新規事業開発を進める企業の約8割がAI導入、しかし定型業務の活用にとどまり判断を要する上流では浸透せず/ファインディ調べ

ファインディは2026年4月10日、AIを駆使した新規事業開発に関する調査結果を発表しました。従業員数100名以上の企業に勤める622名を対象に、新規事業開発や商品企画時の課題や、生成AIの活用状況などを聞いています。

新規事業や新商品を市場に投入する段階での課題を聞いた結果が図1です。

図1:市場投入時の課題(出典:ファインディ)

「営業・マーケ部門との連携・引き継ぎがうまくいかない」と答えた割合がもっとも多く、34.6%でした。以下、「PoCは完了したが事業化方針が定まらない」(33.1%)、「スケールアップ(横展開・量産)の目途が立たない」(29.9%)と続きます。上位2項目に限ると、いずれも市場環境や顧客獲得に関する課題ではなく、社内の組織間連携に関わる課題となっています。新規事業部門と既存の営業部門やマーケティング部門との溝が深く、意思決定や組織間連携の停滞が事業化を阻んでいることが推察できます。

では、業種別ではどうか。製造業と情報通信業の市場投入時の課題を聞いた結果が図2です。

図2:業種別:Go-to-Market課題の保有率(出典:ファインディ)

製造業の場合、「PoCは完了したが事業化方針が定まらない」と答えた割合がもっとも多く、37.2%でした。要素技術の開発からビジネスモデル構築への移行に苦戦していることがうかがえます。情報通信業の場合、「営業・マーケ部門との連携・引き継ぎがうまくいかない」と答えた割合がもっとも多く、33.4%でした。なお、他業種と比べて「スケールアップ(横展開・量産)の目処が立たない」と答えた割合が相対的に高くなっています(32.5%)。組織間連携に課題を抱えるとともに、プロダクト開発から市場拡大へ移行する際の課題も根深いことが分かります。

新規事業の企画を提案してから実施決定に至るまでに必要な承認段数を聞いた結果が図3です。関係者への説明などに要する会議の回数と、申請の差し戻し発生回数も合わせて聞いています。

図3:企画書・稟議などが実施決定されるまでに必要な承認の段数/関係者調整や説明のために必要な会議の回数/差し戻し(修正依頼)発生頻度(出典:ファインディ)

承認段数は「3段」と答えた割合がもっとも多く、24.3%でした。「2段」(23.3%)と「4段以上」(14.8%)を合わせると、6割以上の企業で複数の承認を要することが分かります。一方、申請したものの差し戻される頻度は6割を超えています。複数段階の承認、複数回の会議、高頻度の差し戻しが、新規事業開発を加速させられない要因の1つになっていると推察されます。

新規事業開発に関わる担当者の業務時間の内訳を聞いた結果が図4です。1週間あたり3時間以上、もしくは5時間以上割いている業務を聞いています。

図4:週あたり業務時間(3時間以上/5時間以上の割合)(出典:ファインディ)

週3時間以上割いている業務では、「企画書・稟議・資料作成」と答えた割合がもっとも多く、61.8%でした。週5時間以上割いている業務も、「企画書・稟議・資料作成」と答えた割合がもっとも多く、31.6%でした。多くの担当者が企画書や資料作成に多大な時間を要していることが分かります。

生成AIの導入状況を聞いた結果が図5です。

図5:AI導入ステージ(出典:ファインディ)

「全社標準化」と答えた割合がもっとも多く、41.0%でした。「試行中」(21.2%)と「部門標準化」(14.0%)を合わせると、8割近くの企業が何かしらのAIを導入していることが分かります。新規事業開発を進める企業に限ると、AI活用は「導入するか否か」の段階ではなく、「いかに使いこなすか」が問われるフェーズに入っていることが読み取れます。

AIをどんな用途で使っているのかを聞いた結果が図6です。

図6:業務プロセス別:「AIを頻繁に活用+完全に組込み」 vs 「まったく活用なし」(出典:ファインディ)

「インタビュー・商談・会議音声の文字起こしと要約作成」と答えた割合がもっとも多く、29.9%でした。以下、「稟議や社内説明のための資料作成」、「企画書・仕様書の作成」(ともに21.9%)、「インタビューやアンケート結果の分析とインサイト抽出」(21.7%)と続きます。一方、「試作・実証実験(PoC)の計画と仕様への落とし込み」は「まったく活用なし」と答えた割合が20.3%と高くなっています。試作品やPoCの具体的な仕様化やインサイト分析など、判断を要する上流工程でのAI活用は限定的で、浸透の遅れがみられます。

AIでどの業務を時短できたのかを聞いた結果が図7です。時間が短縮した実感のある業務、実感のない業務を聞いています。

図7:AIによる時間短縮実感あり vs 短縮実感なし(出典:ファインディ)

「インタビュー・商談・会議の議事録作成や要約」と答えた割合がもっとも多く、51.3%でした。半数以上が議事録や要約作成業務の時間短縮を実感していることが分かります。これに対し、「社内事例・過去の調査結果を探す作業」は、「短縮実感なし」と答えた割合が23.1%と高くなっています。AI活用ニーズが高いにもかかわらず、現状では解決できていない課題であることがうかがえます。

調査を実施したファインディは、AI投資のROIをフルに回収できている組織は一部に限られ、特に事業化判断、営業連携、根拠の蓄積といった開発以降のフェーズにAIは十分対応しきれずにいると分析します。こうしたフェーズではAIを補完する仕組みとして、リサーチやインサイトを管理、共有する基盤を構築するのが望ましいと指摘します。

【調査概要】
調査対象: 新規事業開発・商品企画に関わるビジネスパーソン(新規事業開発、商品・サービス企画開発、R&D企画、IT/DX/AI推進、プロダクトマネジメント、UXリサーチ・デザインなど)
調査期間: 2026年3月17日~3月23日
対象業種: 製造業、情報通信業、卸売・小売業、運輸業、消費財メーカー
企業規模: 従業員100名以上
有効回答数: 622名

【関連リンク】
ファインディ株式会社
https://findy.co.jp/