キャリアは「解釈」で広がる。副業経験者が語る「できること」を増やす思考法
2025.12.5 Interview
副業を試したいという方の中には、「なかなか始めるきっかけや機会がない」と悩む方も多いのではないでしょうか。現在、三井住友海上あいおい生命保険株式会社に勤務し、これまで複数社での副業経験がある勝並進さんも、かつては全く副業に縁がなかったそうです。
ある時、保険代理店向け営業で培ったスキルが副業に生かせると気づいた勝並さん。越境学習(普段と異なる環境や職場で学ぶこと)プログラムをきっかけに、副業に挑戦。現在も生命保険会社でDX支援をする傍ら、副業として地方企業の経営支援に取り組んでいます。今回は勝並さんが副業を始めるまでの経緯や、副業をスムーズに進めるコツなどについて伺いました。
キャリアを棚卸ししてみたら、代理店営業で培ったスキルが副業に生かせると気づいた
現在は生命保険会社に勤める勝並さんですが、キャリアのスタートは損害保険会社での代理店営業でした。「損害保険会社では主に代理店営業、つまり代理店さん向けの経営支援をしていました。その後、私がいた損害保険会社が生命保険事業に参入しまして、それをきっかけに生命保険営業に挑戦してみたらすごく面白かったんです。そこで社内制度を利用して、自ら希望して現在の生命保険会社へ出向しました。
他の人がやっていない新しいことに取り組む。これは当時も今も自分の中で意識していることです。その方が間違いなく自分のスキルは上がります。」(勝並さん)
勝並さんは生命保険会社に出向後、営業企画や拠点のマネージャーなどを経験。現在はDX支援を担当しています。「社内や代理店さんのDXを支援する他、DX関連の人材育成にも関わっています。IT関連の経験があるわけではありませんが、新しいことにチャレンジできてすごく楽しいです。」(勝並さん)
こうした本業の傍ら、これまで複数社にて副業を経験してきた勝並さん。副業に関心を持ったのは、ある研修だったそうです。
「私の会社には40代になると全員受けるキャリア研修があり、そこで自分のキャリアを棚卸しする機会がありました。その時に、これから自分にできることは何だろうと考えたんです。私の場合、まず代理店の経営支援をしてきましたので、コンサルティングに近いことができそうだなと。そこから、このスキルを他の会社でも生かせるのではないかと思うようになりました。
研修の前は副業なんて全く考えていませんでしたから、やはり研修で自分のキャリアやスキルをあらためて見つめ直したことが、副業につながったと思います。」(勝並さん)

複数の地方企業を支援。本業と両立するコツとは?
副業に関心を持ちながらも、実際にはチャレンジできないという方も多いかもしれません。勝並さんの場合は、会社の越境学習プログラムが副業を実践する機会になったと言います。
越境学習とは、所属企業とは異なる環境に身を置いて新たな学びを得るためのもので、近年は人材育成の手法として注目されています。
「私の所属する会社も、社員にもっと会社の外を見せなければと思ったようで、越境学習プログラムを用意してくれていました。その中でたまたま地方企業のインターンシップというプログラムがあったので、応募してみました。副業をするにしても自分が他の会社でどう役立つのか、やってみないとわかりません。まずは試してみようと思ったわけです。」(勝並さん)
2022年、勝並さんは2カ月の地方企業インターンシップとして、北海道にあるコーヒー販売会社を支援することになりました。「2カ月はやはり短いので、もったいない気がしていたんです。ですから、2カ月後にもっと続けたいと先方に思ってもらえるように取り組もうと最初から決めていました。実際、2カ月後に先方から有料でもいいから続けてほしいと言っていただき、最終的には1年半継続していただきました。」(勝並さん)
この経験をもとに、勝並さんは翌年も地方企業のインターンシップに応募しました。ただ1回目とは違うことをしたいと考え、先輩社員と2人でチームを組みました。「宮城県にある、ガソリンスタンドなどを経営する会社を支援しました。ちなみにチームを組んだ先輩社員はその翌年に定年を迎えて、コンサルティング会社を起業したんですよ。」(勝並さん)
こうした経験をもとに、本格的に副業に取り組み始めた勝並さん。地方企業と都市部の副業人材をつなぐプラットフォーム『Skill Shift』などを活用し、インターンシップを含め複数の地方企業の支援をしています。
生命保険会社で仕事をしながら、今も副業で数社の支援に取り組まれている勝並さん。クライアントは地方の会社が多いため、基本的にオンラインでやりとりしていると言います。「オンライン会議は、月1回または2回ですね。毎週になるとお互いタスクがこなしきれないので、この位のペースがちょうどいいと感じています。オンライン会議は平日の夜などに行っていますので、本業に支障はありません。
地方企業の現地へ赴くこともありますが、最初の1回というケースが多いですね。やはりクライアントさんに交通費を負担させてしまいますから、少ない方がいいと考えています。一度も現地に行かないケースもあります。」(勝並さん)
地方企業の経営者を支援することは、本業とはまた違う充実感がある
多くの副業を実践し、勝並さんは本業に生かせることも多いと感じたそうです。「今まで自分の会社の中でしか使っていなかったスキルが、他の会社でも生かせると実感できました。
また課題をヒアリングしたり、仮説を立てたり、そういうスキルは副業を始めた後の方がスキルは上がっていると実感します。こういう話し方をすれば伝わるかなとか、社外の方と接することで新たに気づくことも多いですね。」(勝並さん)
また、副業には本業とは違った充実感があると勝並さんは語ります。「私にとって初めての副業だった北海道のコーヒー販売会社さんは、契約終了後に社員の方全員のメッセージが書かれたカードをいただきました。これはすごくうれしかったですね。自分が役に立てたんだなと感じられました。
特に地方の経営者の方々は、人手不足などいろいろな悩みを抱えていらっしゃいますし、周囲に相談できる人がいないとおっしゃいます。そういう中で一緒に課題を整理したり解決策を考えたりできるというのは、すごくやりがいを感じます。
あと副業のメリットとしては、相性のよい方と一緒に仕事ができるのでストレスが少ないということもあります。本業では取引先を自分で選ぶことは基本的に難しいですが、副業ならどの会社に応募するか自分で決めることができます。もちろん応募しても採用されないこともありますが。」(勝並さん)
また勝並さんは副業を経験して、本業とのある違いに気づいたと言います。「副業の場合、募集内容に自分のスキルがぴったりあてはまるというケースは、実はそれほど多くありません。募集要項の具体的なところばかり見てしまうと、なかなか応募しづらい。先方が求めていることはおそらくこういうことかなという感じで、ある程度、抽象的に考えた方がいいと思います。抽象度を上げれば、こんなこともできそうかな、という可能性がいろいろと出てきます。
実はこれ、以前営業企画の仕事をしている時に当時の上司から言われたことなんですよ。会社には権限や規定がいろいろあるけれど、営業企画という仕事は解釈次第でできることはいっぱいある、ということをその方が教えてくれました。これは副業をする上でも、すごく大切な考えじゃないかなと思っています。」(勝並さん)

副業をやりたいならまず動く。落ちても気にしない心構えも大事
最後に、副業に興味はあるものの一歩を踏み出せないという方に向けて、勝並さんからアドバイスをいただきました。
「私の場合、研修でキャリアの棚卸しをしたことが副業に関心を持つきっかけになりました。これがなければ、自分に何ができるのかはっきりせず、副業に挑戦できていなかったと思います。普段仕事をしている中では、自分の強みに気づく機会はなかなかないですよね。ビジネスパーソンの方の多くは、自分には強みがないと思っている人の方が多いのではないでしょうか。
しっかりキャリアの棚卸しをして、自分にできることを明確にしておくことは大事ですね。私も副業を選ぶ際には、キャリアや経験が生かせそうなところを選ぶようにしています。自分の経験や強みを整理していくつか手札を用意しておけば、募集内容を見ながらどれを使えるのか、判断しやすくなります。
反対に、副業でできないことも把握しておくべきだと思います。私の場合、営業に同行するような案件は応募しないことにしています。やはり本業がありますので、いざ大事な商談に同行してほしいと求められた時、対応できないことがあり得るからです。」(勝並さん)
また、行動力も大切だと語ります。「まずはSkill Shiftなどのプラットフォームに登録してみる。登録をしたら、次は応募をしてみる。何事もやってみないとわかりませんから、まずは動いてみた方がいいです。
勇気を出して応募しても落ちてしまうことがあります。その時には必ず何がダメだったのかを振り返り、諦めずにチャレンジをし続けることがとても重要です。」(勝並さん)
今後もさまざまな副業にチャレンジしたいと語る勝並さんは、大きな目標があると言います。「いろいろな地域の会社さんと関われるところも、副業のすごくいいところだと思います。そういう意味でも、いつか副業案件で47都道府県を制覇したいと思っています。まずは私自身が行ったことのない都道府県が6つありますので、そこからチャレンジしていきたいですね。」(勝並さん)
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