MS&ADインターリスク総研は2025年10月28日、「人的資本経営に関する実態調査」の結果を発表しました。全国の従業員規模100名以上の企業の人事担当者・意思決定者1241人を対象に、人的資本経営の推進状況や人事データの活用状況を聞いています。
人的資本経営の取り組みをPDCAサイクルの4項目に分解したときのそれぞれの実施状況を聞いた結果が図1です。


D(人事施策の推進)とA(効果検証に基づく見直し)に取り組んでいると答えた割合はともに7割を超え、4社に3社が具体的な施策を推進するとともに施策を見直してブラッシュアップしていることが分かります。一方、P(目標設定(定量))とC(人事施策の効果検証)に取り組む割合は、ともに4割弱に留まります。明確な目標を設定せずに施策に取り組んだ結果、効果検証できない影響が表れていることがうかがえます。
人的資本に関するデータの保有状況と活用状況を聞いた結果が図3です。

人的資本に関するデータを「保有できている」と答えた割合は、87.9%でした。上場企業に限ると93.5%で、全体平均より5.6ポイント高くなっています。中小企業に限ると81.6%で、全体平均より6.3ポイント低くなっています。企業規模が大きくなるほど、人的資本に関するデータの保有率は高くなっています。
人的資本に関するデータを「分析活用できている」と答えた割合は、40.3%でした。上場企業に限ると51.3%、大企業に限ると50.4%、中小企業に限ると28.4%でした。9割近くの企業が人的資本に関するデータを保有するものの、データを活用する割合は半分以下の4割程度に留まっています。データを分析可能な形に整備できていない企業が多いことが分かります。
データの活用状況と、人的資本経営の効果を実感する関係を示しているのが図4です。「要員計画・配置」、「資金・報酬」、「採用・オンボーディング」、「人材育成・教育研修」、「スキル・経験」、「離職・定着」、「人事評価・パフォーマンス」、「後継者計画(サクセッション)」、「異動・退職」、「従業員エンゲージメント・満足度」、「ダイバーシティ(多様性)」、「健康・安全」の12領域でデータを活用しているときの実感度合いを示しています。実感度合いは具体的に、「経営戦略の実現や財務目標の達成」、「投資家や株主からの評価向上」、「求職者等の労働市場からの評価向上」、「従業員の満足度や生産性の向上」、「社会的な評価向上を含めた自社のブランド価値の向上」の5つにあてはまるかどうかを基準にします。

12領域でまったくデータを活用していない場合(0領域)、人的資本の効果実感を1つも得られない割合は60.0%でした。7領域以上でデータを活用している場合(7~12領域)、人的資本の効果実感を5つとも満たしている割合は55.5%で半数を超えています。データを分析、活用する領域が多くなるほど、効果を実感する割合が高くなることが分かります。
調査を監修した慶應義塾大学大学院経営管理研究科 講師/山形大学 客員教授の岩本隆氏は、今後は内閣府令の改正により、経営戦略と連動した人材戦略の開示が必須化され、戦略には客観性、論理性、定量性が求められるようになると指摘。人材戦略の策定にはデータを活用した定量的な判断が必要となるため、人的資本データ活用の強化が急務となると述べています。
【調査概要】
調査対象:従業員100名以上の企業に勤務する人事担当者・意思決定者(課長職以上)
回答者数:1241人
調査期間:2025年8月22日~8月24日
【関連リンク】
MS&ADインターリスク総研株式会社
https://www.irric.co.jp/
「人的資本経営に関する実態調査」ホワイトペーパー
https://malp.rm-navi.com/rs/787-GPU-288/images/DownloadableMaterials_HumanCapital.pdf?version=0
「人的資本経営に関する実態調査」ホワイトペーパー詳細レポート
https://malp.rm-navi.com/rs/787-GPU-288/images/SurveyReport_HumanCapital.pdf?version=0



