はじめに|この調査について——なぜ今、この調査を行ったのか
2026年4月。多くの企業では新年度がスタートし、人材開発・研修部門もあらたな施策の実行フェーズに入る時期です。そんな4月に向けて、一つの動きがありました。厚生労働省は2026年3月2日、「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」を大幅に拡充し、従来の「事業展開に伴う訓練」に加えて、新たに「人事・人材育成計画に基づく訓練」も助成対象とすることで、より多くの企業が活用しやすくなりました(*1)。政府が2022年に宣言した「5年間で1兆円」の人への投資は、こうした制度の継続的な拡充という形で続いています。
一方で、現場の実感はどうでしょうか。生成AIなどの革新的技術がビジネスや産業構造に急速な変化をもたらす中、リスキリングは「単なるトレンドではなく、組織存続の根幹を支える戦略的テーマ」として位置づけられています(*2)。制度は整いつつある。では、大企業の実態はどうなのか。
本連載は第0回から一貫して、「リスキリングとは何か」「生成AI時代にどう設計すべきか」を論じてきました。しかし議論を重ねるほど、一つの問いが浮かび上がりました。「そもそも大企業は、リスキリングについて何を、どのように実践しているのか」——その実態を、当事者に直接聞いた一次データが手元にない。
そこで、みらいワークス総合研究所は、「リスキリング実態調査2026」(*3)を独自に実施しました。この調査には二つの目的があります。一つは、本連載がテーマとするリスキリングの実態——どの程度の企業が、真の意味でリスキリングに取り組んでいるのかを把握すること。もう一つは、生成AIの登場が各社のリスキリングにどう影響しているかを把握することです。
本調査の正式リリースは後日を予定していますが、本連載では一足先にその一部をお届けします。
■ 調査の概要
| 項目 | 内容 |
| 調査実施主体 | みらいワークス総合研究所 |
| 調査対象 | 従業員500名以上の企業に勤務する人材開発・人事研修担当者 |
| 有効回答数 | 400名 |
| 調査時期 | 2026年3月19~22日 |
| 調査方法 | インターネット調査 |
■ 第11〜13回の構成と、本回で扱う設問
この特集は3回で構成します。各回で扱う設問と、その設問が何を明らかにするかを以下に示します。
第11回(本稿):現在地——今、何を、いつからやっているのか
| 設問 | 設問の内容 |
| Q1 | 所属企業では現在、「リスキリング」を行っているか(実施状況) |
| Q2 | 所属企業では「リスキリング」をどの範囲の取り組みとして捉えているか(捉え方・定義) |
| Q3 | 身につけさせようとしているスキルのテーマはDX関連か非DX関連か(スキルテーマ大分類) |
| Q4 | DX関連の場合、重点テーマは何か(DXスキルテーマ詳細、複数回答) |
| Q5 | DX関連以外の場合、重点テーマは何か(非DXスキルテーマ詳細、複数回答) |
| Q6 | リスキリングを最初に立ち上げた時期はいつか(取り組み開始時期) |
第12回:変化対応——生成AIの登場が何をどう変えたか
| 設問 | 設問の内容 |
| Q7 | 生成AIの登場・普及は、自社のリスキリングに影響を与えたか(影響の有無・程度) |
| Q8 | 影響があった場合、その内容は何か(影響の具体的内容、複数回答) |
| Q9 | 生成AI普及を踏まえ、リスキリングを変更したか(変更の有無・状況) |
| Q10 | 変更した場合、具体的に何を変更したか(変更内容、複数回答) |
| Q11 | 変更していない・決めきれていない場合、その主因は何か(変更できない理由、複数回答) |
| Q12 | リスキリング施策に制度・運用として組み込んでいる要素は何か(施策の構成要素、複数回答) |
第13回:今後の方向——これからどこへ向かい、何が壁になっているか
| 設問 | 設問の内容 |
| Q13 | 今後12〜24カ月の方針として最も近いものはどれか(今後の方向性) |
| Q14 | リスキリングを推進するうえでの最大の阻害要因は何か(推進上の障壁、複数回答) |
本回連載第11回でQ1とQ2を核に据える理由は、連載第12回・第13回のクロス分析の軸がここにあるからです。各社がリスキリングをどのように定義・捉えているか(Q2)によって、生成AI対応の様相も今後の方針も異なる傾向が見られます。その軸を本回でまず明確にします。
Q1:実施状況——「64.5%が実施中」という全体像
【Q1】所属企業では現在、「リスキリング」を行っていますか。(単一回答、n=400)
| 選択肢(全文) | 件数 | 比率 |
| 全社施策として、実施している | 153件 | 38.2% |
| 特定部門・特定職種などに限定して、実施している | 80件 | 20.0% |
| パイロット実施中である(限定対象で試行段階である) | 25件 | 6.2% |
| 検討・設計中である(未開始である) | 56件 | 14.0% |
| 過去に実施していたが、現在は実施していない | 7件 | 1.8% |
| 過去も含めて実施していない | 64件 | 16.0% |
| わからない | 15件 | 3.8% |
上位3つを合算すると64.5%——回答者の3名のうちに2名が所属する企業において、何らかの形でリスキリングを実施しています。
ただしこの数字は、次のQ2を見るまでは額面通りには受け取れません。
Q2:各社は「リスキリング」をどう捉えているか——設問順序の設計意図
【設問Q2】Q1の回答にあたり、所属企業では「リスキリング」をどの範囲の取り組みとして捉えていますか。(単一回答、n=400)
この調査では、Q1で「リスキリングを行っているか」を先に問い、Q2で「その際にリスキリングをどう定義していたか」を後から確認する設計を採りました。この順序には意図があります。Q2を先に示すと、回答者が選択肢を見た段階で定義を意識し直してQ1に答えてしまうため、各社が日常的に「リスキリング」という言葉に自然に込めている意味を引き出せなくなります。Q1を先に問うことで、Q1の回答が定義の確認前の、いわば「素の状態」での認識を反映した回答になります。
Q2の選択肢は、この調査において「リスキリング」という言葉の多義性を捉えるために、取り組みの射程範囲を①〜⑤の5段階で設計しました。以下が選択肢全文と回答結果です。
| 選択肢 | 選択肢の全文 | 件数 | 比率 |
| ① | 企業が、研修や自己学習支援など、学習機会を提供する取り組みである。職務や役割の転換は前提にしない。 | 116件 | 29.0% |
| ② | 企業が社員に対して、学習機会の提供に加えて、学んだ内容を現職の業務で使わせるところまでを含む取り組みである。職務や役割の転換は前提にしない。 | 128件 | 32.0% |
| ③ | 企業が社員に対して、学習機会の提供に加えて、研修受講者が社内公募や社内マッチングを通じて別の職務・役割に応募できる状態までを含む取り組みである。異動するかどうかは応募と選考結果による。 | 82件 | 20.5% |
| ④ | 企業が社員を、別の職務・役割へ移すことを目的に、転換先を定め、対象者を選び、学習と配置転換を一連の流れとして運用する取り組みである。 | 38件 | 9.5% |
| ⑤ | 企業が、組織再編や人員シフトなどを背景に、先に配置転換を行い、その後に必要な学習をさせる取り組みである。 | 29件 | 7.2% |
| その他 | — | 7件 | 1.8% |
この選択肢を設計する際に参照した軸の一つが、政府の定義です。2022年10月3日の第210回国会所信表明演説(*4)において、岸田首相はリスキリングを「成長分野に移動するための学び直し」と表現し、「企業間・産業間での労働移動円滑化に向けた指針を取りまとめる」とともに「5年間で1兆円の人への投資」を表明しました。経済産業省はリスキリングを「新しい職業に従事するため、または、現在の職業で必要とされるスキルの大きな変化に適応するために必要なスキルを獲得したり、身につけさせたりすること」と定義(*5)しており、労働移動・職種転換を前提とした、企業が主語の取り組みとして位置づけられています。
この定義を踏まえると、本調査の各選択肢の性格は次のように整理されます。
①②は、いずれも「職務や役割の転換は前提にしない」と明記しており、政府が定義するリスキリングよりも、通常の人事研修・OJTに近い射程の取り組みです。
③は機会を整える側は企業ですが、実際に別の職務・役割に移るかどうかは「応募と選考結果による」——個人の意思と選考次第であり、企業が主導して転換を運用する政府の想定とは異なる設計です。
④が、政府の定義するリスキリングに最も近い選択肢として設計したもので、転換先を企業が定め、対象者を選び、学習と配置転換を一連の流れとして企業主導で運用します。
⑤は①〜④が「学習→転換」という順序であるのに対し、「先に配置転換→後から学習」という逆の流れで、組織再編や人員シフトを背景に動く性格上、結果として職種転換を伴う点では④と共通しますが、学習はあくまで転換後の適応手段として位置づけられています。
この結果が示す最も重要な事実は、回答者の61.0%が①②——職種転換を前提としない取り組み——をリスキリングと捉えていたという点です。
政府が定義するリスキリングに相当する④を選んだのは9.5%(38名)、⑤を含めても16.7%にとどまります。
つまり、Q1で「リスキリングをやっている」と答えた企業所属の担当者の大多数は、政府が本来意図した「労働移動・職種転換を伴う取り組み」ではなく、既存の人事研修の延長線上にある取り組みを「リスキリング」と呼んでいる、ということです。
2022年以降、「リスキリング」という言葉は急速に大企業に広まりました。しかしこの調査が示すのは、言葉の普及と、その言葉が本来指す取り組みの普及は、別のことであるという現実です。
Q1×Q2:「実施している」の内側と、定義④の企業の実態
Q2の捉え方別に、Q1の実施状況内訳を見てみましょう。表の各行はQ2の回答グループ(n=各グループの回答者数)、各列はQ1の選択肢を示します。カッコ内の%は各Q2グループの回答者数を分母とした比率です。
【Q2の捉え方別に見た、Q1の実施状況(実数・各Q2グループ内比率)】
| Q2の捉え方 | n | 全社施策として実施 | 特定部門・職種に限定して実施 | パイロット実施中 | 検討・設計中 | 過去に実施・現在停止 | 過去も含め実施していない | わからない |
| ①学習機会の提供(転換前提なし) | 116 | 64件
(55.2%) |
9件
(7.8%) |
6件
(5.2%) |
8件
(6.9%) |
1件
(0.9%) |
25件
(21.6%) |
3件
(2.6%) |
| ②現職での活用まで(転換前提なし) | 128 | 44件
(34.4%) |
42件
(32.8%) |
10件
(7.8%) |
20件
(15.6%) |
3件
(2.3%) |
9件
(7.0%) |
— |
| ③社内公募・マッチングまで(個人が応募主体) | 82 | 27件
(32.9%) |
22件
(26.8%) |
4件
(4.9%) |
18件
(22.0%) |
3件
(3.7%) |
8件
(9.8%) |
— |
| ④学習と配置転換を一連の流れで(政府定義相当) | 38 | 12件
(31.6%) |
6件
(15.8%) |
4件
(10.5%) |
5件
(13.2%) |
— | 9件
(23.7%) |
2件
(5.3%) |
| ⑤先に配置転換、後に学習 | 29 | 6件(20.7%) | 1件(3.4%) | 1件(3.4%) | 5件(17.2%) | — | 10件(34.5%) | 6件(20.7%) |
この表には、見落とせない構造が二つあります。
一つ目は、①の捉え方をしている企業が最も大規模に展開できているという事実です。 ①(学習機会提供型)では「全社施策として実施」が55.2%に達します。②でも34.4%です。取り組みの射程が「研修提供・現職活用」の範囲に収まっているほど、全社展開が容易である——これは当然とも言えます。eラーニングや集合研修を全社に展開することは、人事制度の大きな変更を伴わずに実行できます。
しかし、こう問い直す必要があります。 全社で大規模に展開できているのは、政府が意図したリスキリングとは本質的に異なる取り組みです。取り組みの「量」は大きいが、「質」の面では政府の定義から遠い。この逆説が、この表の最も重要な読み方です。
二つ目は、④(政府定義相当)を選んだ38社の実態です。 38社のうち「実施中(全社・限定・パイロット)」と答えたのは22社(57.9%)でした。9社(23.7%)は「過去も含めて実施していない」と答えています。「自社のリスキリングは学習と配置転換を一連の流れとして運用するものだ」という認識は持ちながら、実際にはまだ着手できていない企業が4社に1社の割合で存在する。これは何を意味するでしょうか。
本来のリスキリングは、研修を用意するだけでは成立しません。転換先ポストの設計、対象者の選定基準、人事評価との接続、配置の受け皿——これらを制度として整えて初めて動き出せます。④を選んだ企業の中に「実施していない」企業が多いのは、正しく理解しているからこそ、その難しさが実感として伴っており、まだ着手できていないという状況を示唆しています。言葉を広く解釈すれば展開は容易で、正確に解釈するほど実行の壁が高くなる。これがQ1×Q2のクロスから見えてくる、大企業のリスキリングの構造的な実態です。
Q3・Q4・Q5:スキルテーマの全体像と、Q2定義との関係
【設問Q3】リスキリングで身につけさせようとしている(していた)スキルテーマはどれですか。(単一回答、n=321)
Q3以降は、リスキリングを実施中・実施経験のある321名への設問です。
| 選択肢(全文) | 件数 | 比率 |
| DX関連のスキルである | 85件 | 26.5% |
| DX関連以外のスキルである | 74件 | 23.1% |
| DX関連のスキルとDX関連以外のスキルの両方である | 151件 | 47.0% |
| わからない | 11件 | 3.4% |
「DXと非DX両方」が47.0%で最多です。Q2の捉え方別にこの分布を見ると、興味深い差が現れます。
【Q2の捉え方×Q3スキルテーマ(Q3有効回答者ベース)】
| Q2の捉え方 | Q3有効回答n | DX関連のみ | DX関連以外のみ | 両方 | わからない |
| ①学習機会の提供(転換前提なし) | 88 | 35件
(39.8%) |
9件
(10.2%) |
41件
(46.6%) |
3件
(3.4%) |
| ②現職での活用まで(転換前提なし) | 119 | 24件
(20.2%) |
33件
(27.7%) |
60件
(50.4%) |
2件
(1.7%) |
| ③社内公募・マッチングまで | 74 | 15件
(20.3%) |
23件
(31.1%) |
35件
(47.3%) |
1件
(1.4%) |
| ④学習と配置転換を一連の流れで | 27 | 7件
(25.9%) |
6件
(22.2%) |
12件
(44.4%) |
2件
(7.4%) |
| ⑤先に配置転換、後に学習 | 13 | 4件
(30.8%) |
3件
(23.1%) |
3件
(23.1%) |
3件
(23.1%) |
①の捉え方をしている企業では、DX関連のみが39.8%と他グループより高く、DX関連以外のみは10.2%に過ぎません。一方②〜④の捉え方をしている企業では、DX関連以外のみが20〜30%台で存在し、よりバランスが取れています。「学習提供型」の取り組みほどDX一色になりやすく、「配置転換を視野に入れた」取り組みほどDXと非DXを並行して扱う傾向が見られます。なお④の有効回答はn=27と少ないため、傾向の参考としてご参照ください。
【設問Q4】DX関連の中で、重点テーマはどれですか。(複数回答可、n=236)
※Q3でDX関連と回答した236名への設問(全10項目)
| 選択肢(全文) | 件数 | 比率 |
| 生成AIの業務活用(適用・定着、ユースケース設計、業務再設計) | 160件 | 67.8% |
| データ分析・データサイエンス | 106件 | 44.9% |
| AI/機械学習の開発・導入(LLMアプリ、RAG、運用を含む) | 91件 | 38.6% |
| 業務改革(BPR、プロセス設計、標準化) | 87件 | 36.9% |
| サイバーセキュリティ/プライバシー | 74件 | 31.4% |
| DX基礎(全社デジタルリテラシー等) | 69件 | 29.2% |
| ITプロジェクト管理/プロダクトマネジメント | 56件 | 23.7% |
| データガバナンス/AIガバナンス(規程・審査・監査・リスク) | 39件 | 16.5% |
| ソフトウェア開発(アプリケーション開発等) | 35件 | 14.8% |
| クラウド/DevOps | 32件 | 13.6% |
「生成AIの業務活用」が67.8%で断然のトップです。一方、「データガバナンス/AIガバナンス」は16.5%と最下位近くにとどまります。生成AIを「使う」ためのスキル習得は最優先で進んでいる一方、「どう管理・統制するか」のガバナンス整備は後回しになっている状況が、数字に表れています。この点は連載第12回での生成AI対応の分析とも連動するため、改めて掘り下げます。
【設問Q5】DX関連以外で、リスキリングの重点テーマはどれですか。(複数回答可、n=225)
※Q3で非DX関連と回答した225名への設問(全15項目)
| 選択肢(全文) | 件数 | 比率 |
| マネジメント・リーダーシップ | 75件 | 33.3% |
| 経営・事業戦略(事業ポートフォリオ、成長戦略等) | 68件 | 30.2% |
| 新規事業・事業開発(アライアンス、事業立上げ等) | 62件 | 27.6% |
| マーケティング(市場理解、ブランド、需要創出等) | 62件 | 27.6% |
| 営業・アカウントマネジメント | 61件 | 27.1% |
| 人事・労務(制度、要員、労務等) | 61件 | 27.1% |
| 法務・コンプライアンス・リスク管理 | 58件 | 25.8% |
| 顧客対応・カスタマーサクセス | 45件 | 20.0% |
| 品質保証・安全・信頼性 | 39件 | 17.3% |
| グローバル(語学・異文化・海外業務対応等) | 35件 | 15.6% |
| 財務・会計・経営管理 | 34件 | 15.1% |
| 商品・サービス企画/UX・CX設計(価値設計・サービス設計) | 31件 | 13.8% |
| 生産・製造・生産技術 | 31件 | 13.8% |
| サプライチェーン(調達・物流・需給計画等) | 23件 | 10.2% |
| 研究開発・設計(技術開発、製品設計等) | 20件 | 8.9% |
「マネジメント・リーダーシップ」が33.3%でトップ。経営・事業戦略、新規事業・事業開発、マーケティング、営業、人事・労務と、企業経営の根幹に関わるテーマが上位に並びます。DX以外の文脈でも、幅広い職域でスキル更新の取り組みが進んでいることが確認できます。
Q6:いつから始めたか——開始時期の分布
【設問Q6】リスキリングを最初に立ち上げた時期はいつですか。(単一回答、n=321)
| 選択肢(全文) | 件数 | 比率 |
| 2019年以前である | 45件 | 14.0% |
| 2020年である | 32件 | 10.0% |
| 2021年である | 33件 | 10.3% |
| 2022年である | 39件 | 12.1% |
| 2023年である | 48件 | 15.0% |
| 2024年である | 32件 | 10.0% |
| 2025年である | 21件 | 6.5% |
| 2026年である | 8件 | 2.5% |
| 2027年以降である | 7件 | 2.2% |
| 開始時期は未定である | 23件 | 7.2% |
| わからない | 33件 | 10.3% |
2023年(15.0%)が最多で、2022年(12.1%)、2019年以前(14.0%)が続きます。2022年10月の所信表明演説でリスキリングへの5年間で1兆円の投資と労働移動円滑化が表明されたことを一つの契機に、2022〜2023年にかけて大企業の取り組みが活発化した流れが数字に表れています。2024年・2025年に新規で着手した企業も合計16.5%おり、着手の動きは現在も続いています。
まとめ——第11回で見えたこと、第12回・13回で見ていくこと
今回の調査から見えた現在地を整理します。
Q1では大企業の64.5%が「リスキリングを実施している」と回答しました。しかしQ2を重ねると、この数字の意味が大きく変わります。その67.8%は職種転換を前提としない捉え方(①②)であり、通常の人事研修の延長線上にある取り組みを「リスキリング」と呼んでいます。Q2で政府定義相当の④を採用しているのは9.5%(38社)で、そのうち実際に取り組んでいるのは22社(57.9%)。9社(23.7%)は一度も実施していません。
この調査が示す核心は、「リスキリング」という言葉の普及と、本来のリスキリングの普及は別の話であるという点です。言葉は広まり、多くの企業がリスキリングを「やっている」と認識しています。しかし職種転換・労働移動を前提とした設計を持つ企業はごく少数であり、さらにそれを実行できている企業はさらに限られています。一方で、正しく理解している企業ほど実行の壁の高さを体感していることも、データから読み取れます。
スキルテーマでは、Q2の捉え方の違いが「DX比重」にも影響しており、学習提供型の企業ほどDX一色になりやすい傾向が見られます。DX系では「生成AI業務活用」が突出する一方、「AIガバナンス」は低位にとどまるアンバランスも確認されました。
次回(第12回)では、Q2の捉え方の違いを軸として、生成AI普及が各社のリスキリングに何をどう変えたかを分析します。「言葉の普及と実態の乖離(かいり)」という構造は、生成AI対応においても同様のパターンが見られるのか——データが示す答えを次回お届けします。
< 参考文献・出典 >
*1 厚生労働省 「人事・人材育成計画に基づく訓練も助成対象」
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001686080.pdf
*2 ProFuture株式会社/HR総研「『社員のリスキリング』に関するアンケート 結果報告」2022年11月17日
https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=412
*3 本記事中の調査データはすべて、みらいワークス総合研究所「リスキリング実態調査2025」(対象:従業員500名以上の日本企業の人材開発・人事研修担当者、有効回答:400名)による。本調査の正式リリースは後日を予定。各設問の有効回答数は設問ごとに異なり、本文中に記載の通り。
*4 自民党 「第210回国会における岸田内閣総理大臣所信表明演説」2022年10月3日
https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2022/1003shoshinhyomei.html
*5 経済産業省 第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会 2021月2月26日
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/002.html
資料2-2 「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/pdf/002_02_02.pdf
<前回までの記事はこちら>
AIの現在地から考える人材開発〜生成AI幻滅期に考えるリスキリングとアップスキリング〜