新規事業開発の何が分からないのかを知ることから始めるべき、みらいワークス総合研究所主催セミナーで新規事業成功のポイントを解説

みらいワークス総合研究所は2025年3月21日、新規事業開発に関するセミナーを開催しました。テーマは「新規事業開発のヒトとソシキとシクミ vol.01~学びながら進める新規事業開発の全体像~」。新規事業を成功させるために必要な取り組みに触れつつ、多くの企業が直面する課題の克服方法などを紹介しました。

既存事業への依存体質から脱却し、新たな収益の柱を築こうと模索する企業は少なくありません。とりわけDX推進の機運が高まる中、ITを駆使した新規事業開発を進める動きが加速しています。しかし、新規事業を軌道に乗せるのは容易ではありません。「自社には到底無理」「そもそも新規事業を任せられる人材がいない」など、初めから事業創出を諦めてしまう企業が多いのも事実です。では、新規事業を成功させるためには何に目を向けるべきか。社内をどう変えるべきか…。

今回のセミナーでは、新規事業開発に取り組む際の「組織」にフォーカス。一般的に起こり得る課題を洗い出し、それらを解決するポイントを解説しました。みらいワークス総合研究所・研究員でもあり、数々の新規事業開発を支援してきたCOTO DESING, LLC代表の石森宏茂氏がゲストとして登壇し、新規事業を成功させる組織や体制のあるべき姿を紹介しました。

石森氏は冒頭、新規事業開発の難しさを改めて解説しました。「数あるアイデアの中から事業化に至る事例は0.3%にとどまる。さらにその後、成功するのは30%。事業創出を厳命する経営層を含め、すべてのステークホルダーがこの”難易度が高いという事実”を知っているということが重要だ。」と述べ、既存事業の基準や物差しで新規事業を評価するべきではないと強調しました。不確実性が高く、顧客や市場、予算の配賦も不明瞭な新規事業の状況は、既存事業の前提とかけ離れていることを考慮しなければならないといいます。

COTO DESIGN, LLC代表 石森宏茂氏

新規事業開発を進める際の主な課題にも言及しました。その中でも石森氏は根本的な課題として、新規事業開発の経験がない点、知識や理解が不足している点を指摘。「まずは経験を積むべきか、それとも学んでから経験すべきかこの『ニワトリ・タマゴ問題』をきちんと解消することが新規事業開発の足掛かりとなる。」と述べます。石森氏はこの問題について、「経験を積むことで学びを得られるが、まずは学びからスタートするのが望ましい。」と指摘します。

その理由について、「大企業であっても新規事業開発プロジェクトに起用されるのは数人程度。しかも、必ずしも新規事業開発の経験者というわけではない。いきなり、まずやってみろというには、ハードルが高い。」といいます。さらに、「『やってみなければ分からない』とよく言うが、闇雲にやってみればいいわけでもない。”学びを積み上げるための失敗”しなければ学びを得られない。」と続けます。

では具体的に何を学べばよいのか。石森氏は、「新規事業が既存事業の状況と大きく異なる点、新規事業開発には障壁となるさまざまな要因がある点など、このセミナーで説明してきたことを『知っている』だけでも大きな意味を持つ。」といいます。

さらに、「新規事業開発について何が分からないのかを分かる状態にすることが大切だ。つまり、『知らない』や『分からない』という状態であることを把握しなければ、何を学ぶべきかも決められない。学習機会を逃さないためにも、何を分かっていないのかを正しく理解することが不可欠である。」と述べました。

一方、新規事業開発の中に学びのサイクルを取り入れることの重要性も指摘しました。「新規事業開発に挑んだら、成功や失敗の要因などを社内で共有できるようにすべきだ。取り組みを振り返り、要因を洗い出して蓄積、資産化することが次の新規事業開発に役立つ。振り返りや要因を次の学びに生かす仕組みづくりに目を向けなければならない。」と指摘。継続して学ぶ環境を社内に根付かせる必要性を訴えました。

セミナーでは新規事業開発を推進するための組織構造についても解説しました。石森氏はフェーズに応じて専門部署が主導する体制を一案として提示しました。

例えば、新規事業開発の戦略立案や制度策定を担う部署、良いアイデアを検証する部署、事業化すべきかどうかを判断する部署、実際に事業を進める部署などがそれぞれの役割を果たすべきと指摘します。中でも重要な部署として、「成功、失敗を問わずすべての新規事業を一元管理する部署を設けるのが望ましいのではないか。事業化後の知見やノウハウを蓄積し、別の新規事業を推進する際に役立てられるようにする。事業化したものの軌道に乗らず、途中で見送られた新規事業の知見やノウハウも蓄積する。こうした役割を担う部署を戦略的にあえて短期的な研究開発の位置付けとして『戦略R&D部門』と呼んでも良いのではないか。」とし、新規事業に関する情報を蓄積する専門部署の必要性を参加者に訴えました。

「例えば、製造業をはじめとした企業のR&D部門では一般的に、長期的な視点で画期的な技術開発や基礎研究にあたることが多い。そのため、初期の基礎研究では顧客起点を想定しないことが多い。しかし新規事業開発では、数年単位の短期的な時間軸で事業化まで求められる。そこで、比較的短期間で市場に受け入れられるアイデアを育むための部署として、戦略R&D部門を位置づけるのが望ましいのではという提案です。」といいます。

「各部署が蓄積する情報やノウハウ、さらには知見を持つ人材まで一元的に管理する『CoE(Center of Excellence)』機能を備える部署設置が新規事業開発を後押しする。」と、戦略R&D部門が備える具体的な機能にも言及しました。

石森氏は最後に、「企業規模や業種、会社を取り巻く状況などによって新規事業開発の意図や狙いは大きく異なる。自社の状況に照らした組織の在り方を模索してほしい。」と訴求。石森氏がセミナーで指摘した内容を参考に、各社ならではの組織や体制を検討することが望ましいと述べました。