みらいワークスは2025年10月9日、人事担当者向けに労働基準法(以下、労基法)に関するウェビナーを開催しました。テーマは「企業で働く形が全く変わる!人事部門が即座に取り組むべきポイント」。iU組織研究機構 代表理事の松井勇策氏をゲストに招き、2027年の労基法改正の主要論点と、企業が検討すべき対策などを解説しました。
労働者の賃金や労働時間、残業、休日などの条件を定める「労働基準法」。この法律が改正され、2027年に施行される予定となっています。企業の人事担当者は法改正に伴い、何を準備し、どんな対策を講じるべきか。今から何に着手すべきか。ウェビナーでは人事担当者が取り組むべきポイントを紹介しました。
登壇した松井氏は今回の法改正について、「ここ40年で最大の法改正と位置付けられ、企業の働き方の根本的な仕組みを書き換えるものとなる。現在は労働政策審議会で具体的な審議が進んでいる段階だが、企業は改正方針をもとに今すぐ具体的な対策を検討、着手する必要がある。もっとも個別の細則に対応しようと必ずしも考えるべきではない。大切なのは改正による全体像と大きな流れを理解し、本質的な対応を実施することである」と訴えました。

今回の改正では時間や場所、一社専属による拘束などの制約を取り除き、労働者の自由な働き方による価値向上に主眼を置いているといいます。「旧来の一律的な構造を前提とした働き方が減りつつある中、これまでの労基法の根本概念を転換する改正となる。つまり、今回の改正では企業がITを駆使した働き方の実現を想定し、そのための戦略や施策を打ち出せるようにする意図が込められている」(松井氏)と考察。企業が法改正に追随するには、IT戦略を前提とした働き方を実現する必要があると訴えました。
20項目以上が変更予定となっている今回の法改正の中でも、とりわけ以下の3項目についてIT戦略を検討すべきと松井氏は指摘します。

1.多様な働き方の推進
一社による専属性をなくし、労働者の自律性を高められるようにする。副業や兼業などの働き方を受け入れ、そのための制度や体制を構築する。
2.労働時間の見直し
ウェルビーイングの確保と労働の質的向上が一層求められる。働く質をどう捉え、ITを駆使してどのように高めるのかを考えなければならない。フレックスタイム制などの変形労働時間制導入も検討すべき。
3.労使コミュニケーションの深化
規制の自由化が進む中、妥当性を確保するためにエンゲージメント向上や働き方を改善する制度確立が求められる。ITを前提とした制度化を図るとともに、話し合いの場を設けて質的な向上を図ることも必要。
松井氏は、「変更予定である20項目以上のすべてがIT戦略の実現と関係している。ITの活用を前提に法改正に対応するのが望ましい」と述べます。さらに、これらの取り組みを推進するポイントとして、「多様な働き方を受け入れるに伴って労務管理はますます複雑化する。対応するにはITを活用した情報管理体制の構築が欠かせない。さらに、情報を駆使すれば高精度な戦略や施策も検討しやすくなる。情報を活用する戦略基盤構築も検討すべきである」と指摘。HCM(人的資本管理)を軸に、経営戦略に直結する人材戦略を打ち出すことの必要性をウェビナー参加者に呼びかけました。
一方、松井氏は人事部門が今から取り組むべきポイントにも言及します。「ある調査によると、人的資本経営を積極的に推進する企業の人事担当者は、法改正を戦略的な機会と捉えている。これに対し、人的資本経営を十分理解していない人事担当者は複雑で対応しにくくなったと否定的に捉える割合が高い。つまり、今回の法改正を新たな人材戦略を構築、実施できるチャンスと捉えるのが望ましい。『法律に触れないよう注意する』という思考から脱却し、『法律を活用する』と意識を切り替えることが大切である」(松井氏)と指摘します。

さらに、育児介護休業法やハラスメント関連法などの改正が続く中、これらも踏まえて中期の人材戦略を設計すべきと訴えます。多くの企業が人的資本経営の取り組みを情報開示していることから、雇用制度をどのように見直しているのかを事例として参考にすべきとアドバイスもしました。
ウェビナー後半に設けられた質疑応答では、参加者から寄せられた質問に対し、松井氏が具体的な解決策を提起しました。
法改正による複雑化で人事担当者の負担が増えるのではないかという質問に対し、松井氏は「負担が増加すると受け止める背景には、細部をすべて押さえなければならないという旧来の思考法に問題があるのかもしれない。違反をただ防ぐのではなく、『自社にとって多様な働き方を進めるという取り組みの中に法対応が含まれる』という戦略的な観点を持つべきである。こうした対応に切り替えることで負荷感を軽減できる」と述べました。
一方、副業や兼業による労働時間の通算方法の複雑化については、「今回の改正では、複数社で働く労働者の労働時間を算出する複雑な現行ルールの簡素化を図る。労働時間の通算がシンプルになることで人事担当者の負担は軽減する。なお、残業時間を含む労働時間の開示(過重労働の是正)は、副業とは別の枠組みで検討が進められる可能性が高い」(松井氏)との見解を示しました。
松井氏による「人的資本経営の、次段階の必須の労基法改正」についてのコラムを多数連載中です!
https://mirai-works.co.jp/mwri/author/matsui/
特に、解説動画付きの労働基準法改正1~3はぜひご覧ください!
松井 勇策が講師を務める「2027年労働基準法改正」を人材戦略に組み込むワークショップ

2027年に予定されている「労働基準法改正」。これは単なるルール変更ではなく、人的資本経営を次のステージに進める重要な転換点です。この改正にどう向き合うかによって、企業の人事戦略は大きく二極化します。法令遵守という「守りの対応」に留まるのか。それとも、「攻めの人材戦略」を仕掛ける絶好の機会と捉えるのか。
本ワークショップでは、雇用法制と人的資本経営の第一人者である松井勇策と共に、法改正の動向をただ知るだけでなく、法令をもとにした対応方法を創造的に発想していく場となります。


