「副業はメリットしかない」サントリー一筋。ミドルシニアの現役営業マンが語る、副業やプロボノの魅力とは
2025.9.8 Interview

人生100年時代と言われる今、40代・50代のミドルシニア世代にも広がる副業。サントリーフーズ株式会社で長年キャリアを築いてこられた清水大輔さんも、副業という新たな一歩を踏み出した一人です。
清水さんは本業の傍ら、副業ではビジネスパーソンの悩みを聴く「1on1ミーティング」に挑戦。「社外の方と関わることで、新たな視点や情報を得られています。本業にも日常生活にもいい効果が出ていて、メリットしかありません」と語ります。
転職せず同じ会社で営業職を続けてきた清水さんの場合、最初はスキルや経験が社外で生かせるのか半信半疑だったといいます。しかし思い切って副業やプロボノに取り組んだ結果、意外なニーズがあることがわかったそうです。そこで今回は清水さんに、副業への向き合い方やミドルシニアが副業を始めるコツについてお聞きしました。
マネジメントに悩んだ経験から資格を取得。これが副業につながった

サントリーフーズに入社後、営業一筋という清水さん。管理職になったとき、正社員や契約社員のマネジメントを行う中、大きな壁にぶつかったと言います。
「マネジメントに悩んだ時期があり、一度、業務から離れて自身を見つめ直す時間がありました。約8カ月の期間を経ましたが、その経験がその後の資格取得や副業へとつながっています。」(清水さん)
清水さんは、なぜ自身がそのような状況に陥ったのかを客観的に見つめ直すため、産業カウンセラーとキャリアコンサルタントの資格に挑戦。その後これらの資格を取得しました。
「今思うと、マネジメントで悩んでいた頃は部下の話をあまり聞かず、自分の意見を押し付けていたと思います。でも資格取得で理論を学んでからは、部下の話をよく聞くようにしました。部下はひとそれぞれで、私とは考えや気持ちに違いがあるので、話を積極的に聴いて理解することに努めたんです。すると部下たちは話を聞いてくれたことをポジティブにとらえてくれて、モチベーションが上がり、働き方も変わりました。」(清水さん)
もともと本業に役立てるために資格を取得した清水さんですが、これが副業にもつながったと言います。
「信頼できる元同僚が人事にいて、社外の研修を勧めてくださいました。実を言うと、それまで社内で行われるシニア向け研修にはいい印象がありませんでした。将来の不安をあおる内容が多く、なんとなく暗い雰囲気でした。
でも信頼できるあの人が勧めるならやってみようと思い、社外研修に参加しました。するとそこで知り合った社外の方が、たまたま1on1ミーティングの副業をされていたんです。詳しく話を聞いたところ、私が取得した資格を生かせそうだなと思い、副業に挑戦することにしました。」(清水さん)
副業に挑戦した結果、本業でもマネジメントにいい影響が出ている

清水さんが行っている副業は、さまざまな悩みを抱えるビジネスパーソンの話を1対1で聴く「1on1ミーティング」というものです。現在は1回30分のオンラインセッションを週3回というペースで実施しています。
「カウンセリングやコーチングと違って、1on1ミーティングでは私から回答やアドバイスは伝えません。クライアントの話を聞くことに徹すると、そのうちクライアントが自ら答えに気づいてくれるのですよ。」
副業をするにあたって、1on1ミーティングを専門に扱うプラットフォームに登録したという清水さん。副業ではプラットフォーム選びも重要だと言います。
「過去にも同じようなマッチングサービスで副業をしていた時期がありましたが、自分で案件を探す必要があり、それにクライアントの都合に合わせて夜から朝にかけて時間を空けておかなければならなかったので、さすがに続けられませんでした。
一方で今登録しているプラットフォームは、クライアント探しや日時の調整をお任せできます。純粋に相手と向き合うことに集中できるようになりました。副業は限られた時間で行うものなので、プラットフォーム選びはとても大事だと思います。」(清水さん)
昨年10月から副業を始め、すでに90回以上のセッションを行っている清水さん。この経験が、本業にもいい影響を及ぼしていると言います。
「マネジメントのやり方が変わったと思います。例えば部下とコミュニケーションする時ですね。評価の面談ではないような時は、こちらの意見やアドバイスをすぐ伝えるのではなく、まず相手の話をよく聞くことを意識するようになりました。これは副業でいろいろな方と1on1ミーティングした経験が生きています。
また、このやり方ならちょっとした時間を使って、気軽にメンバーとコミュニケーションできることに気づきました。例えば一緒に車で営業に出た時、帰りは私があえて運転をして話を聞くようにしています。私が運転することで聞き役に徹することができますし、メンバーは運転しない分じっくり考えることができる。それに車の中のような何気ないシーンの方が、会議室でかしこまって話すより、本音を引き出しやすいですね。
普段の仕事の中で1on1ミーティングに取り組んだところ、メンバーたちが抱える課題が少しずつ解消されてきているように感じます。またそれによって、チーム全体の仕事もうまく回ってきていますね。」(清水さん)
プロボノやボランティアにも参加して、日常生活に大きな変化が生まれた

副業をきっかけに、さまざまな社外活動に取り組むようになったという清水さん。昨年は東日本大震災の復興支援の一環として、宮城県気仙沼市にある中小企業をサポートするプロボノ活動に参加しました。
「社外の方2名と私で3名のチームを組み、半年かけて宮城県気仙沼市の地元企業が抱える課題解決に取り組むというものです。この時はECサイトでカニを販売する会社さんに対して、どう売り上げを向上させるかという課題でした。3回ほど現地にも行きました。
この時チームを組んだ社外の方々は社内にいないタイプで、大きな刺激を受けました。この時一緒になったのはオフィスレイアウトを手掛けるデザイナーの方と、大手自動車メーカーのエンジニアの方でした。デザイナーの方が作る資料はとても見やすく可視化するのが上手だなと感心しましたし、エンジニアの方は話が論理的で、打ち合わせをスムーズに進めてくれました。」(清水さん)
一方で営業職である清水さんはどのようにサポートできるのか、最初は不安があったと言います。
「私はホームページを作れるわけでもないし、ECに特別詳しいわけでもありません。営業をずっとしてきた私にできることを考えた時、まず消費者の声を聴くことかなと思いました。そこでアンケートを作成してEC購入者がどんな点を評価しているのか、それによってどう改善できるかということをまとめていきました。
そうしたら、思っていた以上に喜んでもらえたんです。私でも普段の仕事を通じて、地方企業の方々をサポートできるということを実感できました。」(清水さん)
また清水さんはある農業体験プログラムに参加して、プライベートにも大きな変化があったそうです。
「少し前に参加した研修は、1日農業体験をしてその後参加者同士で1on1ミーティングをするというものでした。この時ある参加者の方から動物保護のボランティアについて聞き、興味を持ったのでボランティアに参加したんです。それまでほとんどボランティア活動をしたことはありませんでしたが、行ってみたら楽しくて。今では毎月通っています。
子どもの頃に犬を飼っていた経験はあるのですが、社会人になってからは転勤が多く、ペットを飼うことは叶いませんでした。そんな中、ボランティア活動を通じて犬と触れ合い、プロの方から近年のペット事情を聞くことができました。ちょうど生活環境が落ち着いたタイミングも重なって、保護犬を迎え入れることにしたんですよ。」(清水さん)
営業は誰でもできると思われがちだが、意外と社外のニーズがある

40代・50代のミドルシニア世代は、清水さんのように同じ会社で同じ仕事を続けてきたという方も多いのではないでしょうか。こうした方にこそ、副業は大きな効果があると清水さんは語ります。
「副業をやってみて感じたのは、メリットしかないということです。同じ会社に長くいると、どうしても物事の見方が固定化されてしまうと思います。副業やプロボノなどの社外活動を通じて、全く違った発想や動きをする方々に出会い大きな刺激を受けました。
また社外で自分のスキルや経験が生かせることがわかりました。私のように営業をしてきただけという方は、世の中にたくさんいると思います。特に営業という仕事は、誰でもできると思われがちじゃないですか。でも営業も仕事内容を細かく分解すれば専門性があるし、実は他の会社で生かすことができます。
意外なところで、自分のスキルや経験のニーズがある。これに気づけたことは、今後私の人生において、大きな意味があります。」(清水さん)
しかしミドルシニアの方々にとって、社外に出ることはハードルが高いのも事実です。清水さんは、あえて普段接しないような人に相談してみることがポイントだと語ります。
「ある程度の年齢になると、新しい世界へ行くのはおっくうになりますよね。その気持ちはすごくわかります。とはいえ安心感を求めて同じような仲間とばかり接していても、新しいことはできません。
自分とは属性が違う人とか、別の視点で意見を言ってくれる人、そういう人に相談することが、新たな一歩を踏み出すきっかけになるのかなと思います。」(清水さん)
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