キャリアを決めるのは会社ではなく自分。外資系企業を7社経験して得た「自律キャリアの作り方」
2025.11.27 Interview
キャリアを会社ではなく自分自身で決める「自律キャリア」という考え方が広まっています。しかし多くの日本企業では、社員の職務や勤務地を会社の都合で決める「メンバーシップ型雇用」が主流。そのため、どう自分でキャリアを築くべきかわからないという声も聞かれます。
一方海外では、採用時点で人材の適性と職務内容をマッチさせる「ジョブ型雇用」が一般的です。外資系企業を7社も経験したという賀川浩一さんも、ジョブ型雇用のもと20代ですでにキャリアの方向性を自ら決めたと言います。
キャリア後半では経営幹部も経験、現在は定年と再雇用を経て起業準備中という賀川さんは、まさに自律キャリアを実現してきたと言えます。そこで今回は、賀川さんに自律キャリアを実現するコツについて伺いました。
キャリアの方向性が明確なら、辛いときも前向きになれる
1983年、新卒で外資系銀行のシティバンクへ入社した賀川さん。15年間シティバンクに勤めた後は、アメリカやイギリスなどの銀行の他、コンサルティング会社など合計7社の外資系企業を経験しました。
こうした中、管理部門のスペシャリストとしてキャリアを積み重ねてきた賀川さんですが、シティバンクの時点ですでに管理部門に特化しようと決意していました。「銀行では大きく営業部門と管理部門に分かれますが、私は細かい仕事が好きなので、管理系の仕事が向いていると思いました。
早いうちに方向が決まると、自分が何をすべきかが見えてきます。そこから自分のキャリアにポータビリティを持たせ、それをアタッシュケースのような形にして、いろいろな会社に持ち運んだという感じです。」(賀川さん)
キャリアの方向性を自分で決めたとしても、やりたい仕事が常にできるとは限りません。「日本企業では会社が職務内容を決め、長期雇用を前提に会社が人を育てる、いわゆるメンバーシップ型雇用が一般的です。そうなると、やはり仕事内容は会社の都合で決まってしまいます。
一方で外資系を含めた海外企業では、ジョブ型雇用が一般的です。ジョブ型ではジョブディスクリプション(※職務記述書)に基づき、必要なスキルや経験を持つ人を雇用します。つまり入社時点で職務内容が明確に決まっているわけです。そのため外資系企業にいると、自分がやりたくないことをやるという選択肢はほぼありません。」(賀川さん)
キャリア後半では、経営幹部として責任ある立場も経験した賀川さん。順調にキャリアアップしたとはいえ、やはり辛いことにも直面したと言います。「いろいろな会社を経験すると、隣の芝生は青いということが本当によくわかります。どこに行っても、いいこともあれば悪いこともあります。
辛いことがあっても、自分のキャリアの軸をすでに持っていたので、どうキャリアにするか試されているとポジティブに捉えることができました。
私は幸運なことに、CxOといったポジションの機会を何度もいただきました。ただ、そうなるとそれまでとは違った知識やスキルが求められます。例えば業務部門の専門家だったところ、今度はガバナンスの専門家にならなければいけないという感じですね。
大変ではありましたが、すごく勉強になりましたし、自分を試すいい機会だったと思います。」(賀川さん)
最後に勤めた外資系銀行では、再雇用も経験したと言います。「ジョブ型雇用が浸透している外資系企業の場合、会社のニーズと従業員のマインドが合えば雇用は続きます。就業規則上は定年という制度上の区切りはあるものの、日本企業で言ういわゆる役職定年は外資系企業では基本的にありません。
私の場合も制度によって再雇用になりましたが、同じポジションで待遇は変わりませんでした。プロジェクトをたくさん回していましたし、会社もそれを期待していましたから、ほとんど再雇用ということは意識しませんでした。」(賀川さん)
外資系企業で経験したボランティアが、新しいビジネスにつながる
賀川さんは仕事だけではなく、ボランティア活動にも注力していました。「特に外資系企業はD&I(※)に関心が高く、社員のD&I関連のボランティア活動を推奨しています。」(賀川さん)
※D&Iとは、「Diversity(多様性)And Inclusion(包含)」という意味で、組織として多様な人材が個性や能力を活かすための取り組み。
「最近は世界的に多様性が会社の経営指標の1つになってきました。多様性を追求する会社は、結果として業績がよく株価もいい。これはステークホルダーである顧客や取引先に向けて、会社としては正しいことをしているとアピールできるからです。
例えば銀行なら脱炭素に取り組む会社には融資条件を良くするとか、地球温暖化に対してアクションをしている会社には与信枠を広げるとか、そういう動きが進んでいます。」(賀川さん)
実際に賀川さんは、率先してこうしたボランティア活動に取り組んできたと言います。「例えば、男性の更年期に対して知識を深めましょうという社内向けセミナーを自ら企画して実施しました。体調が悪いのはこういう理由かもしれない、それが仕事のパフォーマンスにも影響しているかもしれないといった内容です。
すごく評判が良かったので、その後も毎年のように開催しました。やはり仕事とは違った達成感がありますね。」(賀川さん)
こうしたボランティア活動が、賀川さんのこれからの新たなチャレンジにつながっているそうです。「実は再雇用を経て今年の8月に会社を退社し、起業の準備中です。これからは外資系企業での経験を活かし、業務改革や組織改革、D&I(※)などを支援するようなコンサルティング事業を立ち上げたいと思っています。」(賀川さん)
本業を続けながら副業として起業をするという方法もあります。しかし賀川さんの場合、金融機関ならではの事情があったと言います。「銀行はコンプライアンスが厳しく、今でも副業が原則禁止というところがほとんどです。銀行に関係しない分野なら副業できることもあります。
ただコンサルティング事業となると、銀行の場合は難しいですね。そこで思い切って退職して、新しく自分で事業を立ち上げることにしました。」(賀川さん)
自分のキャリアの「軸」を見極めることが重要
キャリアの早い段階で自らの方向性を決め、その後数々の会社でステップアップをしてきた賀川さん。こうした経験を持つ賀川さんに、キャリアを形成するために必要なことを伺いました。
「まず自分のキャリアのどこに軸があるのか、これを見極めることが大切です。自分のやりたいことは何か、自分のできることは何か。この2つがマッチするのは何かということです。」(賀川さん)
とはいえ日本はメンバーシップ型雇用の会社が多く、仕事内容は会社によって決まるというのが現状です。「特に若い世代は、会社からいわれたことをこなすのに忙しく、やりたいことが見えづらいという課題もあります。でも、だからこそ自分のやりたいこと、できることを『見える化』する、つまりドキュメントにすることがすごく大事だと思います。
『見える化』して、さらに『言語化』していくことで客観性が増します。職務履歴書をそのために活用することは一つの方法です。そのためには、誰かに発表する場があるといいですよね。さらに3年に1回ぐらいは自分の職務履歴書をアップデートする。これを続けていけば、キャリアがより明確になりますし、方向性も決まってくるはずです。」(賀川さん)
こうしたキャリアの棚卸は、若い世代だけではなく30代・40代にも取り組んでほしいと賀川さんは語ります。「いわゆる働き盛りの頃は、目が曇りやすい。会社から言われたことを懸命にこなして、上司からの評価も高いとなると、自分の道はこれだとつい信じてしまいます。
でも必ずしもそうではありません。他にもっとできることや、やりたいことがあるかもしれない。仕事にやりがいを感じている人こそ、今の仕事が本当にやりたいことなのかを一度立ち止まって考えてみて欲しいですね。」(賀川さん)
社外に目を向ければ、もっとやりたいことに出会えるかもしれない
またキャリア形成において、外部とのネットワークづくりが欠かせないと賀川さんは語ります。「自分でキャリアの軸を持つためには、キャリアの棚卸(見える化・言語化)と合わせて、会社とは別のところで学ぶ姿勢も必要だと思います。
違う環境の人たちと接すると、すごく刺激を受けますよね。視野が広がりますし、会社の外でもっとやりたいことが見えてくる可能性もあります。なるべく所属している会社とは違う業種や業界とのネットワークを持って欲しいですね。」(賀川さん)
また、こうした取り組みには持続性が大切だと言います。「学びというと、今はリスキリングがちょっとしたブームですが、一定期間だけ学校で学ぶような一過性のものではもったいないと感じます。キャリアにつなげていくためには、コツコツ繰り返していくことが必要ですから。」(賀川さん)
社外に目を向けるという意味では、転職するという方法もあります。しかし賀川さんは、転職経験が豊富だからこそ、条件だけを見る転職は慎重に考えた方がいいと言います。「何度も転職をしているから言えることですが、給与や休暇といった条件だけを見る転職は意味がないと私は思っています。
自分のキャリアをしっかり見つめた上で、これなら自分にできる、これなら自分を転職先に売れる。そう思えれば会社と自分の求めるものがマッチして、お互いにとっていい転職になります。そういう意味でも、やはりキャリアをしっかり棚卸しておく必要があります。」(賀川さん)
今後はますます自分自身でキャリアを築くことが求められる時代になる、と賀川さんは語ります。「一度会社に就職すると、会社の中でのキャリアしか見えなくなってしまいがちです。
今は日本企業もグローバル化してきていますし、従来のメンバーシップ型雇用から抜け出そうとするところもあります。それに大企業だから定年まで安泰という発想も、今はほとんどありません。
こういう時代、自分のキャリアは自分で見つけるしかない。日本もそういう段階に来ていると思います。」(賀川さん)
Ranking ランキング
-
「おカネをもらう=プロフェッショナル」と考える人が見落としている重要な視点
2024.6.17 Interview
-
さすがにもう変わらないと、日本はまずい。世界の高度技能者から見て日本は「アジアで最も働きたくない国」。
2018.4.25 Interview
-
評価は時間ではなくジョブ・ディスクリプション+インパクト。働き方改革を本気で実践する為に変えるべき事。
2018.4.23 Interview
-
時代は刻々と変化している。世の中の力が“個人”へ移りつつある今、昨日の正解が今日は不正解かもしれない。
2018.4.2 Interview
-
働き方改革の本質は、杓子定規の残業減ではなく、個人に合わせて雇用側も変化し選択できる社会になる事。
2018.3.30 Interview
