「複業×2拠点生活」で発見した、自分にとって理想の働き方とは。
2025.9.2 Interview

副業を始めたいと考える方の中には、「本業に支障が出そうで心配」「プライベートに充てる時間が減るのでは」という懸念もあるのではないでしょうか。しかし最近では、本業と副業をうまく両立しているケースも増えています。
現在、企業の正社員としてUIUXデザイナーで活躍する高島勇志さんも、その一人。高島さんは副業によってむしろ本業の業務効率が上がり、自分のペースで本業と副業を両立できていると言います。また、コロナ禍をきっかけに長野県へ移住した高島さん。現在は東京にも拠点を持ち、長野と東京を行き来して本業と副業に取り組んでいます。
「2拠点生活を試してみたら、すごく自分に合う働き方だと気づきました」と語る高島さんに、副業と本業を両立させるコツや2拠点生活のメリットについて、お聞きしました。
副業で得たスキルと経験が、本業の効率化につながる
大学卒業後はWebディレクターなどで活躍していましたが、Figmaが登場した30歳の頃UIUXデザイナーにキャリアチェンジしたという高島さん。現在は、株式会社バリュレイトの正社員をしながら、個人事業主のUIUXデザイナーとして活動しています。コロナ禍で一躍注目を集めた副業ですが、高島さんはコロナ禍になる前から副業を始めていました。
「UIUXデザイナーになったのとほぼ同じ時期に結婚して、家族のためにも収入を増やしたいと思ったのが副業を始めたきっかけです。」(高島さん)
現在は本業をこなしながら副業でもUIUXデザインに取り組んでおり、副業で常に数件のプロジェクトに関わっていると言います。
「僕の場合、周りから必要とされているということが大きなモチベーションです。オファーは基本的に断りません。本業でも副業でもいろいろなお話をいただけるので忙しい日々ですが、充実しています。」(高島さん)
副業においては、本業が忙しい中どのように副業に充てる時間を取るか、という課題もあります。そこで、高島さんがどのように本業と副業を両立しているかお聞きしました。
「副業は契約上稼働時間が決まっていることも多いのですが、デザインの仕事ではやはりかけた時間よりアウトプットが重視されます。ですから、それほど時間の縛りはありません。また僕の場合は正社員の仕事も裁量労働制ですので、本業と副業を両立しやすい環境だと思います。あと、副業によってスキルや経験が増えるので、それによって本業にかかる時間の短縮につながっています。例えば、副業で関わった案件と似たタイプの案件を本業でも対応することもあります。副業によって本業の作業効率が上がりましたし、新しいアイデアが浮かぶまでの時間も短くなりました。」(高島さん)

「デザインの仕事では、最後アウトプットを作るために机に向かいますが、それまでは基本的に考えることがメインで、ずっと机に向かっている必要はありません。僕の場合、犬の散歩をしている時や、ジムで運動している時、普段の生活の中でデザインを考えたり、アイデアが生まれます。もちろん納期が近くなればそうはいきませんが、基本的には本業も副業も、自分のペースでできています。」(高島さん)
副業こそ、実は周りの人との関わりが重要
副業というと、個人で黙々と仕事をするというイメージがあるかもしれません。しかし高島さんの場合、副業を通じて多くの方と関わりを持つことができていると言います。
「作業をする時は基本的に1人ですが、基本的にプロジェクトなので、PMやデザイナー、エンジニアなどがいるチームで動きます。いろいろな働き方をしている方々とチームを組むことが、新しい発見につながります。また1人で案件を担当することもあり、そういう場合には、副業で同じプロジェクトを担当したデザイナーやエンジニアに手伝ってもらうこともあります。」(高島さん)
また高島さんは多くの方と関わることによって、今の自分らしい働き方につながっていると語ります。
「何かやる時に1人の力はでは限界がありますから、周囲の人の存在はすごく大きいです。案件を紹介してくれる方、一緒に案件に入る方、サポートしてくれるデザイナー仲間、あとは家族。そういう方々の支えがあって、今の働き方や暮ら方ができているとあらためて思います。」(高島さん)
コロナ禍で地方移住を決断、その後2拠点生活をスタート
高島さんは数年前に長野県へ移住され、現在は長野県の住まいと東京の仕事場を行き来しながら、本業と副業に取り組んでいます。
「コロナ禍になる前は、神奈川県に住んでいました。人気の高いエリアでしたので住宅が密集していて、ちょっと息が詰まる感じがしていました。子育てもして、犬も飼っているので、僕としてはもう少し広くて自然の多いところに住みたいと思っていました。」(高島さん)
コロナ禍によってリモートワークが普及したことで、長野県への移住に踏み切ったという高島さん。意外にも長野県はこれまで縁のない場所だったそうです。
「いろいろ検討する中で、家族が住みやすそうだなと思って長野県に移住しました。自然が豊かで、暮らす環境としてはとてもいいです。本当に静かで、休みの日はリラックスできます。犬を飼っているのですが、思いきり走り回れて家族の中で犬が一番喜んでいるかもしれません。神奈川県ではワンルームしか借りられないような家賃で、広々とした戸建てが借りられます。」(高島さん)

高島さんに、東京に拠点を持つメリットについて、お聞きしました。
「東京に時々出ると、やはり刺激があります。東京ではいろいろな人や情報に出会うことができますから。僕の仕事では、毎日同じ景色を見ているより変化がある方がアイデアは出やすいと思います。特に僕は飽きっぽいところがあるので、今の2拠点生活はとても自分に合っている気がします。長野と東京のアクセスは意外と悪くなく、この先ずっと長野にいるかどうかはわかりませんが、2拠点での生活はできれば続けていきたいですね。住んだことのない新しい土地に移住してみたいという気持ちもあります。」(高島さん)
ただし地方移住となると、移住先のコミュニティーになじめるかという心配もあります。高島さんの場合、ご家族の存在が大きいと語ります。
「ご近所づきあいについては、妻がとても頑張ってくれています。2拠点生活がうまくいっているのも、本当に家族のおかげです。」(高島さん)
自分に合う働き方を見つけるために必要なこととは?
副業に挑戦しその後2拠点生活にも取り組み、新しい働き方を手に入れた高島さん。自分らしい働き方に出会うには、まずはやってみることが大切だと語ります。
「僕は1日中人と会って話すというのは、あまり得意ではありません。適度にひとりになって、作業に没頭する時間が欲しいタイプです。ひとりになる時間もしっかりとあって、一方でいろいろな人とコミュニケーションもできるという今の働き方は、自分にすごくあっていると感じています。副業を始めたことをきっかけに、自分にフィットする働き方を見つけることができました。まずはいろいろ試して、その中から自分に合うものを選ぶ。いろいろとチャレンジをしながら前向きに選択していくことが重要だと思います。」(高島さん)
さまざまな挑戦を続ける高島さんに、今後の展望について伺いました。
「副業が順調なので昨年くらいから法人化を検討していますが、まだどうするかは決めていません。僕自身、会社員としての仕事も好きですから、当面は今のような形で、正社員の仕事と副業を両立していきたいと思っています。」(高島さん)
副業というと、「本業がおろそかになってしまう」「独立を目指す上で、とりあえず試すもの」といったイメージが従来はありました。しかし今となっては、大きく変化しています。高島さんのように副業が本業へいい効果をもたらし、本業と副業をうまく両立しているというケースも少なくありません。
もともとは収入アップを目指して副業を始めたという高島さん。しかしお話を伺うと、副業をスキルや経験、人脈を広げる機会ととらえ、本業にうまく活用されています。
副業や地方移住など、新しいチャレンジをしながら自分に合うものを選択していくという高島さんのスタイルは、今後副業を始めたい方々にとって大きなヒントになるのではないでしょうか。
Ranking ランキング
-
「おカネをもらう=プロフェッショナル」と考える人が見落としている重要な視点
2024.6.17 Interview
-
さすがにもう変わらないと、日本はまずい。世界の高度技能者から見て日本は「アジアで最も働きたくない国」。
2018.4.25 Interview
-
評価は時間ではなくジョブ・ディスクリプション+インパクト。働き方改革を本気で実践する為に変えるべき事。
2018.4.23 Interview
-
時代は刻々と変化している。世の中の力が“個人”へ移りつつある今、昨日の正解が今日は不正解かもしれない。
2018.4.2 Interview
-
働き方改革の本質は、杓子定規の残業減ではなく、個人に合わせて雇用側も変化し選択できる社会になる事。
2018.3.30 Interview