最先端テクノロジーを駆使し、社会課題の解決と構造変革を目指す東京大学松尾研究室発の燈株式会社(あかり)。2021年創業の同社は日本最先端のAIの研究開発を社内で行い、コンサルティング、AI搭載システムのオーダーメイド開発、さらには独自のパッケージソフトの販売までを手がけ、産業のDX/AI活用を推進している。
同社の強みについて、社員の方々の雰囲気や社風について、さらには燈で活躍できる人物像について、取締役COOの石川斉彬氏とDX Solution事業本部 DX Consultingグループ General Managerの武田亮太氏に話を聞いた。
石川 斉彬(いしかわ なりあき)
東京大学法学部卒。上場IT企業の新規事業に初期メンバーとして参画し中央省庁や大企業への営業に従事。その後医療系スタートアップにて個人営業や採用業務に従事した後、人材系SaaSスタートアップにて法人営業に従事し、トップセールスを記録。その後マーケティングファームにてマーケターとしての経験を積み、燈株式会社を共同創業。燈ではAI SaaS事業の立ち上げから部長としてグロースを主導したのちに、全社の事業統括としてCOOに就任。
武田 亮太(たけだ りょうた)
東京大学工学部・大学院(航空宇宙工学)を修了後、リクルートにデータサイエンティストとして入社。位置情報解析アルゴリズムを構築しVPを獲得。2023年7月に燈参画。従来は解決が困難とされた産業の課題に対して、テクノロジーにとらわれない柔軟な発想で本質的課題解決を企画するコンサルティングに従事。
先端技術の知見を強みに社会課題を解決

——石川さんにお聞きします。まず貴社の事業内容を教えてください。
当社は東京大学松尾研究室発のAIベンチャー企業で、先端技術を駆使して産業の抱える課題解決や構造変革を支援しています。
主な事業は2つです。1つはDXソリューション事業です。大手企業を中心に、クライアントの環境に応じたカスタマイズ性の高いシステム開発などを支援します。もう1つは、業界に特化したパッケージソフトウエアを提供する事業です。我々の特徴として産業特化でその産業の奥深い課題や業務フローに適したソリューションを提供しております。創業からまずは建設業界に注力をしておりましたが、最近は対象となる業界を徐々に拡大中で、業界の特性に応じたソフトウエアを展開しています。当社が保有する技術力を駆使し、クライアントの課題解決に貢献するのが当社のミッションです。
——武田さんは具体的にどのような事業に携わっているのでしょうか。
コンサルティングからオーダーメイド開発を中心にさまざまなプロジェクトを担当しています。具体的にはクライアントの役員の方々との打ち合わせや課題の洗い出し、さらにプロジェクトの要件定義にも携わります。クライアントがこれまで解決できなかった要因を洗い出し、AIをはじめとする当社の技術を使ってどのように解決するのかを要件として落とし込むようにしています。コンサルティングからPoC、さらにはソフトウエア開発まで当社のみで実施できることも特徴です。
プロジェクトの本格稼働後は、当社のエンジニアチームを中心に業務を進めることになります。ただし、予期せぬ問題が発生したり軌道修正が必要になったりしたときには、私も一緒に解決の方向性を探るようにしています。
——プロジェクトはどのくらいの期間のものが多いのでしょうか。
PoCの実施やシステム開発を合わせると、半年から1年ほどの案件が中心です。ただし、要件定義や準備期間まで含めると1年以上の期間を要する案件も珍しくありません。大規模開発なら、さらに期間を要することもあります。
――クライアントのどのような立場の人と打ち合わせをすることが多いのでしょうか。
DXを推進する専門部署がある場合、部署の担当者の方と打ち合わせをすることになります。もし専門部署がない場合、事業部の担当者の方と打ち合わせをすることがあります。例えば、設計部門が業務の自動化に取り組むプロジェクトであれば、設計部門の担当者の方と詳細を詰めるようにしています。打ち合わせに参加する方は案件ごとに異なり、役員の方が最後まで関わることもありますが、現場の担当者の方と進めるケースもあります。
――クライアントの課題を解決する上で難しい点などあれば教えてください。
同じような課題でも深掘りすると、クライアントごとに大きく異なっているということが珍しくありません。それぞれの課題の独自性を理解し、構造化するのは難しい作業だと感じます。クライアントがこれまで解決できなかった課題に取り組むため、技術的な難易度が高いことも難しい点です。こうした解決できずに残り続けている課題こそ、当社の高い技術力や発想力を活かせるのではないかと考えます。
新たな道を切り開くチャレンジ精神を養う企業風土

——貴社では、どのような人が活躍できると考えますか。
技術への知的好奇心が旺盛な人は活躍できると考えています。当社では業界に応じた技術スタックを幅広く活用しています。そのため、技術ごとにどのような特性があり、どのような領域で活かせるのか、さらにどのようなケースでは不向きなのかを正確に把握する必要があります。こうした技術と業務を結び付けられる人も向いていると思います。なお、当社では先端技術などを学ぶ勉強会を開催しています。こうした場で積極的に学ぼうとするモチベーションのある人も活躍できるのではないでしょうか。
またスタートアップ企業の業務に面白さを感じる人も向いています。困難な挑戦を自責でなく他責で捉えてしまう人は難しいのではないでしょうか。業務や課題が明確ではなくても自分で作り出すという主体的なマインドを持っている方を求めています。AIを活用したコンサルティングという、これまでの前例が少ない道を突き進める人も向いていると思います。
——石川さんはどんな人に入社してもらいたいと考えていますか。
当事者意識と主体性を持って取り組める人に入社してもらえればうれしいですね。さらに熱量があり、知的好奇心を持ち合わせている人にも来ていただきたいと思っています。当社では仲間を大切にすることや、チームワークを重視しています。一人で解決しようとせずに仲間と共に打開策を考えられる人や、社会に貢献したいという意識を持つ人とも一緒に働きたいと考えています。
——石川さんご自身は、燈という会社はどんな点が魅力的だと思いますか。
優秀で熱意のある仲間たちと共に働ける環境は、何よりも楽しいし、他にはない魅力だと感じます。プロフェッショナルチームとして一丸となり、高い目標に向かって社会を変えようとする熱い想いを共有できる雰囲気は、他ではなかなか味わえないのではないでしょうか。社員一人ひとりが会社を良くしていこうという当事者意識を持っているため、新しいアイデアが生まれやすい企業風土も魅力の1つです。
――AIをはじめとする技術を強みにしたコンサルティングも魅力に感じます。
AIなどの技術の可能性を最大限に引き出し、困難な課題解決に乗り出せるのは当社の魅力ですし、当社ならではの強みであると考えています。当社が取り引きするクライアントの中には、日本を代表するナショナルクライアントが少なくありません。こうした企業の中期経営計画や経営戦略には、必ずと言っていいほどDXやAIの必要性が明示されています。こうした企業に対し、技術のプロフェッショナルとして課題解決に寄与できるのは、何にも代えがたい魅力と言えるのではないでしょうか。
――武田さんは、燈をどんな会社だと感じていますか。
最先端のAIを取り入れたソリューションを提供できるのが、魅力であり面白さだと感じます。AIという技術をただ提供するのではなく、自分たちの発想で新たな価値を生み出せることはやりがいにもなっています。当社はスタートアップ企業ですので、未開拓の業界や領域も数多くあります。こうした未開拓の分野を切り開くチャレンジ精神を発揮できる企業風土も、当社ならではの魅力だと感じます。
――石川さんにお聞きします。貴社には、「質実剛健」「凡事徹底」「爆速」「圧倒的当事者意識」「一致団結」という5つの行動指針「燈道―志がすべて―」があります。燈という会社の風土を表す象徴的な指針だと思いますが、社員にどのように浸透させているのでしょうか。
5つの行動こそが当社には不可欠という考えから、「燈道―志がすべて―」という行動指針を社員全員で徹底できるようにしています。例えば毎日開催する夕会で、ランダムに選ばれた社員がその日に実践した行動指針に関するエピソードを発表することにしています。誰かが「質実剛健」に関するエピソードを発表したら、その週の翌日以降の発表者はその言葉以外を選ばなければならないというルールです。
実はエピソードを発表するというアイデアは、経営陣ではなく社員からの提案によるものです。各社員が「燈のカルチャーを浸透させていく」という当事者意識を持っているからこそ、こうした取り組みも率先して進められるのだと考えています。ちなみに社内向けのコミュニケーションツールでは、「燈道」を表すスタンプを活用しています。行動指針に沿った取り組みや考え方に対し、周囲のメンバーがスタンプを押すといった文化も日常的に育まれていますね。
代表の野呂との出会いが創業のきっかけに
——石川さんの経歴を教えてください。
大学在学中の2021年2月に燈を創業しました。正社員としてのキャリアは、燈のみとなります。
大学生のころは新型コロナウイルス感染症の影響で授業を受けられない日が続きました。そこでベンチャー企業のインターンとして4社ほど経験し、営業やマーケティングを中心にフルコミットで業務に関わっていました。こうしたインターンシップの経験を経て、燈を創業することになりました。
大学入学時は自分自身に起業したいという気持ちは特になかったのですが、起業を大きく後押ししたのは、当社の代表取締役社長 兼 CEOである野呂侑希との出会いです。野呂と私は大学のクラスが一緒で、彼が起業に向けて強い意志を持っていることに大きな影響を受けました。
私はこれまでサッカーやバンドなどを経験し、仲間と一緒に何かを成し遂げることや、夢や目標に向かって熱意を持って努力することに強い魅力を感じていました。こうした魅力を社会人になっても味わいたいと考えたとき、起業という選択肢が有効な手段だと気づいたのです。そこで少し起業に興味を持ったタイミングでベンチャーで修行を開始しましたが、そこでの経験を通じて起業こそ自分の道だと確信に変わりましたね。野呂がAI関連の事業で打って出ようと考えていたとき、私から野呂に「一緒にやらせてほしい」と話し、燈を創業することになりました。
——燈の創業には野呂さんと石川さんとの出会いが大きく関係しているわけですね。
野呂は中学生や高校生のころから起業家としての人生を描いていました。起業やビジネスへの感度が高く、熱意があって知識も豊富でした。一方の私は何かを成し遂げたいという思いこそ持っていましたが、具体的な知識は不足していました。そのような中、インターンの経験を経て自分一人での起業も考えていたのですが、当時持っていた事業アイデアを野呂に相談したのです。すると野呂から、「その事業で世界一になれるのか。本気で世界一を目指す志を持って起業しよう」と言われました。このとき、「野呂と一緒にいなければ見られない世界がある」と強く感じたのです。野呂となら大きなことを実現できると確信し、一緒に会社を立ち上げることにしたのです。
——武田さんの経歴を教えてください。
私は東京大学と大学院で航空宇宙工学を専攻し、卒業後はデータサイエンティストとしてリクルートに入社しました。
リクルートには1年3ヵ月ほど在籍していましたが、在籍時に当社の取締役CTOである三澤颯大と再会したのです。大学時代のサークルの後輩だった三澤から燈のイベントに招待され、そこで燈の事業内容などを知りました。それがきっかけで「この会社で仕事がしたい」と強く思うようになり、転職することにしました。
リクルートから創業間もない燈への転職は、一般的に考えれば勇気がいるかもしれません。しかし、メンバー全員が同じ方向を向いている一体感と、代表からインターンシップの学生も含めて全員が「日本のため」「社会のため」といった目標に向けて仕事をしている点に強く感銘を受け、入社を決意しました。また、燈に入社したことで、高い技術力と強いメンバー、そして徹底されたカルチャーがあるということを目の当たりにし、「日本を照らす燈となる」という使命がお題目にはとどまらない、自分たち次第で実現可能であるという実感をさらに強くしました。こうした環境に身を置きたいと考えていた私にとって燈は、非常に魅力的でやりがいのある会社だと感じています。
2030年までに時価総額1兆円達成を目指す

——石川さんにお聞きします。今後の貴社の展望やビジョンをぜひお聞かせください。
当社は2030年までに時価総額1兆円という大きな目標を掲げています。そのために3つの軸で事業を展開していく予定です。1つはDXの推進支援やAI活用領域をさらに深く掘り下げていきます。AIをはじめとする技術の進化が早まる中、当社が貢献できる余地は非常に大きいと考えています。
2つ目は、新たな業界向けに支援を広げていくことです。これまで培った知見やノウハウを他の業界でも活用できるようにして、まだ進出していない業界に対してコンサルティングを行なっていきたいと考えます。
3つ目はグローバル進出です。当社が保有する技術を、世界のさまざまな産業や企業の支援につなげていくことを視野に入れています。これら3つの事業を進めることで、2030年時価総額1兆円の目標達成を目指したいと考えています。
――武田さんは今後、どのような会社にしたいと考えていますか。
時価総額1兆円というアグレッシブな目標を達成するため、まずは目の前の1つひとつの目標を達成し、積み上げていく文化を醸成したいと考えています。そのためには、各コンサルタントが浮足立たずに目の前の業務をしっかりとやり遂げるモメンタムを醸成することが不可欠です。
さらに、メンバー1人ひとりがDXコンサルタントという仕事のやりがいや社会的な意義を見出してほしいと考えています。やりがいを実感することで自分の仕事に圧倒的当事者意識を持って取り組むことができますし、その中でどんどん成長していくことができて、さらなるやりがいを見つけることができるという好循環に入っていきます。またそういったメンバーが、新たに加わるメンバーの「伝道師」として、仕事の魅力を伝えていってほしいと思います。こうした組織や風土、スタッフの意識を育むことが私の役割であり、会社を大きく飛躍させる素地になると考えます。
燈株式会社 企業情報
設立 | 2021年2月 |
所在地 | 〒112-0002 東京都文京区小石川一丁目28番1号 小石川桜ビル4階 |
代表取締役社長 兼 CEO | 野呂 侑希 |
従業員数 | 280名(2025年6月現在) |
事業概要 | DXソリューション事業 AI SaaS事業 |