みらいワークス総合研究所は2026年7月24日、リスキリングに関するオンラインセミナーを開催しました。テーマは、「AI時代のリスキリングを考える vol.1― 座学を超えた、実践の学び ―」。みらいワークス総合研究所 研究員の石森宏茂氏とみらいワークス ソーシャル・デザイン部部長の佐竹謙一氏が登壇し、最新の調査データをもとにリスキリングの現状を解説するとともに、今後求められる人材のあるべき姿を考察しました。
生成AIの普及が及ぼす影響とリスキリング施策の現状
セミナーの前半は、リスキリングの定義を再確認するとともに、みらいワークス総合研究所が2026年3月に実施した調査(*1)をもとにリスキリングの実態を解説。AIが業務に浸透したことによる影響も考察しました。
そもそもリスキリング施策を打ち出す企業はどの程度の割合を占めるのか。リスキリングの実施状況を聞いた結果、全社だけでなく特定部門だけの実施や試行中との回答も含めると、64.5%の企業がリスキリング施策を実施していることが分かりました(図1)。
半数以上の企業がリスキリングに取り組むものの、国が定義した「学習と配置転換をひと続きで行う労働移動型」のリスキリングに取り組む企業は9.5%にとどまりました。全体の61.0%は、「学習機会の提供まで」か「現職での活用まで」という、配置転換を前提としない現職維持型のリスキリング施策にとどまります。みらいワークス総合研究所 研究員の石森氏は、「配置転換を伴わない取り組みが間違いというわけではない。重要なのは、国が推進している方向性と、民間企業における実際の活動の重心には乖離があるという現実を受け止めることである」と述べ、制度と現場の意識のズレを指摘しました。
ではAIが台頭したことで企業のリスキリング施策に何かしらの影響が見られるのか。影響度を聞いた結果、78.5%の企業が影響ありと回答しました(図2)。具体的には「学習カリキュラムやスキルテーマの見直し」や「特定部門や職種に影響は限定的」との回答が上位を占めました。
AI登場以前のリスキリングは、プログラマーやデータサイエンティストといった「DX技術者の育成」が主流でした。しかし、AIが自律的にコードを書き、これまでの高度な技術スキルが代替される可能性が浮上。石森研究員は、「学ぶ内容を変えるだけでなく、誰を、どこに向けて、何のために育てるべきなのかという目的や職務定義を問い直すことがAI時代には求められる」と指摘し、単なるスキル習得を超えた本質的な目的の再定義の必要性を訴えました。
なお、セミナーではリスキリング施策を推進する上での阻害要因や、AIによってリスキリング施策をどう見直したのかなどの調査結果も紹介。リスキリング施策の実施によって得られる効果を最大化するために企業が取り組むべきことも考察しました。
既存思考を打ち破る変革人材の育成と、アウェイ環境の重要性
セミナーでは調査結果の考察に続き、現場が求める「変革人材」のあるべき姿も解説しました。そもそも昨今の現場では、何のためのリスキリングなのかといった根本的な目的が問い直される機会が増えているといいます。みらいワークス ソーシャル・デザイン部部長の佐竹謙一氏は、「近年はビジネス環境が大きく変わり、事業変革や新規事業創出に取り組む企業が増えている。リスキリング施策に取り組むことでどんな人材を育成すべきかを再検討する企業も少なくない。そのような中、事業変革や新規事業開発を主導する『変革人材』の育成を模索する企業が増えている」と、現場が変革人材を必要としている状況を考察しました。
変革人材が具体的にどのような人を指すのかも解説。佐竹氏は変革人材について、「環境変化の中で既存思考を脱却し、自社のアセットと外部の異質な知を組み合わせて新たな価値を生み出せる人材を指す」とし、主に3つの要素で成り立っていると指摘します。
1つ目の要素が「既存思考の脱却」です。これは社内の常識やこれまでの成功体験という固執した固定概念を外し、自由で柔軟な発想を取り戻すことを意味します。2つ目の要素が「既存アセットと異質な知の掛け合わせ」です。自社の強みや既存資産であるアセットを理解した上で、社外のまったく異なる要素を掛け合わせ、新たな価値を創出するアイデアを構想する能力です。3つ目の要素が「本業への原点回帰」です。単に新しい領域へ乗り出すのではなく、自社の本質的な価値を再発見し、時代の変化に合わせて事業を進化させ、結果的に本業へ貢献できる考え方です。
しかし、大企業になるほど部門の縦割りが進み、日々の業務に追われる中で自社の強みに盲目的になりがちだと佐竹氏は指摘します。「多くの社員が自分の担当領域だけを日々こなす結果、自社の本質的なアセットに気づけなくなるという企業は少なくない。この盲目状態を解き放ち、自社の強みを再定義してイノベーションを自律的に生み出せる変革マインドを持つ人材こそが、現場が本当に求めている存在である」(佐竹氏)と強調します。
従来のリスキリングや座学研修、社内に閉じたOJTなどの取り組みでは変革人材は育成できないと佐竹氏は続けます。「論理的思考を磨く講義やフレームワークの習得を座学で取り組んでも、それらの理論を積み上げるだけでは社内の既存の枠組みを超えられない。0から1を生み出すための泥臭い発想も得られない。さらに、効率性を重視する昨今の傾向から、失敗や挑戦を許容しない風土が醸成される企業が目立つ。時には現場で泥臭く試行錯誤を繰り返し、失敗しながら実践的な体験を積むという機会も必要である。こうした限界を突破し、マインドセットを根底から揺さぶって変容させるためには、社内の常識が一切通じないアウェイの生の現場に身を置くことが不可欠である」と、社外に活路を見いだすことが変革人材育成の条件の1つだと佐竹氏は指摘しました。
アウェイの環境で変革人材としての才能を呼び覚ますには、3つの要素が必要だと佐竹氏は指摘します。1つ目は、「生の課題」です。「机上のデータや一般的なテーマではなく、現地がリアルに直面する、情緒や共感を激しく揺さぶるような、手触り感のある切実な生の課題と向き合うことが大切である」(佐竹氏)といいます。2つ目は「越境の場」です。社内の常識や過去の成功体験、さらには役職や看板といったものが一切通じない環境で業務に取り組むべきだといいます。3つ目は「自律の引き出し」です。丁寧なお膳立てや指示をあえて排除し、自ら考え、動き、周囲を巻き込んで異質な知を組み合わせざるを得ない環境を意図的に作り出すべきだといいます。
これら3つの要素を掛け合わせることで、変革人材としてのスキルや知見を習得できるようになると佐竹氏は強調します。「役職や肩書が通用しない社外に身を投じることで、既存の枠にとらわれないマインドセットの素地を築ける。AIには代替できない人間ならではの強みである共感・情緒起点のアイデア構想力、戦略的思考力、変化への適応力、デジタル活用力と倫理観を身に付けられるようになる。これらが事業変革や新規事業を強力に推進し、事業を成長、加速させる起爆剤となる」(佐竹氏)と、変革人材が持つべきマインドセットを説明しました。
「修羅場体験」が変革を起こす、みらいワークスが提供する実践型プログラム
セミナーの最後には、変革人材育成に必要な「アウェイ」環境に身を置けるソリューションも紹介しました。みらいワークスでは、「本物の修羅場体験」を仕組み化したソリューションとして、「企業×地域 3日間の地域共創プログラム」を提供しています。これは参加者が3日間地域に深く潜り込み、現地の事業者が直面する切実な生の課題に向き合い、自社アセットと掛け合わせた実効性の高い事業アイデアを最終日にプレゼンテーションするものです。
他社の一般的な体験プログラムとの違いついて佐竹氏は、「みらいワークスが長年にわたって培ってきた強固な地域ネットワークを活かす。綺麗事ではないキープレイヤーたちの本音の課題を提示できる地域連携アセットこそ本ソリューションの強みである」といいます。さらに、懇親会などのインフォーマルな時間までフルに活用し、役職や看板を捨てて現地の事業者と本音で語り合えることも魅力だといいます。「会話の中で相手の生き様や課題に共感し、何としても力になりたいという情緒的な衝動が生まれる。この心の揺さぶりがあるからこそ、地域の課題に本気で向き合える。新規事業を必ず成功させるという強い思いが、事業化を後押しする」といい、こうした一連の経験が変革人材を育成する重要な機会になるといいます。
なお、みらいワークスでは、「人材をどう育成すべきか分からない」、「社外で経験を積んでほしいが、どこでどんな経験を積ませるべきかが分からない」などの企業に向け、企業の人材育成を支援する3つのプログラムを用意します。地域課題に挑む短期集中型の「ワーケーション型」プログラム、他社の環境に副業として参画する「副業・越境型」プログラム、自社に外部プロ人材を招き入れ、実務を推進しながら自社プロパー社員の育成を同時に実現する「社内プロジェクト型」プログラムの3つです。自社アセットや課題を整理する無料商談を実施するほか、若手社員から幹部候補向けにプログラム内容をカスタマイズすることも可能です。「人材育成に他社の成功事例や他社が作り出したルールは必ずしも参考にならない。外部のアウェイな文化に柔軟に適応しつつ、そこで得た生の気付きをもとに自社の本質的な強みを見つめ直すことが重要である。みらいワークスが提供するソリューションを参考にするなどして、新たな価値を創造し続ける変革人材を育ててほしい」(佐竹氏)とセミナー参加者に訴えました。
*1 2026年|日本企業における「リスキリングの認識とAI影響に関する実態」を調査
https://mirai-works.co.jp/mwri/report/report-reskilling/9027/
ソーシャルデザイン事業は、社会課題解決を目指す大企業のプロジェクトや新規事業において、当社のビジネスネットワークを「社会実装のフィールド」としてマッチングし、プロフェッショナル人材が参画するチームが一貫して伴走支援する、当社の事業のひとつです。構想・戦略策定から実証、本実装まで、さまざまなフェーズにおいて「社会実装アクセラレーター」としてプロジェクトをサポートいたします。