ひとえにコンサルティング業界といっても、コンサルティング会社が専門とする事業領域や強みはそれぞれ異なります。それゆえ、転職希望者の中には「自分に合ったコンサルティング会社に転職したいが、どんな事業内容なのかよく分からない」と、転職先を見極められずにいる人も少なくないはず。そこで今回、コンサルティング会社を事業領域別にマッピングしたカオスマップを公開。ブティック系コンサルティングファームに絞り、どのような事業領域にどんな企業がポジショニングされているのかを解説します。
ブティック系コンサルティングファームに特化したカオスマップを作成
今回のカオスマップは、大手のコンサルティングファームやシンクタンクを対象外としています。小規模なベンチャー企業から中堅のコンサルティングファームを対象とし、ここではこれらを「ブティック系コンサルティングファーム」と定義。カオスマップでは主要なブティック系コンサルティングファームを事業領域別にマッピングしています。
一般的には小規模なコンサルティングファームをブティック系コンサルティングファームと呼びますが、今回のカオスマップで取り上げたコンサルティングファームの中には、社員数が100人を超える企業も含まれています。
ブティック系コンサルティングファームへの転職を希望する人の利用を想定したカオスマップ
主要なブティック系コンサルティングファームを整理したカオスマップは、コンサルティング業界への転職を希望する人の利用を想定しています。とりわけ、ブティック系コンサルティングファームの事業領域や強みは分かりにくいといった声が多いことから、ブティック系コンサルティングファームに絞ったカオスマップを作成するに至りました。
転職希望者がブティック系コンサルティングファームの中から転職先を探す際に、「どの会社がどんな事業を展開しているのか」「特定の事業領域にはどんなコンサルティングファームが集まっているのか」が容易に把握できるようになっています。どの企業に応募するのかを選ぶときの参考資料としての利用を見込みます。
ブティック系コンサルティングファームの主な動向やトレンド
「ブティック系コンサルティングファーム」と聞くと、特定分野に特化したコンサルティングファームが多い印象を受けがちです。しかし中には、成長とともに事業領域を拡大するコンサルティングファームがあります。例えば、リブ・コンサルティングやイグニション・ポイントなどのコンサルティングファームは設立から10年が経ち、社員数の増加とともにコンサルティング領域を広げています。コンサルティングという事業の枠を超え、新規事業開発を支援するブティック系コンサルティングファームも増えつつあります。
一方、コンサルティングファームの多くが、DXやシステム導入などのIT領域を中核事業に据えているものの、近年は働き方改革の流れを受け、組織改革や人材育成支援に乗り出すブティック系コンサルティングファームも増えています。クライアントの喫緊の課題に追随しようと、新たな事業領域を確立する動きもあります。
IT領域に限ると、近年のトレンドはAIです。ChatGPTをはじめとする生成AIの実用化が見込まれたのを機に、クライアントのAI活用を支援するブティック系コンサルティングファームが急速に増えています。ディープラーニングを既存システムに導入したいと考えるクライアントの支援や、ビッグデータを収集・分析したいと考えるクライアントを支援するブティック系コンサルティングファームも少なくありません。さらに今後、この分野に進出するブティック系コンサルティングファームの増加も見込まれます。カオスマップに掲載した企業に限らず、この分野に進出するブティック系コンサルティングファームの動向には注視すべきでしょう。
ブティック系コンサルティングファーム・カオスマップ
ブティック系コンサルティングファームを分類する8カテゴリの特徴
今回公開したカオスマップは、コンサルティング業界の直近の動向を踏まえた上で、主要ブティック系コンサルティングファームを8つのカテゴリに分類しています。
それぞれのカテゴリの特徴を解説します。
総合系
総合系に分類するブティック系コンサルティングファームは、システム導入や事業開発、組織改革、戦略立案、海外進出支援など、多岐にわたる事業領域に参入しています。社員数が100人以上のブティック系コンサルティングファームは多く、企業規模が大きくなるにつれて事業領域も拡張しています。一方、社員数が100人未満のブティック系コンサルティングファームの動きも見逃せません。各分野に精通する人材を揃え、少数精鋭でクライアントを包括支援するブティック系コンサルティングファームは決して少なくありません。
新規事業系
新規事業系に分類するブティック系コンサルティングファームは、企業の新たな事業を生み出し、成長するまでの過程を一気通貫で支援することがほとんどです。新規事業のアイデアを貯める仕組みを構築したり、事業化すべきアイデアを評価したりすることもあります。さらには、新規事業を支える製品・サービスの開発や、市場に認知してもらうためのマーケティング施策の立案、実施まで携わるブティック系コンサルティングファームも少なくありません。クライアントが進める複数の新規事業案件を同時並行で支援するケースもあります。
DX・テクノロジー系
DX・テクノロジー系に分類するブティック系コンサルティングファームは、システム導入やDX推進などのプロジェクトを支援するのが主な事業です。システムのグランドデザインを描き、開発から導入、運用といった一連の過程をすべて支援するブティック系コンサルティングファームが大半です。なお、システムの導入支援といっても、基幹システムのリプレイスに十分な実績があるのか、アプリやWebサイトといったフロント系システムの開発や導入に強みを持つのかなどにより、事業領域は細分化します。
組織・人事系
組織・人事系に分類するブティック系コンサルティングファームは、パフォーマンスを最大化する組織体制の確立や新部署設立に伴う人材配置、キャリア形成を見据えた人材育成計画の立案などに携わります。近年は、多様な人材を受け入れる機運が高まっていることから、評価制度や給与制度の見直しに関わるブティック系コンサルティングファームも増えています。組織や人事の課題は業種や業界を問わないことから、ブティック系コンサルティングファームにとっては多くの案件獲得を見込めます。働き方を見直す企業は多く、この分野に参入するブティック系コンサルティングファームは今後も増えることが見込まれます。
物流系
物流系に分類するブティック系コンサルティングファームは、倉庫業務の効率化やWMSの導入、倉庫の移転、配送ルートの最適化などに携わります。トラックドライバーの労働時間を制限する働き方改革関連法の施行による、いわゆる「2024年問題」に物流業界が直面する中、ドライバーの収入減少や離職対策を手掛けるブティック系コンサルティングファームも少なくありません。輸送能力低下に伴う利益減少を解消するための経営戦略から関わるケースもあります。
AI(ディープラーニング)/ビッグデータ系
AI(ディープラーニング)/ビッグデータ系に分類するブティック系コンサルティングファームは、AIという新たなテクノロジーを活用するための体制づくりからシステム開発、導入、運用までを一気通貫で支援します。AIにまつわるテクノロジーは日々進化し、それらを活用した新製品・サービスの市場投入も相次いでいます。そのため、一時的な支援にとどまらず、中長期的な実用化を見据えて支援することが多いのも、AI領域に参入するブティック系コンサルティングファームの特徴です。散在するデータを収集、分析する基盤づくりを支援するブティック系コンサルティングファームの場合、上流の戦略や設計から関わることが少なくありません。
営業系
営業系に分類するブティック系コンサルティングファームは、営業戦略の立案から具体的な営業プロセスの確立・改善、さらには営業プロセス実施時のモニタリングなどに携わります。クライアントの中には営業手法が属人的だったり、ノウハウを部署内で共有する仕組みがなかったりすることが少なくありません。こうした社内体制の構築を踏まえ、支援に乗り出すブティック系コンサルティングファームもあります。ITを駆使したデジタルマーケティングの戦略や施策に関わるブティック系コンサルティングファームも増えています。
その他、特定領域特化型
その他、特定領域特化型に分類するブティック系コンサルティングファームは、他のカテゴリとは一線を画す事業領域に強みを持っているのが特徴です。創業期の資金調達や専門スキルを備えた人材のトレーニング、市場調査・分析、業務提携、製造や医療といった業界向けなど、特定の課題解決の実績やノウハウ、スキルを持った人材を擁するブティック系コンサルティングファームが中心です。