経営コンサルタントとは、企業経営に関するコンサルティングを主な業務とする職種です。経営に関する深い知見が必要なためハイキャリア向け職種として注目されていますが、実は未経験でも経営コンサルタントを目指すことができるので注目しておきましょう。
本記事では、経営コンサルタントの主な仕事内容について解説します。また、他職種との違いや取得しておくとよい資格まで解説するので、参考にしてください。
※本記事に記載されている企業や資格に関する情報は2024年時点のものです。
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経営コンサルタントとは?主な役職ごとの役割を解説
経営コンサルタントとは、会社の経営状態を可視化し、業績アップや企業成長につなげるためのアドバイスをする職種です。売上・収益向上施策の立案から資金調達、経営体質強化、社内体制改革まで仕事内容は幅広く、依頼の内容も広い傾向にあります。
経営コンサルタントの仕事内容は、主に下記の通りに分類できるのでチェックしてみましょう。
- アナリスト
- コンサルタント
- マネージャー
- パートナー
下記でひとつずつ解説します。
アナリスト
アナリストとは、企業の将来予測をするためデータ分析や情報収集をする仕事です。新卒・中途問わず、入社後はまずアナリストからスタートすることがほとんどといえます。
具体的な業務内容は、ミーティングの議事録の作成や、クライアント企業へ先輩のコンサルタントに同行しインタビューの実行、各情報の精査などを行います。基本的には情報の精査を担当することが多く、コンサルタントから指示を受け、指示を受けた内容を調査し、報告する流れを繰り返していきます。
また、常にさまざまな情報と向き合っているからこそ、アナリストの発言は重要視されることが多いです。ミーティングでは積極的な発言が求められ、的を射た発言はどんどん採用されるでしょう。自身の発言が採用された場合には大きな達成感も得られますよ。
コンサルタント
コンサルタントとは、企業の経営課題を可視化したうえで有効な施策の策定・提案をする仕事です。
経営コンサルタントの場合、「人事コンサルタント」「IT系コンサルタント」などと違って経営全般についてアドバイスできるのが特徴です。そのため「何が課題となって収益が落ち込んでいるかわからない」などのぼんやりとした相談にも乗りやすく、課題を多角的に捉えて施策を考案できます。場合によっては企業再生・事業再生を請け負うことも多く、活躍の幅が広いのもポイントです。
マネージャー
マネージャーとは、クライアント企業のプロジェクトにメンバーとして参画し、実務をこなす仕事です。プロジェクトリーダーなどマネジメント能力を必要とするポジションに就くことが多く、プロジェクト全体の指揮・監督や予算管理、クライアントとの折衝など幅広い業務を行います。実際にメンバーのひとりとしてプロジェクトに入っていくため信頼関係を構築しやすいメリットがある一方、コンサルティングファームによっては一定以上の売上獲得が必須とされるなど、シビアな結果を求められます。
また、参画するプロジェクトも社運をかけた大規模プロジェクトになるケースが多く、責任も重大です。特定分野に秀でているコンサルタントや、実務経験が長く実績も豊富なコンサルタントがアテンドされます。
パートナー
パートナーは共同経営者・出資者としてクライアント企業の経営に参画する仕事です。複数のプロジェクトを管轄することも多く、所属企業が違っても実質的な部署長として稼働することもあります。また、新規クライアントの開拓、チームマネジメント、人材採用など多様な業務を任されるため、内部管理におけるリーダーとして機能するのも特徴です。
クライアントとコンサルタントという存在でありながら共同出資者としての関係性も持ち合わせているため、クライアント企業と一蓮托生になることも少なくありません。深く経営に関わりたい人や、業界全体を牽引する存在になりたい人にもおすすめのポジションです。
経営コンサルタントとその他職種の違い
一口にコンサルタントと言っても種類が多く、特に下記のコンサルタント職は経営コンサルタントと混同されやすいため注意しましょう。
- 戦略コンサルタント
- 公認会計士
- リサーチャー
下記で、それぞれと経営コンサルタントとの違いについて解説します。
経営コンサルタントと戦略コンサルタントの違い
戦略コンサルタントは、経営コンサルタントより更に上位の意思決定に関わるシーンが多いのが特徴です。全社戦略、事業戦略、新規事業の立ち上げなどを担当するのが「戦略コンサルタント」であり、会社の行く末を大きく左右します。経営コンサルタントが新規事業や事業戦略に携わることもありますが、あくまでも部署単位・支店単位など少し小規模なモノになるのが一般的です。
また、戦略コンサルタントのカウンターパートとなるのは主に代表取締役社長や経営役員である点にも注目しておきましょう。プロジェクト単位で支援する経営コンサルタントのカウンターパートは主に部署長クラスなので、関わる人が異なるという意味でも違いがあります。
経営コンサルタントと公認会計士の違い
公認会計士は、会計・監査・税務を担当する士業です。経営に関与するという点では公認会計士も経営コンサルタントも同一ですが、具体的な仕事内容が異なると理解しましょう。公認会計士は会計面での経営アドバイスをすることがありますが、売上・収益向上や人事施策等、他分野における経営アドバイスはしないのが一般的です。
一方、経営コンサルタントの場合、分野に関わらず幅広くアドバイスすることが可能です。場合によっては、公認会計士と連携しながら社内の財務・会計を見直すこともあります。また、公認会計士から経営コンサルタントに、経営コンサルタントから公認会計士にキャリアチェンジする人も多いです。
経営コンサルタントとリサーチャーの違い
リサーチャーは、文字通り「リサーチ」をするのが仕事です。具体的なテーマに沿って情報収集・分析をするのがリサーチャーの仕事であり、オーダーを受けて動くことが大半です。反対に、情報収集したい内容が不透明であったり、解決したい課題が見えていなかったりすると、リサーチャーへの依頼はしにくいでしょう。
経営コンサルタントもリサーチャーとして情報収集することがありますが、その情報をもとにコンサルティングするのが目的です。リサーチすること自体が目的のリサーチャーとはゴールが異なるので、それに伴い双方の役割も異なることがわかります。
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経営コンサルタントの仕事の魅力ややりがい6選
経営コンサルタントの仕事内容は幅広く、クライアントとの関係性も深くなるからこそ、特別なやりがいを実感できます。主に下記の点が大きなやりがいと言われているので、目を通してみましょう。
- 課題の難易度が高い分達成感を得やすい
- 多様な業界の案件に携われるため知的好奇心を満たせる
- 優秀な人材と働ける
- どの業界でも通用するスキルが身に付く
- 出版・セミナーなど幅広く活躍できる
- 人脈を広げられる
下記で具体的に紹介します。
1. 課題の難易度が高い分達成感を得やすい
経営コンサルタントは、クライアント本人でも自覚していない課題を可視化したり、経営の方向性を決めるような重大な意思決定に参画したりすることが多いです。そのため、当然ながら課題の難易度が高い傾向にあります。大きな予算を預けてもらうこともあるのでプレッシャーも大きく、なかには経営コンサルタントのデメリットだと感じるかもしれません。
ですがその分、成功したときの達成感が高い点がメリットです。クライアント企業から感謝されることも多く、場合によっては自分が経営コンサルティングを手がけた会社が数十年後に世界的な大企業となることもあるでしょう。「あのとき頑張ってよかった」という満足感を味わうと、経営コンサルタントの楽しさに気づけるでしょう。
2. 多様な業界の案件に携われるため知的好奇心を満たせる
経営コンサルタントは特定の業界だけに特化しないため、多様な業界の案件に携われます。業界によって文化ややり方が全く異なることも珍しくないので「知的好奇心を満たせる」「勉強してもしてもし足りない楽しさがある」と感じるかもしれません。もともと新しいことを知るのが好きな人であれば、経営コンサルタントが天職になる場合があります。
さらに、専門分野の知識を深めることで特定の業界に特化した「業界特化型コンサルタント」になることも可能です。専門知識を積んでスペシャリストになりたいか、幅広い案件に関われるゼネラリストになりたいか次第で、キャリアを選ぶとよいでしょう。
3. 優秀な人材と働ける
コンサルティングファームには、コンサルタントだけでなくアナリスト、リサーチャー、プロジェクトマネージャーなど多数の職種が在籍しています。場合によっては、公認会計士や税理士などの士業、人材採用に強いキャリアコンサルタントなど、別職種の方々と関わることもあります。いずれも優秀な人材が多い職種であり、それぞれが専門的な知見を持っているからこそ、刺激になることが多いです。
経営コンサルタントになって優秀な人と関わる機会が増えれば、いつの間にか自分の学習意欲も高まるかもしれません。モチベーションを引き上げてもらいやすい環境であるという意味でも、経営コンサルタントはやりがいを実感できる仕事です。
4. どの業界でも通用するスキルが身に付く
経営コンサルタントに関する基本的な知識やスキルは、どの業界でも通用します。プロジェクトをスケジュール通りに進行するタイムマネジメント能力や、クライアントと深い関係性を構築するコミュニケーション能力は、どんな仕事でも役立つでしょう。基本的な社会人スキルを伸ばす場所としても有意義であり、自分に自信を持つきっかけになります。
また、スキルが高くなればなるほど報酬も高くなりやすく、年収・待遇で返ってくるのもやりがいに直結します。転職市場における市場価値も高くなり、転職活動の際には「スキルを伸ばしておいてよかった」と実感できるでしょう。自己成長がやりがいにつながるのも、経営コンサルタントならではです。
5. 出版・セミナーなど幅広く活躍できる
実績のある経営コンサルタントとして評判になると、コンサルティングだけでなく執筆・セミナー・講演会などの依頼が舞い込むことがあります。幅広く活動できるので自分の経験を増やせる他、経営ノウハウを伝えて感謝されるなど、思わぬやりがいにつながる可能性が高いです。副収入も確保しやすく、個人的な年収増などメリットも実感できます。
なお「優秀なビジネスマンとして有名になりたい」「大勢にノウハウを広げるような仕事がしたい」という人にも、経営コンサルタントがおすすめです。広く求められる存在になれば、更にやりがいが増していくでしょう。
6. 人脈を広げられる
経営コンサルタントはプロジェクトごとにさまざまな企業と関わるため、人脈を広げやすいのが特徴です。業種・職種・企業規模・地域(国)の壁もなく人脈が広がっていくため、知り合いが知り合いを呼ぶ「人の輪」が出来上がっていくことも少なくありません。
また、人脈づくりが功を奏して新しいビジネスパートナーが見つかったり、公私ともに支えあえる親友のような存在ができたりするケースも多いです。もともと人好きで出会いを楽しめる人にこそ、経営コンサルタントが向いています。
経営コンサルタントの働き方
経営コンサルタントはやりがいのある仕事ですが、その分独特の働き方になることも多いです。
【経営コンサルタントの働き方】
- クライアントに合わせて働き方が変わる
- 成果次第ではなかなか休みが取れない
- プロジェクトとプロジェクトのスキマであれば長期休暇が取りやすい
経営コンサルタントはクライアントワークであるため、原則発注元であるクライアントに働き方を合わせる必要があります。クライアントが土日祝問わず稼働している業態であれば、経営コンサルタントも土日祝の対応が求められるシーンが多いでしょう。クライアントが海外に拠点を持っている場合は、海外の時間軸に合わせて活動するケースもあります。
また、思った通りの成果が出なかった場合には、休み返上で打ち合わせをするなど、クライアントと同じ温度感で働くことも必要です。経営コンサルタントへの依頼費用は安くないからこそ期待されることも多くなり、時には企業経営を左右するプレッシャーに負けてしまうかもしれません。クライアントの期待に応えるためにも、プロジェクト期間中は不定期の休みになると覚悟しておいた方がよいでしょう。
一方、プロジェクトとプロジェクトのスキマであれば長期休暇が取りやすいメリットもあります。どの程度プロジェクトを詰め込むかはコンサルティングファームにより異なりますが、世間一般における長期休暇を外して旅行に出るなど、人混みを避けてリフレッシュすることも可能です。定期的な休みにこだわらない人であれば、むしろ経営コンサルタントは働きやすい職種と言えるでしょう。
経営コンサルタントに向いている人
ここからは、経営コンサルタントに向いている人の特徴について解説していきます。自分が当てはまるかどうかをチェックすることで、転職後のミスマッチを防げるでしょう。
経営コンサルタントに向いている人は、下記の通りです。
- 専門分野の知識がある方
- 論理的思考力が高い方
- コミュニケーション能力の高い方
- クライアントのことを第一に考えて働ける方
- 仕事のスピードが速い方
- 成長意欲が高い方
- 厳しい環境でもポジティブにいられる方
それぞれ詳しく解説していきます。
専門分野の知識がある方
経営コンサルタントは、当然ながら経営に関する深い知見を持っていることが必須です。経営だけでなく、社会情勢・世界情勢・経済情勢などビジネスを取り巻く環境について日々リサーチしていたり、時代の最新情報を常にキャッチアップし続けたりするハングリー精神も求められます。専門分野の知識があるほど確実なアドバイスがしやすくなるため、クライアントからの信頼も得やすくなるでしょう。
また、これまで特定の分野で長い実務経験を積んできた人であれば、マネージャーとしてクライアント企業のプロジェクトに参画することもできます。加えて、証券会社や銀行などの金融機関で企業評価をしてきた人であれば、将来予測も立てやすくなります。
明確に自分の強みとなる分野がわかっている方は、安心して経営コンサルタントを目指せるでしょう。
論理的思考力が高い方
論理的思考力が高く、常に「なぜ」「どうして」を考えられる人も、経営コンサルタント向きです。
経営コンサルタントは常に客観的な立場からアドバイスをする必要があり、主観による思い込みや経験・勘だけに頼るのは理想的ではありません。物事が発生する理由や課題の背景についてもじっくり考えられる人であれば、納得度の高い施策を考案しやすくなるでしょう。
コミュニケーション能力の高い方
コミュニケーション能力が高い人は、クライアントや社内の関係者と円滑な関係性を構築できます。特に経営コンサルタントの場合、難しい課題や背景なども含めて同じ考え方を共有しておく必要があり、高いコミュニケーション能力が必要です。
どんなに業務スキルが優れていても、基本的なコミュニケーション能力がないと不信感につながり、思わぬところでミスやトラブルにつながるかもしれません。コミュニケーションは経営コンサルタントにとって必要不可欠とも言えるスキルのため、必ず養っておきましょう。
クライアントのことを第一に考えて働ける方
「クライアントの経営課題を何とか解決してあげたい」という純粋な気持ちで動ける人は、経営コンサルタント向きです。
仕事として「やらされている感」がなくなるため柔軟な発想も得やすく、マニュアルだけにとらわれない分析・リサーチができます。さらに柔軟に働いた結果、働きぶりがクライアント企業に評価されて更に仕事がやりやすくなる等、思わぬメリットが生じることもあります。
また、経営コンサルタントはクライアントワークである以上、クライアントの都合に合わせて動かなくてはいけないシーンも多いです。自分の都合だけで動こうとせず、相手のことを優先して考えましょう。
仕事のスピードが速い方
経営の意思決定がスピード化している昨今、経営コンサルタントにもスピードが求められます。仕事や判断が遅くなった場合、大きな機会損失になってしまうこともあるでしょう。特に急ぎの案件では数日の差が競合に後れを取る要因となるなど、思わぬ損失が発生するケースも珍しくありません。そのため、経営コンサルタントは常にスピーディーな仕事を求められているという自覚を持ち、まずはクイックレスポンスを意識しましょう。
もともと課題を先送りにせずどんどん手をつけられる人であれば、経営コンサルタントに向いています。
成長意欲が高い方
経営コンサルタントは絶えず情報収集や学び直しが必要な職種だからこそ、成長意欲が高い人でないと続きません。自己成長を実感できることがやりがいにつながる人や、自分に自信を持つために勉強し続けたいと思える人であれば、十分な適性があります。
反対に、勉強嫌いで新しいことが苦手な人は、経営コンサルタントに向いていない可能性が高いです。経営コンサルタントは「時代の最新情報に興味津々で、何でもまずは試してみたい!」という人向きの仕事であることを理解し、自分に適性があるか改めて確認してみましょう。
厳しい環境でもポジティブにいられる方
経営コンサルタントは華やかな仕事だと思われることが多いですが、実際はクライアントからのプレッシャーに悩まされるシーンも少なくありません。「自分の提言通りに動いてくれたのに売上が伸びない」「想像以上にコストがかかってしまったが今更引くに引けない」など、厳しい状況に置かれることも多いです。ついプレッシャーに押しつぶされてしまいそうですが、厳しい状況でもポジティブでいられる人であれば、経営コンサルタントという仕事が嫌になることもないでしょう。
また、いつでもポジティブで前向きにアドバイスできる経営コンサルタントは、クライアントにとってありがたい存在でもあります。自分のモチベーションコントロールをするという意味でも、クライアントからの信頼をつかむという意味でも、明るくてポジティブな人に向いていると言えるでしょう。
経営コンサルタントは将来性が高い
経営コンサルタントの仕事は将来性が高く、今後も活躍の幅が広がるだろうと予想されています。
近年は下記4つの要素が揃った「VUCA時代」に突入したと言われており、社内の経営陣のみで経営の意思決定をすることが難しくなっています。
【VUCA時代の要素】
- Volatility:変動性
- Uncertainty:不確実性
- Complexity:複雑性
- Ambiguity:曖昧性
「先行きが不透明で将来の予測が困難な状態」がVUCA時代であることから、経営コンサルタントなどプロの力を頼る企業も増えました。AIなどの便利なツールが増えても「企業が目指す将来像と現状とのギャップを埋める施策は人にしか考えられない」と言われており、経営コンサルタントの仕事が急にAIに置き換わることも考えにくいでしょう。
上記の理由から、経営コンサルタントの将来性は高く、専門的な知識とスキルを持つ人材が必要不可欠です。今後さらに働き方や待遇も改善していくだろうと予想されています。
経営コンサルタントの業界動向
経営コンサルタントの業界動向として、経営のデジタル化に強い人や相談役となれる人のニーズが拡大していることが挙げられます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)のニーズが拡大している昨今、経営データのデジタル化を急ぐ企業が増えました。「数値で経営判断をする」「デジタルベースで経営情報を管理する」というデータドリブン志向も一般的になりつつあり、経営のデジタル化に強い経営コンサルタントのニーズは今後更に拡大していくでしょう。
また、顧問相談役のような身近な存在として経営コンサルタントを抱える企業も増えており、大きなプロジェクト発足時以外にも経営コンサルタントを頼る場面が出ています。「経営のかかりつけ医」的な存在として信頼関係を構築できる人であれば、活動の場が増えていくでしょう。
経営コンサルタントのキャリアパス
経営コンサルタントのキャリアパスとして一般的なのは、下記の通りです。
- 現場の最前線で働く一流の経営コンサルタントを目指す
- マネジメント側に周りコンサルティングファームの経営に回る
- 公認会計士や税理士など士業を目指す
- 独立、開業(起業)する
- 執筆やセミナー等の副業で収入を上げる
現場で働くのが好きな人は、ハイスキルな経営コンサルタントとしてスペシャリストになることを目指しましょう。一方で同じコンサルティングファーム内でより好待遇を目指したい人はマネジメント側に周り、複数のコンサルタントをまとめる存在になるのが近道です。
経営コンサルタントのキャリアパスは社内での昇進・昇格だけに限定されず、士業としてキャリアチェンジしたり、独立・開業を目指したりする道もあります。また、執筆活動やセミナーで副収入を得たり、小規模プロジェクトに関わる副業を探したりするなど、収入アップの道も多いです。年収アップを狙いながら自身のスキル向上にもつながるため、ぜひチェックしてみてください。
また、経営コンサルタントとして必須のスキルはさまざまなシーンで役立つため、キャリアパスの選択肢も豊富です。理想的な働き方に合わせることもできるため、経験を積みながら検討していきましょう。
経営コンサルタントは未経験からでも目指せる
経営コンサルタントは専門性の高さや膨大な知識が求められる職種だからこそ、転職のハードルも高く感じてしまう方も少なくありません。しかし実際には、未経験で経営コンサルタントになることも可能です。
転職サイトや転職エージェントの求人案件では、未経験歓迎の経営コンサルタント求人が意外と多い傾向にあります。ただし、コンサルティングファームでの実務経験がない状態から経営コンサルタントを目指す場合、30代半ば頃がひとつの区切りとなることが多いです。
30代半ば以上の年齢から経営コンサルタントを目指す場合、コンサルタントでなくとも「金融機関や投資銀行での実務経験がある」「コンサルタント職ではないがコンサルティングファームでの就業経験がある」など何かしらアピールポイントがないと厳しいかもしれません。なかには年齢制限を設けず求人を出しているコンサルティングファームもありますが、完全未経験の20代と比べると少し不利になることは覚悟しておきましょう。
経営コンサルタントの平均年収
経営コンサルタントの平均年収は、経験年数により異なります。
経験年数 | 平均年収 |
~3年 | 500~800万円 |
~6年 | 700~1,300万円 |
~10年 | 900~2,000万円 |
~15年 | 1,300~2,500万円 |
15年以上 | 1,300~2.500万円 |
経営コンサルタントの年収相場は高く、20代で1,000万円以上を稼ぐ人もいます。なかにはプロジェクトごとにインセンティブを設けているケースもあり、成果を出せば出すほど収入が上乗せされることもあります。実務経験を積んでマネジメント層に昇進・昇格すれば、2,000万円を超えることも可能です。
高収入であるという点も経営コンサルタントのメリットなので、待遇を改善できる転職先を探している人にも経営コンサルタントはおすすめの職種です。
経営コンサルタントにおすすめの資格
経営コンサルタントとして役立つ資格は多く、下記の資格を持っていると知識を実務で活かせるシーンが増えます。
- MBA
- 中小企業診断士
- 税理士
- 公認会計士
- 経営士
- 社会保険労務士
下記でそれぞれの資格について解説します。
MBA
MBAは「Master of Business Administration」の略で「経営学修士号(経営管理修士号)」とも呼ばれます。経営学の大学院修士課程を修了した人にのみ与えられる学位のため、資格というより学歴に近いです。
経営コンサルタントに必要な要素を漏れなく習得でき、大学卒業後でも通えるのがポイントと言えます。日本では「ビジネススクール」の名称で呼ばれていることもあるので、通いやすいビジネススクールを探してみるとよいでしょう。
中小企業診断士
中小企業診断士とは、経営に関する総合的なアドバイスや将来予測ができる人に与えられる国家資格です。経営コンサルタントに関連する資格のなかでも唯一の国家資格であり、取得していると市場価値が高まりやすいのがメリットと言えます。「中小企業」と名前がついていますが、大企業・ベンチャー企業・スタートアップ企業へのアドバイスも可能です。
なお、中小企業診断士の資格を持っている場合、将来的な独立・開業にも有利です。資格を持っていること自体がひとつのアピールポイントになる他、会社としてまだまだ実績が浅いときでも安心材料として提示できます。
税理士
税理士は「納税代理」「税務署類の作成」「税務相談」を独占業務とする士業です。税のスペシャリストであり、会計帳簿の記帳など実業務を代行できるのも特徴のひとつと言えます。財務面での現状把握やコストカット、節税など社内体制見直しに関する専門的なアドバイスができるため、経営コンサルタントにおすすめの資格です。
税理士資格の範囲だけで経営コンサルタントとして必要な知識をフルカバーできるわけではありませんが、取得しておいて損のない資格と言えるでしょう。今後士業として独立を検討している人にも、おすすめの資格です。
公認会計士
公認会計士は、医師・弁護士と並んで取得のハードルが高いと言われている難関国家資格です。会計のスペシャリストに与えられる資格であり、財務・会計の面で専門的なアドバイスができます。経営コンサルタントだけでなく会計・税務コンサルタントからのニーズも高く、最適な投資に関するアドバイスやコスト削減施策の提案が可能です。
なお、公認会計士の独占業務として「監査」があり、お抱えの公認会計士と契約して安心したいと考える経営者も珍しくありません。そのため、経営者と一度信頼関係を構築したら長い付き合いになりやすく、収入の安定化に貢献できる可能性が高いです。
経営士
経営士とは、経営管理に関する高度な専門知識を持つ人に与えられる資格です。主に業績向上・企業文化の創造・社内体制の改善などに関するアドバイスができる人が合格するため、まさに経営コンサルタント向きの資格と言えるでしょう。
また、大学卒業程度以上の学識に加えて、経営管理の実務経験のある方なら誰でも受験可能です。会計・財務・金融円滑化に関する基本的な知識も網羅的に出題されるので、幅広く知識が欲しい人にも向いています。
社会保険労務士
社会保険労務士は、労務に関するスペシャリストに与えられる士業資格です。労働と社会保険に関することは全て網羅して学ぶので、特に人事分野でのアドバイスに強みを持つことができます。採用・育成はもちろん、今いる従業員との労使トラブルにも対応でき「人」の観点で社内改革したいクライアントから評価されるでしょう。
社会保険以外にも、就業規則の作成や各種助成金についても学び、かつ経営と関連付けてアドバイスできるようになれば、資格を活用できる幅が広がります。
経営コンサルタントに必要なスキル
最後に、経営コンサルタントに必要なスキルを解説します。
- ロジカルシンキング
- ヒアリング能力
- コミュニケーション能力
- 経営や法律などの専門知識
- 英語力
自分に足りない要素がないかをチェックしたいときは、下記に目を通してみましょう。
ロジカルシンキング
ロジカルシンキングは「論理的思考力」と言い換えられるスキルであり、経営コンサルタントに必ず求められます。筋道を立てて物事を説明したり、理由や背景を添えて正しく現状分析したりできる人は、ロジカルシンキングができる人として評価されるでしょう。「なぜ」「どうして」を考え続ける経営コンサルタントにとって、ロジカルな思考は欠かせません。
なお、ロジカルシンキングはトレーニングにより習得することができます。物事の要素を分解しながら整理する癖をつけたり、矛盾のないよう順序立てて説明したりするトレーニングを行うことで、後天的にロジカルシンキングを身に付けることが可能です。
ヒアリング能力
ヒアリング能力とは、クライアントのニーズや置かれている立場を正確に聞き取る力です。「傾聴力」と似ていますが、ただ相手の話に耳を傾けるだけでなく、必要な情報を確実に聞き取る力と理解しておくとよいでしょう。
経営コンサルティングの現場ではクライアント本人が課題に気づいていないケースも多く、ヒアリングを繰り返しながら本質的な問題点を指摘する必要があります。「根掘り葉掘り聞く」のではなく「効率よく必要な情報を引き出す」ようなイメージで、ヒアリングのトレーニングを重ねましょう。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力が高い経営コンサルタントは、クライアントと信頼関係を構築できるため、仕事もやりやすくなります。また、難しいことをわかりやすく説明したり、初対面でも安心感を与える会話ができたりすれば、依頼の数も増えるでしょう。
普段クライアントと言葉で会話することの多い経営コンサルタントだからこそ、高いコミュニケーション能力が必須と言えます。
経営や法律などの専門知識
経営に関してアドバイスする専門家である以上、経営の知識は必須です。また、税金・社会保険・労働法などに関する知識も欠かせません。
内容によっては税理士や公認会計士など外部の士業を頼るとはいえ、基本的なことがわかっていないと同じ立場でディスカッションすることすらできないため、注意しましょう。
英語力
英語力のある経営コンサルタントになると、仕事の幅が一気に広がります。国内企業による相談だけを受け付ける経営コンサルタントもいますが、英語が使えると海外企業・多国籍企業・グローバル企業も対象にできるのがポイントです。クロスボーダー案件も抱えやすく、これからコンサルタントへ転職する場合は採用を後押しする要因となります。
また、英語力があるとグローバルコンサルや外資系コンサルへの転職可能性が上がるのもメリットです。TOEIC700点以上をひとつの目安として勉強しておけば、業務に役立つ英語力が身に付きます。
まとめ
経営コンサルタントの仕事内容は、多岐に渡ります。経営に関するアドバイスをするだけでなく、実際にプロジェクトメンバーのひとりとしてクライアント企業の実務を担当したり、アナリストとして情報収集・分析を担当したりすることもあります。そのため、仕事量は決して少なくありません。さらに、実際に経営コンサルタントになって以降は、業務が細分化されることも多いです。
非常に高いスキルが求められる職種ではありますが、初心者からでも転職できる職種なので、興味のある人はコンサル転職に強いエージェント等を活用しながらキャリアアップしていきましょう。