「対話」が組織の未来を創る。グローバルな知見で日本企業の変革を加速させる、コンサルタント酒井氏の挑戦
2026.5.15 Interview
大学進学でアメリカに渡り、以来20年以上の海外経験を持つ酒井奈美さん。現在は東京とオーストラリアのメルボルンを拠点に、グローバル組織変革のスペシャリストとして活動しています。酒井さんが取り組む変革の核は、「対話」の質を変えることです。
当社の『フリーコンサルタント.jp』を通じて参画した大手製薬会社のプロジェクトでは、海外メンバーや部署間の調整役を担い、建設的なコミュニケーションをマネジメント。社員の意識改革を促し、「酒井さんのスタイルを模倣して自走したい」という高い評価を獲得されました。変革を希求する信念とグローバル基準の推進力をたたえ、当社が主催する第4回「プロフェッショナル アワード」では個人賞を受賞しました。
「自分を殺さずに、人と人が通じ合える場を作りたい」――その強い願いの背景にある、酒井さんの歩みをひも解きます。
「自分を殺さない対話」を求めて海を渡った原体験
酒井さんがキャリアを通じて追求し続けている「対話」へのこだわりは、中学生の頃に感じた切実な違和感から始まっています。
「自分の気持ちを押し殺さずに、もっと自由に、ダイレクトに意思を通い合わせたい。日本語だと、自分の思いをオブラートに包みすぎて、結局伝えたかったことと違う形になってしまう。英語なら、自分らしさを表現できるんじゃないか。そう直感したんです」

自分の考えをはっきり伝えるスタイルが、当時の環境では時に摩擦を生むこともあり、酒井さんは「自分らしくいられる対話の場」を求めて渡米を決意します。この「相手と真っ向から向き合いたい」という主体的な姿勢が、現在の組織変革スタイルにつながっていきます。
「正解のない問い」を解く力が、変革の武器になる
米国の大学で専攻したのは美術史。酒井さんにとっては「対話」の理解を深めるための重要なプロセスでした。作品の背景にある歴史や意図を多角的に分析し、論理的な仮説を立てる訓練は、ビジネスにおける「相手の背景を理解し、根拠を持って語る力」につながっていきます。
「大切なのは、知識の暗記ではなく『考える力』を磨くこと 。正解が一つではないビジネスの世界において、確かな根拠を持って本質的な課題を捉える力は、相手と深いレベルで対話し、組織を変革するうえで大きな武器になります 」
さらに酒井氏は、この「物事を分析する力」を「届ける力」へと進化させるため、ニューヨーク大学大学院でコミュニケーション・マネジメントを専攻します。分析し突き止めた本質を、いかに戦略的なメッセージとしてアウトプットし、人を動かすか。その後の出版社や広告代理店での実務を通じ、ビジネスとクリエイティビティを融合させる術を磨き上げました。
帰国後に直面した「組織の矛盾」という大きな壁
20年以上の海外生活を経て日本に戻った酒井さんを、再び「対話の壁」が阻みます。日本企業に入社して直面したのは、効率よりも慣習を優先する文化や、本音を言いにくい空気感、そして「変革」をうたいながらも実態が伴わない組織の矛盾でした。
「『組織をどんどん変えていってよ!』というリクエストで入社したのにも関わらず、変化はなかなか受け入れてもらえない。『こうすればもっと効率的なのに』『この作業は必要ないのでは?』。誰もがそう思いながら、誰も指摘できない。そんな現場での矛盾に、私自身もがんじがらめになり、苦悩する日々がありました」
再び直面した周囲とのギャップや苦悩から、酒井氏は大きなキャリア転換を決意します。組織の内側で声を上げる難しさを知っているからこそ、外部コンサルタントという立ち位置で「本音で話せる場」を再構築する、伴走者としての道を歩み始めたのです 。
「ソフトスキル」と「対話」で組織のポテンシャルを最大化する
グローバル組織変革コンサルタントとして酒井さんが強みとしているのが「ノンバーバルコミュニケーション」です。日本企業で多くの人が抱えている「もやもや」とした違和感にこそ、組織が進化するための鍵が隠されていると考えているため、それぞれの立場や考えに全身で「共感」を示して「心理的安全性」を担保し、声を拾い上げます。
「現場の誰かが抱く『何かおかしい』という違和感は、実は組織の課題を映し出す重要なサインです。それを単なる個人の不満として押し込めてしまうと、組織は停滞してしまいます。社内で声を上げれば『面倒くさい人』と思われて終わることも多い。だけど外部のコンサルタントとしてなら、みんなの『おかしいよね』という声を拾い、一緒に解決策を考え、レポートとして上層部に届けることができます。
『この人となら安心して話せる』と思える環境があって初めて、人は本音で語り、アウトプットの質が変わります。私が介在することで、組織の温度感が変わり、自然と改善が動き出す。そんな場作りを大切にしています」
外部人材という立場を生かし、社内では言及しにくい「本質的な課題」を抽出・可視化する 。大手製薬会社のプロジェクトでも、部署間の複雑な調整役を担い、一人ひとりの意見をディスカッションで引き出すことで、自然とチームが動き出したそうです。建設的なコミュニケーションを通じて、現場の意識改革を促しました 。
ライフワークとしての「カイゼンサークル」:日常にこそ「対話の場」 を
酒井氏の「対話を重んじる」姿勢は、コンサルタントとしての仕事にとどまりません。最近では、誰もがフラットに対話できるコミュニティー「カイゼンサークル」をスタートさせました。

「いわゆる『勉強会』ではなく、参加者が日々の生活や仕事で感じる『もやもや』を持ち寄り、対話を通じて自分なりの解決策を見いだしていく場所です。仕事のプロジェクト、組織といった枠組みを超え、より広い社会の中で『安心して自分の意見を言える土壌』を耕していきたい。組織変革も、日常の小さなしつらえの改善も、根っこにあるのは人と人との対話です」
酒井さんが作る場は、参加者にとって、自分を抑えずに他者とつながることができる貴重なサードプレイスとなるでしょう。
あなたの「違和感」が、組織を変える対話の始まりになる
酒井さんが変革の現場で最も大切にしているのは、相手に対する「純粋な好奇心」です。なぜできないのかと問い詰めるのではなく、なぜそう考えるのかを心から知ろうとすること。自身がかつて意見を否定されて苦しんだ経験があるからこそ、相手の背景にある想いに共感し、受け止めることを何より大切にしています。
「私自身、自分の言葉が届かず苦悩したり、組織の中でつぶされそうになったりと、ドロドロとした経験をたくさんしてきました 。でも、悩みながらも諦めずに進んできたから、今があります。もし今、つらい思いをしている人がいたら、『あなたは間違っていない、あなたのままでいいんだよ』と伝えたい。自分の存在価値を大切にしてもらえる場を、これからも対話を通じて作り続けていきたいです。」
もしあなたが今の環境に課題や違和感を感じているなら、それは組織が進化するための「重要なサイン」かもしれません。酒井さんのように、その違和感を否定せず、まずは目の前の相手と「対話」を試みてみる。その一歩が、あなた自身のキャリアを切り拓(ひら)き、日本企業の未来を創る原動力になるはずです。
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