人がどんなスキルを持っているのか、どんな経験を積んできたのかを正しく見極めなければ、企業が望むご提案をすることはできません。多くのフリーランスとの対話を手探りで進める中、評価すべき基準をきちんと設けなければと考えるようになっていました。
そんなとき、出会ったのが「採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの」です。事業をともに推進する社内の者から教えてもらったのがきっかけです。
本書の著者は、マッキンゼー・アンド・カンパニー・ジャパンで実際に採用を担当した伊賀泰代さん。コンサルタントの適正を見極め続けてきた人が採用時のポイントに触れていることから、私の業務の参考になると思いました。優秀なコンサルタントをどう定義し、何を評価対象にしているのかといった著者の視点は、実際の仕事で大いに役立ちました。
本書と出会うまでの私には、明確な採用基準などありませんでした。例えば、コンサルタントとして必要なスキルが何種類で、具体的にどんなスキルなのかといった基準さえ考えていませんでした。しかし本書を通じ、スキルを整理できるようになりました。状況によって異なるものの、「この業務に携わるコンサルタントなら、このスキルとこのスキルが必須」などのように、必要なスキルをイメージできるようになったのです。
本書は私のような担当者が参考にすべきものと思われるかもしれませんが、実はコンサルティング会社を志望する求職者にも役立つ内容となっています。本書ではコンサルティング業界未経験者を採用する際に重視すべきポイントにも触れています。著者は採用時に志望者のどこを見て、どう判断しているのかを具体的に提示しています。つまり求職者にとっては、転職活動時に気を付けるべき点や、自身の何を評価しているのかを知るきっかけになります。求職者の転職対策本としての用途にも向く一冊です。
コンサルティング業界ならではの採用ポイントに触れている点も、他の転職対策本や採用関連本とは異なる特徴です。他の業界では軽視しがちな言動でもコンサルティング業界では重視するというポイントを具体的に記しています。コンサルティング業界の特徴を明確に把握したい人にも向くと思います。もっとも本書は、コンサルティング業界の採用基準のみ触れているわけではありません。コンサルティング業界に限らず、一般的なビジネスマンが備えるべきスキルや能力にも触れています。コンサルタントかどうかを問わず、社会人として求められる能力や経験、スキルを改めて学びたいという人にも相応しい内容です。

一方、本書では一貫して大切な採用基準にも言及しています。それが「リーダーシップ」です。スキルや能力に優れている人や地頭の良い人の採用を否定するわけではありませんが、何より大切な基準として「リーダーシップ」の必要性を説いています。
例えば、周囲の同僚や部下、さらにはクライアントから相談を受けることと地頭の良し悪しは関係ありません。どんなに優秀な人でも、相手との信頼関係を築けない人に相談話は持ちかけられません。相談話がなければ問題を解決することもありません。つまり本書では、コンサルタントとしてクライアントの課題解決に取り組むなら、周囲から信頼されるようなリーダーシップの特性に目を向けるべきだと指摘しています。リーダーシップはすべての人が日常的に使えるスキルだといい、訓練さえ積めば誰でも習得できるそうです。コンサルティング業界が未経験でも、学ぶ気さえあればリーダーシップは誰でも習得できるのです。
私も本書を読んだ後、フリーランスの方々と対話する際には「リーダーシップ」の素養を見極めるようになりました。リーダーシップを自ら発揮しようと行動したことがあるのか、それとも周囲からリーダーシップを発揮してほしいと頼まれて行動したのかを意識的に質問しました。リーダーシップも能動的か受動的かによって評価は大きく異なります。能動的にリーダーシップを発揮するフリーランスを企業へご提案できるようになったことで、企業の満足度や評価も向上していると認識しています。リーダーシップを採用基準に加えることで、フリーランスを見極める精度は格段に高まったと実感しています。
なお、間違えて解釈してほしくないのは、コンサルティング会社へ転職する以前からリーダーとしての素養を必ず持っていなければならないわけではないということです。転職活動中に十分なレベルを備えている必要はありません。コンサルティング業界未経験の人なら、入社後の教育や訓練、経験を踏むことでリーダーシップは育まれるはずです。
コンサルタント未経験の人にとって本書は、コンサルタントとしての心構えを学ぶ参考資料にもなります。例えば本書の中では、会議で何も発言しないコンサルタントは「バリューゼロ」と厳しく指摘しています。マッキンゼーでは、たとえ新人でも発言ゼロは許されない雰囲気があるといいます。さらに会議に出席して、「今日は勉強になった」と満足することも許されないそうです。本書では、コンサルタントとして求められる具体的な姿勢や言動にも触れています。コンサルタントとしてあるべき姿を学べる一冊でもあります。
私は本書を約10年前に読みましたが、実は今度、新卒の採用を担当することとなり、久しぶりに読み直しているところです。本書の採用基準が自社の基準づくりの参考になると考えています。就活に臨む学生や転職希望者は、私のような担当者が何を考えているのかが本書を通じて理解できるはずです。企業側の視点を養えば、転職に役立つ気付きも得られるはず。転職活動対策として役立ててみてはいかがでしょうか。

採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2012年11月9日
著者:伊賀泰代
ISBN:978-4478023419


