優れたクリエイティブだけでなく、マーケティングをも得意とし、戦略構築から制作までのマネジメントまでも行うのは、株式会社ベイジ。マーケティングの知見は自社にも活かされており、15名にも満たない組織であるにも関わらず、年間400件以上のお問い合わせを獲得するほどの実力を持つ。
そんなベイジの代表取締役である枌谷氏が「ものすごいスピードで成長している新人がいるんです」と絶賛しているのは、ベイジに新卒入社し、現在2年目の池田彩華さん。
最近では「デザイナー1年目で学んだ5つのこと」というタイトルで彼女が執筆したnoteが反響を呼び、 “1年でこんなに言語化ができるのはすごい” といったコメントが集まるなど、ベイジ期待の新人デザイナーである。
Webデザインほぼ未経験であったにも関わらず、「ぜひベイジに入ってほしい」と枌谷氏に思わせた池田さんはどういった人物なのだろうか。
そこで今回、なぜベイジに入社しようと思ったのか、そして入社するまでの経緯やデザイナーとしてのこれまでの道のりを伺うと、彼女の「素直な一面」を垣間見ることができた。
大学卒業後、ベイジに入るための準備期間としてフリーランスに。「枌谷のTwitterは4〜5年さかのぼって読んでいた(笑)」
―― 池田さんがベイジに入社した経緯は、とてもユニークですよね。
代表の枌谷にFacebookでいきなり「いつか面接に行きます!」と長文でメッセージを送っていました。枌谷いわく、応募する前から宣言する人はいなかったみたいです(笑)。
そのときは、ポートフォリオサイトも何もなかったんですけど、いつか応募したいと思っていて、思わずメッセージを送っていました。
というのも、大学卒業前後は半年ほどフリーランスとして仕事をしていたんです。だけど、クライアントにどうやって提案すればいいか分からないし、仕事の進め方がそもそも分からなくて。それでネットで調べていたときに枌谷が書いた記事を見つけて、「デザインって、こんなに論理的に考えるものなのか!」と、私の知らない世界を初めて見た感覚でした。
それからもう毎日、ずっとベイジのWebサイトを見ていました。ベイジは役に立つブログコンテンツが多いので、毎日の読書代わりという感じで読み漁っていて。あとは枌谷のTwitterも、4〜5年前までさかのぼって読んでましたね(笑)。
そしたら「未経験でベイジに入社するなら、最低でも10個は作品があった方がいいよね」といったことがツイートされていたんです。そのとき私はまだ2個しかなかったから「ヤバい!」と思って、半年かけて10個つくっていき、ベイジに応募しました。
―― 大学卒業後、なぜどこの会社にも就職しなかったのでしょうか?
デザインをやりたかった、という想いを捨てきれなかったのが大きくあります。
もともとは人材会社に入社する予定だったんですね。それで大学4年のときは半年ほどその会社でインターンをしていたのですが、Webデザインは一度もやったことがなかったんですけど、社内向けのFAQサイトのデザインをつくることになったとき、「Webデザイン楽しいな」と思って。
そしてデザインの道へ進もうと思い、独学でWebデザインを学んで自分が所属していた学生団体のサイトをつくったりしていました。また、そのときにベイジの存在を知ったので、ベイジに応募するための作品づくりがしたくて、ある意味「ベイジに入るための準備期間」が必要だったんです。それで、フリーランスという形でスタートしました。
作品づくり含め、半年かけて制作したポートフォリオサイトは、もうベイジに入社する前提のポートフォリオサイトになっていて(笑)。ベイジのWebサイトを真似して制作しましたし、「ベイジに入社を志望する理由」といったコンテンツも載せていて、そのときはまだ決まってもいないのに、もう私はベイジで働くものだとばかり思っていました。
そして再び「ポートフォリオサイトができました」と連絡し、面接をさせていただくことになり、無事ベイジに入社することができました。
「デザイナーに向いてないかも、と思った」常に本質の部分を指摘されるフィードバックがつらかった
―― いざ入社してみて、苦労したことは何かありますか?
入社して半年くらいは、「自分は使いモノにならない」と感じていました。もともとベイジのブログは読んでいたんですけど、「どうせブログで公開するのは一部、中に入ったらもっとすごいんだろうな」とは思っていたんです。
実際に入社してみて、仕事に対するシビアな姿勢は想像通りだったのですが、社内でのフィードバックがいつも人間の本質の部分を突くような指摘が多いんですね。
たとえば何か成果物ができたら必ずフィードバックをもらっているのですが、そのフィードバックは「直す」ことが目的ではなく、「デザインの思考プロセスや姿勢を学ぶ」ことを目的としたフィードバックで。「ここがダメ」といったストレートな表面的な指摘ではなく、「AをA’にしたところで、それは今のデザインが抱えている本質的な課題は解決されない。確かに要望通り “変える” ということをしてはいるが、本当の課題に真正面から向き合わず、手間のかからない小さな改変で済まそうとお茶を濁しても良いものは生まれない」といったことを指摘されるんです。
はじめは悲観的にとらえてしまって、毎日苦しくて。くじけそうになったことは多々ありますし、「私は本当にデザイナーに向いているのか?」と思って、落ち込むこともありました。
―― それでも続けていったモチベーションはなんだったのでしょうか?
デザインは楽しいんですけど、これ!といったモチベーションがないんです(笑)。枌谷からは「素直だ」と褒めてもらえることもあるのですが、私はただ、せっかちな性格と心配性なだけ。だから、たくさん調べて、たくさん行動するしかなくて。そして社内のみなさんからアドバイスをいただくことも多いので、毎日毎日やることが明確で、迷う暇がなかった、というのが正直なところです。
あと、会社の価値観が私に合っていた、というのも大きいかもしれません。学生時代にインターンをしていた会社は、規模が大きすぎて共通の価値観というのがなかったり、社長に共感して入ったのにもちろん1年目から社長と一緒に仕事をする機会なんてありませんでしたし、無駄な根回しが多いなど、仕事以外のところで疲弊していたんです。
しかし、ベイジは無駄なことはやらないというか、常に本質を見ようとしていて。物事の本質的なことを考える機会が多く、本質からズレていることをやりたくないという考え方が私の性格に合っていたこともあり、ストレスを感じずに仕事できる環境があるからこそ、続けてこれたのだと思います。
真似をすることで成長は加速する「実案件に近いWebサイトをひたすら模写していました」
―― 入社して最初の1年間は、どのようなことを意識して取り組んできましたか?
noteにも書きましたが、ひたすら他のWebサイトの模写をやっていました。料理人もはじめは王道のレシピを見てつくったり、これは有名な話ですが画家のゴッホも模写をしていたと言われているので、成長のためにはまず良いものを真似ることからやろうと。
そこで枌谷からもアドバイスをもらい、自分が担当させていただく案件に近くて、いいなと思えるWebサイトを探してきて、そのサイトがどういう構造になっているのかを紐解いていくような感覚で模写をしていきました。

池田さんが実際に入社して最初に行った模写(池田さんが投稿したnoteより)
そうすると、はじめは分からなかったのですが、徐々にサイト構造のパターンが見えてきて、「次の案件では、こうしよう」と思えるようになっていったんです。デザイナーは口だけではなくて、手を動かすべきだなと実感しました。
―― 模写の他に、何か意識して取り組んだことはありますか?
枌谷からは、「審美眼を磨く」ことをよく言われていました。たとえば、枌谷とカフェへ行ったときにも「このカップどう思う?」と聞かれるんです。最初は、「えっ?」みたいな感じだったんですけど(笑)。
「デザイナーになりたいなら、普段から良いものは何かと見て感じることが大切。ロジックを先に身につけてしまうと、頭でデザインしがち。だけども、理屈で考えてつくるのは後からでもできるから、いまは目で見て、心で感じることを大切にしよう」と言われたんですね。
それから気になる写真集を手にとって見てみたり、美術館に行ってみたり、全然評価できるレベルじゃないですけど、日常生活においても言語化できない美しいものを意識するようになりました。
―― ベイジだったからこそ、自分の成長が加速したなと思うことはありますか?
ベイジではまわりからアドバイスをいただくことが多いので、迷って止まるという期間がないのが特徴かもしれません。Webサイトの模写も枌谷からアドバイスをもらって始めました。
あと、「将来、この人みたいになりたい」という上司がいるのと「この人、嫌だな」と思う上司がいるのでは、1〜2年経ったときの成長って全然違うだろうなと思うんですね。私は枌谷のいいなと思ったことは片っ端からなんでもEvernoteにまとめていて、真似するようにしていて(笑)。
なので、私にとって師匠と呼べる人がいた、というのは大きく成長に繋がったなと思っています。
「人への思いやり」は結局はUXに繋がっていく。人として当たり前のことをベイジで学んだ
―― 現在入社して2年目になりますが、自分の中で大きく変化があったことは何かありますか?
「相手を思いやる気持ち」が一番、自分の中でベイジに入って大きく変わったことだなと思います。人への思いやりというのが結局はUXを考えるときの発想に繋がっていくというのを、枌谷からよく言われていて。
ビジネスでは相手はお客様ですけど、それは私生活に置き換えたら家族とか友人。UXやデザインを突き詰めると、「人」だということをいつも教えてもらいました。
そしてマーケティングでもそうですけど、表面的なことだけでは人は動かないんですよね。「人を動かす」ためには、その人の内面の部分、心を掴むようなことをしないといけない。
日々の人間関係でそれができないのに、急にマーケティングの企画でユーザーの心に刺さることなんて、できるわけがないなと。
そのため、日々どういった文章がいいのかであったり、どういった伝え方がいいのかであったりと、人として基本的なこと、当たり前のことを多く教えられたなと感じています。
―― 今後チャレンジしていきたいことは何ですか?
26〜27歳までに、戦略設計に携われるようになりたいなと思っています。ただ、ベイジに入りたいと思い始めてから今にいたるまでにすでに2年近く経っているのですが、いまだなにか「できるようになった」という実感はなくて。やればやるほど、まだまだ上流工程があるのだなと感じています。
そのため、枌谷からも言われているのですが、デザインが中途半端なままマーケティングや戦略設計をやるのではなく、まずはデザインを極めていきたい。同じ業界の方々から、「あっ、このサイトいいね」と思ってもらえるようなデザイナーをまずは目指していきたいなと思っています。