大手コンサルにはない「プロフェッショナル人材を活用した新会社設立」のメリット

少子高齢化、人口減少社会が到来した今、食料の安全供給の確保や食料自給率の向上に貢献する研究としてライフサイエンス分野への積極的な投資が進んでいます。国際的にもライフサイエンス研究は、医薬品産業、農林水産業、食品産業などの競争力強化や新産業創出につながる科学技術として期待されている分野です。

このライフサイエンスに特化したサイエンスパークが、神奈川県藤沢市と鎌倉市にまたがる約220,000㎡の広大な敷地にあります。もともと、武田薬品工業の湘南研究所だった湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)は2023年4月、「製薬企業の研究所」から「より中立的で開かれたサイエンスパーク」に生まれ変わりました。運営するアイパークインスティチュート設立には、みらいワークスのプロフェッショナル人材が大きくかかわっています。ライフサイエンス研究の今と新会社設立にあたっての外部人材活用のメリットについて聞きました。

(この記事は、2024年2月6日に開催した『プロフェッショナルの祭典2024』パネルディスカッション4「ヘルスケア業界のイノベーションエコシステム構築への挑戦〜湘南アイパークのミッションに各領域のプロフェッショナルが関わる組織とは〜」をもとに構成しています)

武田薬品工業から湘南アイパークを切り離した訳


「スピードと柔軟性が違う」と、アイパークインスティチュートのコーポレートストラテジーアンドプランニングヘッド萩迫孝弘氏は言う。これは、みらいワークスのプロフェッショナル人材とコンサルティング会社とを比較した際の大きな違いだ。

もともと日本トップの売上高、研究開発費を誇る製薬企業の研究所だったという背景もあり、湘南アイパークでは化学・バイオ研究に必要な質の高い研究設備を提供して研究を支援している。2024年9月1日時点で入居企業数は117、メンバー企業数は61。入居企業やメンバー企業には、武田薬品工業のほか、あすか製薬や中外製薬、久光製薬など製薬企業はもちろん、キリンホールディングスやライオン、東レ、東京医科歯科大学や横浜国立大学、湘南鎌倉総合病院、神奈川県などが並ぶ。イノベーションエコシステムを構築するための多様なプレーヤーが誘致されたこの場で、産官学の連携や起業や事業創出が促進されている。

「日本で良い薬を出していこうと思えば、1社だけでなく多くの企業とのコラボレーションが必要だと感じ研究所を開放することにしたという流れがあります。ただ、開放したといっても武田薬品工業の1部門が運営しているとなると、何らかの形で武田薬品工業がからんでくるのではないかという印象を持たれる可能性がありました。そこでスピンアウトする形で湘南アイパークを独立させ、より中立的立場でサービスを提供できる形にしました」(萩迫氏)

面談後2、3日で会計士や労務士着任のスピード感

武田薬品工業から会社分割によって新会社アイパークインスティチュートを誕生させるにあたって、もっとも大変だったのは財務・経理・人事機能をつくるところだった。

「もちろん、武田薬品工業にはM&Aのディールを行う上での財務・経理・人事の戦略チームがあります。ですがビジネスモデルからオペレーションまでの再設計を行う、オペレーショントランスフォーメーション自体をリードするようなチームは常時備えてはいません。オペレーションを組み立て、実行していくのは現場に任されています。

最初は、会社分割などを支援しているコンサルティングファームに入っていただきました。コンサルティングファームには、自社のソリューションを当てはめて効率的にオペレーション変革を進めるところが多いように感じています。それがうまくはまることもありますが、今回は前例のない特殊なビジネスモデルだったので、提案されたソリューションがフィットせず、なかなか進まなかったんです。1年半の期限から大きく遅延しそうだという危機感を覚え、みらいワークスに相談しました。相談後、翌日には複数のプロフェッショナル人材の候補者を提案され、面談後2、3日で着任となったこともありました」(萩迫氏)

現場には、業務委託や協力会社などの外部人材とともに働いたことがない人々も多かった。一方でフリーランスになりたてのプロフェッショナル人材の人もいて、「お互い手探りでともに成長していく状況が大変だった」と萩迫氏は振り返る。

「コンサルティングファームだと、良くも悪くも強い力で引っ張ってもらえます。今回は、その強く引っ張る方向性が当社の担当社員がやりたいと思っていることとずれていたので、調整がうまくいかなかったんです。20人以上紹介いただいたプロフェッショナル人材のなかには、会計士や社労士といった資格を持ちつつ、これまでの経歴のなかで培った専門性もあるという人が多くいました。現場がもたついているなと感じたときは、私が入って方向性を指し示す。それだけで、プロフェッショナル人材の方々は状況に応じて、それぞれの知見を生かし柔軟に対応しているなと感じました」(萩迫氏)

アカデミアとのネットワーク構築を強化


開設から6年が経ち、湘南アイパーク内での新規コラボレーションは2000件、臨床試験開始は3件、承認取得は2件を超えている。2022年度の活動実績を見ると、コミュニティイベントは約220件、学術論文発表は約100本、資金調達は約100億円と数字にも取り組みの結果があらわれ始めている。

日本のライフサイエンス投資を活性化することを目的とした「日本VCコンソーシアム」を組成し、すでに第3期まで終わっている。そのほか、大学の教授が新たな研究を始めるにあたって資金が必要だという場合には「アイパーククラウドファンディング」に掲載し資金集めをサポートしたり、大手企業が資金を出しアカデミア発スタートアップを育てていく企業協賛型インキュベーションプログラムを実施したり、アカデミア支援も積極的に行っている。

「企業発のサイエンスパークということで、企業のみなさんには非常に興味を持っていただけます。今後、イノベーションエコシステムを拡大させるには、革新的な創薬シーズや技術を持っているアカデミアの参画が非常に重要になってくると考えています。そこで今年は、大学の医学部のようなアカデミアとのネットワーク構築を目指して全国的に取り組みを強化しているところです」(萩迫氏)

湘南アイパークだけでなく地域の発展に貢献することを目指し、神奈川県、藤沢市、鎌倉市、湘南鎌倉総合病院と連携し、藤沢市に2032年頃新設予定の「村岡新駅(仮称)」周辺を含むまちづくりやヘルスイノベーション拠点としての実証研究も進んでいる。

「湘南の街にとどまらず、日本、世界も目指してイノベーションエコシステムを発展させていきたい」と萩迫氏は意気込む。

 

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