コンサルタントになるためには何を学び、何を身に付けるべきか。ここではコンサルティング業界への転職を希望する方向けに、コンサルタントがオススメの良書を紹介。題して「コンサル業界に転職するならこの1冊」。今回紹介する1冊は、『イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』。
プロフィール
塚田真仁(つかだ・しんじ)
株式会社みらいワークス コンサルネクスト・シニアコンサルタント ビジネス法務エキスパート
大学卒業後、約10年間にわたりソニー系半導体商社で法人営業として、大手電機メーカー複数社を担当(ソニーからの最優秀営業表彰2回受賞)。立教大学大学院にてMBA取得後、組織変革を専門とするコンサルティングファームに転職し、大手から中堅のクライアントのプロジェクトに複数参画した。2017年よりみらいワークスに入社し、人材コンサルタントとして従事している。
コンサルタントとして成果を出す働き方を学ぶきっかけに

半導体商社にて法人営業経験を積み、MBAを取得したのを機にコンサルタントへ転身しました。しかし、コンサルタントとして働き始めた当初は戸惑いの連続でした。コンサルタントとしての立ち居振る舞いも分からず、先輩マネージャーの思考についていくこともできず毎日悩んでいました。
そのような中、休日に立ち寄った本屋である本と偶然出会いました。それが『イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』です。以前からコンサルティングに関する本を読んではいたものの、上辺の考え方に終始していたり、学術的な内容だったりして現場で使えるイメージが湧きませんでした。そのようなときに出会った本書は、私にとってまさに「目から鱗」の内容ばかりでした。これまでの働き方を覆すきっかけを与えてくれたのです。
そもそも「イシューって何?」と思う人もいらっしゃるかと思います。一般的には「問題」や「論点」と訳しますが、本書では「本当に解く必要のある問題」と定義しています。さらに、よいイシューの3つの条件として「本質的である」、「深い仮説がある」、「答えを出せるものである」を挙げています。
コンサルタントに求められるのは何よりバリュー(クライアントにとって価値のある成果)です。どれだけ多くの時間を割いて資料を作成したり、多くの課題解決を試みたりしても、成果に帰着しなければ掛けた工数は無駄になりかねません。プロジェクトの限られた期間で成果を出すには、手当たり次第に動くわけにはいきません。では、自身の仕事をどう成果に結びつけるか。このとき考えなければならないのがイシューです。
本書では、本当に必要なこと、やるべきことをイシューに基づいて線引きしています。課題を解決しても成果に必ずしも結びつかないもの、クライアントの価値創出に寄与しないものなどは、優先して取り組むべきではないと指摘しています。「今、本当に解決すべき課題なのか」を自問し、必要なことのみ取り組むことの重要性を訴えています。
コンサルタントの仕事は一般的に、多くの業務に忙殺されがちです。何時間もかけて資料を作成することも珍しくありません。そのような日々で成果を上げるには、本当に大切な業務を見極め、優先すべき業務に集中する必要があります。私は課題に直面するたび、本書の「イシュー」の考えに照らして物事に優先順位をつけていました。コンサルタントとして「何をすべきか」「どう考えるべきか」の気付きを与えてくれたのが本書でした。
「悩まない」というのは、僕が仕事上でもっとも大事にしている信念だ。
引用:英治出版発行『イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』
この一文もコンサルタントとしての働き方を教えてくれたきっかけになりました。コンサルタントに限らず、仕事で悩んでいる人は多いかと思います。「悩む」と「考える」は大きく異なります。「考える」は答えを出す前提の行動ですが、「悩む」はそうではありません。いくら悩んでも答えが出ないものは少なくありません。だとしたら悩むこと自体、時間の無駄になりかねません。悩むのではなく、答えを出すことを前提に考え抜くことの方が大事だと、本書を通じて痛感しました。
時間ベースで考えるのかアウトプットベースで考えるのかが(中略)「サラリーマン」と「ビジネスパーソン」、さらには「ビジネスパーソン」と「プロフェッショナル」の違いでもある。
引用:英治出版発行『イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』
前職の働き方を断ち切ることができたのは、まさにこの一文のおかげです。これは、コンサルタントという職種に限った話ではありません。現在は少なくなりましたが、中には働く時間が長いほど自分は頑張っているという気持ちになったり、周囲も頑張っているなと思う風潮が残る職場もまだあったりするかと思います。の著者はサラリーマンとプロフェッショナルの違いについて、「時間」で働くのか、それとも「アウトプットベース」で働くのかで線引きしています。インプットに対して、どれだけのアウトプット(クライアントにとって価値のある成果)を生み出せたのかに重点を置いています。この生産性を意識した働き方も、コンサルタントとしてだけではなく現在の私の仕事のベースとなっています。
さらに本書では、優先すべき仕事を見極めるポイントにも触れています。バリュー(価値)のある仕事を、「イシュー度×解の質」で定義しています。つまり、答えを出す必要性が高い課題、加えてイシューに対しどこまで明確に答えを出せているかをバリュー(価値)のある仕事と捉えています。答えを出すことによって大きな成果につながるもの、さらに課題の解決策を言葉できちんと示せるものこそ、優先して取り組むべき仕事と解説しています。実際にコンサルタントとしてさまざまな業務に携わる中、私にはこの考え方が非常に役立ちました。イシュー度と解の質という2軸で業務を精査できるようになり、解決をする必要性が低ければ優先度を下げる、解決すべき優先度は高いものの明確に解決策が示せないものはマネージャーや周囲に相談するという考え方を自身に根付かせることができました。今でも私の中では、「イシュー度×解の質」の考え方で優先すべき仕事から取り組むように習慣付けています。

イシューは、優先すべき業務を見極める手段として使われるだけにとどまりません。イシューの見極めによって、チームとして成果に直結する業務が明確になれば、チームのモチベーション向上にもつながります。さらに、チームの生産性が下がったときに全員で立ち返って意識を合わせる拠り所としての役割も兼ねています。プロジェクトの生産性が下がってきたときに再度メンバーのモチベーションアップにつなげるためにもイシューは極めて有効に機能します。
コンサルタントへの転職を考えている方の中には、転職後の働き方やコンサルタントとしての考え方をイメージできない方が多いのではないでしょうか。本書はその漠然としたイメージを具体化させるきっかけとなります。全5章で構成する本書の1章を読むだけでも、コンサルタントとしての働き方や考え方が学べます。2章以降はイシューの分解方法や分析の手法などの具体的なノウハウが書かれているので、イシューを実務にどう応用すべきかを学びたい人に最適な内容となっています。
コンサルタントはなぜ生産性の高い仕事ができるのか、どのように成果を出しているのか。この問いの答えが『イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』には網羅されています。

イシューからはじめよ[改訂版]――知的生産の「シンプルな本質」
出版社:英治出版
発売日:2024年9月22日
著者:安宅和人
ISBN:9784862763563
※文中では改訂前の『イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』(2010年11月24日発売)の内容をもとに紹介しています。


