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本記事はラジオ番組「自治体のホンネ」との共同企画です。番組は各種ポッドキャストでお楽しみいただけます。
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小田切 未来 氏
東京大学大学院・公共政策学教育部修了後、経済産業省へ入省。経済産業大臣政務官秘書官、商務情報政策局総務課課長補佐等を歴任。2015年にNewsPicksの政治・政策分野のプロピッカーに選出。2018年に一般社団法人Public Meets Innovationを共同創設、理事を務める。2020年に米コロンビア大学国際公共政策大学院修士修了(公共経営学・経済政策管理)。2024年にIPA(情報処理推進機構)デジタル基盤センター副センター長に就任、2025年に大分県商工観光労働部長に就任。
少子高齢化が進む日本で、特に深刻な人材不足に直面しているのが地方の中小企業。地方企業の人材難は地方経済全体に大きく影響するため、対策が急務となっています。
こうした中、新たな取り組みを始めた自治体が大分県です。大分県は2026年6月、都市部の副業人材と県内企業をマッチングするため、人材系企業3社(インディードリクルートパートナーズ、パソナJOB HUB、みらいワークス)との連携協定を締結。1つの自治体が同時に3社と協定を結ぶのは、全国初(※2026年7月時点)の試みです。
この取り組みでは、東京など都市部に住むプロフェッショナル人材が副業として大分県内の企業を支援。都市部で培った知見や経験を生かすことで、地方企業が抱える課題の解決を目指すというものです。
今回の協定の狙いや今後の展望について、大分県・商工観光労働部長を務める小田切未来氏と、株式会社みらいワークスの代表取締役社長でみらいワークス総合研究所所長の岡本祥治が対談しました。
働き方が多様化する今、都市部と地方の良さをミックスすることが大切
経済産業省から出向中の小田切氏。以前から日本で兼業・副業を広めたいという思いがあったと言います。「2009年に雇用や人材を担当する部署にいたのですが、その頃から日本でも終身雇用に限界が来ているという議論があり、個人的にも関心を持っていました。兼業や副業を早いうちから経験して次のキャリアにつなげる、そういう時代が来るだろうと思っていました。
その後2017年に中小企業庁の創業支援の部署にいたのですが、地方で創業した方々とお話しする機会がありました。その時、兼業・副業をしながら創業したという方がすごく多かったんです。この時、兼業・副業を増やせば創業が増えることに気づきました。」(小田切氏)
偶然にも、2009年と2017年は岡本にとっても転機となった時期でした。「小田切さんと私は重なる部分がたくさんありますね。2009年は、私がフリーランスのマッチング事業を始めた時期なんです。当時の私はフリーランスがもっと日本で活躍できないと日本経済は元気にならないと思っていて、これがみらいワークスの立ち上げにつながりました。
また2017年は、みらいワークスがマザーズに上場した年です。市場は今よりずっと小さかったのですが、フリーランスに注目が集まり始めた頃でした。」(岡本)
みらいワークスはすでに多くの地域で、都市部の副業人材と地方企業のマッチングを手掛けています。大分県でも、以前から地元金融機関と提携しており、岡本も大分に注目してきました。「大分には知名度こそ高くないけれど、きらりと光る企業が多い印象です。ただ大分も含め、地方はデジタル化の遅れが課題だと思います。地方と東京では、5年から10年くらい時差を感じることもあります。
これは、都市部の人材を活用すれば改善できるというポジティブな見方もできます。都市部と地方には、それぞれメリットとデメリットの両方がありますよね。つまり地方企業と都市部の人材が協業すれば、それぞれの良さを生かせるはずです。」(岡本)
都市部と地方、それぞれの良さをミックスするという感覚は、小田切氏も常に意識していると言います。「私はアメリカに留学した経験があるのですが、さまざまな土地を見てきて「L」と「C」と「G」という3つをキャリアに組み込みたいと考えました。「L」(Local)は地方、「C」(Capital)は東京や大阪などの都市部、G(Global)は世界です。それぞれに良さがありますから、この3つをバランスよく組み込むことが大切だなと感じています。」(小田切氏)
またIT面での地方の遅れは小田切氏も認識しており、今後取り組むべき課題だと言います。「地方でITが遅れているのは事実です。私自身、前職はIPA(情報処理推進機構)の副センター長を務めていましたので、今後は前職の経験などを活用して取り組みたいと考えています。
大分県は実は製造業が盛んで、九州ではGross Domestic Product(GDP)総額の1位は福岡県ですが1人当たりのGDPで見ると大分県が1位なんです。製造業には多くのデータが蓄積されていますから、ITを使ってデータを活用できれば、生産性向上や省力化などにつながるはずです。そのためにも、ITに強い人材と地元企業をつなぐことが重要だと思っています。」(小田切氏)
大分県が副業人材と地元企業のマッチングに取り組む2つの理由
こうした中で、締結された全国初となる3社同時の協定。これには2つの理由があると小田切氏は語ります。「まず兼業・副業を推進させるレベルではなく、圧倒的に促進させたいと思いました。そのためには、今までとは全く違うことをする必要があります。こうした協定は多くの自治体で事例がありますが、3社と同時に締結するものはありませんでした。ですから大きな注目を集めると思ったわけです。実際に日本経済新聞をはじめ多くのメディアに取り上げていただきましたし、その結果たくさんの反響がありました。」(小田切氏)
もう1つの理由が、3社それぞれが持つ強みを生かすという点です。「強みが違うということは、同時に補完関係にあるとも言えます。例えばみらいワークスさんはマーケティングなどに関する専門人材に強みがありますよね。一方他社さんは他の分野に強い人材が多いとか、とにかく人材の登録数が多く職種やスキルが幅広いとか、それぞれ得意なことがあります。今回はそれぞれの強みを生かすことで、兼業・副業を一気に進めたいと考えました。」(小田切氏)
岡本にとっても、競合他社と一緒に協定を締結することは初めての経験です。「正直驚きましたが、むしろチャンスになると思いました。地方での副業マーケットは、まだ市場が出来上がったばかりです。ですからこれから業界一丸となってマーケットを作っていく必要があります。今回の取り組みをきっかけにこういった雰囲気が業界全体に広がっていけば、もっと地方副業が日本全体に広まるはずです。」(岡本)
大分の高いポテンシャルを生かすために必要なプロ人材とは
地方企業とプロ人材をマッチングする事業を全国展開しているみらいワークス。マッチングのコツについて、岡本は「やはり相性が大切」と話します。
「人材を受け入れる企業には大きく2パターンあります。まずはアーリーアダプター的に率先して外部人材を使おうとしてくださる方。こういう方は、東京など都市部に一度出て働いた経験を持つ経営者の方が多い。ITに詳しいけれど、できる人材が社内にいないし依頼できる会社もない。そういう時に外部人材を活用したいというケースです。こうした方は依頼内容が明確なのでマッチングしやすいですね。
もう1つのパターンは、アーリーアダプター的な方が外部人材を活用しているのを見て、やってみようかなと挑戦してくださる方です。こういった方は依頼内容がはっきりしていないことが多いので、われわれがヒアリングをします。幅広い要望になることも多く、特定のスキルだけではなく、経営全般を知っているような経験豊富な40代以降の人材が適しています。単純にキャリアやスキルを見てマッチングすると、なかなかうまく行きません」(岡本)
人材確保だけではなく、移住推進や企業誘致を目指す
メディアに取り上げられ大きな反響が出ている中、小田切氏はすでに次のステップに進もうとしています。
「これから『3本の矢』で取り組むつもりです。まず1本目の矢は、8月28日に開催予定の『OITAしごと未来サミット2026』というイベントです。2本目の矢は今秋に実施予定の交流会です。3本目の矢はというと、大分県庁内で『兼業・副業宣言』のようなことができないかと考えています。
1本目の矢であるイベントで兼業・副業の認知度を上げるとともに、勢いをつけたいですね。兼業・副業のメリットや注意点といった情報を発信するとともに、兼業・副業を経験したことがある方や詳しい方にも参加していただこうと思っています。イベント単体で終わってしまうと、あまり意味がありませんから。3本の矢で、勢いを維持していきたいと考えています。」(小田切氏)
みらいワークスとしても新たなチャレンジと言える今回。これによって、地方の副業を日本で当たり前と言えるような世界にしたいと岡本は語ります。「私自身すでに7年、地方副業に関する仕事をさせていただきましたが、起爆剤になったものはまだないと思っています。ですから今回の取り組みを起爆剤にしたいですね。それにはまず『大分モデル』でしっかりと実績を作ることが重要です。また我々は全国展開していますので、大分での成功事例を他の地域へ伝え、日本全体に波及させたいと考えています。」(岡本)
大分県もこの協定をきっかけに、大分県の経済全体の向上につなげたいと小田切氏は語ります。「兼業・副業を単なる人材確保支援にとどまらせるのではなく、これをツールとして例えば移住促進や産業立地・企業の誘致につなげていくなど、兼業・副業を産業政策として捉えるところまで、チャレンジしたいと考えています。
大分という土地は、1960年代からコンビナートをはじめ、自動車産業や半導体産業など多くの企業を誘致してきました。また大分の方々がそれらを受け入れることで、自ら変わってきたという歴史があります。今回も東京など県外から新たな人材が来ることで、大分の経営者が自ら意識を変えていけるよう、さまざまな取り組みを進めていきたいと思っています。」(小田切氏)