プロフェッショナル Answers!シリーズ第1弾 – 大企業における新規事業開発編 – “板挟みイノベーター” 〜新規事業を成功に導く管理職のための羅針盤〜

はじめに:プロフェッショナル Answers!シリーズの開始にあたって

ビジネスの現場では、答えのない問いに日々直面しています。 そんな中で求められるのは、正解ではなく、実践経験に基づく”プロフェッショナルの考え方”なのではないでしょうか。

このたび、みらいワークス総合研究所では、各分野の第一線で活躍するプロフェッショナルたちが、その経験と知見に基づいて、現場の課題に対する解やヒントを提示する「プロフェッショナル Answers!」シリーズを開始いたします。

なぜ今「板挟みイノベーター」=「管理職にとっての新規事業開発」なのか

この連載の第1弾として、今、多くの企業が直面している「新規事業開発」をテーマに取り上げます。
このテーマの対象は主に「管理職の皆さま」です。

「新規事業を任されたものの、どこから手をつければいいのかわからない…」
「役員たちからは大胆な構想を求められ、チームのメンバーからは現実的な懸念の声が…」
「既存事業部門からの協力は得られず、リソースも限られている中で…」

このような声は、大企業や上場企業で新規事業開発に携わる管理職の方々から、私たちが日常的に耳にする悩みです。

特に近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速をはじめ、新型コロナウイルスがもたらした急激な環境変化、昨今のPBR1倍割れ問題により、多くの企業が新規事業開発の必要性を強く認識するようになりました。その結果、管理職の皆さまの多くが、これまでの経験や知見だけでは対応が難しい「新規事業開発」というミッションを託されることになったのです。

新規事業開発における「板挟み」の構造

新規事業開発に携わる管理職の方々が直面する最大の課題の一つが「板挟み」です。

– 経営陣からは「イノベーティブな提案を」と求められる一方で、現場からは「実行可能性」を問われる
– 「スピーディーな事業化」を期待されながら、「慎重な事前検証」も要求される
– 既存事業との「シナジー創出」を目指しつつ、「従来の枠組みにとらわれない」発想も必要とされる

このような相反する要求のはざまで、多くの管理職の方々が日々苦悩されています。

なぜ「板挟み」は避けられないのか

実は、この「板挟み」は、大企業における新規事業開発では必然的に生じる現象なのです。なぜなら:

1. 組織の性質上の必然性
– 大企業では、既存事業による安定した収益と、新規事業による成長機会の両立が求められる
– この「両利き経営」の最前線に立つのが、まさに管理職の皆さま

2. イノベーションの本質的な特徴
– 新規事業開発には「不確実性への挑戦」であり、場合によっては「既存資産の活用」が必要
– この相反する要素を橋渡しするのも、管理職の重要な役割

3. 日本企業特有の文化的背景
– 合意形成を重視する文化と、イノベーションに必要なスピード感の両立
– この調整役としても、管理職の存在が不可欠

本コラムが目指すもの

そこで私たちは、この「板挟み」をむしろ強みに変える視点を提供する新連載「”板挟みイノベーター” 〜新規事業を成功に導く管理職のための羅針盤〜」を開始します。

本連載では、以下のような観点でコラムをお届けしてまいります。

1. 実践的な解決策の提示
– 実務経験豊富なプロフェッショナルによる、具体的な対処法の紹介
– 成功事例だけでなく、失敗から得た教訓も含めた多様な知見の共有

2. 複眼的な視点の提供
– 毎月異なるテーマに対して、複数のプロフェッショナルが独自の視点で解説
– 読者の皆さまが自社の状況に最適な解決策を選択できる構成

3. 共創的な学びの場の創出
– 読者の皆さまからの質問や課題に対する継続的な対話
– 実務者同士の経験共有やネットワーキングの機会提供

今後の展開

今後、以下のようなテーマで連載を展開してまいります。
– 新規事業開発戦略の立案と組織設計
– アイデア創出とMVP検証の実践
– PMF達成から事業化へのプロセス
– 既存事業とのシナジー創出
– 継続的イノベーションの仕組み作り

など

新規事業開発プロフェッショナル紹介

2024年12月以降、下記のプロフェッショナルたちによるコラムをお届けしてまいります。

石森 宏茂
COTO DESIGN, LLC / Chief Business Designer
TAIME, LLC / Co-Founder
新卒で教育事業大手ベネッセコーポレーションに入社。11年間にわたり法人営業から経営企画、国内外の新規事業開発まで幅広い業務に従事。2021年に独立し、株式会社coto design(現COTO DESIGN, LLC)を創業。経営戦略起点の新規事業開発を得意領域とし、主に大企業・上場企業を顧客とする新規事業開発の伴走支援を提供。「新規事業開発の最大の支援者は”実践者”」をポリシーとして、“理論1割”と“実践9割”のバランスを念頭に、自身も人材開発、サイバーセキュリティ、アパレル、AIエージェント開発など複数の事業を手がける。現在は、米国、東南アジア、日本を拠点とし、グローバルな視点と多様な業界経験を活かし、固定観念・既成概念にとらわれない視点で国内外の企業を支援している。

岩本 晴彦
合同会社サバティカルファーム 代表社員
外資系ITベンダー、大手電機メーカー、コンサルティングファーム等でのキャリアを通じて、経営戦略・事業戦略、新規事業開発、DX、経営変革・戦略企画などに従事。大手電機メーカー在籍時の複業制度を活用し、個人事業主として経営戦略・事業戦略の策定・実行支援を開始、法人成りして合同会社サバティカルファームを設立。国立大学法人での大学発スタートアップ創出支援など、複数の”場”にてパラレルキャリアを実践中

小林 舞
株式会社ハウオリ 代表取締役
大学卒業後、アクセンチュアからコンサルタントとしてのキャリアをスタートさせ、マッキャンエリクソン、米国ニューメキシコ州スタートアップ企業での州政府連携の新規事業立ち上げ等を経て、2016年にコンサルティング会社設立。独立後は主に、新規事業立ち上げや経営戦略策定支援、DX・業務改善におけるプロジェクトマネージメント等に従事し、幅広い業種やビジネスレイヤーに柔軟に対応している。顧客に寄り添ったコンサルティングと顧客が自律的にプロジェクトを遂行できる仕組みづくりに重きを置いてる。また近年では、2019年にスタートアップ企業のシンガポール暗号資産取引所におけるIEOに携わった経験を契機に、将来を見据えたWeb3事業の立ち上げ支援にも積極的に取り組んでいる。

原口 悠哉
株式会社エフルム代表取締役
慶應義塾大学経済学部卒。学生時代から複数事業を立ち上げた後、新卒でエンジニアとして勤務。2012年にスタートアップ企業創業後も複数事業を立ち上げ、事業譲渡・企業売却を経験。現在は2社目を経営し、自社事業と並行して個人事業主から兆円規模の上場企業まで、さまざまな領域にて幅広く支援。営業やプロジェクトマネジメントなどもこなすが、特に新規事業・各種戦略立案・海外を含めたマーケティングに強みを持つ。

村松 龍仁
Dragon Tech 代表
早稲田大学教育学部英語英文学科を卒業後、新卒で日系損害保険会社へ入社。その後、外資系のアメリカンホーム保険会社・アクサ損害保険株式会社で自動車保険の日本事業立ち上げに参画、運営管理を主導する。 2001年よりPwCコンサルティング合同会社にて経営コンサルティング業務に従事したのち、トランスコスモス株式会社・GMOペイメントゲートウェイ株式会社等で海外プロジェクトのマネジメント業務や投資、M&Aなどを経験。2006〜2020年までASEAN地域で事業責任者として複数の新規事業立ち上げ、現地法人マネジメントとして活躍。2023年に独立し、Dragon Techを創業。現在フリーコンサルタントと投資ファンドビジネスを展開中。

 

おわりに

「板挟み」は、決してネガティブな状況ではありません。それは、異なる価値観や要求を橋渡しし、新たな価値を創造するための重要な立場なのです。

本連載が、新規事業開発に携わる管理職の皆さまにとって、実践的な示唆と勇気を与える「羅針盤」となることを目指してまいります。

12月以降、各テーマに沿って、具体的な課題と解決策を詳しく見ていきます。ご期待ください。

 

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