2009年創業のメディカルテックベンチャー。デジタルを活用した新しい医療モデルの創造を目指し、全国6,000以上の医療機関へのデジタルプラットフォームの構築を手掛ける。その他、健康経営などのウェルビーイング事業や分散型臨床試験(DCT)事業を展開。
事業が伸びているベンチャーにとって、人材の確保は大きな課題です。人手不足が深刻な今、社員の採用に時間がかかり事業の成長スピードに間に合わないケースも増えています。
こうした状況を外部人材の活用で乗り越え、事業拡大へつなげているのが株式会社インテグリティ・ヘルスケアです。医療関連システムのプロジェクトを手掛ける同社では、案件増加と複雑化に伴いPM(プロジェクトマネージャー)が足りないという問題に直面しました。
同社は社員を採用する時間はないと考え、PMに外部人材を起用。同社の常勤取締役である戸上浩昭さんは「これまで事業のコアとなるPMは社員で対応してきましたが、初めて外部人材を起用したところ予想以上にいい効果が出ています。」と語ります。今回は外部人材のメリットや外部人材を活用するコツについて、戸上さんに伺いました。
外部人材を起用した理由は、「スピード」と「専門性」
戸上浩昭さん(以下敬称略):一番大きな理由は、社内のリソース不足です。弊社は、クライアントからシステムやソリューションの開発プロジェクトを受注する事業が柱の一つです。最近、受注が増えるにつれ、プロジェクトを推進できるPM(プロジェクトマネージャー)が足りない状況となりました。
弊社の場合、PMにはマネジメントスキルだけではなく、医療のデジタル化に関する専門知識が求められます。ただこうした専門性の高い人材は、市場にたくさんいるわけではありません。正社員として採用しようとすると、どうしても時間がかかってしまいます。一方で技術のアップデートが早く、求められる専門性のクオリティが高くなり、ビジネスモデルの変化が起こりやすい分野ですので、社員として採用した場合、その専門性が社内でずっと必要であり続けるのかという点も気になるところです。
つまり社員の採用において、「スピード」と「専門性」という2つの点で課題がありました。そこで、外部のプロ人材を採用しようと考えました。
戸上:普段からエンジニアやプログラマーなどの職種では、外部の方々に業務委託でお願いしています。ただPMはクライアントに対する品質や事業のコアに関わる部分ですので、これまで社員で対応していました。とはいえ今回は本当に即戦力の専門家が足りない状況でしたので、外部人材の方にお願いすることにしました。
戸上:まずはプロジェクトマネージャーとしての経験です。専門性という部分では、やはりヘルスケア業界のプロジェクト経験があるかという点を重視しました。
この1年で4名の外部人材の方を採用しました。時間がなかったため、正直なところ選考の時点で弊社の社風との一致は、二の次としました。しかし、もし弊社と合わなかったとしても、業務委託契約のため、短期間で契約を終えることができるという考えもありました。
ただ結果的には、スキルや経験だけでなく、プロジェクトを円滑に進めるための対人スキルや姿勢も備えた方々とご一緒でき、大変ありがたく思っています。これまで様々な現場で活躍されてきた経験からでしょうか。非常に助けられました。
外部人材はスポットでプロジェクトに入る経験が多いので、飲み込みが早い
戸上:基本的には、切り分けはしていません。外部・内部という制限をかけると、PMとしての仕事に支障が出てしまいます。また外部人材のスキルを最大限生かすには、社員と同じ立場で動いてもらうべきだと考えました。
社員にとっても、外部人材という意識はあまりなかったようです。一般的には、外部のPMのもとで仕事をすることに抵抗を感じる社員がいるかもしれません。ただ今回はそういう声は全くありませんでした。
戸上:ハイクラスな人材にはそれなりのコストはかかりますが、投資に見合う成果を出していただき、満足しています。プロジェクトを立ち上げるスピードや、推進力の高さには、いつも助けられています。
それに多くの会社に外部人材として入られている経験を持たれている方は、短期間にいろいろなプロジェクトで結果を出すことを求められてきているので、飲み込みが早いです。立ち振る舞いもしっかりされていて、結果的にクライアントに対する弊社の価値を上げていただいています。
外部人材のスキルと経験をフル活用するには、考えを共有する時間が必要
戸上:コミュニケーションは意識しています。プロジェクトに入る前、こういう進め方をしてほしいとか、このクライアントにはこう対応して欲しいとか、そういった話し合いをしています。またクライアントとの打ち合わせ後にも、フィードバックをしています。外部人材の方々は本当に飲み込みが早いので、こちらがしっかり伝えればすぐに対応してくださいます。
プロジェクトに関する打ち合わせだけではなく、社員と同じように1on1ミーティングを外部人材の方々と行っています。これもスムーズにコミュニケーションする上で、とても大事にしています。
外部人材の方のスキルと経験をフル活用するためには、お互いの考えていることを共有する時間が必要だと思います。もちろん弊社のやり方でやってほしいとお願いすれば、その通りに進めてくれます。でもそれだけではもったいないですよね。外部人材の方は豊富な経験をお持ちですから、外部人材の方がやってきた方法が適していることもあります。
弊社はベンチャーですし、「絶対にこのやり方でプロジェクトを進めるべき」という凝り固まった考えはありません。そのため、外部人材の方の意見をどんどん取り入れました。この方がプロジェクトもスムーズに進みますし、弊社も外部人材の方もストレスが少ないと思います。
戸上:まず、とても優秀な方だったということが大きいですね。素晴らしい仕事ぶりでしたし、クライアントからも高く評価されていました。
今回、4名の外部人材の方にご協力いただく中で、1名の方とは、ご本人のキャリアの希望と弊社の採用ニーズとタイミングが一致したため、社員として入社いただくことになりました。参画いただいた当初は想定していなかったもので、まさに“ご縁”によるものでした。
1on1ミーティングをする中で、本人のキャリアプランなどを聞いているうちに弊社の理念や環境が、本人の描かれている将来像と親和性が高いのではないかと感じるようになりました。」そういう話をしていく中で、弊社に興味をお持ちいただけたようです。入社後は、事業部長として私が担当していた業務を徐々にお願いしている状況です。
外部人材を活かすために重要なのは、採用する目的を明確にすること
戸上:まず新規事業の立ち上げですね。社内のメンバーを教育しながら進める方法もありますが、ハイクラスな外部人材を一時的に採用して一気に立ち上げる方法もあるなと感じました。
私はこれまで新規事業をいくつか手掛けてきましたが、弊社のようなベンチャーは新規事業に社内の優秀な人材をなかなかアサインできません。大企業と違って、優秀な人材は今の部門で必要とされ、動かせないからです。弊社のような規模の会社が新規事業をやろうと思ったら、外部人材を活用する方が結果的にコストパフォーマンスは高いと感じます。
あとは社内の仕組みを新しく作るときにも、外部人材の方にお願いするといいかなと思いました。優秀な外部人材を入れて、あるべき姿に向けて議論することによって、様々な効果があると思います。
テンポラリーにお願いできるのが外部人材の大きなメリットです。仕組み作りを外部人材の方へお願いして、運用フェーズに入ったら社員に移行することもできます。優秀な外部人材の方に運用までお願いするとコストの問題が出てきますので、やはり運用は社員がやるべきだと思います。
ただ仕組み作りを外部人材にお願いする場合、運用後スムーズに社員で対応できるかという課題が出てくるかもしれません。そのあたりは工夫が必要かなという気がしています。
いずれにしても重要なのは、外部人材を採用する側がどのくらい目的意識を強く持っているかだと思います。「とにかくリソースが必要」とか「なんとなくこの問題を解決してほしい」という状況で外部人材を採用しても、うまく行かないと思います。
採用した側からすると「期待に応えてくれない」ということになりますし、外部人材の方からすると「どうすれば期待にこたえられるかわからない」ということになるのではないでしょうか。
「何のためにこの人を雇うのか」という目的が明確になっていれば、いい結果になると思います。
本記事で、プロ外部人材の活用が事業成長に繋がる可能性を感じていただけていたら幸いです。
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